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2015年9月14日 (月)

意外と高くなった医療への国民満足度、しかしその内実は

こういうのは意外な結果、と受け止めるべきなのでしょうか、本日まずは先日こうした調査結果が出ていたことを紹介してみましょう。

医師の説明「十分」が9割、厚労省調査(2015年9月11日医療維新)

 厚生労働省は9月8日、「2014年受療行動調査」を公表した。医師からの説明については、外来、入院とも「十分」とした人が9割を超え、病院への満足度も年々増加傾向にあった。病院を選ぶ理由では入院、外来とも「医師による紹介」が1位だった(資料は、厚労省のホームページ)。

 調査は患者に医療を受けた時の状況や満足度など尋ねるもので、3年ごとに行われている。2014年は10月に実施し、全国の一般病院488施設を利用する患者(外来・入院)約19万5000人を対象とし、約15万3000人から有効回答を得た。

 「医師からの説明の有無、説明の程度」では、外来では「十分だった」(58.5%)と「まあまあ十分だった」(35.4%)を合わせると9割を超え、「あまり十分ではなかった」が4.4%、「十分ではなかった」が1.7%、「説明を受けていない」が0.5%だった。入院では、「十分だった」が66.5%、「まあまあ十分だった」が26.8%、「あまり十分ではなかった」が4.5%、「十分ではなかった」が2.2%、「説明を受けていない」が2.3%だった。

 医師から説明を受けた際に疑問や意見を伝えられたかを聞いた質問では、外来で「十分に伝えられた」が44.5%、「まあまあ伝えられた」が43.9%で、やはり高評価で、「あまり伝えられなかった」が5.7%、「まったく伝えられなかった」が0.6%、「疑問や意見は特になかった」が4.0%だった。入院で「十分に伝えられた」が49.5%、「まあまあ伝えられた」が34.2%、「あまり伝えられなかった」が5.9%、「まったく伝えられなかった」が1.3%、「疑問や意見は特になかった」が7.1%だった。

 病院への満足度では、「満足」とした回答が外来で57.9%、入院で66.7%。それぞれ1996年から約10ポイント増加している。項目別の満足度では、外来、入院とも「医師以外の病院スタッフの対応」(外来58.3%、入院69.3%)が最も高評価だった。

 「外来・入院別にみた病院を選んだ理由」では、外来、入院とも「医師による紹介」(外来35.6%、入院53.3%)が1位で、「交通の便がよい」(外来27.6%、入院25.3%)、「専門性が高い医療を 提供している」(外来24.0%、入院25.1%)と続いた。

まあ丁寧な説明と言うのか単なる冗長な説明と言うのか判らないような場合も往々にして見受けられるのですが、医療現場において患者説明と言う行為の重要性が認識されるようになり、その促進の結果がこうして肯定的に評価されているのは悪いことではないですよね。
興味深いのは同じ調査で患者の27%は待ち時間に不満を抱いていると言う結果が出ていて、確かに現状ではそうした不満が出るのも当然だと思いますけれども、逆にたったの27%と考えるとTDLで行列待ちをしている人の4人に1人しか不満を抱いていないとはちょっと思えませんから、何とはなしに医療に対する目線も雪解け気味には感じられるでしょうか。しかしWHOなどの各種国際機関による評価で日本の医療は世界的に見てもトップクラスに優れているものであると認定されている一方で、日本人全般の医療に対する満足度が諸外国に比べて非常に低いと言う事実が以前から注目されていたわけですが、何しろ医療訴訟真っ盛りのアメリカや医療崩壊先進国のイギリスよりずっと低いと言うのですから、ひと頃は「マスコミのバッシングのせいだ」等々様々な考察が行われてきたものでした。
この10年ほどは日本でも医療崩壊と言うことが非常に注目されるようになり、現場の感覚として未だ以前より劇的に医療を取り巻く環境が改善されたわけでもないと言うのがまあ一般的なものだと思いますが、そうした現場の自覚に反して医療への国民満足度が大きく高まってきているように見えると言うのが不思議なのですが、これもマスコミの医療バッシングが減ってきたせいなのでしょうか?(苦笑)
いずれにしても多忙な日常診療の中で大部分の患者が医師の説明に満足していると言うのは非常に心強く、近年の接遇教育やインフォームドコンセントの滲透をうかがわせますが、逆説的に言えばこうした「医療行為以外」の部分に非常に多くのマンパワーを割かれるようになった結果、いくら医師の数を増やしても現場の多忙感が解消しないのだと言う考え方も出来るかも知れませんね。
ともかくもこうした国民認識の改善も反映されたと言うことなのでしょうか、先日は2020年度から医学部の定員を削減することを政府が検討していると言うニュースが出ていて、さすがに平素からの日医あたりの盛んな働きかけがようやく実を結んだのだろうと思うところなんですが、他方ではもう一つ気になるものとしてこういう話も出ているようです。

