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2015年9月 8日 (火)

若い世代も好きで草食化しているわけではない

先日の報道では14年度の医療費が前年比1.8%増で40兆円を突破し、12年連続で過去最高を更新したと言うことなんですが、その使われ方を見てみますと75歳未満が21万1000円だったのに対し、後期高齢者に当たる75歳以上は93万1000円だったと言いますが、マスコミ諸社も医療費抑制の必要性に対してはようやく意見を一致させつつある中で、年寄りの医療費を削れと言わないのは興味深い現象ですよね。
もちろん若年者よりも高齢者の方が入院する確率も長期入院になる確率も高いのだから、平均で見れば医療費が高くなるのも当然と言えば当然で、例えば入院一日あたり平均幾ら使っているかと調べて見ると老人から子どもまで年齢が下がるにつれてより多くの費用がかかっているのですから、医療費抑制を叫ぶのであれば小児医療費無料化政策などとんでもない!と言う主張があってもおかしくはないはずです。
このように統計と言うものは解釈の余地が大きいだけにデータの集積が非常に重要なもので、先日メタボ健診の医療費抑制効果が厚労省の手抜かりで何ら検証されず放置されていたと言う話などもっと批判されてしかるべきだと思うのですが、国を挙げて延々と手間ひまかけてやってきたことが実際に意味があったのかなかったのか、これは非常に大きな注目を集めてしかるべき問題だと思いますよね。
いささか話が脱線しましたが、高齢者世代が増えたせいか世代間対立と言うことが言われるようになった世の中で、社会保障コストを誰がどれだけ消費するのかと言うことと並んで誰がどれだけ負担するかも非常に重要なことですが、先日若者がどれだけ老人のために人生損をしているのかと言う話が話題になっていました。

今の若者は人生でどれだけ「損」するか 老人との世代間格差、ますます深刻に(2015年8月29日J-CASTニュース)

   若者とお年寄りという世代の間の格差が大きな問題になってきている。
   公共サービスから得られる「受益」と、税金などの「負担」の生涯の世代間の差が1億円を超えるのだという。格差はなぜ生じるのか。解消する方法はないのだろうか。

一生で約1億2000万円もの差

   「世代会計」という考え方がある。人が一生のうちに、道路や医療、年金など、政府から得られる「受益」と、税金や保険料など政府に支払う「負担」の差を年代別に計算したものだ。法政大学の小黒一正教授の試算によると、1954年以前に生まれた世代は受益が支払いを約4000万円上回る。一方、1986年以降に生まれた世代は約8300万円の支払い超過になる。この結果、二つの世代の間では、なんと一生で約1億2000万円もの差が生じているという。
   こんな格差が生じる根本的な要因は何か。言うまでもなく、世界でも例がないほどのスピードで進んでいる少子高齢化だ。65歳以上の高齢者は、高度経済成長初期の1960年に約530万人で、全人口に占める化率は5.7%に過ぎなかった。これが2014年には約3300万人に増大し、高齢者の比率は25%を超え、4人に1人が高齢者になった。ピラミッド型の人口構造は完全に崩れており、高齢者を支える社会保障費の増大などで若い世代の負担が年々重くなっているのだ。
   団塊の世代の子供たちが高齢になる2050年ごろには、高齢化率は4割程度まで高まるとの試算もある。このままの状況が続けば世代間格差が一段と深刻化するという問題を越え、日本の財政が行き詰まり、日本が財政破綻に陥る可能性まである。
   世代間格差を解消し、財政破綻の危険から脱するには、ピラミッド型の人口構造を前提とした制度を改革することが必要だ。社会保障制度の抜本的改革などで、受益対象である高齢者の負担を増やす必要が叫ばれるほか、若い世代の人口増につなげるため、移民の受け入れを主張する向きもある。

