« 10月1日は何の日でしょう? | トップページ | ピラミッド、崩壊 »

2015年10月 2日 (金)

トラックもバスも大変なんだそうです

t日本全国どこも人手不足と言うのは労働者にとってはよいことなんだろうとも思うのですが、かねて人材不足が慢性化してきている運送業界においては非常に危機的な状況なのだそうで、先日もこんな記事が出ていました。

深刻な人手不足と価格競争の末にシステムが崩壊した宅配便(2015年9月25日NEWSポストセブン)

(略)
 朝、ネットで注文した品がその日のうちに届き、荷物だけ先に送って旅にも出られる。そんな便利さは全国に張り巡らされた宅配便網があってこそ。身近に利用しつつ、ふだん気に留めていない宅配便のシステムのブラックボックスに横田さんは入り込み、その内側を見せてくれる。
「メール便を含むと宅配市場は年間90億個もあり、それだけ便利になったということですが、裏では泣きながら働いている人もいます。もともと内側が書かれることの少ない業界で、書かれたとしても経営の光の部分だけだったり。それで、影の部分も書いてみようと思いました」

 現場の空気を知るため、下請け業者の軽トラックや長距離幹線輸送のトラックの助手席に乗せてもらい、荷物を仕分けする基地にも潜入した。
「今回は潜入取材をするつもりはなかったんですけど、ヤマト運輸がなかなか取材を受けてくれなくて。万策つきたときに、10年以上前にアマゾン取材で使った手法をやってみることにしたんです」
 羽田にあるヤマトの最新物流基地のアルバイトに応募、駅前のビジネスホテルに泊まって1か月間の苛酷な夜間勤務を経験した。佐川急便でも同様に朝まで働いている。
「働いているときは平気だったんですが、取材が終わるとどうにも体調が悪くて。胃腸も悪くない、鬱でもなく、睡眠障害という結論に。今も時々、不眠でぼうっとします。潜入取材というのは30代ぐらいまでの若い人がやるもんですね(笑い)」

 かつて、「仕事はきついが、佐川で3年働けば家が建つ」と言われたが、それは1990年代までの話だという。今は給与も抑えられ、人出不足が慢性化している。その裏には、送料値下げの価格競争がある。
「アマゾンが日本に進出するとき、本は値引きができないから代わりに送料無料というのをやったんです。日本人は何でも、『全部込み』っていうのがわかりやすくて好きですけど、『送料無料』をうたう商品の価格に送料は転嫁されますし、宅配業者に払う送料も低く抑えられています
 価格競争に耐えかね、佐川急便がアマゾンとの取引から撤退していた、というのも知らなかった。リアルな商品を選ぶときは「安かろう悪かろう」という感覚があるのに、送料に関しては平気で「無料」を選んでしまう。だが、「無料」のつけは、確実に誰かに回されるのだ。
「日本の宅配は誤配も少なく、世界的にも非常に高いレベルなのに、インフラは脆弱でもろいことがよくわかりました。人手不足は深刻で、このままいけばシステムが崩壊し、ある日突然、宅配便が届かなくなる、ということにもなりかねません」

この佐川急便がamazonと手を切ったと言うニュースに関しては以前にも取り上げたことがありますが、もともと荷主の都合に振り回されて料金や配送スケジュールで無理を強いられてきた運送業界にとって、これ以上割に合わない仕事を引き受ける余力はないと言うことで、特にamazonの場合その要求が度を超してひどかったとか、新たに引受先になるライバル企業に時限爆弾を仕掛けた言う声まであるようです。
運転免許の制度が改定されたこともあって大型車を運転できるドライバーはどこでも希少価値が上がってきている上に、仕事はきつくなる一方にも関わらず給料は上がるどころか下がっていくと言うのでは割のいい仕事ではなくなったと言うことでしょう、有資格者は少なくないのに現場を離れていく人間が増えた結果仕事が回らなくなったと言うのはどこかの業界でも聞いた話ですよね。
物流崩壊の危機も叫ばれる状況にあって、大手を中心にようやく荷主と交渉し賃上げを進めようと言う動きもあるようですが、昨今これも問題になっているのがひと頃から大きな事故発生によって無理な運行ぶりが知られるようになった結果、法的規制が強化された大型バス業界の「適正化」がもたらした予想外の社会的影響だと言います

大型バス「値上げ」で噴出した、予想外の悲鳴(2015年9月27日東洋経済)