2割が入院まで1カ月以上 空き病床なし、予約取れず 厚労省の患者調査(2015年9月9日共同通信)

 救急搬送以外で入院が必要と診断された患者のほぼ5人に1人が、実際に入院するまでに1カ月以上かかっていたことが8日、厚生労働省が公表した2014年の受療行動調査で分かった。「ベッドが空いていない」や「手術や検査の予約が取れない」といった理由が目立っており、さらなる医療提供体制の改善が求められそうだ。

 調査は3年に1回実施。今回は2014年10月に全国488病院を対象に行い、患者約15万3千人(うち入院患者約5万3千人)から有効回答を得た。

 入院までの期間に関しては今回初めて聞いた。その結果、緊急入院や救急搬送ではなく、予約をしてからの入院とされた患者で、入院までにかかった期間を「1カ月~6カ月未満」としたのは16・1%。「6カ月以上」は2・7%だった。一方、「1週間未満」は38・6%、「1週間~1カ月未満」は34・6%。

 病院の種類別に見ると、1カ月以上との回答が多かったのは、高度医療を提供する特定機能病院の患者(30・0%)。500床以上の「大病院」の患者(23・9%)が続いた

 これらの理由は、全体では「ベッドが空いていない」(26・7%)、「手術や検査の予約が取れない」(17・6%)などが目立った。病院別では、特定機能病院や大病院の患者で、予約が取れないとの回答が3割弱と多く、寝たきりの高齢者らが長期入院する「療養病床」を持つ病院の患者は44・2%がベッドの空きがないと答えた。
(略)

かつて医療崩壊と言う減少が話題になった頃には「イギリスでは医療が崩壊した結果、入院や手術が何ヶ月も待たされると言うことが普通にあるらしい」などと言われていたものですが、実は日本においても似たような話がいつの間にか当たり前になってきていると言うのはいいことなのか悪いことなのか、先の記事と併せて考えると何やら医療は崩壊しても国民の満足度は高かったイギリスの後追いをしているようにも感じられますよね。
もちろん平均在院日数短縮が至上命題となっている昨今では、かつてのように病気が見つかれば取りあえず入院と言うことをやっている時代錯誤な病院はほぼ絶滅していて、どこの急性期病院でも外来で可能な限りの事前検査などをやりきった上で最低限の日数だけ入院させると言う対応をしているはずですから、一ヶ月程度の期間であればこの種の事前準備に費やされたものと考えてもよさそうには思います。
ただその理由として「ベッドが空いていない」「予約が取れない」と言う解答が多いと言うのは需給バランスの不均衡を示唆することでもあって、緊急性のない入院は下手すれば数ヶ月待ちと言うことも今や決して日本でも珍しい話ではないし、そう異常な事態であると言う認識も持たれてはいないようにも感じますがどうでしょうね?

