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2015年8月 5日 (水)

千葉県成田市にも医学部新設が決定、が…

数々の反対意見に反してと言うべきなのでしょうか、先日決定した東北の被災地復興を旗印にした特例的医学部新設に続いて、今度は千葉県成田市でも特区内での医学部新設が認められたと報じられていますが、かねて言われていた医学部定員不足地域での開学でありながら、その実態はかなり特殊なものになりそうです。

成田に新医学部、17年度にも- 特区で1校のみ、国際人材育成が目的(2015年7月31日CBニュース)

内閣府と文部科学省、厚生労働省は31日、千葉県成田市に新たな医学部を設置する方針を決めた。2017年4月にも開学する。医学部設置は文科省の告示で認可しないこととなっているが、国家戦略特区の特例で1校のみ認める。一般の臨床医ではなく、国際的な医療人材を育成するための医学部とする。設置主体は国際医療福祉大が想定される。【丸山紀一朗】

特区の「成田市分科会」が同日開いた会合で方針案を了承した。会合後に記者団の取材に応じた成田市の小泉一成市長は、「成田市で医学部新設が認められたのは大変喜ばしいこと。特区として国の成長にも寄与したい」と述べた。政府は今秋をめどに文科省の告示の特例をつくる。

方針によると、新設する医学部は、既存の医学部とは次元の異なる際立った特徴が必要。具体的には、▽国際的な医療人材の育成にふさわしい留学生や外国人教員の割合▽すべての学生による海外臨床実習の実施▽大多数科目での英語による授業の実施-などが求められる。

内閣府、文部科学省、厚生労働省が方針示す 成田市の医学部設置、早ければ2017年度に 国際的な医療人材の育成目的に(2015年8月1日日経メディカル)

 内閣府、文部科学省、厚生労働省はこのほど、「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針(案)」を東京圏国家戦略特別区域会議の成田市分科会に提出、7月31日に了承された。
 同方針では、国家戦略特区の趣旨を踏まえ、「国際的な医療人材の育成」のための医学部新設を目指すことを明記している。この方針が、分科会の上部組織である東京圏の区域会議で了承され、開設者の候補となる大学が整備条件を満たせば、早ければ2017年4月にも千葉県成田市に新たな医学部が新設されることになる。
 内閣府地方創世推進室は「現時点では事業主は決まっていない」とするが、成田市分科会には、国際医療福祉大学と成田市が策定した「国際医療学園都市構想」が提出されており、国際医療福祉大による医学部新設の可能性が高まったといえる(過去記事)。

 同方針では、世界最高水準の「国際医療拠点」としての医学部新設のため、以下の4つの条件を掲げた。
(1)一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部とは次元の異なる際立った特徴を有する医学部とする
(2)教員や医師、看護師の確保を目的とした引き抜きなどにより、地域医療に支障を来さないようにし、東北地方の医学部新設への影響にも配慮する
(3)自律的な運営のための具体的な計画が立てられているなど、実現可能性が認められること
(4)定員数は世界最高水準の十分な教育環境が整えられ、教育の質が確保できるような適切な人数とする

 このうち、(1)の「際立った特徴」に関しては、8つの例を示している。
(a)国際医療拠点としてふさわしい留学生の割合
(b)国際医療拠点としてふさわしい外国人教員の割合
(c)一定年数以上の海外での診療経験や教育経験を有する教員の確保
(d)診療参加型臨床実習期間の十分な確保
(e)大多数科目での英語による授業の実施
(f)すべての学生による十分な期間の海外臨床実習の実施
(g)公衆衛生に関する専門職大学院の設置
(h)海外の大学との学生交流に関する協定の締結

 文部科学省高等教育局は「際だった特徴」についての記載に関し、「どれか1つを実施している大学はあるが、現時点ではこれら全ての項目に取り組んでいる大学はない。新設大学には、方針で示した全ての項目に総合的に取り組むよう求めていく」と説明した。
 加えて、養成された医師が、当初の目的に反して一般の臨床医として勤務した場合は、「長期間にわたり社会保障制度に影響を及ぼす可能性がある」ため、入学定員数は医師需給を踏まえて調整を行うことも明記した。
 今後のスケジュールについて内閣府は、「法令上の手続きが必要なため、関係告示などの特例措置を講じてから詳細に決めていく」(地方創世推進室)とし、開設者の募集や設置・認可申請の時期などは定まっていないとしている。なお、今回の新設はあくまで特別特区における特例措置であり、「医学部を新設するとしても、1校」としている。
 こうした動きに対し、日本医師会、日本医学会、全国医学部長病院長会議は7月29日、合同記者会見を開催し、成田市での医学部新設に改めて反対する姿勢を示している。日本医学会長の高久史麿氏は、新医学部の設立目的である「国際的な医療人材の育成」に関して、日本の医学教育を国際的な水準で評価するための「日本医学教育評価機構(JACME)」が今秋に発足することから、「国家戦略特区で国際化を目指すことに意味はない」とし、「日本医学会としても強く反対する」と述べた。