国の安全対策強化で貸し切りバスの運賃が値上がりし、修学旅行や部活動遠征に影響が出ている。積み立てていた資金が足りず、追加徴収したり、コースを変更したり対応に腐心している。
秋の行楽シーズンの日帰りツアーでも、旅行会社や観光地が集客減など打撃を受け悲鳴を上げる一方、バス業界は過剰な価格競争の歯止めに一服し、安全コストへの理解を求めている

修学旅行も「有料施設には立ち寄れない」

佐賀市のある中学校は、来春の修学旅行の計画変更を余儀なくされている。当初は広島-松山-大分を巡る行程でバス代は3台、31万円と試算していた。運賃改定により43万円と4割近く上がり、2年前からの積立金では不足することに。旅費を追加徴収したり、立ち寄り先を減らしたりして補った。
担当教諭は「入場料の高い水族館をコースから外すなど工夫したが、それでも資金が足りなかった」と吐露する。「修学旅行なので教育的効果がなければいけないが、資金面を考えると有料施設に立ち寄れない」と内情を明かす。
学校の部活動にもしわ寄せがきている。佐賀市のある中学校では、中体連など規模が大きい大会はPTAなどから補助が出るが、練習試合の遠征費は保護者の積立などで賄っている。運動部を統括する顧問教諭は「貸し切りバスを借りられず、自転車で会場に向かわせたり、保護者の車で送迎したりしている」と現状を語る。

観光地もツアー行程から外される例が出ており、思わぬ余波に戸惑いを隠せない
吉野ケ里歴史公園では小中学校や高校の修学旅行が減少傾向にある。観光客対応の担当者は「少子化や学校の統廃合など複合的な要因で団体客が減っている。貸し切りバスの運賃改定の影響も原因の一つ」とみる。
県外も同様で、多くの修学旅行生や観光客で賑わう大分県の水族館うみたまごは「全体の入場者数は変わらないが、貸し切りバスの団体客は減っている。旅は安全が第一だが、運賃値上げは観光地には痛い」と漏らす。

世界遺産登録でも、ツアー申し込みは減少

秋の大型連休に、県内の旅行会社の表情も渋い。佐賀市の旅行代理店支店長は「修学旅行や部活などの学校関係だけでなく、日帰りツアーや会社の社員旅行などに影響が出ている」と危機感を見せる。
県外旅行者向けで佐賀市の三重津海軍所跡と佐賀城本丸歴史館を巡る日帰りツアーは昨年と比べ旅行代が3~4割アップした。7月の世界遺産登録で弾みをつけたいところだったが、「昨年よりも申し込みが減少傾向にある」とこぼす。業者の一人は「国が値上がりした運賃を補助する方策などを打ち出してくれなければ、中小・零細の旅行会社は持ちこたえられない」と悲鳴を上げる。
県内の貸し切りバス業者は際限ない価格競争に歯止めがかかったことに安堵している。県内業者の観光課営業主任は「修学旅行など大切なイベントに影響が出るのは申し訳なく思うが、安全を保つにはコストがかかることも理解してほしい」と話す。

元を辿れば2012年の関越道バス事故を契機に安全に関わる問題だと言う認識が高まり、2014年の運賃制度改正で値下げの制限や罰則強化などが為された結果だと言うのですが、安全はタダではないのは当然だ、安全のためには多少のコスト負担は仕方ないと頭では理解出来ていても、現実的に日常のあちこちでその影響が見えてくると気になるものですよね。
実際に運賃値上げによる影響がどの程度のものなのか、消費税引き上げによる消費低迷などと同様いずれ回復が見込まれるのか等々もうしばらくはその経過を見ていく必要もあるのだと思いますが、せっかく観光立国日本で外国人観光客も増えてきている中でこうした傾向がいいのか悪いのかですが、観光地にとっては泣くに泣けない話でしょうし、ひいては地域経済にも悪影響がありそうですよね。
それでもさすがに「バス会社がコストをかぶってでも値下げすべきだ」と言う声は、少なくともあまり表立っては出てきていないらしいことは救われるところで、バスなど安くていつでも利用出来るのが当たり前だと思い込んでいたのだとすれば、本来的に無理な価格設定を前提にした旅行計画をこの機会に見直すと言うことも悪くはないことなのかも知れません。

