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2015年11月26日 (木)

医療費削減政策の先にあるもの

このところ財務省からの攻勢が勢いを増している来年度診療報酬改定における医療費削減圧力に関して、大病院の紹介状なしでの飛び込み受診だけではなく、医療機関を受診するたびに一定額を保険からではなく自己負担として支払ういわゆる「免責制」の導入も議論されているようで、過去にも「皆保険制度を崩壊させる!」と導入が断念されたように未だ批判の声も根強いようですね。
逆にそれだけ反対の声が根強いにも関わらず繰り返し導入を進めようと言う動きがあると言うには、よほどにこの免責制が医療費抑制に効果があると考えられているからだと思いますが、「最初は百円の免責であってもいずれ千円、一万円になる」と言う意見は極端にしても、結局受診抑制を目的としている以上医師会などが到底賛同するはずもありません。
ただ多忙な基幹病院勤務医などはキャパシティーを超えた患者を抑制したいと言う本音もあるはずなので、実際のところ誰がどのように受け止めているのか今ひとつはっきりしない制度でもあるのですが、先日こんな興味深い調査結果が出ていましたので紹介してみましょう。

医療費カットの切り札は「患者負担増」か「ジェネリック」?◆Vol.2 混合診療解禁には医師、患者とも賛成意見多数(2015年10月18日医療維新)

 特集Vol.2では、増え続ける医療費に対応するための方策について、医師(m3.com)側と医療の現場では患者の立場であるNewsPicks(以下、NP)読者側の意見を比較したい。医師側の最多は約半数が選んだ「窓口での患者負担の増加」だった。「保険診療の絞り込み」「大病院の受診制限」など、医療の制限が必要との回答も多かった

医師は「日本人の死生観を変えるべき」だと強調

 また、医師側の回答の中には「患者教育の徹底」「軽症での救急外来受診の抑制、救急車の使用抑制」「日本人の死生観を変えることしかない」など患者の意識改革を求める声が多かった。医療側のシステムについては「高齢者の検診・人間ドックの廃止」「開業医の厳選化」「整体師やほねつぎ系を医療保険から外すべき。エビデンスがなさすぎるものに保険を使うなんて国際常識に反している」という意見もあった。

NP読者は「医療にビジネス原理を」と提案

 一方、NP読者側の最多の意見は、「ジェネリック医薬品の利用促進」だった(ジェネリック医薬品の是非については第3回で改めて考えてみたい)。また、「医療機関へ報酬削減」が目立ったほか、「その他」の具体例として、「病院の企業経営」「患者の自己責任での服薬」といった意見も挙がった。
 「その他」に寄せられた意見では、「IT化による人材費コストカットと能力別報酬制度を設けるべき」「安定している慢性疾患患者の薬を海外のように箱売りボトル売りにして、ある程度患者自身の責任において服薬し治療の継続の有無を決める」「企業の病院経営を可能にする」「健康であることにインセンティブを与える」など、ビジネスマインドやインセンティブの導入という考えが多かった
 また、「医療業界のリストラ。必要でない医療・医師、無用な研究を削除しては」「医師が儲からないシステムを作り国士レベルの医者を増やす。患者はお金じゃないと言う意識改革を」など、医療側のリストラや奉仕精神を求めるも意見もあった。一方で、「つい最近消費税上がったばかりなのに、増え続ける医療費に対応するための欄に「国民負担の増加」とか「患者負担の増加」っておかしくない??どんだけ国民苦しめれば気がすむわけ?」という切実な声も。
(略)
 混合診療解禁の是非を尋ねたところ、双方ともに賛成が大勢を占めたが、医師側では「分からない」という回答が2割強だったのに対し、NP側が賛成意見がやや多めだった。
 混合診療についての考えを尋ねたところ、医師側では「税金で賄うことのできる限界があることを知らしめるべき」「患者の希望に合わせた医療ができるのでいい面が多いと思う」「質の高い医療には高額報酬を認めれば、医師のモチベーションが高まる。今は、どんな治療をしようが報酬は変わらないので、やる気が出ない」などの意見があった。
 NP側では賛成意見として「医療においても、格差はあって良いと思う。対価を払って高い治療を受けるという選択肢も必要。その方が科学の進歩にもつながる」「健康保険以外で収入を得ることで経営力の差が付くので賛成」「貧富の差くらい、あって当然です。持っているお金を自分のために使うことに法律で制限されるなんて、共産主義みたいで、気持ち悪いです」といった声が寄せられた。

「金の切れ目が命の切れ目に」、反対派

 反対という意見では医師側では「医療格差が助長される」「金儲けだけを目的にする医療機関が増える」「金の切れ目が命の切れ目になるような制度には反対」などの声が寄せられた。
 NP側では「混合診療を解禁してしまうと、これから新しくでる医療技術のほとんどが保険外になり、多くの国民が新しい医療にアクセスできなくなる可能性が高い」「保険診療の適用範囲が狭くなりそうで不安」などの意見が挙った。

