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2015年10月14日 (水)

看護師業務拡大にあたってちゃんと研修をするよう厚労省が求める

「トイレに行った後は手を洗いましょう」と言う張り紙を見ていつも微妙な気持ちになるのですが、当たり前と思えるようなことであっても、わざわざ「ちゃんとやりなさい」などと言われると「え?もしかしてやってない人もいるのか?」と妙に不安になるもので、実際に先日トイレで用足しをした後そのまま何事もなかったかのように出て行く人を目撃して、思わずドアノブに消毒液をまいてしまいました(別に潔癖症ではありませんが)。
先日厚労相から出たこちらの通知もそうした余計な不安を招きかねない「蛇足」のようにも感じられるのですが、わざわざこうして通知が出てくると言うことはぶっつけ本番でやらせている施設もあるのか?などと、医療業界はまたしても世間から痛くもないはずの腹を探られることになるのでしょうか。

難易度高い診療の補助、「研修の努力を」- 厚労省が医療機関に呼び掛け(2015年10月8日CBニュース)

 医師の指示の下、看護師が気管へのチューブの挿管や抜管など難易度の高い診療の補助を行うことについて、厚生労働省は医療機関などに、できる限り事前研修の実施を求める通知を出した。【松村秀士】

 今月から、医師の指示がなくても看護師が手順書に従って特定の診療の補助(特定行為)を行う場合、事前に研修の受講が義務付けられる制度がスタートした。

 通知は、この制度の導入を踏まえて発出されたもので、特定行為に該当しないが、技術的に難易度の高い診療の補助についても医療安全の観点から、「研修を実施するよう努めること」としている。

 通知では、研修の対象となる診療の補助として、▽経口・経鼻気管チューブの挿管と抜管▽直腸内圧測定▽膀胱内圧測定▽褥瘡または慢性創傷における血管結さつによる止血―を列挙。医療機関に対し、看護師が研修を受ける機会を確保できるよう配慮すべきとも指摘している。

 特定行為に該当しない診療の補助については、看護師が医師の直接的な指示の下で実施することは可能だが、事前の研修は義務付けられていない

今までやっていない上に今まで以上に侵襲的な行為にまで手を出す以上それは当たり前ではないかと思いますが、しかし研修医の臨床研修のあり方に確固たるフォーマットが存在しないことを考えると、この場合の研修のあり方にも各施設の考え方が反映されたものになるのでしょうか、どのようなスタイルになるか効果とあわせて比較検討してみると面白いかも知れませんね。
この種のもので今現在先行する研修モデルとして救命救急士の研修があって、平成16年から全国で気管内挿管等のトレーニングが行われていますけれども、10年経った今でもこれに批判的な方々の意見は大きく二つに分かれているようで、一つはそもそもそれが十分可能なのか、そんなことをやっている暇があればさっさと病院に運ぶべきだと言う声であり、これに対しては今後データを元に損得を議論していく必要がありそうです。
一方でどんなベテラン麻酔科医でも誤挿管や合併症のリスクはある以上、いつか必ず起こるはずの「何かあった時」に果たして誰が責任を取るのか(と言うよりも、医者に責任だけ負わせるな)と言う声に対しては、幸いにも消防救急と言うのは非常に縦割りの組織になっているようですから、万一患者家族から訴えられるような場合でもむしろ病院内よりもきっちり組織として対応するのではないかと言う気がします。
そう考えると今回の看護師の業務拡大においても個人のスキルがどうかと言う問題もさることながら、いざと言う時に業務を命じた施設としてどれだけ責任を引き受けられるかと言うところがポイントになりそうですが、先日行われた医師ら当事者に対するアンケートを見ますと、意外と現場の医師の方が業務権限の委譲に対して積極的であるようにも思われるのが興味深いところです。

「医師の独占の時代終わった」「お医者さんごっこ」看護師よりも医師が診療の補助拡大に前向き(2015年10月4日医療維新)

Q.7 ご自身は、看護師の「診療の補助」の種類を増やすべきだとお考えでしょうか。

 病院勤務の医師と看護師に対して、看護師の「診療の補助」を増やすべきか否か、個人としての意見を伺った。医師は賛成が50.6%、反対が49.3%でほぼ拮抗しているのに対し、看護師は60.9%が反対で、診療の補助拡大に関して、医師よりも看護師の方が消極的な意見が多かった。
 医師と看護師、それぞれの意見を2回に分けて紹介する。今回紹介するのは、医師の賛成と反対の理由。賛成意見では、医師不足や過剰な業務の負担改善につなげたいという期待が多かった。一方で、反対意見ではトラブルが起きた時の責任問題にまつわる不安などが理由に挙がった。
(略)

