« ある時期を境に激変した癌診療の歴史的経緯 | トップページ | 何とも奇妙な不審死が自殺と判断され話題に »

2015年10月29日 (木)

ものを高く売りつける=悪と言う一見判りやすい構図

こちら少しばかり以前に一部方面で大変話題になった事件ですが、その続報としてこう言うニュースが出ているそうです。

エイズ薬を1錠750ドルで売ろうとした傲慢CEOに鉄槌―ライバルが同じ薬を1錠1ドルで販売へ(2015年10月24日techcrunch)

1月ほど前に32歳の元ヘッジファンド・マネージャー、マーティン・シュクレリ(Martin Shkreli =上の写真)が大部分を出資して設立した製薬ベンチャー、チューリング・ファーマスーティカルズ(Turing Pharmaceuticals)は、はるか以前に開発されたエイズ治療薬をいきなり1錠750ドルに値上げして大炎上した。その経緯は読者の記憶にも新しいだろう。
誕生以来62年の製薬会社、Daraprimはトキソプラズマ症その他に効果のある薬剤を販売していた。シュクレリが5500万ドルを投じてDarapirimを買収するや、問題の薬剤は1錠あたり13.50ドルからいきなり750ドルという法外な価格に値上げされた。
シュクレリはこの暴挙に当初まったく謝罪の態度を見せず、「アンビエン(睡眠薬)を飲んでいるので夜はよく眠れる」とツイートした。この人物のいささか驚くべき行動についてはわれわれもここで報じている。シュクレリはRetrophinというバイオテック・ベンチャーのCEOとして頭角を表したものの、重大な人格的欠陥によってその地位を追われている。

昨日((米国時間10/22)、サンディエゴに本拠を置く上場製薬会社のインプリミス・ファーマスーティカルズ(Imprimis Pharmaceuticals)はダラプリムと同種の薬剤を開発し、1錠ほぼ1ドルで販売する計画を明らかにした。シュクレリにとって自らの行動にふさわしい結果だろう。
「チューリング社が自ら適切と考える価格で薬剤を医療機関に販売する権利は尊重するもの、われわれは同種の薬剤をはるかに効率よく生産することができる。患者、医師、保険会社はこれによって大きな利益を得られるだろう」とImprimisは声明を発表した。
Imprimisの新薬は葉酸系のジェネリック薬品を含んでおり、こちらはFDAの認可を受けているが、新薬全体としてはまだ認可は出されていない。San Diego Union-Tribuneの報道によれば、現在この薬品は医師の処方箋によって特定の患者に投与することが可能だという。

チューリングを設立したシュクレリは今年8月、9000万ドルのシリーズA資金を個人的にほぼ独力で調達したと伝えられる。シュクレリはこの資金調達には「匿名の機関投資家多数が参加している」と声明を出していた。
チューリング社には高優先度の担保付き債務が存在するが、この種のスタートアップとしては異例だ。シュクレリがDaraprimを焦って値上げした理由はこれによって説明できるかもしれない。
あらゆる方面からの非難の集中砲火を浴びてシュクレリはABCニュースのインタビューに対して、「Daraprimの価格を適切な水準に下げる」と約束した。
これは2週間前のことだが、値下げはいまだに実現していない

