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2015年9月 9日 (水)

ゲノム検査はいまだ拡がる前から規制の声が

製薬会社がやっているエムスリーが新たな医療関連サービスを開始したと報じられていますが、それが今話題のあれを扱う会社なのだそうです。

新会社「G-TAC」通じ医師にゲノム関連検査を取次 エムスリー、ゲノム検査の新会社を設立 (2015年9月8日日経メディカル)

 エムスリーは2015年8月31日、ゲノム・パーソナル医療の進展をサポートする新会社「G-TAC」の設立とサービスの開始を発表した。

 新会社では、関連検査を紹介・取次する医師向けのサービスや、コンシューマ向けの知識啓発やG-TAC登録医師の紹介を行う。紹介予定の検査は、2015年8月に経済産業大臣賞を受賞した消化器がんスクリーニング検査を含む12種類年内に30種類以上、1年後に100種類以上の取り扱い検査数を目指す

 近年、ゲノム解析のコストが飛躍的に低下しており、ゲノム関連調査・分析を背景とした個別化医療が世界的にも注目を集めている。このような時流を踏まえ、エムスリーは2015年2月からWebサイト「m3.com」で医療従事者向けの関連知識の啓発を実施。今回のG-TAC設立により、さらに機動的な事業展開を図るとしている。

 社名は「Genetic, individualized Treatment Assisting Center(ゲノム・パーソナル医療をサポートする場)」の略語。ゲノムを構成する塩基「A(アデニン)/T(チミン)/G(グアニン)/C(シトシン)」の4文字をモチーフとしている。

このゲノム解析と言うことがこのところのトピックになっていて、血液以外にも唾液等の検体からも色々な病気が判ると言うことになれば簡便性もさることながら、病院に行って色々と検査しなくても検査会社に自分で検体を送るだけで調べがつくのですから、多忙な現代人にとっては福音とも思えてきますよね。
ただ一方で生殖医療との関連でも語られる機会の多い話でもあるし、またゲノム検査が医療や保険、あるいは就職など様々な方面で影響を及ぼす可能性も否定出来ないことから、例えば入社試験や職場健診でこうしたものを導入するのを規制すべきだとか、各方面から様々な意見が出ていることは知られている通りです。
こういった様々な意見を反映してか、先日は厚労省もとうとう公的なルールを定めようと言い出したことが報じられていますけれども、まずはこちらの記事から紹介してみましょう。

遺伝子検査ビジネスのルール整備へ- 厚労省、医療分野の検査と「境界あいまい」(2015年9月7日CBニュース)

厚生労働省は7日、民間事業者が個人の唾液などから病気のかかりやすさや体質を判定する遺伝子検査ビジネスについて、医療分野の検査との境界があいまいになりつつあるとして、ルールを整備する方針を決めた。来月にも有識者のタスクフォースを立ち上げ、遺伝学的検査の品質確保や検査結果の国民への伝え方など、法的整備も含めたルール作りの検討を始める。【丸山紀一朗】

この日、厚労相の下に設置した省内の各局長らから成る「ゲノム医療実現推進本部」の初会合に方針の案を示し、了承された。塩崎恭久厚労相は冒頭にあいさつし、日本は遺伝子検査ビジネスのルール整備やゲノム医療の実用化に向けた取り組みが、特に米国や英国に比べて遅れていると指摘した上で、「日本をゲノム医療の先進国にしていかなければならない」と意気込みを示した。

ゲノム医療は、個人の遺伝子などの情報を基に、より効率的・効果的に診断や治療、予防をすることで、副作用の軽減や医療費の削減などにつながるとされている。政府の「ゲノム医療実現推進協議会」の下に厚労省を事務局とするタスクフォースを設け、▽遺伝学的検査の品質・精度確保▽検査結果の適切な伝達▽遺伝情報に基づく差別防止▽情報管理と二次利用-など遺伝子検査ビジネスを含むゲノム医療の課題について検討し、来年夏までに報告をまとめる。

同省はゲノム医療に関する課題として、医師を介することなく遺伝子検査ビジネスとして提供されているものは、経済産業省の定める順守事項や国内外の学術・業界団体による指針などを参考にするよう求められているものの、法的規制がないことや、検査結果が個人に直接返されるため医師や遺伝カウンセラーの関与がない場合が多いこと、また、医療関係者以外の検査実施者の守秘義務について規定がないことなどを挙げている。

