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2015年10月 1日 (木)

10月1日は何の日でしょう?

と言うわけで、本日10月1日に始まるあの制度に関して、報道各社が様々に報じていますが、まずは各社の記事から紹介してみましょう。

医療事故調:10月1日スタート 原因究明と再発防止へ(2015年09月30日毎日新聞)

 患者が死亡する事故を起こした医療機関に、条件付きで院内調査と第三者機関への届け出・報告を義務付ける「医療事故調査制度」が10月1日にスタートする。医療事故の原因究明と再発防止が目的で、全国の病院や助産所など約18万カ所が対象になる。だが、届け出は医療機関の判断次第で、第三者機関の要員不足も懸念されるなど、課題を抱えたままのスタートになる。

 調査は医療機関の管理者(院長)が患者の死亡を「予期しなかった」と判断した場合に限って、遺族に説明したうえで第三者機関の「医療事故調査・支援センター」に届け出て自ら調査を始める。調査費用は原則医療機関の負担。地元の医師会などが専門家を派遣してサポートする。
 調査終了後、医療機関は報告書をセンターに提出する。遺族への報告書提示は医療機関の努力義務にとどまる。センターは報告書を分析し、再発防止策を打ち出す。
 遺族は院内調査に不服があれば、経費2万円を負担してセンターに再調査を依頼できる。センターの調査は院内調査の検証が中心で、報告書を医療機関と遺族に提示する。
 医療機関が事故を「予期できた」と判断した場合は調査はなく、遺族の異議申し立ても認めていない

 厚生労働省からセンターの指定を受けた一般社団法人「日本医療安全調査機構」(東京)は、医療機関から年間約1000〜2000件の届け出があり、うち300件前後について再調査の依頼があると見込んでいる。
 医療事故の遺族から「院内調査の費用負担を嫌う病院が事故を届け出ないのでは」などの懸念が出ているほか、職員が約50人しかいないセンターの要員不足も指摘されている。機構の木村壮介常務理事は「制度は院内調査がきちんと行われることを前提にしている。医療機関が試される制度になる」と話している。


医療事故調、課題抱えスタートへ(2015年9月29日朝日新聞)

 新たに始まる医療事故調査制度は、患者側と医療者側双方の要望で誕生した。しかし、「きちんと調べてくれるのか」という患者側の不安は消えず、医療者側は「責任追及に使われるのでは」と懸念する。公正に運営されていくことをチェックする必要がある、と患者側は訴えている。
(略)
 10月にスタートする医療事故調査制度は、モデル事業をふまえて設計された。第三者機関「医療事故調査・支援センター」には、モデル事業を担ってきた日本医療安全調査機構が厚生労働省から指定された。機構には19学会などが協力している。
 ただ、調査の基本は、事故を起こした病院や診療所による院内調査だ。小さな病院や診療所には、地域の医師会などが支援する。調査にあたって医療機関は第三者機関に事故を届けるが、この段階では第三者機関は院内調査に基本的にはかかわらない。
 第三者機関によると、医療事故1件の院内調査には、数十万円から100万円かかる。調査費用は医療機関側が負担する。
 第三者機関は、院内調査の結果に納得できない遺族からの求めに応じ、再調査を実施する。各医療機関から集まった調査結果の分析もする。

 1990年代末、大学病院などで死亡事故が相次ぎ、医療不信が深刻化。真相を知りたい遺族らは裁判を起こしたが、裁判は長い時間がかかるうえ、真相が明らかになるとは限らない。一方、医療者側には、専門分野に司法が介入することに抵抗感がある。医療事故の調査制度は患者側、医療者側どちらにとっても10年以上の念願だった。

遺族側、医療機関の対応注視 「透明性・公正性担保を」 事故調スタート(2015年9月28日産経新聞)

 「医療事故で問題になるのは結果ではなく、プロセスの共有。目的は医療安全だが、遺族にとって透明性や公正性が担保された制度になってほしい
 「医療過誤原告の会」会長の宮脇正和さん(65)はこう話し、医療機関側の対応を注視する。
 宮脇さんは昭和58年、「軽い肺炎」で入院した次女=当時(2)=を亡くした。主治医は点滴を施したまま外出し、次女が腹痛を訴えても、看護師は「医師と連絡は取っている」と言うだけで放置された。病院から納得のいく説明はなく、宮脇さんがカルテなどを調べた結果、肺炎は誤診で点滴が心不全を引き起こしたことが判明。裁判所に提訴し、和解が成立するまで8年間を要した

