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2015年8月31日 (月)

高齢者が続々と身内殺しに走る時代

最近高齢者による悲惨な家庭内殺人事件が続発していると話題になっていることをご存知でしょうか、

「肉体的、精神的に限界迎えた」 精神疾患の41歳長女殺害、81歳父に異例の猶予判決 傍聴席からもすすり泣く声(2015年8月21日産経新聞)

 「娘は助けを求めていた。救ってあげられなかったのが私の一番の罪です」。精神疾患の長女=当時(41)=の首を絞めて殺害したとして殺人罪に問われた和歌山市の男性(81)の裁判員裁判で、和歌山地裁は7月、男性に懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。公判で明らかになったのは、精神疾患で苦しむ長女と、愛する長女の暴力に耐え続けた家族の姿。被告席の男性と証人出廷した妻は法廷で最後まで長女に謝り続け、傍聴席ではすすり泣く声も聞かれた。(兵頭茜)

「被告を強く非難することはできない」

 判決によると、男性は2月14日午後10時20分ごろ、自宅で同居する長女が病身の妻を布団越しにたたくのを見て殺害を決意。長女の背後から首に電気コードを巻き付けて殺害した。
 公判で、検察側は「被告人に同情の余地は一定程度あるが、被害者と距離を置くなど殺害以外にも方法があった」と指摘し、「強い殺意を持ち、犯行態様は軽くない」として懲役6年を求刑した。
 一方、弁護側は「長女は暴れて被告やその妻に暴力をふるっていた。精神的にも体力的にも限界に達していた」と主張。「重い精神障害のある娘の面倒を長年見るにあたり、肉体的にも精神的にも限界に達していた。犯行を後悔しており、高齢である」として執行猶予付きの判決を求めた。
 殺人罪については、法定刑の下限は5年。浅見健次郎裁判長は「約20年間もの長期間にわたり、被害者のために努力し、肉体的、精神的に限界を迎えた末に本件犯行に及んだ経緯からすると、被告を強く非難することはできない」とし、男性が反省していることや高齢であること、病身の妻がいることなども理由に、執行猶予判決とした。
 検察側は控訴せず、1審判決が確定した。
(略)

川上の母親絞殺:息子に懲役6年6月 地裁判決 /奈良(2015年8月29日毎日新聞)

 川上村で今年3月、同居の母親を絞殺したとして殺人罪に問われた同村大滝、無職、松葉正昭被告(70)の裁判員裁判が28日、奈良地裁であり、柴田厚司裁判長は懲役6年6月(求刑・懲役8年)を言い渡した。

 判決によると、松葉被告は3月10日夜、自宅のベッドに寝ていた母親(当時94歳)の首を右手で圧迫して窒息死させた。

 柴田裁判長は、松葉被告が母親の介護を中心的に担っていたことなどについて「同情できる面もある」と述べる一方、「他の親族に介護を一時的に委ねるなどの手段も講じられた。思い詰め、殺害を決意したことは短絡的」と指摘した。【小坂剛志】

老老介護殺人 最後の夜、夫は妻に楽しい思い出を語り続けた(2015年8月25日NEWSポストセブン)

 7月8日、千葉地裁で「懲役3年、執行猶予5年」と下された判決は、宮本浩二・被告(仮名・93歳)が当時83歳の妻に対する「嘱託殺人未遂(妻の死亡後、嘱託殺人に訴因変更)」に関するものだった。昨年11月8日、痛み止めの薬も効かず苦しむ妻を見かねて夫が手をかけたのだが、死ぬ間際まで夫妻は仲睦まじかった。
(略)
 妻にとって宮本被告は「自慢の夫」だったという。近くで定期的に開かれる障害者団体主催のバザーに欠かさず顔を出していた夫のことを「うちの人は本当に優しい」と満面の笑みを浮かべながら話す姿を複数の住民が覚えている。
 そんな2人の生活が一変したのは約2年前、妻の足腰の衰えが顕著になってからだった。以降、妻の姿を目にした住民はほとんどいない。
事件が起きて初めて旦那さんが介護に追われていたことを知った。奥さんの姿を見なくなってから、旦那さんが1人で自転車に乗ってスーパーへ買い物に行く姿が目立つようになったので不思議に思っていたのですが……」(近隣男性)
 公判では、妻が介護サービスを受けるのを嫌がっていたという証言もあったが、その真意を事件前、妻は友人にこう話していた。
私より助けが必要な人がいるはず

 事件当日、廊下で転倒した妻から「もう痛みに耐えられない。何もできない、苦しいだけ。殺してほしい」と懇願された。
“もう断われない”──。
 宮本被告は決心した。その日の夜、妻に添い寝をした。出会った頃に遡り、新婚生活、子供が生まれた時のことなど、楽しかった思い出を妻に語り続けた。その時の様子を宮本被告は公判でこう語っている。
「妻はニコニコしていた。とても綺麗だった」
 60年分の思い出話を語り終えた後、被告はネクタイを手に取った──。

