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2015年11月12日 (木)

ジェネリック普及最大の障壁は医師と言う事実

すでに久しく以前から議論されている話なのですが、先日こう言うニュースが出ていました。

後発薬の「価格帯」、一本化で簡素化へ 薬価は先発薬の「5割」に引き下げか(2015年10月28日医療維新)

 中央社会保険医療協議会薬価専門部会(部会長:西村万里子・明治学院大学法学部教授)は10月28日の会議で、後発医薬品の薬価について議論、将来的には価格帯を一本化する方向でおおむね了承した(資料は、厚生労働省のホームページ)。現行制度では、後発医薬品の薬価は、先発医薬品とは異なり、銘柄別ではなく、3以内の価格帯として設定されている。2016年度改定で一気に一本化するのか、段階的に進めるのかについては、年末に公表予定の薬価調査で後発医薬品の実勢価格を踏まえて検討する予定だ。また、後発医薬品が新規に収載される場合には、現在は先発医薬品の0.6掛けから、0.5掛けとする案が出ている。
(略)
 後発医薬品の価格帯については、2014年度改定で、「最高薬価品の50%以上」「最高薬価品の30%以上、50%未満」「最高薬価品の30%未満」の3つに分けて、それぞれ統一価格を設定する方式に簡素化された。
 9月30日の日本ジェネリック製薬協会のヒアリング時でも、将来的には価格帯を集約すべきとの提案があり、価格帯を一本化する方向性自体は、関係者の意見が一致している。ただし、薬価は市場実勢価格の加重平均で算出されるため、価格帯を一本化すると、大幅に薬価が上がる後発医薬品が出る可能性がある。専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬常務執行役員)は、極端に市場実勢価格が安い場合などの「外れ値」は別扱いにするなどの経過措置が必要だとした。

 「乖離率」、後発医薬品は24.1%

 2013年9月の薬価調査によると、薬価と市場実勢価格との「乖離率」は、2012年4月から2013年6月に収載された新規後発医薬品は24.1%、これらの後発医薬品に対する先発医薬品は8.2%と、開きが大きい。後発医薬品が「安く売っても、利益が出る」と見られるのは、このためだ。しかし、「乖離率」の詳細をみると、内用薬は大きいものの、注射薬や外用薬では小さいなど、剤形によっても違いがあることから、丁寧にデータを見ていくべきと、加茂谷氏は求めた。
(略)

まあ国が同じ成分なら同じ薬だと言っているのに、公定価格が違うと言うのも筋が通らない話ではあるのですが、仮に全てのゾロが同一価格となった場合薬局は全て揃えるべきなのか、それとも同じものなのだから代表的銘柄だけ取りそろえておけばいいのかと言う問題もあって、実際の運用面ではむしろ話がややこしくなる可能性もあるかも知れませんね。
いずれにしても後発薬使用促進と言うことは順調に進んできているようで、医薬分業と一般名処方の両輪からそもそも何が先発品なのかも判らない、銘柄なんて何でもいいじゃないかと言ったこだわりのない先生も次第に増えて行くんじゃないかと思うのですが、一方でベテランの先生を中心に特定ブランドに対する信仰めいたこだわりがある方々も少なからずいらっしゃいますよね。
実際に銘柄によって効果にそれほど差があるなら、単純に効く効かないだけでなく薬価の差に対して効果にはどの程度の違いが出るのかと言うコストパフォーマンス評価をしてみるとおもしろいのかなと思うのですが、このジェネリック不信とも言える現象に関して先日厚労省の調査でこういう結果が出ているようです。

ジェネリックに医師の半数以上が不信感(2015年11月6日NHK)

 医薬品の特許が切れたあとに販売される価格が安い後発医薬品、いわゆるジェネリックについて、医師の半数以上が品質などに不信感を持っていて、普及に向けた課題になっていることが厚生労働省の調査で分かりました。

 政府は医療費の抑制に向けて、医薬品の特許が切れたあとに販売される、価格が安い後発医薬品、いわゆるジェネリックの使用割合を現在の50%程度から、2020年度までのなるべく早い時期に、80%以上に引き上げるとする目標を掲げていてます。
 こうしたなか、厚生労働省は医師などを対象に行った、ジェネリックについての意識調査の結果を6日開かれた中医協=中央社会保険医療協議会に報告しました。

 それによりますと、病院の医師にジェネリックに対する不信感の有無を尋ねたところ、「不信感はない」と答えた医師が40.7%だったのに対し、54.9%が「不信感がある」と回答しました。
そして、「不信感がある」と答えた医師に、その理由を複数回答で聞いたところ、「新薬との効果・副作用の違い」が67.9%と最も多く、次いで「新薬との使用感の違い」が38.6%などとなりました。
 出席者からは、「多くの医師がジェネリックへの不安を払しょくできていないことが普及に向けた課題になっており、安全性などのさらなる情報提供が重要だ」といった意見が出されました。