背景に「シルバー民主主義」

   そもそも政府が抜本改革を怠ってきたことが、現在の異常な世代間格差を招いたといえる。その背景にあるのが「シルバー民主主義」だ。高齢化が進めば、高齢の有権者の比率が高くなる。政治家が選挙で当選したいと思えば、高齢者の気に入るような政策を重視するしかなくなり、結果的に、社会保障制度の給付削減など高齢者の負担増につながるような改革に踏み込めないのだ。
   とりわけ、高齢者ほど投票率が高いことを考えると、「シルバー民主主義」の問題は一筋縄では解決できないということになる。
   6月に成立した改正公職選挙法では、選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられた。新たに有権者になるのは約240万人で、全有権者の2%。もちろん高齢者層の中でも格差が広がり、貧困層が増えているとされ、高齢者の負担を増やせばいいと、単純には言えない。
   それでも、若者が声をあげる機会が増えたことで、世代間格差の解消を真剣に議論する契機になる期待がある。若者がどれだけ選挙に足を運ぶか、今後の日本の「民主主義」の動向を占う大きなポイントになる。

シルバー民主主義なるものの真偽はともかくとして、若い世代にとって絶対的な人口の差以上に不利な条件として投票率の差と言うものがあって、若年者と高齢者とでは投票率に実に倍以上の差があると言うのですから人口比と合わせて一票の格差が何倍になるのかで、まずは若い世代も社会が悪いと文句を言う前に投票くらい行けと言う話ではありますよね。
実際に若者が投票所に行かないことが政策上も若者軽視と言うことで現れているのだとすれば民主主義のシステム上仕方のないことだとも言えるのですが、ただ一方で気になる点としては昨今のワープア化著しい現役世代が忙しすぎて投票に行く暇もないと言うことであれば、これは彼らを使役している年配層が悪いのか社会が悪いのかと言われても仕方のないことではあるのかも知れません。
いささか話が脱線しましたけれども、世間的には高齢者に対して少しでも不利になりそうなことを言い出せばどのような扱いになるのかは往年の後期高齢者医療制度導入であるとか、一連の年金制度改革などにおいても明らかであって、政治に限らずマスコミなど世論を左右する立場にある者と言えば大抵は高齢者かプレ高齢者ですから、自分達に不利になるような話にはまああまり乗り気ではないのも当然ですよね。
そんなこんなで何十年にもわたって高齢者への配慮が積み重なってきた結果、年々現役世代の負担が増してきたと言うのであればいずれ破綻するのは目に見えているし、何より恐ろしいのは負担感が一定限度を超えてしまうと制度を支えていくことが馬鹿馬鹿しくなる層が増え、年金未納だとか生活保護受給率の増加にも結びつきかねないと言うことでしょう。

先日面白い調査結果が出ていて、この15年で増えた仕事と減った仕事は何か?と言って調べてみますと特に減少が目立ったのが農業従事者と会計事務従事者であるのに対して、際だって増えていたのが介護職員だったと言うのですが、会計業務などはどんどんコンピューター化が進んで需要自体が減っていると考えると、同じように社会的イメージが悪い(失礼)農業と介護業とでこれだけ明確な差がついた理由は何なのかです。
農業従事者が異口同音に言うこととして「これでは食っていけない」「将来が何も見えない」と言う収入面での不安があるようですが、その意味では公定価格で制度的に一定の待遇が確保されている介護職などは取りあえず仕事もあり食っていくことは出来るのだろうし、逆に言えば公定価格の制約があるからこそ仕事を続けても家族を養えるほど給料が増えず離職者も多いと言うことになるのかも知れません。
それを何とかするとすればやはり直接的受益者である高齢者がもっとお金を負担すべきだと言うことになるのでしょうが、現実的には高齢者医療・介護の費用を負担しているのは子や孫に当たる現役世代であって、直接支払いに充てられる年金や預貯金を一定程度持っている高齢者であればともかく、直ちに処分できない家屋や土地など不動産ばかりしか資産がないのではとりあえずの支払いにも事欠きますよね。
最近では不動産を担保に生活資金を貸し付ける制度があって、死んだ後に不動産で精算すると言う一見ごもっともなことも出来るようになってきていますが、不動産を持つことはおろか家庭を持つことも出来そうにない今の若い世代には当然老後のための担保となるような土地家屋も用意出来そうにないわけで、今のうちに大急ぎで抜本的な制度改革を進めていかないと、いずれ彼らが老後を迎える頃には大変なことになってしまうでしょうね。

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コメント

今を楽しく生きようぜ!