 宮脇さんはその後、署名活動など制度創設に向けた取り組みを続けてきた。だが制度で「予期せぬ死」を判断する主体はあくまで医療機関の管理者だ。「交通事故を起こして走り去ればひき逃げだが、罰則のない制度で自主的な報告が行われるだろうか」と宮脇さんは疑問視する。
 院内調査に外部の医師や弁護士の参加を義務付け、調査結果を遺族へ手渡すこと、第三者機関に遺族の意見を聞く窓口を設置することなど、遺族側の要望の多くは盛り込まれなかった
 平成11年、医療ミスで妻=当時(58)=を亡くした永井裕之さん(74)は「事故を正確に理解するためには、口頭での説明だけではなく、報告書を受け取ることが必要だ。真実が分からなければ結局、訴訟を起こさざるを得なくなる」と懸念する。
 宮脇さんや永井さんらは「医療者主体」の制度を補うため、近く、医療事故被害者団体に相談窓口を設置。遺族らへの助言や医療機関への働きかけなど、制度の形骸化を防ぐための活動を継続する。

全く立場の異なる人々がそれぞれに求める制度を設立しようと活動した結果、出来上がったものは誰にとっても不満足な制度であると言う半ば予想された落ちがついたわけですが、公平客観的に見ますと現状でこの制度に関しては、患者対医療機関と言う対立的な文脈においては医療機関側の非罰性要求を重視して設計されていると言えるのではないかと思えます。
こうした観点からすると少なくとも公式には遺族の意向がほぼ無関係な制度になっていると言う点は注目されるのですが、ただこれも考えようによっては遺族視点で見ると報告書に基づく説明が為されないだとか満足がいかない場合にはもちろん今まで通り訴訟に訴えられるし、また報告書をもらえばもらったでそれをソースに訴訟に持ち込めるしと、少なくとも今までより状況は改善されたとも言えるわけですよね。
こうした制度設計が医療訴訟を増やす方向に働くのか減らす方向に作用するのかは今後の経過を見てみないことには判らないと思いますが、常識的に考えて予期しない死亡があったと認め調査まで行ったにも関わらず、その結果に関して何ら説明もしないのでは痛くもない腹だとは誰も思いませんから、現実的には患者家族への説明義務が伴うものであると解釈しておくのが妥当だろうとは思います。
いずれにしても医療側からすればひと頃の医療訴訟頻発の要因ともされる納得した気持ちや処罰感情だと言ったものに配慮して制度運用が為されるのでは困るわけで、あくまでも再発防止と言う医療安全向上のための制度であって、その結果に必ずしも感情的な満足が得られるものではないと言う当たり前のことは周知徹底しておかなければ、各地で今まで以上にトラブル頻発と言うことにもなりかねません。

他の制度運用上の注意点としていわゆる異状死体の届け出義務を定めた医師法21条との関係性がどうなのかですが、原則的には「外表異状説」に従い見た目に明らかにこれはおかしい、普通の死に方ではないと言う事例以外警察への届け出は今現在でも行わずともよいのだと言う正しい理解が広まってきたところに、先日の制度説明会で厚労省が妙に煮え切らないことを言い出したのはすでに紹介した通りですよね。
この点で法曹関係者など法律畑に詳しい人間ほど最高裁判断に従ってすでに警察への届け出は必要ないのだと単純に解釈する傾向があるようにも思えるのですが、残念ながら病院管理者などは組織防衛の観点からか「とりあえずは届けておいた方が無難なのでは」と言う考え方に傾きがちであるように見えるし、実際にそうした規定を定めた間違ったマニュアルが未だ通用している施設もあるようです。
医療訴訟に詳しい井上清成弁護士などはこうした誤解について「警察届出と記者会見は地獄への片道切符」とまで言い切っていますが、この場合誰にとっての地獄かも非常に重要な問題で、必要もないのに早期に警察に届け出て記者会見を開く施設ほどマスコミ等の覚えもめでたくなりやすく、病院という組織防衛上の観点からは当然そうした選択枝は有りだと言える理屈です。
ただ現場のスタッフ個人の問題にして組織防衛を図るような施設に誰が働きたいと思うのかで、長期的に見ますと優秀な人材集めの観点からはこうした方法論はマイナスに働く可能性もあるわけですし、少なくともネット上では将来的にも末永く「○○病院と言えば以前にこうしたことがあって」と言った記録が残されていくわけですから、目先の損得勘定だけで後々まで苦労するのがいいのかどうかは考え物ですよね。

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コメント

>医療機関の管理者(院長)が患者の死亡を「予期しなかった」と判断した場合に限って

これは医療機関が死亡事故を起こしたかどうか関係無く、って話なのにいきなり「患者が死亡する事故を起こした医療機関」と書かれると、報告された事故全て病院が原因でと勘違いする人が多数出てくるのではないかと危惧します。
なんとなくですが、「事故」って単語を使うから話がややこしくなっているような。

投稿: クマ | 2015年10月 1日 (木) 09時43分

世間一般には自動車事故からの連想で事故と言えば原因となる行為があり、その行為を為した者に責任があると考えがちなのではないかと言う気がします。
医療の場合リスクを取らずに何もしないと言う選択はかえって不利益になる場合、敢えてリスクを冒すことが日常的にあるのだと言う認識がどれだけ一般化するかが鍵でしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2015年10月 1日 (木) 11時25分

届け出がされている病院を選べば何かあったとき調査されるということでしょうかー

投稿: | 2015年10月 1日 (木) 13時21分

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