今からルール作りかと言う気もするところなんですが、記事からも判る通りこのゲノム関連の各種技術と言うもの、とりわけ医療立国を目指していくとも公言している日本にとっては非常に重要な技術であり、原則的にその推進を国としてもバックアップしていくと言う方向が決まっていると言っていいように感じます。
一方では前述のようにその無秩序な利用拡大に対する懸念もあることから、積極的利用推進をさらに進めていくための節度の効いた規制が求められるのは言うまでもないことで、特に結果に対する守秘義務と言う問題は企業が従業員に検査を対して行った場合に結果を誰に対して開示をすべきなのかと言う問題など、色々と議論すべき点は多いように感じますね。
ただ原則的にこうした問題は今までの職場健診でもあったことで、肝炎ウイルスが見つかると解雇されるかも知れないから会社には黙っていてくれだとか、高血圧で引っかかると業務につけないから手直ししてくれだとか、表立ってではない依頼を受けたことがない医療関係者の方が少ないんじゃないかと思いますから、別にこの新しい検査法によって新たに生じた問題と言うわけではないわけです。
ただ遺伝子検査の場合その人が今現在発症していないリスクに対しての評価にもなり得ること、そして遺伝子異常に関しては本人の節制や努力によらず一生ついて回るものであることと言った違いもあって、この辺りは守秘義務云々と言うよりも身障者差別などと同様社会の成熟度にも関わってくる問題であるようにも思いますね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

生まれた時に全員ゲノム調べといたら平等になるんじゃね?

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 08時01分

えっ?
することが不平等じゃなく、検査結果内容が不平等につながるってことなんだけど。

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 08時48分

昔からある問題っちゃ問題ですけどねえ。
遺伝子って言われたら身構えちゃうのもあるのかな。
だいたい国がメタボ健診で労働者差別を招いたようなもんだし…

投稿: ぽん太 | 2015年9月 9日 (水) 09時11分

そういえば10年位前に徳弘正也さんが「狂四郎2030」ってので
この辺の問題を描いてましたね。
これは現代の1984かもなあ と、好きでしたねえ。

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 09時39分

遺伝子の問題に関しては、やはり本人の努力でどうにもならない部分を元に評価されると言う点は少し引っかかりを感じざるを得ません。
本来的にはメタボ健診なども集団としての国民健康増進が目的なのですから、企業側には個人特定し得ないデータだけ返すと言う形が筋なのか?とも感じています。
もっとも血圧いくら以上は入構禁止と言ったローカルルールが厳しい企業もいるわけで、この辺りは本来的には企業側都合の被雇用者健康チェックと国民健康管理目的のメタボ健診は分けるべきなのでしょう。

投稿: 管理人nobu | 2015年9月 9日 (水) 12時43分

体格制限とか、健康制限とか、どうにもならない部分での評価はたくさんありますよ。
遺伝子だけが特別ではないでしょう。一般に、生活習慣病だって遺伝要素50%、環境要素50%なんですから。

問題は「ハンデを持っていても平等に」という美辞麗句は、結果平等なのか機会平等なのか、そもそも機会平等すら「社会が十分豊かであることを前提にした贅沢品」でしかなく、錦の御旗と扱うべきなのか。

日本は高齢化による財政問題、世界は水・食料を始めとする基礎的な資源枯渇の危機が迫っている中、どこまで理想主義でいられるかが試されるのでしょうね。

投稿: おちゃ | 2015年9月 9日 (水) 14時07分

「あんたはどれだけ頑張ったって生まれつきの体質なんだから無駄」って患者指導はやりにくいんじゃないの?

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 22時28分

逆に「残念ながら遺伝検査ではこうなので、こちらの道で才能を伸ばす」は、本人の努力不足のせいではないという救いになるという見方もできます。

手段が悪いのではなく、社会文化もふくめた「運用」の問題ではないでしょうか?

スポーツは「あんたはどれだけ頑張ったって生まれつきの体質なんだから無駄」はよくありますね。
循環・筋骨系の病気を持っている人、「○○の活動・仕事は無理」もよくあります。

遺伝検査をするかしないかにかかわらず、冷酷な現実はこれまでも、これからも突きつけられます。「遺伝子」だから何か特別なのでしょうか?

医学は大きく進歩していますが「結果平等」はおろか、それが個性の一部ですから、「機会平等」も完全な実現は無理だと思います。ただ、実現する努力はとても尊いものだと思います。

投稿: おちゃ | 2015年9月10日 (木) 09時34分

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