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2015年8月 6日 (木)

日本で初めて研修医採用試験に(ちょっと変わった)実技試験が導入される

今年は就職活動の時期がずれて、ちょうどこの猛暑の最中に各地でスーツ姿の学生さんが駆け回っているのだそうで、幾ら何でももう少し考えてやった方がいいんじゃないかと思うのですが、医師にとって最初の就職活動とも言える臨床研修医の採用試験において、今回「日本初」と言うやり方が行われたそうです。

病院が研修医採用に日本初の“実技試験”を導入、その狙いとは?(2015年8月5日ザページ)

 夏に入り、学生の新卒採用試験がピークを迎えていますが、ほとんどの企業では書類選考、筆記試験、面接試験という3種類の選考で内定者を決定しているのではないでしょうか。一方、7月19日には医師(研修医)の採用試験で、一風変わった“実技試験”の有効性を検証するトライアウトが行われました。
 研修医希望学生を対象に東京ビッグサイトで開催された合同説明会「レジナビフェア」の会場でこのトライアウトを実施したのは、岡山県の倉敷中央病院。医学部の卒業予定者を対象にした研修医の採用でも、一般的に試験は書類選考、筆記試験、面接試験の3種類ですが、倉敷中央病院はこれに実技試験を加え、医師として求められる基礎能力を深く試そうという試みを取り入れたのです。
 ただ、試験で学生に本物の患者さんを治療させるわけにはいきません。医師採用試験で行われる実技試験とはどのようなものなのでしょうか。今回行われたトライアウトで実施された実技試験では、「約5mmの折り鶴を15mm平方の折り紙を用いて何羽つくれるか」、「約35mm前後のタマムシを13の部分に分解したものを、もとの形に組み立て直せるか」、「約5mm程度のひと粒の米の上に極小の刺身を載せた寿司を何貫つくれるか」という3つの課題が出され、30名の参加者が挑戦。参加者たちは医療用の手袋をして、用意されたピンセットやメス、鉗子などを使って課題に挑みました。
 特に苦戦していたのは寿司と折鶴を作る課題で、指先ほどの大きさの魚や折り紙を使ってミスのない正確な作業をするという課題に、機器を扱う器用さ以上に指先一点だけに集中して途中でその集中を切らさない強い精神力が試されている様子でした。

ピンセットで寿司作りに挑戦する学生

 この試験には、参考データをとるために倉敷中央病院の現役研修医も参加。試験という緊張感が漂う雰囲気やこれまで経験のない課題内容ということもあり、研修医でも課題を完成できない人がいるほどの難関試験になったようです。倉敷中央病院によると、ひと粒の米で極小の寿司を作る課題は、研修医が11貫完成のところ、学生は最高で8貫を完成。約5mmの折り鶴を作る課題は、学生2人が3つ完成させたところ、研修医はひとりも完成に至らなかったとのこと。参加した学生のひとりは、「ものすごく緊張したが実際に医療の現場では、もっと緊張するミスが許されない状況になるので良い体験ができた」と感想を語っています。
 一方、このトライアウトを振り返って、試験を監修した倉敷中央病院 救命救急センター長兼教育研修部部長の福岡敏雄医師は、「試験の目的は単に手先の器用さを試すのではなく、医療現場という命を預かる状況での集中力や判断力、極限状況でも諦めない精神力を試すことでした。医学生が試験に取り組む様子をみていると、最初は手も足も出なかったのが、繰り返し挑戦する中で色々な工夫をするなどの進化が見えて、短い時間にも自分を向上させていく可能性を感じました」とコメントしています。

 患者の身体と向き合う医療現場において、医師には判断や処置のミスが許されない中で目の前の患者にある課題を解決するという大きなプレッシャーが掛かり、極限状態でも冷静に的確な判断・処置ができる精神的な強さや粘り強さが求められます。しかし、実際にはこうした緊張感において医師としての資質や技術を磨くのは研修医になってからであり、大学の成績や面接試験で試せるのはこうした資質のごく一部。優秀な成績を修めて国家試験に合格したという結果からでは、医師としての資質は十分に試せないというのが現状なのです。
 この点について、THE PAGEの取材に応じてくださった福岡医師は、「今回実技試験を導入した背景は、今の評価方法では十分ではないということ。そして、それに少なからぬ不満や不安を感じている医学生が多いということです。医学教育の領域では、最近注目されていることとして“プロフェッショナリズム教育”があります。知識や技術は教えられますが、医師としての行動規範やプロとしての自立性、自主性、社会的役割などは簡単に教えることはできません。そして、その評価も難しいのです。このような実技試験を取り入れることは、表層的なことだけではなくもっと本質的なことを見ようとしているという教育機関としての態度表明であり、医師を目指す若い人たちにプロ意識を促進することにつながるのではないでしょうか。」とコメントしています。
(略)
 今回のトライアウトでは、手技に関する学生のスキルや態度、自己学習や自己評価のスタイルを見ることができ、『この学生はこうするときっと伸びるだろうな』『こういったところは教えなくても良さそうだな』など、いろいろな事を感じました。このような気づきの先に、多面的、継続的な現場での評価と指導が実現するのではないかと思います。そして、多様な社会からの要請にこたえることができる人材を育成し続けることができる体制を維持することが、私たち病院の教育担当者の役割だと感じています」(福岡医師)。

