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2015年11月19日 (木)

医療現場はいよいよ8Kの時代に?

ノートPCでもXGA(1024×768)の解像度では手狭に感じられ始めたのもつい最近のことのように思っていましたが、近ごろの放送業界ではすでに4Kを通り越して8K(SHV:7680×4320)だと言っているのだそうで、かつての黎明期にマイコン(と言う言葉も死語ですが)やファミコンをRF接続していた時代にはテレビ=大画面だが低解像度と言う認識だったものが、今や大画面にふさわしい高解像度を備えるようになってきました。
ものによっては大きいことはよいことだとは必ずしも言えませんけれども、画像出力に関して言えば視力の衰えを自覚してくる年代ならずとも大画面で高解像度であることの恩恵は多々あるもので、先日は国がこうした画像技術の進歩を医療の面でも生かせるのではないかと言う報告書をまとめたと言います。

「8Kで革新的医療実現の可能性」の報告書(2015年11月15日NHK)

ICT=情報通信技術を医療などの分野で活用する方法を検討する厚生労働省と総務省の懇談会は、画質が鮮明な「8K」と呼ばれる映像技術を手術や診断に活用すれば、革新的な医療サービスが実現する可能性があるなどとする報告書をまとめました。

民間の有識者でつくる厚生労働省と総務省の懇談会は、ICT=情報通信技術を医療や介護などの分野で活用する方法の検討を進め、このほど報告書をまとめました。
それによりますと、今のハイビジョンよりも画質が鮮明な「8K」と呼ばれる映像技術を医療分野で活用すれば、革新的な医療サービスが実現する可能性があるとしています。
具体的には、内視鏡カメラとモニターに8Kが採用されれば、腹部を切り開いて直接患部を見ながら行う手術に限りなく近い高い精度で内視鏡手術ができ患者の負担が軽減されるとしているほか、常勤の医師がいない地域でも8Kによる遠隔画像診断を活用すれば、患者に移動の負担をかけずに精度の高い診断が可能になることが期待されるとしています。

一方、報告書は、普及に向けて機器の小型・軽量化や導入コストを抑えることが課題だと指摘しています。
この報告書を受けて、厚生労働省と総務省は、今後、実用化に向けた実証事業を進めることにしています。

まあしかし技術が進歩すればするだけ機械もよくなるし便利にもなるのでしょうが、その導入コストと言うことも考えなければならないわけで、こうも年々技術的進歩が続くと自前で高い機械を購入してもあっと言う間に旧世代機になってしまうと言うリスクもあるのでしょうか、お金がなく症例数も少なくて償還に時間のかかる施設にとっては痛し痒しなところもありますよね。
とはいえ内視鏡などは高画質化に伴い診断技術そのものも年々進歩してきていて、技術的進歩が結果的に治療にも少なからず影響を与えている代表例だと思いますが、ここで注目頂きたいのが取り上げられている「革新的な医療サービス」なるものの内容で、介護領域も含めていわゆる最先端技術的な部分以外にも応用が期待されていると言う点です。
特に「常勤の医師がいない地域でも8Kによる遠隔画像診断を活用すれば、患者に移動の負担をかけずに精度の高い診断が可能になることが期待される」と言う文言が気になるところですが、この遠隔診療と言うことに関してすでに実地臨床でスタートしていると言う記事が出ていましたので紹介してみましょう。

遠隔診療サービス「ポートメディカル」が始動!ネットだけで保険診療、診断から処方・投薬まで (2015年11月13日日経メディカル)

(略)
 ポートメディカルは、診断、処方、薬剤の配送までをインターネット上で手配できる遠隔診療サービス。診療の対象となるのは、血圧が高い人や尿酸値が高い人、コレステロール値が高い人など10カテゴリーとなります。

 例えば、高血圧の人の診療は以下の通り。まず、高血圧の可能性がある人や診断を受けた人が、お薬手帳や健康診断書、家庭血圧のデータなど血圧が分かるものを写真で送信します。提携医師がそのデータを見て高血圧であると判断すれば、改善のアドバイスをメッセージで送信し、同時に適切な薬剤を処方します。写真の送信やメッセージのやりとりは、LINEやFacebook、メールなどの中から自分が使いやすいものを選択可能。気になることがあれば、医師とメッセージをやりとりし、質問や相談を行えます。薬剤は院内処方後に郵送する形を取り、クレジットカード決済が完了すれば数日で配送されるといいます。

 患者がポートメディカルを使うメリットとして両氏は、(1)交通費や待ち時間が掛からないこと、(2)医師と対面ではないので相談しやすいこと、(3)本人が慣れ親しんでいるツールでサービスを利用できることを挙げます。また五十嵐氏は、日頃の診療の実感として、患者の治療継続にも寄与できると考えています。「高血圧や脂質異常症は自覚症状もほとんどないので通院を継続するモチベーションが低くなりがち。多忙などを理由に、手元の薬剤がなくなってもすぐには医療機関に来れないことが多い。しかしこれが続いてコントロール不良になれば心筋梗塞や脳卒中などの重大疾患につながりかねない。通院の負担が減ることには大きな意味がある」(五十嵐氏)。

 春日氏と五十嵐氏がこのサービスを始めたきっかけは、今年8月に厚生労働省が出した遠隔診療に関する通知でした(厚労省、「遠隔診療」の解釈を明確化)。厚労省はこの通知によって、遠隔診療の対象を、離島やへき地の患者に限る必要がないことを明確化。さらに、1997年に出された遠隔診療通知の留意事項で「遠隔診療の対象と内容」を表で示していましたが、これはあくまで例示であるとし、別表に示した対象と内容以外でも認められるとしました。さらに、同じく1997年の通知では「診療は、医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本である」とされていましたが、患者側の利点を十分勘案した上であれば「直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない」と明記しました。

