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2015年7月23日 (木)

柔整問題、ようやく保険者側も腰を上げる?

柔道整復師と言えばいわゆる医療ではないにも関わらず医療保険を使えると言う存在で、かねてからその診療報酬を巡っては様々な疑問の声もありましたけれども、先日大阪でこの柔整問題を取り上げた勉強会があったのだそうで、整形外科医と保険者が中心となって開催されたと言うこの勉強会での内容が非常に示唆的なものになっていたようです。

返戻後、作り直せる柔整レセ、制度に疑問の声(2015年7月15日医療維新)

(略)
 勉強会は大阪市臨床整形外科医会の持ちかけで、保険者の協力で実現した。勉強会は、奈良県橿原市保険医療課の今井大介氏は、広告の取り締まりへの取り組みを紹介。橿原市は、療養費適正化に向けて、柔道整復師の指導権限の移譲を県に求めた結果、広告規制の指導権限を得て、2013年度から取り組みを実施している。

 具体的な違法広告の内容として、疾病名を挙げて「治療」と明記したり、必要事項を明記しないまま「各種保険適用」とうたっているものがあり、法律違反の広告を指導して、違法箇所を塗りつぶさせるなどしてきた。結果として、2014年度の新規の柔道整復施術所が、人口が同規模の奈良県生駒市では7件あったのに対し、橿原市では、0件だったことなどを紹介した。今井氏は、被保険者との面会や、採用した柔道整復師の資格保持者による療養費のレセプト点検などの取り組みにも言及した。橿原市においては、新規開業がなくなったのに加え、国保の療養費が2008年度から2009年度に増えたが、2010年度以降は減少し続けている

「おかしなレセプトばかり」

 療養費の国保審査の実態を紹介したのは、大阪府国民健康保険等柔道整復療養費審査委員を務める、大阪市臨床整形外科医会理事の岸本成人氏。審査会では、負傷時の状況をレセプトでチェックするが、岸本氏は「おかしなレセプトばかり」と指摘。ただ、おかしくても件数が多いことや、適正化に後ろ向きな職員がいるなどの実情があり、実際の問い合わせにまで至らない点を紹介して、「審査自体が目的化している」「機能は発揮していないどころか、レセプトにお墨付きを与えている」として、審査機能の低下を認めた。

 療養費におけるレセプト審査のルールへの疑問も提示。療養費の審査は、医科などの場合と違って、返戻された場合、一から作り直せる制度となっている。さらに、「なぜか、コピーをして、手元にオリジナルのレセプトを残すことができない」(岸本氏)問題もあり、実際の不支給決定までのハードルの高さを指摘した。
(略)
 ある企業の健康保険の保険者の担当者は、自身で進めている対策を紹介。照会対象の抽出に当たっては、「初めて施術を受けた場合」「施術日数が多い場合」「家族で施術を受けている場合」など、スクリーニングの対象を固定していない点を紹介。その上で被保険者への照会を実施していて、「保険適用外」と判明した場合は、「今後は自費で対応するように」と求めている点を紹介。照会の督促を3回まで実施していて、回答がない場合は、不支給としていることなどを紹介した。

「保険者よ、柔整師になめられるな」、約80の保険者勉強会(2015年7月14日医療維新)

(略)
 保険者向けに、柔整師の施術と関連する医学的知識を、参加者に解説したのは、大阪臨床整形外科医会理事の宮田重樹氏。冒頭で、柔整師の施術が認められているのは、「捻挫、打撲、骨折、脱臼のみ」とした上で、応急手当を除くと、「捻挫と打撲」に限定される点を指摘。「単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外」と強調した。さらに、柔整師が、「原因のはっきりしない痛みは、亜急性の外力による損傷」と主張する「亜急性」についても、「あり得ない」と述べた。

 負傷の実態についても解説。不正請求が疑われる事例では、「負傷個所3カ部位以上」というケースが少なくないが、日本臨床整形外科学会の調べによると平均負傷個所は1.22部位となっている点を指摘。さらに捻挫打撲の治療期間については、大阪臨床整形外科学会理事の骨折を除いた1113例で、「平均通院期間は6.2日、平均通院日数は1.9日」とするデータを示した。ともに、多部位、長期、頻回の日数について、実態が伴わない可能性を示した。

 医学的な判断を伴わない施術が悪影響を及ぼす可能性にも言及。筋内圧が何らかの原因で上昇して、循環器障害を引き起こし、筋壊死などにつながる「急性コンパーメント症候群」を紹介。加えて、大阪臨床整形外科学会で2014年10月と11月に突き指で外来受診した患者のうち、41%が骨折していた点を紹介して、医学的知識を伴わない施術が、治癒の遅れや、重症化につながる点を懸念した。

