« 意外と高くなった医療への国民満足度、しかしその内実は | トップページ | 日本でも難民は何十万人もいるのだそうです »

2015年9月15日 (火)

性的マイノリティの権利が拡張されつつあるアメリカの現状

世界的に性的マイノリティーの権利を確保しようと言う動きが出ていて、先日はスペインで警官同士の同性婚の様子が非常に肯定的表現で報じられていたのを興味深く見たのですが、隷属的多妻主義者や小児性愛者など互いの自由意志にいささか疑問符がつきかねないケースを除いては、基本的には個人同士の自由意志による関係と捉えておくべき問題なのでしょう。
別に誰の迷惑にもならないのであれば好きに事実関係を結べばいいじゃないか、と言われるかも知れませんが、社会的な各種サービスからアパートの入居に至るまで夫婦や家族の関係を基準に成り立っている今日の日本社会では、この事実婚なるものの扱いが非常に難しいのは確かですし、男女別に扱われる機会も多いだけに「この人は男女どちらとして扱うべきなのか?」と対応に迷うケースも少なくないですよね。
そんな社会の困惑を反映してか、「それならそもそも迷う必要のない環境を整えればいいじゃないか」と言う話が出ていること自体はまあ理解できるとして、それが初等教育の現場で行われていると言うことに未だ意識の追いついてこない方々も多いかも知れません。

男女別トイレを段階的廃止、米サンフランシスコの小学校(2015年9月12日AFP)

【9月12日 AFP】米国でトランスジェンダー(性別越境者)の人々のニーズを受け止めようという傾向が全国的に強まっている中、カリフォルニア(California)州サンフランシスコ(San Francisco)の小学校が男女別のトイレの段階的廃止という全米でもあまり例のない取り組みを始めた。

 サンフランシスコにあるミラロマ小学校(Miraloma Elementary School)のサム・バス(Sam Bass)校長は声明で、男女別トイレの廃止は、男女どちらの性にも合致しない生徒が8人いることを認識しての措置だと述べ「生徒全員に安心感を持ってもらいたいだけではなく、全員が一様に平等であることを理解してもらいたいとの狙いもある。生徒たちに貴重な教訓を教える機会だ」と語った。

 米国では最近、五輪金メダリストのブルース・ジェンナー(Bruce Jenner)さんがケイトリン・ジェンナー(Caitlyn Jenner)さんと改名し、トランスジェンダーであることを公表し話題になった中、全米の学校・大学でトランスジェンダーの生徒の処遇を改善する動きが現れている。多くの学校で性別分けのないトイレが導入されているが、男女別のトイレをなくしたところは少なく、この問題の論争は続いている

 ミズーリ(Missouri)州ヒルズボロ(Hillsboro)では今週、トランスジェンダーの生徒が女子用のトイレや更衣室を使ったことに抗議して生徒約150人が授業をボイコットする騒ぎがあり、この一件の後、教育委員会の数人の委員が「哲学的見解 の違い」を理由として辞任した。

この夏に連邦最高裁で同性婚を合憲と認める判決が出てからアメリカでは一気に性的マイノリティーブームのようなことになっていて、社会全体のリベラル化がこうした形で現れ今度の大統領選の行方にも大きく影響しそうだと言われているとかいないとかですが、何にしろアメリカからすれば良くも悪くも伝統的価値観に対しての決定的一撃になったと言うほど大きな問題であるそうです。
この件も日本で同様の事件が起これば全く別の反応が起こりそうなんですが、そこはアメリカと言うことでこういう形になったのでしょうか、それに対してこうした対応に出る学校と言うのもまあアメリカらしいと言えば言えるかと思うのですが、性的マイノリティが女子トイレに入るだけで学校を集団ボイコットするような状況に対して果たして解決策となるのかどうかは今後の経過を見てみないと何とも言えませんよね。
恐らくは我々が思っている以上に現地でこの事件は敏感な問題として扱われていて、各方面から散歩両論だと言いますけれども、一方でアメリカという国は性的に寛容であるようでいて、他方では日本など比較にならないくらい保守的で頑固なところもあると言うのが特徴ですから、当事者よりも保護者などから非常に多くの意見も出ているのではないかと思いますし、教育委員会から集団辞任が出ることも当然でしょう。
こうした性的マイノリティに対しての社会的な反応が必ずしも好意的、友好的なものばかりではないことは当然と言えば当然で、そうした反応自体はどこの国、どんな文化でも共通する減少なのではないかと思いますが、その現れ方が日本人の目からするといささか奇異な感じに見えると言うのもまたアメリカらしいと言うことなんでしょうか、先日こんな記事が出ていました。

