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2015年11月10日 (火)

診療報酬引き下げ要求の強まる中で

来年度の診療報酬改定で財務省からはマイナス改定が基本路線と言う声が高まる中、予想通り日医が猛反発していると報じられています。

診療報酬改定:日医、財務省案に猛反発…引き下げ巡り攻防(2015年11月06日毎日新聞)

 2016年度診療報酬改定をめぐり、関係者の応酬が始まった。財務省が先月30日の財政制度等審議会の分科会に引き下げ方針を提案したのに対し、日本医師会(日医)は強く反発。年末の予算編成での改定率決定に向け攻防が繰り広げられる。

 「さらなるマイナス改定は地域医療の崩壊をもたらす」。日医の横倉義武会長は5日の記者会見で、財務省方針を厳しく批判した。

 診療報酬は医療サービスの値段でほぼ2年に1回改定される。手術や調剤などの技術料の「本体」と「薬価」からなる。前回(14年度)は0.1%増だが、消費増税に伴うコスト増を除いた実質ではマイナスだった。今回引き下げれば実質2回連続、名目では8年ぶりのマイナスになる。

 財務省は社会保障費を概算要求から約1700億円削減する意向。診療報酬だけで削るなら約1.5%引き下げに相当する。

 診療報酬のうち「薬価」は実際の取引価格との差の千数百億円程度引き下げの見込み。財務省は足りない分を「本体」に求める。特に、調剤報酬に狙いを定め、加算要件など細かい見直し方針を示している。ただ、調剤報酬だけで残り数百億円を捻出するのは困難で、医師の技術料など日医の「本丸」にまで切り込まれる可能性があり、全体としてプラスにするのは厳しいのが実情。厚生労働省は「必要なものは確保する」(幹部)と態度を明確にできずにいる。自民党の閣僚経験者は「『プラス改定だ』と言わないと大幅マイナスになってしまう」と同省に強気の姿勢を促す。【堀井恵里子】

今回の改訂作業で財務省は8年ぶりのマイナス改定を目指すと鼻息が荒いのだそうで、これに対して日医などは「医療崩壊の再来だ」と反発しているそうですが、膨張を続ける社会保障コストの抑制が急務と言う点ではほぼ社会的コンセンサスが得られてきている時代ですから、かつてほど医療費を聖域視する声も聞こえなくなってきている印象があります。
その代わりにと言うのでしょうか、医療現場が崩壊すれば国民生活はどうなると言ったいわば実利を持って語ると言う反対論が見られるのは良い傾向だと思いますが、ただ「医大が経営赤字だから診療報酬は引き上げるべき」と言うのでは果たして説得力としてどうなのかで、やはり医療現場としても経営的に改善すべきは改善する、そして経営度外視でどこまでの医療を提供すべきなのかと言う観点での議論が必要なんでしょうね。
その意味で今回の改訂では特に医師の仕事そのものへの評価と言える医師技術料の引き下げを目指すと財務省は公言していて、もちろん診療報酬は全部ひとまとめにしての支払いですから技術料が直接医師への報酬になるわけでもありませんが、現場のモチベーションとしては手間暇かけて患者の侵襲を減らす処置よりは、より簡単に済む処置を優先すると言う方向に流れやすくなる可能性はあるのでしょうか。
ただ諸外国では高度な医療を行うのであれば高いお金を取るのはむしろ当たり前と言う国の方が多いわけで、日本の医療現場だけが長年お金のことは気にせずいわば理念(と医者の興味)最優先でやってきたと言うのもある意味特殊な状況ではあり、今後医療現場においてもある種のコスト意識が求められるようにはなるのかも知れません。

世間的にどう考えているのかと言う点も気にはなるのですが、医療の収支が厳しいと言いながら近所の開業医にはベンツが駐まっているじゃないかと言ったレベルの認識から、全国一律の診療報酬改定ではもはや現場の実態に即した報酬体系は構築出来ないと言うもっともな主張もあって、皆保険制度の建前である全国統一価格でどこでも同じ医療をと言ういささか空しいお題目が限界を迎えてきているとも言える状況です。
先日時間外の選定療養加算で別途料金を徴収した結果、重症患者の受診にはさしたる影響を与えず不要不急の軽症患者の受診が抑制出来たと言う発表があったそうですが、医療現場の過重労働を抑制する簡便な手法としてすっかり定着したこの特別料金と言うものも、裏を返せば黙っていても患者が手に余るほどやってくる病院もあれば、そうではない病院もあると言う事実を示していると言えますよね。
厚労省でも財務省とは別ルートでの医療費抑制策として最近は費用対効果と言うことを言い出していて、おそらく将来的には混合診療などとも組み合わせ費用対効果の高いものは助成金を出してでも治療をすすめ、そうでないものは高い患者負担をと言った差別化も行われる可能性がありそうに感じていますが、いずれにしても医療の中にも様々な階層分けが必要となりそうな時代になってきたと言う気がします。
ちょうど例の地域医療計画で都道府県単位で医療供給体制を計画的に整備していくことが決まっている以上、近い将来全国各地で医療提供体制の格差や方向性の違いが明確化してくると予想されますが、それだけの差異が生じてもお値段だけは全国統一の公定価格と言うのでは国民の納得も得られそうにありませんし、診療報酬体系と言うもののあり方に抜本的な改革が求められる時期になってきたと言えそうです。

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コメント

教員の削除
国立大の交付金1パーセント削除
ここら辺も揉めてますね。

もっとも今回は予算の引き下げを回避できても
税収が伸び悩む中で社会保障費が増えてくので今後各業界での予算をめぐる争いは熾烈になるでしょう。

投稿: | 2015年11月10日 (火) 07時32分

全国一律も限界ですし
そもそも都道府県という枠組みも限界なんじゃ
人口減少といっても全国一律ではなく都市部は高齢者は増えるがそこまで急に減ら無い一方
地方は自治体というか県ごと消滅しそうな勢いの所もあるわけで

投稿: | 2015年11月10日 (火) 07時43分

もうそういうものだと知った上での生き残りをはかっていくしかないんじゃないかと。

投稿: ぽん太 | 2015年11月10日 (火) 07時50分

技術系企業では、事務屋が力を持ちすぎるとダメになる。
技術立国を目指すというなら国も同じなのだが。

投稿: | 2015年11月10日 (火) 09時11分

あれ単なるお題目だから>技術立国

投稿: | 2015年11月10日 (火) 09時21分

基礎的な部分は全国共通でもよいのでしょうが、一定の範囲内で何を重点的に評価するかの裁量権を与えた方が、地域ごとに異なる実情にマッチさせやすいかとは思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月10日 (火) 10時54分

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