 検察から懲役5年を求刑された時にはこう答えた。
私がしっかりした男だったら(もっと)上手な対応を取ったと思う。今でも妻を愛しています」
 判決後、裁判官は被告に優しく語りかけた。
「奥さんが悲しまないよう、穏やかな日々をお過ごしになることを願っています」

特に最後に取り上げました千葉の事件では判決文でもひと言も被告を責める文言はなく、「60年以上連れ添った妻を自ら手に掛けることを決断せざるを得なかった被告人の苦悩を考えれば、同情を禁じ得ない」とまで書かれたことが話題になっていますが、いずれの事件も心身に何らかの問題を抱え正常な生活を営むことが出来なくなった家族に対して高齢の家族が手を掛けたと言う、何ともやりきれない背景事情があったと言えます。
千葉地裁の判決文では「超高齢の被告人が、軽度の認知症を抱えながらも、自宅において被害者とほぼ2人きりの閉ざされた環境で眠る間もなく献身的に介護を続ける中で、次第に疲弊し、追い詰められた」と事件の背景を語ったそうですが、世話をしている側も高齢であり本来であれば日常生活に支援を要していてもおかしくないのに、さらに家族の支援まで引き受けるのですから大変ですよね。
場合によってはこれに経済的事情が絡んでくるわけで、昨今話題になることも多い親の介護のために子が退職し云々と言った場合、下手をすると長年親の介護で人生を棒に振った上に、親が亡くなればその年金も消滅し一気に生活が成り立たなくなる可能性もあるわけで、家庭内介護と言う行為を肉親の情などと美談めいて語っている場合ではないのかも知れません。

今年に入ってからだけでもすでに数件の介護が絡んだ高齢者による身内の殺人事件が起きているのだそうで、もちろん客観的に見れば「何故そこまでなる前に誰か周囲に助けを求めなかったのか?」と言う考えもあるのですが、当事者自身も認知症など様々な問題を抱える年代であり、風呂にも入れず睡眠も取れない状態で正常な判断を働かせる方が無理があるとも言えそうです。
そしていずれも共通しているのが周囲に迷惑をかけたくないと言う気持ちが強かったらしいと言う点で、この辺りは公的支援の制度など存在せず家庭内介護が当たり前だった世代であるだけに身内のことは身内で始末をつけると言う考えが固定観念的にあったのかも知れませんが、逆に何でも公的な支援が得られて当たり前と言う考え方が根付いているこれからの世代ではあまり起こり得ない事件なのかも知れません。
国が病院・施設から在宅へなどと家庭内介護をもっと頑張りましょうと推進しているのも、もちろん社会保障関連のコスト削減と言う考え方があるにせよ、一面では最近の世代に多く見られる何でも国や自治体が面倒を見てくれて当たり前と言う手厚い福祉にどっぷりと言う考え方に少しばかり手直しをしたい、出来ることはなるべく自分達でしてもらうようにしたいと言う気持ちの表れもあるのかも知れません。
ただこの種の社会保障の問題は往々にしてそうなりがちですが、実際には責任感が強く本来真っ先に社会的支援を必要としている人々ばかりが「国もそう言っているのだから」と追い詰められていくと言う問題もあって、この辺り何かしら公平に社会的支援を分配できる仕組みを整備しておかなければ類似の事件は幾らでも起きてくるのかも知れないですね。

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コメント

幼小児・児童を殺す親や親族もいますし。
今回の話題が高齢者に特有の問題によるものなのか、
単に”任意の個人にとって一番危険な存在は家族である”という事象の一部なのか、
考えてみる価値はあるかも、です。

投稿: JSJ | 2015年8月31日 (月) 07時55分

こういう場合は周囲とのおつきあいが大事なのかなと。
高齢者の家庭にはもっと踏み込んでいかないとダメですね。

投稿: ぽん太 | 2015年8月31日 (月) 08時18分

>高齢者の家庭にはもっと踏み込んでいかないとダメですね。
年を重ねれば 人付き合いを含めて諸般の事柄が面倒になりがち、
なので踏み込まれるのを望まない老人が多いのも事実。
安楽死についてコンセンサスを得る方が 最大幸福が得られるのでは?

投稿: | 2015年8月31日 (月) 08時48分

高齢者ターゲットの詐欺師がこれだけ活躍してる時代に
高齢者家庭に踏み込んでくる人間など怪しすぎてもう

投稿: | 2015年8月31日 (月) 09時18分

安楽死の視点では、家族が直接手を下すのでなければこうした場合、なかなかにわかには対応が難しそうには思います。
いずれにせよまずは困った時に相談する先があればと考えるところで、高齢者には一律とりあえず担当ケアマネをつけると言うのもありかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年8月31日 (月) 12時20分

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