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2015年9月18日 (金)

何かあったらとりあえず救急車、はもうやめましょう

昨今救急崩壊と言えば救急車の搬送先が見つからないと言う意味合いで言われることが多いのですが、救急車の出動件数自体が多いと言うことも問題で、最悪の場合救急車が出払っているために本当にそれが必要な急患の搬送が送れると言ったこともあるわけですから、不要不急の119番通報は勘弁願いたいのが関係者の正直な心境だと思います。
この点で最近では言われるままに救急車を出すのではなく、各種基準に従って出動事例のトリアージも試みられていますが、これも結果として重症であったケースを搬送しなかったと後日紛争化するなど判断の難しさが指摘される中で、先日こんな試みが行われていると言うニュースが出ていました。

救急車呼ぶ?自分で病院?神戸市消防局が判定サイト開設(2015年9月8日朝日新聞)

 救急車を呼ぶべきか、自分で病院へ行くべきか――。体調不良やけがをした時の判断に役立ててもらおうと、スマートフォンやパソコンで救急車を呼ぶ必要があるかを確認できるインターネットサイトを、神戸市消防局が兵庫県内24消防本部で初めて開設する。

 サイト名は「神戸市救急受診ガイド」。総務省消防庁が作成した市民向けのガイドを基に、医師らと手順や内容を議論して作った。

 サイトは、呼吸の有無など重要な7項目に当てはまらないかを確認することから始まり、頭痛や腹痛などの項目から該当するものを選択していく。長くても数分で終わり、119番通報する必要がある「赤」、2時間以内を目安に医療機関の受診を勧める「黄」、医療機関の受診を勧める「緑」、経過観察を勧める「白」に分類される。

 「顔色が真っ青」「安静にしていても胸が痛い」などが「赤」に該当し、スマートフォン使用の場合はそのまま119番通報ができる。そのほかは医療機関の案内や電話相談の利用などを提示する

 神戸市消防局によると、高齢化で市内の救急出動件数は増加傾向で、昨年は過去最高の7万8393件だったが、搬送患者の6割近くが軽症という。救急車が現場到着にかかる時間は2008年に比べて約1分遅くなっていて、緊急性がある患者への対応が遅れる恐れがある。同局救急課は「判断に迷った時にガイドを使ってもらい、救急車の適正利用につながれば」。
(略)

さすがに息をしていない場合に救急車を呼ぶと言うことに躊躇する必要はないはずですが、ここで注目していただきたいのは連絡をするとある程度の状態把握をすると言うだけではなく、次にどこに連絡したらいいのかと言う情報提供をしてくれると言う点ですよね。
救急車が出動しなかったからと言って病院にちゃんとかかっていればさほどに大事には至らないでしょうから、足があって自力移動が可能なのであれば別に自分で病院にかかってもいいだろうと思うのですが、どうも最近では病院慣れしていない人を中心に、調子が悪くなれば取りあえず救急車を呼ばなければと素朴に考えている人もいらっしゃるようで、救急隊としてはその種の取りあえずコールにも対応しなければならないのでしょう。
こうした場合に救急隊は医師ではなく医学的判断がはっきりとは出来ない以上、疑わしいケースは断りにくいと言うこともあると思いますが、この面で救急を受ける側の医師にとっても不要不急の救急搬送を減らすことは最終的には自分達の利益にもつながるはずで、先日9月9日の救急の日には専門家からこういうコメントが出ていると言うことです。

自力受診など勧める「コールトリアージ」を- 救急の日シンポで有賀氏(2015年9月9日CBニュース)

「救急の日」の9日、救急医療体制のあり方を考えるシンポジウムが東京都庁で開かれた。基調講演で、昭和大病院の有賀徹病院長(都メディカルコントロール協議会救急処置基準委員会委員長)は、119番通報を受けた際、救急相談センター(♯7119)への転送や、緊急性が低い場合は自力で受診することを勧める「コールトリアージ」で、患者を振り分ける必要性を訴えた。【新井哉】

有賀病院長は、救急出動件数の増加に伴い、出動中の救急隊が次の要請を受けて消防署に戻れないことや、休憩時間をなかなか取れず、搬送先の病院やコンビニ、ファーストフード店で食事を取らざるを得ない状況を問題視。改善策の一つとして、119番通報で緊急性が高い人は救急車やドクターカー、防災ヘリなどを要請する一方、緊急性の低い人は、自家用車や公共交通機関、徒歩など自力で受診するといったコールトリアージのイメージ図を提示した。
(略)
基調講演の後のパネルディスカッションでは、東京消防庁救急部の緒方毅副参事が、高齢者施設に救急隊が出動した際、施設の協力病院から「受け入れる義務はない」と断られ、病院の選定に約2時間かかったケースがあったことを指摘。同庁救急相談センターの三浦邦久副医長(江東病院副院長)は同センターの役割を解説し、♯7119で看護師らが相談に応じた結果、「緊急度の判断ができなかったから」との理由で救急要請した人の割合を減らせたとした。

また、東京都医師会の伊藤雅史理事は、院長を務める等潤病院で受け入れた救急搬送件数が8年前の2倍近くの水準になったことなどを説明。退院先の確保といった「出口問題」についても、術後のリハビリテーションの早期実施や、在宅・訪問診療の充実といった取り組みに力を入れているとした。港区民生委員・児童委員協議会の古橋義弘会長は、健康保険証や診察券のコピーなどを入れて冷蔵庫で保管する「救急医療情報キット」を取り上げ、訪問先の高齢者から「これがあるから安心」と高い評価を得るなどして、普及が進みつつある状況を述べた。