投稿: | 2015年9月 8日 (火) 07時33分

お金もってるお年寄りにまで過保護は不要かと。
でもそんな爺ちゃんの資産や年金で食ってる子や孫もいるんですよねえ。
まだまだそんなパラサイトな家庭ありますからねえ。

投稿: ぽん太 | 2015年9月 8日 (火) 09時06分

>国を挙げて延々と手間ひまかけてやってきたことが実際に意味があったのかなかったのか、
 意味がない(費用対効果が悪すぎ)、あるいは、もっと政治的な判断wから都合が悪い結果なので官僚機構のメンツをかけて封じ込めていた、と解釈しています。利用価値が出るまで塩漬け。
>これは非常に大きな注目を集めてしかるべき問題
 利用価値が出てきたから表に出した、と考えるべきでしょう。官僚のテリトリーの調整材料に使われておしまいです。どこぞの司法試験問題漏洩法科大学院教授の専攻が「憲法学だった」とさらっと流してあとは野となれ、ネタに使われてるだけですよ。
 最近の報道はスポーツネタとこんなのばっかりですね。

投稿: | 2015年9月 8日 (火) 09時57分

>いずれ彼らが老後を迎える頃には大変なことになってしまうでしょうね。
 大変なことにしてしまって、それから出てくる何かに期待してるんじゃないですかね。ネトウヨ的な無産階級を膨張させれば自然に国家社会主義に至りますから。次の水晶の夜、長いナイフの夜は5年以内かな。

投稿: | 2015年9月 8日 (火) 10時07分

http://diamond.jp/articles/-/77975
十分に草食化が進んでいれば国家社会主義wに傾いてもマイルドなものになるかも。

投稿: | 2015年9月 8日 (火) 10時56分

このまま社会保障費が増えていくと
鈴木亘や原田泰の試算によると消費税が50%くらいしないと現行の年金や医療は維持できないとのことなので社会保障の破綻か国家の破綻は現実に起こり得ることですね
でも今は国に面倒見てもらえてる高齢者も国が二進も三進もいかなくなったら捨てられると思います。

投稿: 名無し | 2015年9月 8日 (火) 10時56分

社会保障コストの負担の偏在に加えて給付の偏在が二重の負担感をもたらしているので、若年・現役世代に対する何らかの還元策も用意されるべきだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年9月 8日 (火) 12時49分

そう。
世代間格差というけど実際には親が裕福だと子もそのメリットを享受できることは多いですからね。
老人と若者と書くから対立しているように見えるけど、親と子と書けば世帯単位だとどうってことはないとも言える。

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 10時23分

http://www.sankei.com/life/news/150909/lif1509090016-n1.html

高齢者生活環境、日本は世界8位 国際比較調査 1位はスイス
2015.9.9 10:48更新

 世界の高齢者の生活環境を調査している国際団体
「ヘルプエイジ・インターナショナル」(本部ロンドン)は9日、高齢者が暮らしやすい
国の2015年版ランキングを発表、日本は8位となった。

 同団体は96カ国・地域の高齢者の収入や医療などに関するデータを分析。
日本は医療に関する項目でトップとなったほか、社会保障や年金、累進課税などの
制度が評価された。同団体は「日本は世界の中で最も健康的な国の一つだ」と
指摘した。

 1位はスイスで、ノルウェー、スウェーデンが続いた。上位には欧米諸国が並び、
米国は9位。アジアではタイが34位、中国が52位、韓国が60位。

 東アジアの調査を担当したエドゥアルド・クライン氏は「日本は予防医療や
健康的な食事など、自分の健康は自分で管理するという仕組みが根付いており、
他の国・地域にとって有益なモデルになる」と話した。(共同)

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 13時19分

高齢者に限り、心臓バイパス手術や延命治療など高額な医療費がかかる治療の保険適応をはずすか、高額医療の助成を外して自己負担を多くすれば、過剰な医療は減るのではないでしょうか。重篤な疾患の予防的な医療は従来通り、みな適応のままで。金持ちの老人はそれなりのお金を払っていただくと。もちろん若い人は従来通りの保険適応で。

投稿: | 2015年9月 9日 (水) 16時09分

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