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2015年8月19日 (水)

偽医者と本物の医者、医者らしいのはどちら?

かつてちょっとしたブームの火付け役ともなった小説「吉里吉里人」ではある種の偽医者礼讚論が展開されていたと記憶しているのですが、その実例とも言えるのが先日出ていたこちらの記事です。

ニセ医師が2千人を診察できたワケ 評判上々、甘い確認(2015年8月17日朝日新聞)

 実在する医師になりすまして診療したとして、元タクシー運転手の男が、茨城県警に逮捕された。2年半の間ばれずに、全国で少なくとも延べ2千人超の診療を続けたという。どうして誰も気づかなかったのか。
 「ばれないよう落ち着いて診療し、症状が重い人は、他の医療機関での受診を勧めた」。勤務先の医療法人から給与をだまし取ったとして医師法違反や詐欺罪で起訴された東京都品川区の大賀達夫被告(51)は県警の調べに、こう話しているという。「なりすまされた側」が1月、身に覚えのない納税書類があるのに気づいて発覚した。

 捜査関係者によると、大賀被告は眼鏡やコンタクトレンズのメーカーに勤務した経験があり、2009~11年には医師や看護師を医療機関に紹介する会社を名古屋市で経営していた。
 その会社が行き詰まると、自分の会社に登録した、顔写真がついていない医師の免許証の写しを使って、福岡市内の医師紹介業者に自分を眼科医として登録。12年6月~15年1月、茨城を含む23府県37カ所の診療所や病院で診療し、2千万円超の報酬を得たとされる。診療した患者数は、判明しているだけで5府県5カ所で延べ約2300人。今のところ健康被害などの報告はないという。

 周囲の評判は、悪くなかったようだ。勤務先の眼科のスタッフによると、大賀被告は愛想がよく、子どもの患者には「大丈夫だからね」と優しく声をかけていた。無断欠勤や遅刻はせず、患者からの苦情もなかった。「一緒に仕事をしていて嫌な思いをしたことはない。医師ではないと聞いて驚いた」。ただ、出身地など個人的な話はしたことがなかったという。
 大賀被告は「(顔写真がない)医師免許証の写しがあれば、大丈夫だと思った。業者とのやり取りは電話とメールだけだった」と供述しているという。このため、免許証の原本の提出が求められる正規採用の話を持ちかけられると断っていたという。
 大賀被告が登録した福岡市内の医師紹介業者によると、医師免許証や履歴書などで身分は確認したが、運転免許証などで本人確認はしなかったという。派遣先の医療法人も「紹介業者が本人確認をしていると思っていた」と話す。

この件に関して言いますと誰が悪かったのか?と言う点で議論のあるところで、通常であれば専門資格の有無など基本的な本人確認は紹介する業者がやっておくべきことではないか?と言う考え方もある一方で、今どき医師免許証の原本確認もしていない時点で医療機関側にも大きな落ち度があるとも言え、やはり何事も基本は徹底する必要があると言えるでしょうか。
ただここで注目いただきたいのが「患者からの苦情もなかった」「一緒に仕事をしていて嫌な思いをしたことはない」と言った周囲の評判で、これも本来職業人として顧客に不愉快な思いをさせるような接遇や、周囲の同僚に迷惑をかけるような行為があってはならないのは当然なんですけれども、その基本がきちんと出来ていない医師がどれだけいるのか?と言う現実の裏返しでもありますよね。
さて話は変わって、先日池袋で駐車場を出た車がそのまま急発進し店舗に突っ込むと言う不可解な事件があり、現行犯逮捕された運転手からはアルコールも薬物も検出されなかったと言うことで一体何が原因だったのか?とちょっとした話題になっていますが、この逮捕された運転手である医師の人物がこれまた別な方面で話題になっているようです。

池袋・暴走車の医師 評判の「変わり者」過去にトラブルも…(2015年8月16日スポニチ)

 東京都豊島区のJR池袋駅近くで乗用車が暴走し歩行者5人が死傷した事故から一夜明けた17日、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで逮捕された医師の金子庄一郎容疑者(53)を知る人は「神経質でかんしゃく持ち」などと印象を語った。

 金子容疑者は東京都北区王子にある自宅と同じ場所に診療所を開設。近隣の住民によると20年ほど前に父親から引き継ぎ、現在は週2回程度開けていた。80代の母親と2人暮らしで母親が診療所を手伝っていた。