まあ実際のところ効果の違いに関しては用量調節等で対応するにしても、副作用の出方が違うと言うのは非常に大きな問題で、長年にわたって何気なく継続処方していた薬が薬局の方でジェネリックに変えられた途端に副作用が出たとなれば、例え元々使っていた先発品には問題がないと思っていても処方変更せざるを得ないでしょうね。
こうした点では副作用などいざトラブルが起こった時のジェネリックメーカーの情報提供など対応ぶりに不満を抱いている先生も多いそうですが、ともかくも冒頭に紹介した記事で表向きの公定価格と実際の納入価格との差が先発品よりも後発品の方が約3倍も大きかったと言う調査結果を素直に見ると、「医者が儲けたいからジェネリックを拒否しているのだ」と言う説には少なくともあまり根拠がなさそうに思えます。
逆に価格と言う点だけでとにかく後発品を使えと言っているのは実は医療費の支払い側と呼ばれる保険者の方々であると言えそうなのですが、双方の認識の差と言うことに関して先日中医協でもこんなおもしろいやり取りがあったそうです。

後発品の銘柄指定が4割強、「異常事態」か?次回改定に向け診療側と支払側でバトル(2015年10月7日医療維新)

 10月7日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授長)で、医師の処方せんをめぐり、診療側と支払側が激しい応酬を繰り広げる場面があった。

 発端は、「2014年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査」の本報告。速報は今年3月に報告されたが(『後発薬普及するも「変更不可」が増加』を参照)、問題視されたのは、政府が後発医薬品の使用促進を進める中、「後発医薬品名で処方された医薬品」のうち、処方せんにおいて、「変更不可となっている医薬品」が前年度の22.8%から、44.8%に倍増した点。

 この数字について「はっきり言って、異常事態」と口火を切ったのは、健康保険組合連合会副会長の白川修二氏。「確かに医師には処方権があり、自身の判断で銘柄指定をする気持ちは分かるが、それが(在庫管理などの面で)薬局、卸にも影響を与える。後発医薬品の使用促進の阻害要因になる」と「変更不可」の処方せんの多さを問題視。その上で、「一般名処方を推奨したいと思うが、残念ながらまだ18%くらい。中医協で一般名処方をどのように促進していくべきかという観点から議論していくべきではないか」と提案した。

 この発言に対し、「どんな意味で異常事態なのか」と問い質したのは、日本医師会副会長の中川俊男氏。白川氏は、「中医協としては、一般名処方を進め、それをベースに薬局の方で、どの薬剤を選ぶかを、患者の体調を見て、相談して決めていこうという流れを想定している。この点から言えば、薬剤師が何を調剤すべきかを最後に決めるのがあるべき姿医師が後発医薬品の銘柄指定をするのは、薬剤師が患者と相談して調剤する権限を失うことであり、それは異常な事態」と回答。

 白川氏の回答に対し、中川氏は、医師の処方権と薬剤師の調剤権の相違から、反論。「患者の体調を診て処方するのは医師であり、後発医薬品なら何でもいいわけではなく、責任を持って後発医薬品の銘柄を指定している。服薬管理は医師の仕事」と述べ、薬剤師が「患者の体調を見て調剤する」のは、法的に問題があるとの趣旨で発言。また中川氏は、医師は、患者の病態を踏まえ先発医薬品を銘柄で処方している現実があるとし、「後発医薬品の使用促進に対する医師の理解は進んでおり、後発医薬品の中から、先発医薬品にできるだけ近い後発医薬品を選ぼうとしているのだと思う。それが(変更不可となった処方せんが)2倍になった一因になったと思う」との考えを述べた。

 その後、白川氏と中川氏の間で何度も、「複数の医療機関を受診した場合には、かかりつけ薬剤師が選ぶのは、当然のこと。そのために薬剤師がいるのだと思っている。医師の処方権と、薬剤師の調剤権は、独立してあるべきだと考え、だから医薬分業がある。医師が処方したものを、他の医療機関からの処方も見ながら、薬を選ぶのは薬剤師の責務」(白川氏)、「後発医薬品の変更不可とするのは、医師に処方権があるからだ。いくら国として後発医薬品を推進しても、処方の責任は医師にある。これを異常事態というから、それは違うと指摘した」(中川氏)などと、意見の応酬が続いた。
(略)