今日(米国時間12/23)、チューリング社は「てんかん性脳障害に効果のある薬品」の臨床試験がFDAによって認可されたと発表している。

何故とっくに特許権も切れていそうなこんな古い薬のこんな急な値上げが可能だったかの経緯はこちらを参照頂ければと思うのですが、このシュクレリ氏の「特許権をコントロールするのではなく、供給ラインをコントロール」する方法論と言うものは非常に巧妙なもので、なるほどこういう手があったかと目から鱗な部分も少なからずあるようには思います。
とは言え今回の記事を読む限りでは悪徳投資家に正義の鉄槌ざまあw的な内容ですし、実際世間の反応もほぼ似たり寄ったりなものが相当数見受けられるようですが、このエイズ治療薬の価格ということに関しては以前から各方面で話題になっているところで、貧しい上に患者数が多いアフリカ諸国と開発元の先進国との間で深刻な争いにまで発展したと言うニュースもありました。
そうした争いが起こる根本的な背景事情として今やエイズも正しく治療を受ければ一生を無事過ごせる病気になってきたと言うことが挙げられると思いますが、この点で日本では国の補助もあって患者の本人負担がせいぜい月2万円程度に抑えられていると言うのは患者側からすれば非常にありがたいことである一方、社会が負担しているコストに無自覚になりがちだと言う批判も一部にはあるようですね。
ともかくも利用者心理として安ければ安いほどありがたいのは当然としても、産業としての永続性なども考えると適正価格と言うものが自ずから存在するはずだと言う議論は昨今デフレ化著しい日本でしばしば議論になるところなんですが、この需要と供給の適切なあり方と言う点で先日出ていたこういうニュースを取り上げてみましょう。

消えぬUSJ転売チケット 無効化発表後も出品相次ぐ 「再販は認められた権利」賛否の声(2015年10月24日産経新聞)

 大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」のチケットについて、運営会社のユー・エス・ジェイが「転売によって取得したものは11月1日から利用できなくする」と宣言したにもかかわらず、転売市場から消えていない。USJ側は監視を強めて封じ込める構えだが、関係者からは「再販売の権利がある」「ダフ屋対策は警察に任せるべきだ」と反発する意見も聞かれ、事態は混乱する可能性がある。

 インターネットオークションサイト「ヤフオク!」や、大手チケット転売サイトには、USJ側が転売封じ込めを発表した今月16日以降も、チケットが出品されている。
 例えば、アトラクションに優先的に乗れる「ユニバーサル・エクスプレス・パス」は、12月の年末休暇中のものでも、定価の約3倍となる2万9千円で売りに出された。中には出品者側が「落札者の判断で落札を」といったただし書きを付けているものもあった。
 USJ運営会社は「以前より安い価格で出品するなど、(すでに転売目的で購入した)在庫を処分するような動きがある」と宣言による効果が表れたとみているが、転売がなくなるかは不透明だ。

 電子商取引業界では、USJ側の対応に不満があがっている。
 チケット仲介サイトを運営する「チケットストリート」(東京)の西山圭社長は「転売目的の購入は違法だが、急な都合で行けなくなってチケットを手放したい人はいる。二次流通や再販は認められた権利だ」と主張する。ヤフオク!を運営するヤフーも、独自のガイドラインで違法性が疑われる商品の取引を規制しており、担当者は「取り締まりは警察などが判断するべきだ」との認識を示す。

 営利目的でチケットなどを転売するダフ屋行為は、自治体の迷惑防止条例で規制されているとはいえ、ネット上での転売については摘発に必要な「転売目的」「公共の場所での売買」といった構成要件を特定することが難しいとされる。
 一方、USJ運営会社は、監視チームで購入履歴などを調べて、ネット転売されたチケットでの入場を断る方針で、「購入者には、転売業者に対する返金や法的措置の手続きを支援したい」とし、強硬な姿勢を崩していない。

もちろん俗に言うところのダフ屋的行為は反社会的だとして規制されるのも仕方ないかなとは思うのですが、しかし近年ネットオークションの普及で素人でも容易に転売差益を上げられるようになり、それで生活していると言う方々も増えてきた結果、旧来のいわゆるダフ屋と比べてどこからどこまでを規制対象とすべきかの線引きが非常に難しくなっているのは確かだと思いますね。
記事にもあるように全くの善意の個人がたまたま都合が悪くなった等の事情で転売することまで規制するのはいささか堅苦しいように思いますし、本来的にはこうした方々を常習的転売者や業者としっかり区別出来るのであれば一番いいのでしょうが、それを目的に購入者のチェックを必須にしてしまうのも個人情報保護的側面から問題なしとしなさそうです。
この辺りは万一転売することを余儀なくされることを考慮して、転売があり得る顧客には登録制なりでそれ専用のチケットを発給する等の対策も考えられるのかですが、正直ごくごく一般的な顧客であればそうまでして施設を利用したいと考えるのかどうかですし、そもそも論として実際的には大多数の転売は多かれ少なかれ商業的目的が絡んでいるものなのかも知れません。
この場合需要と供給のミスマッチが問題なのであり、転売規制するよりもチケット供給を増やす努力をすべきだと言う意見もありそうですが、あまり数が出すぎると物理的に対処出来る範囲を超えてしまう可能性もあるわけで、娯楽施設での数量的規制をどうすべきかはなかなか難しい問題ですよね。