 今月8日に診療を受けた男性(85)は「酒もタバコもやらない真面目な人。ただ、新しい看護師が来ても2、3週間ですぐ辞めてしまうのが不思議だった」。70代女性は「近所付き合いはなく変わり者として知られていた」と話し「診療所の前に他人の自転車や自動車が止まっていると物凄い剣幕で怒鳴り散らしていた。警察を呼ぶ騒ぎもあった」と過去のトラブルを明かした。診療を受けたことのある患者からは「診療中に母親に“バカヤロー”と怒鳴っていた」「点滴を打つんだからしゃべるなと怒られた」との声も聞かれた。

 金子容疑者の運転する乗用車は16日午後9時半ごろ、池袋駅近くで、歩道に乗り上げ交差点角にある衣料品販売店「ZARA」に突っ込んだ。歩行者らがはねられ、東京都板橋区の薬剤師江幡淑子さん(41)が死亡。4人が骨盤骨折などで重軽傷を負った。池袋署によると、金子容疑者は「歩道に突っ込んだのは記憶がない。疲れて居眠りしていたので覚えていないのかもしれない。駅の近くでラーメンを食べて車に乗った」と供述。呼気からアルコールは検出されず、尿の簡易鑑定でも違法薬物の成分は検出されなかった。一方、警察官に取り押さえられた際に「何が悪いんだよ」などと大声を出して暴れ、「ケガ人を足で蹴ろうとしていた」などの目撃情報もある


池袋暴走・逮捕医師の素性 母親が激白「酒飲めない、悩んでいるそぶりなかった」 (2015年8月17日zakzak)

(略)
 さらに事故後、激しく抵抗し、警察官が「飲んでいるのか」と問いかけると、「何が悪いんだよ、酔っ払ってんだよ」と叫ぶなど奇声を上げた様子が目撃されている。

 金子容疑者の母親によれば、独身で母親と2人暮らし。亡くなった医師の父親を継いで、診療所は2代目だったという。
(略)
 一方、近所ではトラブルも多かったという。ある住民は「家の中からよく怒鳴り声が聞こえた。自宅前にある駐車場の止め方が少しでも悪いとすぐに警察に通報して、変わり者だった」と話す。
(略)

池袋駅前死傷事故で逮捕の医師 「こころの問題」解決する産業医だった(2015年8月17日J-CASTニュース)

(略)
   金子容疑者が経営する医院は北区王子にあり、同区医師会のサイトにも掲載されている。それによると、内科、小児科、消化器科、胃腸科、循環器科を行うとしているが、休診日は月~水、金、日曜となっている。診療時間は木曜と土曜の午前中のみだ。

   求人サイトで看護師の募集をしているが、会社情報の項目で従業員数が0人になっている。実際にJ-CASTニュースは同院に何度か電話をしてみたが、応答はなかった。
(略)

池袋暴走事故 逮捕の医師「仕事熱心」「神経質で怖い…」(2015年8月17日iza)

 産業医としての勤務先では「仕事熱心で熱血」と思われていた。5人が死傷した事故で逮捕された医師の金子庄一郎容疑者(53)。医師としての評判はまちまちで、近所の住民からは「神経質で怖い印象」との声も聞かれた。

 東京都内のコンピューター関連会社によると、金子容疑者は平成21年7月から25年3月まで産業医として勤務。同社担当者は「勉強熱心だった。月2、3回会社に来て、社員一人一人に熱く(健康管理を)指導してもらった」と評価する。

 時折「残業時間を抑えなさい」「睡眠時間を取りなさい」と強く言うこともあったというが、社員とのトラブルはなかったという。

 一方、東京都北区の自宅近くの住民によると、金子容疑者は自宅と同じ場所で診療所を開設。父親から引き継ぎ、現在は週に2回程度開けていた。「人当たりも良くないし、神経質で怖い印象」という。
(略)

続報によれば事故前にかなりあちらこちらと運転をし疲れていたと言い、またどうやらてんかんの持病を持っていたと言うことですからコントロール不十分な基礎疾患が疲労で増悪したことが原因だったと言う可能性もありそうなのですが、例によって免許更新時には申告していなかったと言うことですから危険運転致死傷の方面からも今後処罰される可能性がありそうです。
ただやはり気になるのが逮捕当時警察官に向かっても大声で怒鳴り散らすなど周囲の人間が「ただならぬ様子だった」と証言している点や、クリニックを開業していながらスタッフの一人もおらず週に2日間の午前中のみしか開いていなかったと言う点で、本業は産業医関連だったのかも知れませんけれども、普段の態度からしてもあまり客商売に向いている性格ではなかった可能性がありますよね。
スタッフもおらず週二日しかやっていないのですから当然と言えば当然なんですが、診療所を訪れた人の証言によればひどく汚かった、全く患者がいなくてガラガラだったと言うことですから、事故後の態度などもあわせて「こんな人間が医者やってて大丈夫なのか?」と言う声が少なからずと言うのもまあ、理解出来ないことではないように思います。
ただまあ残念ながらと言うべきでしょうか、特に古株の先生になるほど対人関係に色々と難しい方が多いと言うのも医者と言う商売の一つの特徴のように言われていて、この辺りは教師や代議士なども含めて「およそ先生と呼ばれる人間にろくや奴はいない」などと言われることもあるようですが、本来的にいずれも対人関係が重要な仕事なのですから仕事さえこなせればそれでいいというものでもないはずですけれどもね。