先日も紹介しました通り、既得権益維持にはかねて非常に熱心な日医あたりが反対すると言うのはまあ当然に予想されたことなのですが、一応その根拠となるデータとして5年前と比べて医師求人倍率が悪化しておらず求人倍率は低下傾向となっており、今後も医学部卒の医師供給が増加していくことから「現場の医師数不足はかなり明確に改善していく」と言う見通しを示しているようです。
もちろん現在の医療体制では医師数を増やし診療を手広く行うほど報酬も増え経営的に改善していくと言うことから、儲けようと思うならば医師ら専門職スタッフは多ければ多いほどいいと言う考え方もあると思いますが、一方で今後地域医療計画に基づいて病床数配分が半ば強制的に行われるようになってきますと、名前だけの急性期から慢性期へと転換を強いられる施設も増えてきそうです。
かつて例の7:1看護基準導入で各地のなんちゃって急性期病院が看護師を抱え込んだ結果、全国的に看護師不足が顕在化したことは記憶に新しいところですが、その必要がない施設が医師を抱え込めば必要医師数などいつまでたっても充足出来ないのは当然で、その意味では総数が充足した後には様々な観点から賛否両論のある医師計画(強制)配置と言うことの是非に関しても今後議論が進むのかどうかです。
ただそれらは抜きにして今回の医学部の目的ということを文字通りに解釈した場合、今現時点で敢えてこうしたものを巨額のコストとマンパワーを投じてまで新設する意味があるのか?と言う素朴な疑問も感じずにはいられません。

そもそも今回の医学部も特例として認められたと言う理由として通常の医学部とは全く異なる特殊な医師養成機関であると言う旗印を掲げているわけですが、当然ながら国際貢献云々を標榜してはいても医師免許は一種類しかないわけですから、防衛医大卒業生の任官拒否問題などと同様に「当初の目的に反して一般の臨床医として勤務」すると言うことは当たり前に起きそうには思います。
特に医師の場合学生教育よりも卒後教育が非常に重要になってきますが、現在の医療制度では事実上臨床研修を強制化していると言っても実は国内で通常の診療に従事することを前提とした場合の話で、研修を受けなければ診療所開設に自治体の許可がいるだとか、施設管理者になれないと言ったペナルティが設定されているものの、国内で「一般の臨床医として勤務」しない場合には関係ないとも言えます。
逆に言えば国際的に貢献する人材を養成することが目的であって、一般臨床医を育てることはそもそも目的外であるのですから、卒業生には正しい卒後の進路を担保?するためにも初期研修はむしろ受けさせないべきなのかですが、仮にそうした扱いをされた場合に将来の進路に関して非常に限定されることに加え、誰がどこでどうやってまともな卒後教育を行うかと言う課題も残りますよね。
そう考えてくると単に英語で講義をすればいいと言ったレベルの話ではなく、将来どういった世界で働けるのかと言う配慮や担保がなければ卒業生は当座食っていくのにも困ると言うことにもなりかねませんが、あまりに崇高な建学の理念に幻惑されて何も知らない学生が「世界に羽ばたく医者を目指すんだ」と入学してきた結果、卒後の進路で途方に暮れると言うことだけはないよう願いたいものです。

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コメント

文科省が医学部増やしたくないので無茶振りをしてるようにも見えます
もっとも一度作ったら潰すなんて事は難しいので
多分済し崩しに普通の医学部になるでしょう
成田市もまずは地域医療への貢献を望んでいるでしょうし

投稿: | 2015年8月 5日 (水) 07時21分

金の無駄
いらない

投稿: | 2015年8月 5日 (水) 07時38分

国際的な医療人材の要請で
確実にアメリカのレジデントになれるとかならむしろ人気でそう
色々とオワコンの日本よりアメリカのがだいぶ良いでしょうし

投稿: 名無し | 2015年8月 5日 (水) 07時38分

参議院で合区されるほど人口の少ない県でも、医学部があり、統廃合しない。その一方で、足らない地域に医学部増やしたら、総量どうなるかも分からない人が多いのですね。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年8月 5日 (水) 11時57分

>参議院で合区されるほど人口の少ない県
いっそ島根医大とか香川医大の定員の半分くらいを
「東北枠」とか「関東枠但し東京神奈川を除く」に
してしまうというのは?
県立医大ならそうは行かないでしょうけど
国立なんだから、テクニカルな面では
出来なくは無いような気がするのですが…

投稿: | 2015年8月 5日 (水) 12時24分

>「東北枠」とか「関東枠但し東京神奈川を除く」
東北枠は東北の既存の医学部にその枠を作ればいいだけではないでしょうか?
あと、田舎の医学部から東京に医師がいけないような政策をとると今度は東京が破たんするような気がします。

投稿: クマ | 2015年8月 5日 (水) 13時59分

東京が破たんする、と宣伝して地方への移住を促進していた気がしますが

投稿: | 2015年8月 5日 (水) 14時43分

ふと疑問に思ったこととして、この理念を文字通りに解釈した場合大学病院の診療はどうなるのかです。

投稿: 管理人nobu | 2015年8月 5日 (水) 14時43分

>この理念を文字通りに解釈した場合大学病院の診療はどうなる?
 全額私費。
 ただし学用患者や治験コースがあり、それぞれ個別に契約のうえ費用が減免される、かな?
 メディケア、メディケイド枠?を設けるか、地域向けに公開するかどうかは不明 なんちて。

投稿: | 2015年8月 5日 (水) 15時56分

千葉って救急の連鎖崩壊やった土地柄でしょ?
確実にふつーの三次救急やってるでしょ
そうじゃなきゃ地元が歓迎してないわ

投稿: | 2015年8月 5日 (水) 20時40分

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