昨今議論になっている話題の一つとしてこの後発品の銘柄指定と言うことがありか無しかと言う話があって、一方ではブランドは違っても同じ薬として扱っているのだから後発品に銘柄指定はおかしいと言う考えも正論であるし、他方では効果や副作用等歴然と差はある以上指定は当然、後発品使用による医療費削減と言う趣旨には沿っているのだし何が問題?と言う考え方もあると思います。
ただここでの議論の背景として存在しているのがそもそも薬の選択は誰が行うべきなのか?と言う点だと思うのですが、実は後発品の選択は患者自身に委ねられている以上医師でも薬剤師でもなく患者に選択権があると言う考え方もある一方で、それでは医学的に間違った判断をしてしまうかも知れないから薬剤師という専門職が関与するのだと言うのが支払い側の立場であるようです。
実際に後発品がどれも同じであれば「薬を選ぶ」と言うのもおかしな話だし、薬剤師が専門知識の有無で患者よりも正しい薬を選べると言うのならそれらは同等の薬ではないと言う理屈になるはずですが、さらに話がややこしいのは患者が選ぼうが薬剤師が選ぼうが何かトラブルなりがあった時には必ず医師の元にやってくるし、下手をすれば「こんな薬を出しやがって!」と責任を負わされるのは医師であると言うことですよね。

この医療現場における諸行為の最終責任を負わされるのは結局医者であると言う構図は以前から問題視されていて、それがあるからこそ他人に仕事を任せず何でも自分で抱え込んでしまう先生もいらっしゃると言うことですが、冷静に考えてみると医師が責任を全て引き受けると言うのもおかしな話で、本来的に病院として組織として責任を取るのが筋であるはずです。
ただジェネリック問題でややこしいのは門前だろうが名目上は調剤薬局は病院とは別組織になっている以上、薬局で薬剤師がやった仕事の責任を医師だろうが病院だろうが赤の他人が負うのもおかしい話になると言う点で、結局のところこうした責任の所在が明確にされないまま処方権だ、調剤権だと権利権力ばかりがどんどん分散化されていっているのが一番の問題点なんだろうと思います。
もちろんその点で副作用を出したジェネリックメーカーに責任を負わせると言うのも正解ではなくて、本質的にはジェネリック使用促進を強要している国が最終責任を負うべき問題なんだろうと思うのですが、なんでも自分でしたがりな医師の我が儘と言う話で終わらせずに、この辺りの議論ももう少し煮詰めておいた方が現場の混乱も避け、国民にとっても安心感につながっていくんじゃないでしょうかね。

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コメント

素人の支払い側委員が医療の中身まで口出すべきじゃないと思いますけど。

投稿: ぽん太 | 2015年11月12日 (木) 07時58分

>「薬局の方で、どの薬剤を選ぶかを、患者の体調を見て、相談して決めていこう」
さらっとスゴいこと言ってますな。
この人の喘息にはこっちのツロブテロール貼付剤、その人にはそっちのツロブテロール貼付剤、と使い分けることができると?

投稿: JSJ | 2015年11月12日 (木) 08時00分

それができたらもはや違う薬w

投稿: | 2015年11月12日 (木) 08時46分

そこまで言うならひょっとして薬剤師出身かと思った健康保険組合連合会副会長。
経済出身のただの事務屋なんですね。
そら、素人が医療の中身にまで口出しするなって思いますわな。

投稿: | 2015年11月12日 (木) 09時08分

おはようございます.

「先発品とジェネリックとの違いによるトラブル」を,薬剤師が責任を持って対応してくれればいいのではないでしょうか?
たとえば
小児例において「味の違いのために服用できず,病状が悪化した」とか
外用剤において「肌触りの違いが気になって使用せず,病状が悪化した」とか「溶出,吸収の差によってよからぬことが起こった」とか.

滅多にないことなのでしょうが「薬剤師の判断で処方したジェネリックの,予期せぬ副作用」を医師が説明しなければならない,つうのが皆様嫌なのではないでしょうか?

投稿: 耳鼻科医 | 2015年11月12日 (木) 09時17分

様々な問題点や疑問を抱えるのはもちろんなのですが、それでもそうした素人が医療のあり方を決めている現実も無視すべきではないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月12日 (木) 10時34分

病院のあとで薬局までいくの面倒だから、院内処方でいいよ

投稿: | 2015年11月12日 (木) 13時03分

健保組合が薬剤を指定すればいい
医師、薬剤師は成分指定のみ
口を出すなら、リスク分散は必然

投稿: 非医師 | 2015年11月12日 (木) 17時32分

理念と現実の乖離はそう簡単に埋められませんよ仕方無い。
たとえば軍事のシビリアンコントロールだって、軍事のシロウトが上の立場でモノを決めるという意味だし。

投稿: | 2015年11月13日 (金) 10時26分

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