トラックにしろバスにしろ共通するのは一定のスキルなり資格なりが必要な職種であり、新規参入に対して一定のハードルがあると言う意味では本来売り手市場になりやすいはずだと思うのですが、今までは買い手側の事情が優先され利用は増えるが利益にはつながらず、むしろただ働きめいた仕事を強いられ肝心の有資格者の離職すら招いてきたと言う点で、医療などとも共通する問題点が浮かび上がってきます。
そしてこれまた医療同様、このままでは崩壊すると言う危機感が顕在化してきて初めて是正が図られるようになってきたとも言えるかと思いますが、医療にしろ運送にしろ生きている限り誰でも利用せずにはいられないインフラと言っていい産業であり、その崩壊は結局国民にとっての不利益であるとも言えますよね。
その点で不要不急の時間外受診を減らしましょうだとか、配送コストも妥当な料金はちゃんと負担しましょうだとか言った認識が徐々にでも広まってくれば望ましい話ですが、そうは言っても「配送料無料」と言われれば何とはなしに得した気分になるのが人情と言うものですし、具合が悪い時にも診察は予約制で一週間先ですと言うよりは今すぐ診てくれる方がうれしいですよね。
一般的にこうした場合付加価値に対しては希望して利用する側が余分なコストを負担すると言うのが普通の考え方だと思うのですが、不要不急の時間外受診に対する割り増し負担金なども必要性を求める現場の声が高まり、国が制度として認めてからもなかなか普及が進まなかったことを考えると、運送業界なども自然発生的に状況の改善を期待するのはなかなか難しいのかなと言う気はしますでしょうか。

|

« 10月1日は何の日でしょう? | トップページ | ピラミッド、崩壊 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

ウンチン値上げと聞いて大笑いしてた子供時代……

投稿: | 2015年10月 2日 (金) 08時12分

>貸し切りバスを借りられず、自転車で会場に向かわせたり、

自転車で行けるような距離を、貸し切りバスで行こうとする感覚がわからん。

投稿: | 2015年10月 2日 (金) 09時36分

正直何が問題なのか分かりません。需給で価格が決まる(賃金変動もある程度、求人倍率等需給で生じる)だけの話です。「送料無料」って、送料込みの価格なだけで、本当に無料で配達している訳じゃないし、こじつけのしょうもない記事です。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年10月 2日 (金) 10時02分

受給バランスの崩壊に至りつつあるのは確かなので、業界は問題意識を持っているのであれば売り手市場のうちに要求を出すべきかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年10月 2日 (金) 12時18分

リアル店舗で買えばまとめて配送できてたものを、流通拠点から各自の自宅まで1点ずつ運ばせるんじゃ、流通のインフラは足りなくなって当然だろうなー

投稿: | 2015年10月 2日 (金) 12時59分

アマゾン社員「退職を事実上強要された」 救済申し立て
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151002-00000013-asahi-soci

さすがアマゾンやることがエゲツないわなw

投稿: | 2015年10月 2日 (金) 13時52分

「需給で価格が決まるだけ」がどれだけヤバイか
わかってないやつがいるな。フリーターだものな。

投稿: | 2015年10月 2日 (金) 14時02分

需要曲線と供給曲線は交わるとか限らない

投稿: | 2015年10月 2日 (金) 17時11分

http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20151002004508_comm.jpg

宅配便の取扱量が増えるなか、受取人の留守で2割が再配達となっている。輸送トラックの排ガスが増えることや運転手不足への懸念が浮上し、国が対策に乗り出した。

宅配業者は新たな受け取り拠点をつくるなど、サービスを広げて効率的な配達を図っている。

 「また間に合わなかったか……」。東京都内に住む出版会社勤務の女性(30)は7月、マンションの郵便受けに入っていた不在票を見て肩を落とした。

 静岡県の母親から菓子が送られてきたが、仕事で不在だった。再配達を依頼したが、帰宅が間に合わなかった。宅配ボックスのないマンションに移って再配達の依頼が増えている。

http://www.asahi.com/articles/ASHB25H16HB2UTIL03G.html

投稿: | 2015年10月 3日 (土) 06時06分

再配達がなければコンビニの取り置きにすればいいじゃない。

投稿: | 2015年10月 3日 (土) 07時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/62376195

この記事へのトラックバック一覧です: トラックもバスも大変なんだそうです:

« 10月1日は何の日でしょう? | トップページ | ピラミッド、崩壊 »