もともと医療制度上急性期の病院はどこも常時ベッドを埋めていなければ経営が成り立たないようになっているのですから、いつでも望んだ時に即入院と言うことは(緊急を要するケースを除いて)あり得ないし、国としてもそうした「無駄な空きベッド」がなくなるように、これからは地域医療計画に基づいて病床数を厳密に管理し、強制的に削減させようとしているわけです。
もともと日本の医療の特徴としてやたらにベッド数が多く、入院期間が長いと言うことが言われていて、基本的に入院する必要がない場合にも患者が入院していると言うのは諸外国では非常に珍しいものなんですが、下手をすると家で暮らすより入院させておく方が安上がりにもなりかねない日本の医療現場においては「先生、お爺ちゃんを来月まで預かってもらえませんか?」などと社会的入院も未だ珍しいものではないと言えます。
その点で今回大病院、基幹病院ほど入院までの待ち時間が長いようだと言うのは医療の緊急性と言う観点から言えば本来逆なのだろうし、裏読みすればどうでもいい病院がまだまだ多くのベッドを抱えていて必要性もない患者をほいほい入院させてるんじゃないかとも考えられるのですから、施設間で病院機能や実績に応じて病床を再配分すべきだと言う話は、それはそれで正しいことではあるのでしょうね。
患者集めに四苦八苦しているような場末の病院では、どうやって患者様により多く入院してもらえるかと知恵を絞っているそうですが、本来ならばどんな病院であれ必要もない患者さんは早くお帰りくださいと言えるようになるのが筋であって、病床配分のみならず診療報酬体系などの点からももう少し工夫改善の余地があることなのかも知れません。

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コメント

他人の評価に一喜一憂せず我が道をいくべき。

投稿: | 2015年9月14日 (月) 07時47分

医療不信の強い人はムリに引き受けなくなりましたね。
おたがいに納得して医療ができればいいんじゃないかなと。

投稿: ぽん太 | 2015年9月14日 (月) 08時37分

高齢者が激増する以上、医療は「治癒」ということからますます遠くなって、どうやって穏やかに看取るかが重要になると思います。

結果が「死」である以上、向上する予知があるのは家族の満足度(本人はいなくなっちゃうので)ですので、満足度を上げるための説明に時間をかけることは、治療に時間をかける以上に大切なことになってくるでしょう。

医師側も「正しい治療をしていれば」という方向性に修正を加えていく必要があるんでしょうね。なんせ、正しい治療をしても結局は死んでしまうのですから。

投稿: おちゃ | 2015年9月14日 (月) 09時50分

どうでもいいですが都市部が医師過剰って?
医師過剰というか需要が減るのは地方
今後需要がうなぎのぼりは都市部では?

投稿: | 2015年9月14日 (月) 10時24分

「先生、お爺ちゃんを来月まで預かってもらえませんか?」などと社会的入院
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/s002/201507/542976.html
 社会的?越冬入院が当時の沢内村では著効を示したわけですが、役目は終わったという記事。
>家で暮らすより入院させておく方が安上がりにもなりかねない日本の医療現場
 都市部でも家での生活が圧倒的に安上がりな階層の増加、状況深刻化で沢内村が再現されるかもしれませんが、出たとこ勝負で行くしかないのでしょう。 

投稿: | 2015年9月14日 (月) 10時48分

需要ってえのは、払える奴の言うことw
>今後需要がうなぎのぼりは都市部では?

投稿: | 2015年9月14日 (月) 10時50分

需要と言うものはもちろん顧客側からの要求に従っても増減するものですが、供給する側の意志によっても増減し得ると言うことは承知しておくべきだと思います。
恐らくその意味では最も確実な地域の医療需要コントロールの方法は病床数管理で、今後医師数と病床数は別個に注目されるべきなのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年9月14日 (月) 12時24分

M3の記事に 2025年の必要病床数の推計
(2014年と2025年の増減率。政府「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」の第1次報告と、2014年の病床機能報告制度のデータによる)
https://www.m3.com/news/iryoishin/357825?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD150916&mc.l=122627430&eml=50d71aa79d0c8fcd502b8a1fada22dec

「経営悪化」の可能性、大学も例外にあらず
全日病学会、「報酬と政策、リバウンドとパラダイムシフト」
レポート 2015年9月15日 (火)配信橋本佳子(m3.com編集長)

投稿: | 2015年9月17日 (木) 11時08分

大学が経営よかったことってある?

投稿: | 2015年9月17日 (木) 11時26分

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