 さらに、医療機関で治療継続中に、柔整師が施術をしても、療養費の支給対象外となることや、按摩、鍼灸でも、「医療保険との併用は認められていない」と紹介。適正な支給申請かを判断する上で参考となる知識を紹介した上で、「定義を理解して、被保険者に伝えてほしい」と呼びかけた。

一読してなんじゃこりゃ?と誰しも感じたところだろうと思うのですが、ここでは何か問題があった場合にそれを伝える対象として柔整師ではなく、被保険者である市民が対象とされていと言う点に留意いただきたいところです。
もちろん医療における保険の審査もまあちょっとそれはどうなのよ?と思うところ少なからずあるとは言え、記事を見る限りでは柔整に関しては全くの素人が形ばかりの審査で通しているのか?と感じるところで、同じ保険診療の財源を使いながらこの格差は何なのか?ですよね。
その背景にあるのが何なのかと考えてみると、もちろん医科と柔整では件数や単価などに大きな違いもあり審査の密度の違うのでしょうが、特殊な事情として仮に保険者が支払いを拒否したと言う場合、医科であれば保険負担であったはずの部分は病院なりの持ち出しになりますけれども、柔整の場合は利用者である患者自身が支払わなければならないと言う違いがあります。
この理由として柔整師はあくまでも保険による支払い分を患者の代理として受け取っているだけであって、査定で切られた場合は再審査請求をするもしないも全て患者本人が決めることになっているのですが、もちろん実際には素人である患者が柔整師の書いたレセプトの不備を云々出来るはずもありませんから、実際には柔整師が代理で再審査をしているか、あるいは医科と同様自腹で損害をかぶっているのではないかと言う気がします。
医科でも診療費踏み倒し問題などに絡んで、保険負担分は病院が肩代わり請求せず患者に請求させるべきだと言う声も根強くあるのですが、患者の利便性によって今のようになっていると言うのであれば、別に柔整においても同じやり方で統一してもいいのではないか?と言う気はしますでしょうか。

また実際に不正請求としてチェックされている件数・比率は保険者にとって全くバラバラであることも問題で、前述のような理由から「切ってしまうと患者=市民に迷惑がかかるから」と自治体などはひどく遠慮がちであったりもすると言うのですが、例えば岸和田などではチェックの委託など厳しく(と言っても医科の基準からすると普通に、でしょうが)査定を行った結果、給付額が一気に3割も減ったと言うのですからどれだけザルだったのかですよね。
実際に「勤務医 開業つれづれ日記」さんのところで柔整の監査の実際を紹介しておられますけれども、まあさすがにどれほど場末の医科診療所でもここまでいい加減なことをやっていると言うことはちょっと考えにくいと思うのですが、「勤務医~」さんもおっしゃっている通り「なにか根本的なことがすべて間違っている」のだとしても、記事の内容からすると柔整的感覚ではこのレベルはごく普通に行われていることのように読めますよね。
医科で手慣れたチェックシステムをそのまま転用すれば幾らでも柔整さんが廃業に追い込まれていきそうな気配すら感じるのですが、こんな柔整さんが整形外科の半分にも相当する公的支出を招いているとなればやはり放置するわけにはいかないと思うのですが、何故今まで散々問題視されてきたこの柔整不正請求問題に今ようやく重い腰が上げられつつあるのかです。
その背景として公的保険支出の削減が厳しく言われ、どこにどれだけお金を使うかを厳しく問わざるを得なくなってきたことと無関係ではないと思いますが、今後社会保障費削減が進むにつれて保険者と施設側との争いが発生するのか?と考えてみると、柔整や薬局など今まで相対的にチェックが緩いままであった施設ほど負担感が急増しそうではあり、その結果業界内での分布図が大きく変わってくる可能性もありそうですよね。

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コメント

柔整利権ってようするに世の中に柔整関係者が多かったからで
今後はだんだんと考慮されなくなってくるでしょ

投稿: | 2015年7月23日 (木) 07時57分

柔整と提携する医者がいないと不正請求もできないんじゃないの?と思ってたが違うのかな

投稿: | 2015年7月23日 (木) 10時07分

むしろ医師と連携して施術するはずが、勝手に好き放題やっていると怒っている先生が多いようです。

投稿: 管理人nobu | 2015年7月23日 (木) 10時40分

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