聞くべき意見もあればそれはいささかどうよ?と言う意見もありと玉石混淆なのは当然なのですが、しかしこうしてみますと改めて日医の主張する意見などと言うものがいかに医療現場の声を代弁していないかと言うことがよく判る一方で、患者側の立場からも必ずしも日医の言うところの国民目線での医療に賛同する声ばかりではないと言うことも言えるかと思いますね。
特に議論が別れるのが国民皆保険制度の堅持は概ねコンセンサスが得られているとしても、その実態として万人に平等な医療を提供すべきだと言う考え方が是か非かと言うことなんですが、意外にもこの点では医師の方が理念優先で格差導入反対派、患者側の方が実益や社会常識に照らし合わせて格差容認派と言う風にも見えるのですがどうでしょうね。
もちろん医療の素人さんの意見であるだけに、実際にそれをやってしまってはあなた達が大変なことになるけどいいの?と生暖かく見守るべき意見と言うのもあるようには感じますが、こう考えてみると医療は必ずしも平等ではなくてもいいのだと言う国民も決して少数派ではないし、お金によって医療に格差をつけることにはさしたる抵抗感がないらしいとは言えそうです。

ただ注意したいのはお金によって格差がつけられると言うのはあくまでも通常以上の医療と言うべき部分に関しての話で、基礎的な医療に関しては誰でもきちんとアクセスできる権利が保証されているのが大前提だと言う理解はちゃんと患者側も持っているようですし、そうであるからこそいわゆる混合診療に関しても保険給付対象になる基礎的な医療部分の縮小につながるのではと言う懸念からの反対意見が多いとも言えますよね。
この辺りはどこまでを万人に対して保証される医療の範囲とすべきか、明確に明文化されたルール作りを行えるのかどうかを考えても難しいものがあって、例えばガイドラインに掲載されるような医療なら全て保険で認めましょう、でもエビデンスに乏しい新規抗癌剤は自費でやってくださいねと言われて、誰しも納得出来るかどうかと言えばまあ難しいですよね。
一方で医療費抑制と言えば医師ら医療スタッフの給与抑制と言うこととも直結する話ですが、例えば多忙を極めている現在の医療現場がもう少し緩和され定時帰りが出来る、時間外の呼び出しがないと言った生活が送れるようになるなら給料が減ってもいいのかどうかと言った点に関しては、当の医療従事者の間にも確たるコンセンサスはないように見えます。
ただ医師に関してもいずれは医師過剰と言われる時代が来ると言われているし、医療費抑制政策が続き受診抑制が政策的に誘導されていくなら今後患者は減っていく理屈ではあるので、どこかの段階で仕事は減り給料も減ると言う時代が必ず来る道理なんですが、その時過剰な人員を自ら整理して収入維持を図るべきなのか、皆で仕事を分け合っていくことになるのかについても、どこかで結論を出すよう迫られるかも知れないですね。

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コメント

>医療側のリストラや奉仕精神を求めるも意見もあった。

これが国民の本音ですw

投稿: | 2015年11月26日 (木) 08時16分

お得意の特区でいろいろとやってみたらいいんじゃないですかね。
成功するか失敗するか今後のエヴィデンスにはなるかもだし。

投稿: ぽん太 | 2015年11月26日 (木) 08時48分

医者側の「金の切れ目が命の切れ目になるような制度には反対」というのが理解できないのですがね。
混合診療が認められなければ、それこそ金の切れ目がもっと早く来るのだけど・・・。
昔のように金さえ積め医大に入れた時代ならともかく、今の時代でもこの程度の頭脳の医者が
いるんだなぁって情けなく思います。

投稿: | 2015年11月26日 (木) 08時54分

医学部新設も進んでますが
いずれ地方の医学部中心に大幅に定員減らす必要は出てくるでしょう
人口の減り方も都市部は高齢化するか人口は減らず
地方はそもそも自治体が残るかどうか不明なレベルで減るところも多い
なのでそろそろ地方国立大中心に定員減らすのが良いかと

投稿: | 2015年11月26日 (木) 09時27分

医者という名の奴隷を求めている感www

投稿: | 2015年11月26日 (木) 11時45分

より安くより良いサービスを求める心理は何の商売でもあることですが、医療の場合は価格転嫁や付加価値の提供が行いにくいのは一つの欠点かも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月26日 (木) 15時19分

①税金高くて、医療費はかからないが、アクセス制限はキツい(欧州)
②税金低いが、自己負担高い、金ないと医療が受けられない(米国紙)
③税金は高くも低くもないが、コストは医療税でまかない、無料部分と高額部分があり、アクセス制限がある(カナダ オーストラリア)

日本はどれにも当てはまらない。
税金安くて、医療費自己負担も低くて、アクセス制限がない、先進国唯一のシステム。しかもWHOやOECDが出すヘルスケア・パフォーマンス国際比較は常に、世界1位か2位。
NPの一般読者って、そういう基礎知識あるの?
医師の大半は、その知識もってるけど?

投稿: physician | 2015年11月28日 (土) 01時01分

NPの一般読者は、
医師として第一線の医療現場で働いていないから、もっと医療現場にお金を配分していかないと人的資源やインフラの維持、整備ができないことを認識できない。
ただ、金を削れしか言えない。
医療機関の整理統合、人的資源の集約化にもお金がかかる、また、お金を出さなければ、労働環境を整えなければ医療職も集まらない、現場を去っていくことも知らない。
それを学ぼうともしない。

投稿: physician | 2015年11月28日 (土) 04時48分

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