世間での反応を見る限りでは当然のことながら「今まで実技試験はやっていなかったのか?」と言う声が多いようなのですが、ただ今回の試験方式がいわゆる実技試験と言うものとして一般的なスタイルではないこともあって、これで日本初と言われると将来的に通常想像されるようなスタイルでの実技試験が行われた際に何と言うべきなのかと言う疑問は残るでしょうか。
興味深いのは糸結び等手先の修練に励んでいるだろう先輩の先生方が必ずしもいい成績を上げているわけではないと言うことで、逆に言えば後天的なトレーニングによる影響を非常に効率よく廃していると言うことでもあるのでしょうか、別に医療用の選抜試験に限らず何の仕事であれ応用は利きそうな方法ですよね。
米粒大の寿司を作ることがどんな選抜になるんだと誰しも最初は疑問に感じるところではあるのですが、話を聞いてみれば単純に多く作れれば合格と言うわけではなく、高いハードルをどのようにクリアしていくかと言う態度を見ていると言うことですから、今回の試験そのもののあり方がベストではないにせよ一つのブレークスルーとして意義はあったのではないかと言う気はします。

医師と言う職業は日常生活の中で他人を合法的に傷つけることが許された唯一の職業であると言う人もいるそうですが、逆に言えば医師ならば許されている診療行為の数々は医学部生には許容されていないものも多く、学生実習などで学生同士で採血をし合うと言う光景は医学部においても昔から行われていますけれども、あれも厳密に言えば法に触れる可能性はありそうですよね。
一応はお互いに了解し監督者もついた上でやっていれば許容されると言う解釈になっているようですが、個人的思想信条なりに基づいてそうした行為を是としない方々が進級を考えると嫌々ながらでも実習に参加せざるを得ないケースもあるのでは、などと考え始めるとなかなか難しいところですし、実際に多くの場合実習に参加しなければ即留年になるわけですから少なくとも半強制と言う言い方は出来そうに感じます。
この種の問題と言うものは以前から必ずしも認識されていなかったわけでもないし、また実際に医師免許を持っていたとしても技量未熟な医師が患者さん相手の手技を行って失敗したらどうするんだ?と言う指摘も当然ながらあることから、今の時代は次第にダミー人形やトレーニング用の道具を用いる方法が普及してきているところで、学生からベテランの先生方にまで利用されているものも幾つかありますよね。
日本でも医学生に実技試験を課すようになってきていますが、この方面の先達であるアメリカでは実技試験においては医学的に正しい行為が行えているかどうかと言うよりも、模擬患者が納得してくれるかどうかが評価されるのだそうで、この辺りは先の試験においてもそうですが表向きの目的と本当の評価ポイントが別にあると言う、言ってみれば受験生泣かせの試験でもあると言えそうです。

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コメント

おもしろそうだけど選抜試験としちゃ合否判定が難しそうですね。

投稿: ぽん太 | 2015年8月 6日 (木) 08時00分

合否判定というよりは、あまりに鈍くさいのは、外科系とか小児科とか、細かい手技作業が求められる
科には不向きって注意書きする位じゃないですか?

投稿: | 2015年8月 6日 (木) 09時28分

うーん 今回ぐり研さんは肯定的な評価のように思えますが、
このニュースを聞いた時に私には「なんちゅう斜め上の試験」と感じたたのですが…
これで去年に比べて倉中の今年のマッチ率がどう変化するのか、
非常に興味深いものが有ります。

投稿: | 2015年8月 6日 (木) 10時41分

肯定的と言いますか、これだけで合否を決めると言うのはそもそも非現実的だと思いますから、おそらくは補助的限定的に参考にする程度になるのではないかと思います。
このやり方がいいかどうかはともかく、ペーパーテストによる選抜の限界は誰しも感じているところなので、多様なやり方はあっていいと思いますけれどもね。
個人的にはマンパワー集約型産業なのですから多少のテストの点数よりも、例えば飲みニケーションの場での振る舞いなどの方がよほど参考になりそうな気もしますが。

投稿: 管理人nobu | 2015年8月 6日 (木) 11時08分

>これで去年に比べて倉中の今年のマッチ率がどう変化するのか、非常に興味深いものが有ります。
 全く同感。クラチュウさんは人気はあり、買い手市場状態だから好き勝手ができる、というだけのこと。全国区でやらかしてどうなるか、あえて打って出るところなど人気商売そのもの。 研修医が集まらなくなってきてるのかも。
 >医学的に正しい行為が行えているかどうかと言うよりも、模擬患者が納得してくれるかどうかが評価される
 弁護士も医者も一緒の国ですから。

投稿: | 2015年8月 6日 (木) 11時50分

ちなみに研修医ではない医者の採用試験は、面白実技試験があったりするんでしょうか

投稿: | 2015年8月 6日 (木) 16時04分

院長直談判で売り込む場合はなんでもありだと側聞します

投稿: | 2015年8月 6日 (木) 16時13分

国試フィルター通す時点である程度の能力は担保されていると考えれば
後は人格面の参考になれば十分なのかもしれません

投稿: | 2015年8月 7日 (金) 08時07分

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