「緊急性が低い場合は自力で受診することを勧める」と言うのは非常に重要で、とりあえず自力受診が出来ないともなれば明らかに救急車を出して間違いでない症例と思われるのですから、「指先を切って血が止まらない」等々の様々な個別事例を例示して「この場合は救急車を呼ばないで」云々と言うよりも、「自分で病院にも行けない時は救急車」とはよほど素人目にも判りやすい判断基準ではないかと思います。   
中には確信犯的に「救急車で行った方が待たずにすむ」と言う理由で救急コールする人もいて論外ですが、とりあえず医学的判断を仰ぎたいと言う場合にかかりつけ医がいる人はともかく、そうでない人の相談先として119番が機能している側面もあるのだとすれば、110番や119番などと同様に全国統一で覚えやすい番号での相談先を整備する等の対策も考えてみる価値はあるのかも知れませんね。
しかしここで議論されているように、単純に救急隊や救急病院の整備改善を図っているだけでは抜本的な問題解決には結びつかないのであって、急性期病院からの出口問題だとか地域内での施設間連携など多種多様な課題が絡んでくる問題であるだけに、地域内で役割分担やコンセンサスを形成していくことが非常に重要になってきます。
このところ話が進められている地域医療計画なども都道府県単位でこうした総合的な医療提供体制を構築することまでが求められているとも言えるのですが、そのためには各施設間の(ぶっちゃけて言えば)利害調整なども含めた非常に厄介な調整業務が必要となりそうなだけに、どこまで自治体が泥をかぶってでもやる気を見せるかによって将来的には大変な医療の地域格差が生まれることになるかも知れませんね。

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コメント

とりあえずの対策は有料制なんですかねえ?
患者側は意外と反対してない気がしてますが。

投稿: ぽん太 | 2015年9月18日 (金) 07時54分

諸外国のように有料化で4~5万円。医療費がないないと言ってるのにさっさとなぜやらないのか?理解に苦しみます。
入院した場合は一般病棟で2万円、ICUで3万円返金でいいでしょ。
返金目当てで、軽症でも入院させろとかほざくモンスターDQN家族が増えそうな気もして不要なトラブルがまた増えそうな気もしますが。

投稿: ハグレ医者 | 2015年9月18日 (金) 09時52分

反対しないような患者は救急車を呼ばないんじゃ
タクシー代わりに使う患者は大反対かな?

投稿: | 2015年9月18日 (金) 09時56分

モラルや根性に訴えるのは、安全対策でも下の下です。

対策を守ろうとするインセンティブがはたらかないと、難しいですよね。救急車を呼んでしまった方が己の欲を満たせるのですから(以前はご近所づきあいの恥がマイナスのインセンティブとして働いていましたが)、それが崩壊したので利用を控える方が得になるようにしなければなりません。

するとやはり有料制にするしかないかも知れません。

保険料・医療費負担を全体的にアップさせて、保険特約のように何回以下の利用なら減免とか、救急車を利用しなければ○円得、とかにすれば、救急有料化よりも抵抗は少ないかも知れませんね。

投稿: おちゃ | 2015年9月18日 (金) 10時03分

ああたしかにそういえば昭和時代は
自宅に救急車が来るなんて恥ずかしいという感覚あったなあ

投稿: | 2015年9月18日 (金) 10時55分

昭和時代と言いますか、今でも田舎で救急車を呼ぶとご近所のさらし者になりますので、サイレンを鳴らさずに来てくれと言う要望がデフォですよね(でも鳴らしてくるのですが)。

投稿: 管理人nobu | 2015年9月18日 (金) 12時33分

諸外国のように有料化で4~5万円。入院した場合は一般病棟で2万円、ICUで3万円返金でいいでしょ。返金目当てで、軽症でも入院させろとかほざくモンスターDQN家族が増えそうな気もして不要なトラブルがまた増えそうな気もしますが。
→かかった医療費の半額までは救急車支払から充当でトラブルを回避できます。つまり、3日入院で10万の医療ー1割負担の世代で医療費は1万払いという軽症、なら、5000円は救急車ではらった金額(例えば5万円)から充当し医療費の負担は残り5000円で合計5.5万円。自己負担が10万円以上医療費がかかる人なら救急車代5万円はチャラになるので医療費の負担のみですむ(もちろん医療費負担は高額で10万円を超えるので負担ではありますが)。ちなみに半額でなく全額にすると、せっかく救急車で運ばれて自己負担が同じならできるだけ5万円分まで検査しろ、ということになるので半額で。高額医療で一定額以上は返金される人も、実際に払った額の半分を充当にすれば問題なし。医療費支払い時、救急車のレシートと同時に減額支払、病院は差額を救急車会計に請求。事務的にも煩雑にはならないはず(救急車の方が医療費より後払いの場合は少々煩雑かもしれない)。

投稿: インセンティブ設計はどうしても煩雑 | 2015年9月20日 (日) 09時31分

あのねえ。救急車って各消防署ですよ。つまり市町村。
お金の出所が違うんですけど・・・。
ご苦労さんですが、タクシーと同じように救急車で精算していただいて、
あとで領収書と入院証明書をセットで市町村に請求してもらうように
すれば、じゃまくさい人は請求しないかもしれないので、税金が
少しでも助かりますよね。
(多分手続きは病院がするようになるんだろうな)

投稿: | 2015年9月24日 (木) 10時32分

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