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2015年10月15日 (木)

社会保障抑制に財務省が大なたを振るう

先日は史上初めて医療費が40兆円を超えたと言う報道があって、マスコミ各社もいよいよ給付抑制に対して今までのような批判的立場は取りづらくなってきたのではないかと思いますが、財務省筋からはこのところ立て続けに給付抑制策が打ち出されてきているようです。

介護利用者の負担2割に引き上げ 財務省が社会保障改革案(2015年10月9日47ニュース)

 財務省は9日、財政制度等審議会の分科会に中期的な社会保障改革案を示した。原則1割となっている介護保険サービス利用者の負担割合を年齢別に段階的に上げ、2割にするよう提案。日常的な診療を担う「かかりつけ医」以外で受診した外来患者に、定額の上乗せ負担を求めるとした。高齢化で膨らみ続ける公費支出を抑える狙いだ。

 財務省は今年の骨太方針を具体化する政策として、経済財政諮問会議の専門調査会が検討中の改革工程表に盛り込むよう求める。ただ、高齢者らの家計を圧迫するとの反対は確実で、政府内の議論の行方は未知数だ。

財務省:「外来時定額負担」導入など社会保障制度改革案(2015年10月09日毎日新聞)

 財務省は9日、2020年度までの財政健全化計画の期間中に実施すべき社会保障制度改革案を固めた。症状が軽い患者の過剰受診を減らすため、かかりつけ医以外の診察を受ける場合、定額の上乗せ負担を求める「外来時定額負担」の導入などを提唱した。
 経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)が年末までにまとめる改革工程表に反映させ、必要な法改正を進めたい考え。だが、外来時定額負担は過去にも検討されたが、日本医師会などが「本来必要な受診まで妨げてしまう」と反対し、断念した経緯がある。今回も難航が予想される。

 財務省は9日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会に改革案を提案し、大筋で了承を得た。
 外来時定額負担は、財政難の中、限られた財源を症状が重い患者に振り向けるため、市販薬で対応できるような初期の風邪で受診したり、日常的に複数の医師を受診したりする行為を抑制するもの。医療保険に基づく定率の負担に加え、少額の定額負担を求める。
(略)
 介護保険を巡っては原則1割となっている利用者負担の2割への引き上げや、軽度者に対する掃除などの生活援助の原則自己負担化も求める。現役世代並みの所得がある高齢者には、基礎年金のうち国庫負担分(税金で賄われている部分)の給付を停止することも求めた。
(略)
 ◇財務省の社会保障制度改革案

 外来時定額負担の実現に向けた検討開始
 高額療養費制度での高齢者の外来特例措置を廃止
 介護保険の利用者負担を原則1割から2割に引き上げ
 介護保険軽度者の生活援助や福祉用具貸与を原則自己負担化
 市販品類似薬の保険給付見直し
 年金支給開始年齢の更なる引き上げ
 理由なく就労などを拒む生活保護受給者に対し保護停止などを可能に
 マイナンバー活用による金融資産保有状況も踏まえた医療保険、介護保険の負担のあり方を検討

この「高齢者らの家計を圧迫するとの反対は確実」と言う定番の文句がなかなかくせ者なんですが、そもそも現在の社会保障給付が高齢者に対して非常に有利に設計される一方、現役世代には高負担低給付で「元が取れない」ようになっていることも非常に大きな問題で、ワープア化著しい若年世帯にとっては「何故高度成長やバブルで散々儲けてきた年寄りの老後の面倒までみなければならない?」と言う不満があるわけです。
その是正にと保険料を引き上げたところで主に現役世代が負担しているわけですからあまり意味がなく、それなら利用者負担になる自己負担分を増やそうと言う考え方はまあ理解出来るのですが、ともすれば近年不要不急の過剰受診が問題となっている医療であれば窓口負担引き上げは受診抑制に働き合目的的である一方で、介護サービス利用がそれほど過剰だと言う話もあまり聞きませんよね。
一例として最近では高齢者のデイサービスと称してパチンコやマージャンばかりやらせている施設が注目されていて、制度の趣旨に反するとして行政も対策に乗り出しつつあるようですが、認知症老人を抱える家族にしてみればパチンコをやろうがお遊戯をやろうが一日預かってもらって手間がかからなければそれで十分と言う考え方もあって、遊行業紛いのものは規制すると言う方針が良いのか悪いのか微妙なところもあります。
逆に本格的な介護サービスとなると人手不足で過剰と言えるほどサービスを受けられる状況になく、そうした点で純粋に高齢者負担をより多くと言う意外の意味合いはあまり期待出来なさそうにはないのですが、コスト抑制と言う点ではむしろ注目されるのが「かかりつけ医以外で受診した外来患者に、定額の上乗せ負担を求める」と言う話の方でしょう。

