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2015年10月19日 (月)

医療費の地域格差是正は必要なのか?

先日財務省筋から今後の社会保証制度改革に関する「工程表」が発表され、厚労省など関係省庁との摺り合わせが今後必要になってくるのだとは思うのですが、その中にこんな話が出ているようです。

外来医療費の地域差是正、2018年度から(2015年10月12日医療維新)

 財務省は、10月9日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において、今後の社会保障制度について「改革工程表」を提出した(資料は、財務省のホームページ)。

 外来医療費については地域差を今年度中に分析を実施し、その解消策を2018年度からの次期医療費適正化計画に盛り込む。入院医療についても、機能分化をより進めるため病床機能報告制度の定量的基準を定め、2016年度から導入するスケジュール案が示されている。生活習慣病の治療薬の処方ルールについては、「速やかにガイドライン等を策定した上で実施」とされた。
(略)
 入院医療については、昨年10月から病床機能報告制度が始まり、今年4月から各都道府県で地域医療構想の策定がスタート、病床の機能分化・連携に向けた改革が現在進められている。

 「改革工程表」では、「医療・介護提供体制の適正化」の基本的考え方について、(1)外来医療費等についてもスコープを拡げて地域差是正を図る、(2)改革の早期実現・実効性の確保のため、B事項に係るKPIの設定、D事項の改革の方向性・実施時期等の具体化――と提示。実施検討時期は2015年度後半から2018年度にわたっており、2018年度からの次期医療費適正化計画に盛り込む方針。
(略)

ここで注目すべきなのが「医療・介護供給体制の適正化」と言う文脈の中で地域差と言う文言が否定的意味合いで出てくる点なのですが、今後は都道府県単位で地域内での医療供給体制を総合的に管轄し計画的に整備していく「地域医療構想」が実現してくるとなれば、当然ながら各都道府県は地域の実情や将来ビジョンに従って独自の医療を追及していくことになると言えます。
その結果むしろ医療の地域差、独自性は拡大していくのではないかと思うのですが、提供計画を策定する主体は都道府県であっても医療制度そのものは全国共通の統一価格で提供することが大前提で、例えば「大都市は土地代が高いから診療報酬を高くしよう」だとか「田舎は交通費が余計にかかるから往診料は引き上げよう」と言ったことは行われていないわけです。
ただその一方で近年紹介状なしに大病院を受診する患者から徴収する選定療養の費用負担に関して高額化が進んでいるのだそうで、最高額は1万800円だとか平均は2365円だとかいずれも前年よりも上がって来ていますが、当然ながらこうした高い費用を徴収する施設は都会の大規模基幹病院の方が多いはずですから、結果的に地域格差を形成しているとも言えるかも知れません。
こうした患者負担の引き上げに関してはよいことなのか悪いことなのか立場によって意見は異なると思うのですが、興味深いのは国の立場としてはどんどん推進すべきものであると言うことであるようで、珍しく診療側と支払い側双方が賛成してこんな話が出てきていると言います。

紹介状なし大病院受診、定額徴収義務化(2015年10月2日医療維新)

 9月30日に開催された中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、「紹介状なしの大病院受診時に係る定額負担の導入」についての議論が始まった。健康保険法改正を踏まえ、一定規模以上の病院は、紹介のない初診時などに「定額徴収を責務にする」案が示され、診療側、支払側の双方が支持した。対象となる病院、徴収金額、徴収しない例外の規定などが今後の論点になる(資料は、厚労省のホームページ)。

 対象病院について、厚労省は、特定機能病院のほか、500床以上の地域医療支援病院を対象とする案を提示。これに対し、「特定機能病院と200床以上の地域医療支援病院」(日本医師会常任理事の鈴木邦彦氏)とより広く徴収する意見のほか、「患者の立場では病床数は分かりづらい。機能面での議論が必要」(健康保険組合連合会副会長の白川修二氏)と、病床数以外の基準での検討を求める声も挙がった。
(略)
金額は全国一律?地域差認める?

 厚労省が示した徴収金額の案に対し、鈴木氏は「初診時は最低金額を低く設定し、地域性を反映できるようにすべきた」と指摘し、再診に関しては初診の半分程度を提案。日本病院会常任理事の万代恭嗣氏は平均金額を参考にすべきだとした上で、鈴木氏と同様に地域差の考慮が必要だと述べた。

 現行の初診時の徴収額は、都内の特定機能病院で5400円以上が9割近くを占めたが、都内を除く大都市圏(埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府)では3割強のみ。その他の地域では2割ほどで、地域差が大きい。

 一方で、白川氏は「大学病院とその他なら分かりやすいが、東京で5000円、長野で3000円のように地域で異なるのは患者にとっては分かりづらい」とコメント。金額についても、「(外来の機能分化の)効果を高めるためには、ある程度高い金額を定めるのが必要だと考えられる」とした。
(略)

ここでも地域差云々と言う言葉が出てきて、それも肯定的に使われている点は注目いただきたいと思いますが、現実的に選定療養を取っている病院は大都市部に多く田舎に行くと少なくなると言う地域差が明白にあるのは事実で、お金を取ることに関しては一同賛同でもこうした地域差をさらに推進すべきことなのか解消すべきことなのかと言う点で意見が分かれているようです。
冒頭の話の流れとすれば地域格差是正と言うことが国として今後のテーマとして取り上げられているわけですから、単純には都会では高いが田舎では安いと言った地域差はあまり望ましくないと言う考え方もあるかも知れませんが、現実的に医療費には最大2倍とも言う非常に大きな地域差があることが問題視されているわけですから、こうした差別化を敢えて拡大し患者の受診行動を誘導することで地域格差是正に使える可能性もあるわけです。
すでに全国統一の診療報酬の操作では地域格差は是正できないと言うことは言われているのですから、敢えて制度的にも格差をつける方向で誘導するのもありだと思うのですが、地域医療構想の結果ローコスト医療を追及する地域もあればハイコストハイクオリティを求める地域も出てくると言ったように、今後医療は地域ごとに格差がある方がむしろ正常になるのかも知れませんね。
その場合国としては当然ながら医療費を安く上げている地域を称揚し高い地域には何らかのペナルティも検討することになりかねませんが、患者の立場としてお隣の地域で当たり前に受けられる医療が自分達には受けられないとなればあまりおもしろいものではないかも知れません。

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コメント

2000円じゃそんなに受診抑制効果もなさそう
大病院は予約と紹介患者と救急だけにすべきなのに

投稿: | 2015年10月19日 (月) 08時21分

地域格差は仕方ないのですね。
日本自体で人口減っていくので
現状維持の自治体と衰退する自治体に分かれるのは自然の理かと
今まで都市部から再分配して地方に配っていましたが
そのうちにそれも無理になるでしょう

投稿: | 2015年10月19日 (月) 09時29分

すでに病院間格差を意図的に設けて患者を誘導しているのですから、地域間格差も同様に認めていけないことはないように思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年10月19日 (月) 12時23分

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