経歴からしますと父親の開いた診療所の継承開業であったようで、現在53歳であるにも関わらず医師免許取得が平成6年と遅いことなどから様々なバックグラウンドストーリーも想像されているようなんですが、さて冒頭に取り上げた偽医者先生とこの金子先生とでどちらが医師として適性があったのだろうか?と考えると、患者目線で見れば「偽医者先生の方がいい」と言う声も出てくるかも知れません。
もちろん金子先生も人付き合いは苦手でも医師としての知識や技量には過不足ない立派な先生だった可能性も十分あるのですが、医師としての評価と言うものはしばしば同僚など同じ医師からのものと、顧客として接する患者からのそれとが非常に食い違うことも多くて、医師仲間からすればどう見ても高い評価が与えられそうにない先生が案外患者受けがよく大繁盛だったりと言うことがままあるものです。
経営的に考えれば患者受けが良く多くの患者が来る先生はそれだけでありがたい存在だろうし、開業医であれば直接診療所の存続にも関わる重要なスキルと言うべきなんですが、逆に多忙極まる基幹病院勤務医の目線で考えるとむしろ無愛想でよほど相性がいい患者しか寄ってこないくらいの方が、業務量過多にもなりにくいし余計な顧客とのトラブルも減らせていいと言う考え方もありますよね。
昨今では学生教育においても接遇教育は当たり前になっていて、もちろんかつて多かったような対人関係における基本的常識的なマナーもわきまえていない医師と言うのは今どき論外ですけれども、接遇マナーをもっと良くしなさいと経営者目線でいくら要求したところで、そうすることによるメリットがなければ人間そうそう努力しようと言う気にもならないのかも知れません。

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コメント

何のスキルもないけど客当たりの良さだけでウハウハの町医者センセイこそ人生の勝ち組ですよ?

投稿: | 2015年8月19日 (水) 07時36分

地雷を避けて患者さんと良好な関係を維持できるってことも重要なスキルの一つかと。
あんた患者さんに喧嘩うってんのか?って思うような先生もホントにいるんですよね。

投稿: ぽん太 | 2015年8月19日 (水) 08時35分

対人スキルが低いほうがむしろ技術的に名医で上、みたいな妄想があるのかな昔の人って

投稿: | 2015年8月19日 (水) 12時53分

人間の能力の総量には一定の限度があると考えると、特定方面で優れている方は別方面で劣っていても仕方がないと納得しやすいものなのかも知れません。
ただ特定方面で劣っている人が、別方面で優れていると必ずしも保証しているわけではないことは注意すべきだと思いますが。

投稿: 管理人nobu | 2015年8月19日 (水) 13時47分

池袋暴走 逮捕の医師「当日夕方は薬飲まず」

 東京・池袋で乗用車が暴走し歩行者5人が死傷した事故で、逮捕された医師は調べに対し
「てんかんの薬を朝と夕方に飲むことになっているが、事故当日の夕方は飲んでいない」と
供述していることが警視庁への取材で分かりました。警視庁は薬を飲んでいなかったことで
体調に異変が起きた可能性があるとみて事故との関連を調べています。

 この事故は今月16日の夜、東京・豊島区のJR池袋駅前で、乗用車が歩道に乗り上げて
歩行者5人を次々とはね、1人が死亡、4人がけがをしたもので、警視庁は車を運転していた
東京・北区の医師、金子庄一郎容疑者(53)を危険運転致死傷の疑いで調べています。

 その後の調べに対し金子医師が「てんかんを患っていて、発作を抑える薬を朝と夕方の
1日2回、飲むことになっているが、事故の当日は朝は飲んだが夕方の分は飲んでいない」と
供述していることが警視庁への取材で分かりました。主治医の説明では金子医師は月に
1度通院し、1か月分の薬の処方を受けていますが、薬を適切に飲むのを怠った場合、
発作で意識を失う可能性があるということです。

 警視庁は当日の夕方に薬を飲んでいなかったことで、体調に異変が起きた可能性があるとみて
事故との関連を調べています。

NHK NEWS WEB 8月21日 17時54分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150821/k10010198031000.html

投稿: | 2015年8月21日 (金) 20時40分

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