同性婚カップルに待った! 米で婚姻証明書拒否相次ぐ 「信仰に反する」と事務官ら“抵抗” 共和党から支援(2015年9月11日産経新聞)

 【ニューヨーク=黒沢潤】今年6月に同性婚が最高裁判決で憲法上の権利として認められた米国で、地方の役所の事務官が宗教的信条を掲げて同性カップルへの婚姻証明書の発行を拒む例が目立っている。同性婚への理解が進む一方、同性婚をなおも受け入れられない米社会の宗教土壌を反映する形となっている。

 全米で最も注目されているのは、南部ケンタッキー州ローワン郡の女性事務官、キム・デービスさん(49)が証明書発行を拒んだケース。最高裁判決後も「キリスト教信仰に反する」として拒み続けたため、男性カップルに訴えられた。
 デービスさんは「私にとってこの件はゲイやレズビアンの問題ではなく、『神の言葉』を支持するかどうかの問題だ」などと主張したが、連邦裁は3日、収監を決定。宗教保守派が連日、抗議デモを展開したこともあり、8日に釈放された。連邦裁はデービスさんに対し、部下の証明書発行を妨げないよう命じた。
 同性婚に批判的な姿勢を示す共和党からはこの間、デービスさんを支援する動きが出た。2016年の大統領選に出馬表明したテッド・クルーズ上院議員は収監先を訪れて激励。同じくマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事も釈放に立ち会い、「良心を曲げなかった」などとたたえた。

 ケンタッキー州以外にも証明書発行を拒む例が目立つ。南部テキサス州では、フード郡の事務官が発行を拒絶。連邦裁は7月、最高裁判決に基づいて発行を命じた。事務官は命令を不服としているが、部下には発行を認めているという。
 南部アラバマ州でも、少なくとも9つの郡の事務官が発行を拒否した。ある事務官は米NBCテレビに対し、「最高裁の判決は不満だ。失うものは何もない」と述べ、当面は拒否を貫く姿勢を示している。南部ノースカロライナ州でも同様の動きがある。

 かたくなな宗教信条を持つ事務官らを支えているのは、「自由評議会」(南部フロリダ州)や「自由防衛同盟(ADF)」(南部アリゾナ州)といった宗教団体だ。ADFは既存の法律を尊重しつつ、宗教信条の実現を目指す“現実派”だが、自由評議会は公権力との対決をいとわない“強硬派”という。
 一方、ロイター通信の世論調査によれば、「同性カップルに婚姻証明書を発行すべきでない」と答えた米国民は29・8%にとどまる。「発行すべき」が59%と大きく上回り、米国内で同性婚への理解が着実に進んでいることも確かだ。

日本でも自治体レベルで同性婚に証明書を発行することが試みられていますが、例えばそれに対して何かしら異なった意見を持つ現場の末端役場職員が思うところがあったとしても、公僕として粛々と手続きを進めることを優先しそうに思うのですが、アメリカの場合こうした思想信条による抵抗の動きもまた個人の権利であると言う考え方なのでしょうかね。
この種の思想問題で近年記憶に残っているものとして、船橋市西図書館の司書が自らの思想信条に沿わない書籍を次々に破棄していたと言う船橋焚書事件が有名ですが、当時元図書館職員なども加わって座談会が開かれた際のコメントを見ると、現場経験者からは特定思想に染まった職員の存在は認めつつも「何故やったのか判らない」「普通職業倫理の方が思想より上に来る」と言った意見が多かったようです。
この辺りは個人の思想に沿わないことを国や公権力であっても強要されるのはおかしいと言う考えが思想の基本として根付いている国と、とりあえず公人として働く以上個人の思想は棚上げにすべきだと言う感覚が一般的な国の差であるとも感じますが、日本で同種の権利要求が今後高まってきた場合に社会として組織としてどのように対応していくべきか、日本独自のやり方を模索していく必要があると言うことなのかも知れません。

|

« 意外と高くなった医療への国民満足度、しかしその内実は | トップページ | 日本でも難民は何十万人もいるのだそうです »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

公務員が個人の好みで仕事してんじゃねえよ

投稿: | 2015年9月15日 (火) 08時04分

好みと言うのか、申請する側の思想信条の自由を保証するのであれば、申請を受ける側の思想信条の自由もまた保証しましょうと言う、これはこれで筋の通った考え方だろうとは思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年9月15日 (火) 11時01分