賛否両論における個別の理由については元記事を参照いただきたいと思いますが、現場が多忙だからこそ手伝って欲しい、あるいは逆に仕事を増やすべきではないと言った現実的な意見もさることながら、やはり実際問題として出来るのかどうか?と言う不安と、何かあったときの責任のありようと言うものはここでも大きなテーマになっているように思います。
ちなみに看護婦の出来が悪いから不安だと言う意見が一定数あるのですが、興味深いのは医師にしてもいわゆる底辺と言われる医学部を留年しながら何とか卒業し、国試浪人を繰り返した挙げ句にやっと医師になったような出来ない先生と言うのは一定数いるはずなんですが、そうした方々がいるから若い医師に○○をさせるのは不安だと言う上司はあまり見たことがなくて、大抵はどうやってこいつらを一人前にするか頭を悩ましているものですよね。
そう考えると本当に問題なのは能力云々と言うよりも、色々と手を掛けて看護師を育てたところで医師になるわけではないと言う問題に尽きるんじゃないかと言う気もするのですが、ちょうど今の臨床研修制度が導入された時にも今までのストレート研修に比べて、育てたところで自分の後輩として後を継いでくれるわけでもない一見さんのセンセイの教育にどれだけ情熱を注ぐべきなのかと言う議論があったことを思い出します。

結局は熱心に教育すれば同じ医局に入局したりだとか、そのまま病院に居着いてくれると言うことが理解されるようになってきたせいでしょうか、今はあからさまに手抜き研修をする施設もずいぶんと減ったと思いますけれども、仮にそうした施設が残っていたとしてもこの時代口コミで情報はあっと言う間に広まりますから、次第に研修医も集まらなくなり結局先細りになっていくことは目に見えていますよね。
その点では看護師教育なども恐らく全く同様の状況はあるはずなので、特にもともとが医師と比べて離職率の高い職業である以上何かあればあっと言う間に逃散が発生する可能性も高いはずですが、スキルアップ出来ると思ってきたのにまともに教えてくれないと言うことにでもなれば、それはやる気のある看護師ほどさっさと他所に行こうと考えるのも仕方がないのかなと言う気がします。
逆に言えばろくでもない看護師、他ではどこも通用しないような看護師ばかりを集めたい施設ほどこうした研修は手を抜いて、形ばかりで済ませておくべきなんだろうと思うのですが、一時的には面倒くさいことも減って楽でいいようにも思える行為の結果が後々どうなってくるのかと言うことは、制度の定着した後で再評価していく必要があるんだと思いますね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

看護師が挿管もできるようになるのか
夜中に急変しても任せて安心だね(棒

投稿: | 2015年10月14日 (水) 07時47分

看護師ってレントゲンの指示や撮影ってできましたっけ?
一人で挿管できても確認できなきゃ意味ないような。

投稿: ぽん太 | 2015年10月14日 (水) 08時29分

看護師が当直をやってくれると助かりますねえ・・・というのは冗談として、

>医学部を留年しながら何とか卒業し、国試浪人を繰り返した挙げ句にやっと医師になったような出来ない先生
経験上、そういう先生が必ずしも医師としての能力が低いとは限らないのが面白いところで。

投稿: クマ | 2015年10月14日 (水) 09時43分

給料増えなきゃ看護師もやりたがらないでしょう
まぁ医療費がヤバいので他の職種の移転などはこれからどんどん起きるでしょうね

投稿: | 2015年10月14日 (水) 13時03分

医療費の自己負担が増えるにつれ、安くあげられるという選択肢がそれなりに意味を持って来るのかもしれません。

投稿: 管理人nobu | 2015年10月14日 (水) 17時51分

看護師の業務拡大するくらいなら、放射線技師、臨床検査技師達に点滴確保、薬剤注入が出来るようにしてもらいたいですね。

投稿: 通りすがり | 2015年10月15日 (木) 07時00分


多分他の医療職種もどんどん業務拡大していくと思いますよ。
医師会は当然反対するでしょうがそれよりも医療費膨張とそれを是正する圧力
のが強いのでそうなるかと

投稿: | 2015年10月15日 (木) 13時21分

救命士による気管挿管はしない方が良い、とLANCETに論文として載りました。これで意見が割れているというのは、科学者ではありません。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年10月16日 (金) 10時32分

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