基礎疾患多数を抱える高齢者の場合複数の専門医をかけ持ちするのは当たり前で、医学的に必要な受診に関してどこまで抑制すべきなのか難しいところがあるのですが、一般論としては多くの基礎疾患は安定期に入ればルーチンの検査項目をチェックしていくことでかかりつけ医でも対応できるはずですし、昨今の総合診療医養成を云々と言う文脈からもそうした医療が求められていることは明白です。
一方でしばしば目にするのが高齢者に限らず、他院でかかっているにも関わらず飛び込みで別な医療機関を受診し「詳しく調べて欲しい」と言うタイプの方々ですが、こうした患者の場合多くはいわゆるドクターショッピング傾向を持っていたり、前医に対するなにがしかの不信感を抱えている方々が多いようで、通常の診療では行わないレベルまで色々と検査をしていくことを希望されたりしがちですよね。
こうしたケースでもかかりつけからの診療情報提供があればずいぶんと医療資源を節約出来るのに…と考えている先生方も多いと思うのですが、将来的に医療情報がマイナンバーに従って一元管理され、地域内の医療機関で検査結果などが共有されるようになるまでは二度手間、三度手間が避けられず、各地の医療機関で何度も無駄な検査が繰り返されることは避けられそうにありません。
ちなみに患者の要望で検査等を行う場合には医学的必要性に基づいて行うものでない限り、人間ドック等と同様に全額自費負担が原則になるはずですが、そこでついつい仏心を出して保険病名を羅列しながら保険診療でやってしまうべきなのかどうかは難しい判断になるもので、制度的にこうした患者を抑制してくれると言うことであれば現場の面倒は多少は減ってくるのかも知れませんけれどもね。

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コメント

基礎疾患なしで飛び込み救急受診を繰り返す人はどんどん高くなるとか。
ごくごく一部の人たちのモラルが問題な気がします。

投稿: ぽん太 | 2015年10月15日 (木) 07時58分

>基礎年金のうち国庫負担分(税金で賄われている部分)の給付を停止

所得の高い高齢者の自己負担を増やすのは、ある程度理解されると思うのだが、
年金給付を減らされるっていうのはおかしいでしょう?
ただでさえ年金については国に騙されたって思っている人が大半なんだから、
不払いがますます加速するよね。

財務省の人たちって、そこら辺の一般常識的感覚が全くないのでしょうね。

投稿: | 2015年10月15日 (木) 08時50分

年金の負担と給付のバランスシートをみますと高齢者では給付が上回り、若年世代になるほど負担が上回ると言う不均衡がありますから、前者の給付を減らすか後者の負担を減らすと言うのはバランス改善にはなりそうです。
ただ一般にこれこれの条件でやりますと言う約束の下に行っている契約行為で、特にほぼ義務的に契約を強いられている中で後出しで条件を変更すると言うのは、一般的には忌避されるところではありますね。
逆に言えばそうした行為は許されないで受給者世代の既得権益が温存されてきた結果、年々現役世代の収支バランスが悪化してきているとも言えるのですが、

投稿: 管理人nobu | 2015年10月15日 (木) 11時01分

うそつきは泥棒の始まりなどと子供に教えて来たわけだから、約束を反故にする行為に反対があっても表立って批判しにくいんだよね。
ましてほぼ義務的に契約を強いたシステムでもあったわけで。

投稿: | 2015年10月15日 (木) 11時24分

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