30数年前、「GUN」だか「コンバットマガジン」だかの記事で、「同性愛者に迎合的な政策を掲げた市長」を「怒り狂った市民」が「同性愛者代表もろとも射殺した」って事件が触れられていたのですが、ライター氏曰く「市民を舐めてるから、こうなるんだ」

ワイ将当時高校生、ドン引き。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年9月15日 (火) 11時45分

>申請を受ける側の思想信条の自由もまた保証しましょうと言う、
>これはこれで筋の通った考え方だろうとは思います。

異議あり 私人としては保証されるべきでしょうが公務員である以上
職務において上長である市議会が認めている市民の権利を
1職員の思想信条により事実上制限を加えるのはNGではないでしょうか。
職業選択の自由が認められているのですから 嫌ならお辞めになるなり
あるいは その方も市民であるなら議員に立候補して法を変えればいいこと

投稿: | 2015年9月15日 (火) 15時19分

 私も、下野wするべきと考えます。
 裁判所の命令に公務上で逆らう公務員には違和感を感じます。
かの国では、徹底的に反訴して争い訴訟が続いている間は決着していない、との主張もまかり通るようですが、そんなことができるのはバックに強力な経済力を持つ支援団体がいるときだけでしょう。こんなこと許したら公権力が強力な圧力団体の恣意のままになって、対抗手段を持たない個人は本来の法的権利も行使できなくなる。
 
 どろっぽ先生とはニュアンスが違うかもしれませんが、自らの人権を守るためにライフルで抵抗する権利を憲法で保障する国 の法治感覚には違和感を覚えます。  

投稿: 感情的な医者 | 2015年9月15日 (火) 17時10分

でもそれだったら良心的兵役拒否なんかも駄目になっちゃうね
自衛隊の人たちこれからバンバン人殺し強制させられちゃうかな

投稿: | 2015年9月15日 (火) 17時35分

>自衛隊の人たちこれからバンバン人殺し強制させられちゃうかな

エラが見えてますよw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年9月15日 (火) 17時44分

婚姻って呼ぶのは、伝統的婚姻だけにしといて、
マイノリティ様のためには、婚姻と同じ法的地位みたいのを作ればいいんじゃない?
そういうの差別だと噛みつくのかな?

投稿: | 2015年9月15日 (火) 17時44分

日本でどこかの区が出している証明書なんて、そういうのに近い奴でしょ。

投稿: | 2015年9月16日 (水) 08時58分

同性婚だと戸籍を汚さず(この表現も微妙ですが)結婚と同程度の証明書がもらえて、異性同士だともらえないのは差別ではないかと思います。
渋谷区の条例がそのあたりどうなっているのかよく分かりませんが・・・

投稿: クマ | 2015年9月16日 (水) 10時45分

区の証明書って遺産相続にも有効?

投稿: | 2015年9月16日 (水) 11時32分

>戸籍を汚さず

自分が享受できないものには、ケチつけなきゃ気が済まんと言ういかにも日本人的w

投稿: | 2015年9月16日 (水) 13時52分

>いかにも日本人的w
いや半島的かと個人的には感じますが。
しかしこの「証明書」を発行した履歴は残る訳ですよね?
これが婚姻歴のように すぐ見れる状況なら
当初の意に反してサヨナラをしてしまった場合
結果的に「戸籍が汚れた」状況と同じ事になるような気がしますが…
実際はどうなのでしょうね 教えて!渋谷区の人!!

投稿: | 2015年9月16日 (水) 18時13分

日本でも個人的信条を理由に死刑執行をサボタージュした法務大臣とかいましたから

投稿: | 2015年9月18日 (金) 21時51分

>日本でも個人的信条を理由に死刑執行をサボタージュした法務大臣とかいましたから
 サボタージュの意味わかってんの?米語以外の外国語は中学を卒業してからにしようね。
 法務大信とは、個人的信条?を発揮して執行にサインするかどうかを判断することを求められる職責で、総理大臣が指名し国会が承認する。国民がまかせてるってことになる。サボってると総理が思えば罷免して挿げ替える。総理が法務大臣を挿げ替えないを判断したなら、それがその時点で国民の総意だ。執行停止が必要と判断された期間続く。

  2015年9月18日 (金) 21時51分付け無名氏は全能感肥大の中二病で、小学校で習う政府の仕組みすらわかってない不勉強な怠け者。

投稿: 名乗るほどのものじゃない | 2015年9月21日 (月) 07時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/62274019

この記事へのトラックバック一覧です: 性的マイノリティの権利が拡張されつつあるアメリカの現状:

« 意外と高くなった医療への国民満足度、しかしその内実は | トップページ | 日本でも難民は何十万人もいるのだそうです »