商業的目的でやっているのであれば必ず元値よりも高く売らなければ成立しないはずですし、都合で行けなくなったと言った場合であればキャンセル料的に元値よりも多少割安になっても仕方がないと考えるべきでしょうから、価格つり上げがあるケースだけを問題にすべきだと言う考え方もあるとは思います。
ただそうして正価以下しか認めないとなると割安感から転売チケット購入がさらに増えると言うジレンマもありそうで、前出の製薬会社のケースのように安値提供が必ずしも事態を正常化するとは言い切れない部分があるのですが、記事にあるように監視チームが個別に人海戦術でチェックすると言うのであれば、価格つり上げなど悪質なケースに限って登録すると言った判断はやりやすいはずではありますよね。
ひとたびお金を出して買ったものはどうしようが個人の自由で、売り手とは言え勝手に規制するなどおかしいと言う考えは当然あるだろうし、金券ショップやオークションサイトにとっては死活問題ですから各方面から反発も強そうなんですが、施設側にとって一番悪いのは一律に強面対応にばかり終始して客商売としてかえってイメージダウンしてしまい、顧客離れを招くと言った事態なのではないかと言う気がします。

|

« ある時期を境に激変した癌診療の歴史的経緯 | トップページ | 何とも奇妙な不審死が自殺と判断され話題に »

心と体」カテゴリの記事

コメント

マイナンバーが普及すれば転売なんてなくなるのさ

投稿: | 2015年10月29日 (木) 08時20分

>正価以下しか認めないとなると割安感から転売チケット購入がさらに増えると言うジレンマもありそうで

購入希望が増えるかもしれないが、供給がドンと減るんじゃないですか?
それと大阪市のUSJっていう表現が、この記者外人?国内でほかにUSJってあったっけ?

投稿: | 2015年10月29日 (木) 08時55分

和歌山のパンダ同様東京以外は何事もあってなきがごとき扱いの可能性がこれあり

投稿: どんどんぼっち | 2015年10月29日 (木) 09時59分

単にUSJと言われると何それ食べられるの?と思う人も一定数いらっしゃると思うので、この場合地名とセットで表記することはさほど奇異ではないように思いました。

投稿: 管理人nobu | 2015年10月29日 (木) 12時14分

USJ、転売チケット無効化開始 初日は11組が使えず

 大阪市にあるテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、転売チケットを
1日から無効にしたところ、11組の来場者が持参した券を使えなかったと明らかにした。

 USJによると、使えなかった券は、乗り物などの待ち時間を短くする特別券「ユニバーサル・
エクスプレス・パス」。11組いずれも転売品は無効だと知っており、「トラブルはなかった」という。
このパスは定価3千~1万円ほどだが、3倍ほどで転売されることが多かった。こうした行為を
防ぐのがねらいだ。USJには、今年度上半期に1日平均3・6万人が来園した。

朝日新聞デジタル 11月1日(日)19時42分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151101-00000041-asahi-bus_all

投稿: | 2015年11月 1日 (日) 23時07分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/62546844

この記事へのトラックバック一覧です: ものを高く売りつける=悪と言う一見判りやすい構図:

« ある時期を境に激変した癌診療の歴史的経緯 | トップページ | 何とも奇妙な不審死が自殺と判断され話題に »