 メディア事業を手掛ける春日氏は、「一般の人向けに医療やヘルスケアの情報を流すだけでは情報の非対称性は埋まらない。ウェブ上で診療までできるサービスが必要だ」と考えていました。そんな春日氏に、たまたま五十嵐氏が遠隔医療の話をしたことから話が進み、通知からたった3カ月で、サービスインが実現できたのだとか。

 五十嵐氏によれば、「遠隔診療はまだほとんど開拓されていない分野で、どこまでできるかがまだ不明確。そのため、当初は健診などの数値があればある程度症状が把握できる疾患に絞って10カテゴリーとした。サービスの対象外になる相談や重症の人には、医療機関の受診を勧める」そうです。当初は自由診療に当たる内容だけで始めようと考えたと言いますが、「遠隔診療に挑戦するという意味でも高血圧症や高尿酸血症など保険診療の対象となる内容も含めることを決めた」(五十嵐氏)と話します。

 ただし、遠隔診療では厚生労働大臣が定める疾患(高血圧性疾患、糖尿病、脳血管疾患、虚血性心疾患、喘息、胃炎など)を主病とする外来患者が療養上の指導を受けたときに請求される「特定疾患療養管理料」(診療所であれば1回当たり225点)や「外来管理加算」(52点)を算定できません。これは医師にとってはデメリットとも言えますが、五十嵐氏は「同時に保険者にとってはメリットになる。治療を継続させられる上に医療費も少し安くなるということで、保険者への訴求もしていきたい」と語りました。

記事中にもある今年8月10日に厚労省から出された「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」なる通知も参照頂きたいのですが、何であれ何かしらあれば監督省庁の責任を世間的にも云々されるこの時代にあって妙に緩い解釈を出して来たものだなと言う違和感を抱く話に思っておりましたら、どうやらその鍵となるのは今回の記事の末尾の「保険者にとってはメリット」と言う一文あたりにありそうですね。
医療費を巡っては常にお金を出す国や保険者と診療側、そして患者側の立場が対立していて、とかく安上がりで医療リソースを消費しないと言う点から近年処方薬の市販化(OTC薬)などが進められている一方で、怪しげなネット通販で買い入れたやせ薬やカラーコンタクトによる健康被害も後を絶たず、「やはり医師ら専門職が対応しなければ」と言う声も根強くあるわけです。
この点ではネット上での診療にどの程度の確実性があるのかと言う疑問は残るものの、専門職によるチェックと患者にとっての利便性、そして医療費削減と言う国や保険者との要望をそれなりにバランスさせた折衷案とも言えるし、目立ったトラブルなく行えるのであれば面白い試みになりそうには感じます。

ちなみに医師の側からの目線で見ると診療報酬上は管理料が取れないと言うことで一見すると収入は低くなりますが、昨今新規開業はよほどの軽装でなければ黒字化出来ないと言うほど初期投資が高くなってきているのに対して、この場合は自宅の一室でも診療が可能なのですから低コストで利益率は高いと見込めるのでしょうか。
もちろん何かあった場合どのように対応が出来るのかで、一般の診療であれば問題があればかかりつけに受診するのですがこの場合かかりつけがはるか遠方と言う可能性もあり、いざと言う時の診療情報提供のやり方をどうするのかと言うことを考えると、可能であれば近隣の医療機関との連携と言う形を取るのが理想的なのかも知れません。
そう言う観点からすると患者の実在性を担保する意味でも、初診から顔の見えない遠隔診療に入るよりは状態がある程度安定してからの逆紹介先として活用する方がリスクも低く利便性も高いと思われますし、この夏の中医協では反対意見が多かったと言うリフィル処方箋の代用的な位置づけと言うのが無難なのかも知れませんね。

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コメント

8Kってそういう意味なのねw

投稿: | 2015年11月19日 (木) 07時44分

機材の導入コストをどうやって負担するかですね。
診療報酬で優遇するのも支払い側の同意が得られるかどうか。

投稿: ぽん太 | 2015年11月19日 (木) 08時42分

今は診療報酬引き下げしろですから、技術が進んでいっても買い換え時期までは
新機種は無理だろうし(そこまではいらんと、逆に旧機種が下がるのでそっちになるか?)、
恩恵はなかなか受けられないでしょうね。

遠隔診療の記事でも、医師側にはデメリットだけど保険者にはメリットとなるから
保険者に訴求もしていきたいって、WIN-WINもしくは、WINじゃないけど損はしないって
いうポイントを狙わないとダメなんじゃない?発想がおかしいですよね。

投稿: | 2015年11月19日 (木) 09時08分

8ミリビデオやDVビデオの時代に比べると、fullHDビデオや4Kビデオは猛烈にバッテリー持続時間が短くなりました。
技術は進歩しても、省電力は退化している。
パソコンだって昔は遅かったけど、巨大ヒートシンクなど不要だった。
ゲームマシンも高性能になるほど起動が遅くなっている。ファミコンは一瞬だった。
8Kではもっと事態が悪化するんだろうな。

投稿: | 2015年11月19日 (木) 10時38分

個人情報管理の徹底で、せっかく集めた医療データも以前より利用しにくくなってきているとも言えますね。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月19日 (木) 11時21分

バカバカしいのは保険者の連中は
「医療費を引き下げろ=医師は麦を食え」って言うくせに
自分たちのレーバーコストを引き下げますなんて事は
口が腐っても言わないどころか、ポーズすら取らない点

投稿: | 2015年11月19日 (木) 14時10分

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