« 少子化対策のために若者はもっと暴走すべき? | トップページ | 対価をきちんと支払わないのが何故か許容されがちな現場 »

2015年7月 2日 (木)

健康になるための技術はどんどん進歩しているのですが

健康診断などで「お得なセットメニュー!」的に取り扱われているものの代表格に腫瘍マーカーと言うものがあって、決して安いものではないのに結構オプションで頼んでいる方々もいらっしゃるようだし、その数字が高いからと大慌てして病院に駆け込んでくる患者さんもいらっしゃるようですが、一方ではその精密検査を引き受ける方の医師にとっても扱いが悩ましい検査の代表格でもありますよね。
「たまたま採血で測ってみましたら腫瘍マーカー高値です。検査も難しそうですがお手数ながら精査よろしく」などと言って90過ぎた寝たきりおばあちゃんなど送られてくると、受ける側は「どないせえっちゅうんじゃい!」と言いたくなることもあるんじゃないかと思いますが、先日はMSNに「医師が健康診断の「腫瘍マーカー」をオススメしない5つの理由」なる記事が出ていて、やはりスクリーニング的に使うのもどうなのかと言う気がします。
一方で技術的進歩は年々進み、人類がその克服を願ってやまない癌という病気もどんどん早期発見が出来るようになって行くと言うことなのでしょうが、特に健診や日常臨床の場において腫瘍マーカー以上に簡便な検査法が次々と生まれてきては続々と臨床の現場に投入されようとしています。

がん診断 血液1滴、3分で 神戸の企業共同開発(2015年6月17日神戸新聞)

 血液中のがんに関連する物質が放つ光をとらえ、がんの有無を診断する手法を、神戸市中央区の医療機器会社「マイテック」と昭和大学江東豊洲病院(東京都)などのグループが世界で初めて開発した。わずか1滴の血液を使い、3分以内で診断できるという手軽さが最大の特徴で、1年以内の臨床応用を目指している。(金井恒幸)

 初期のがんは腫瘍が小さく画像検査では発見が難しい。また、従来の血液検査ではがんになると増える物質を調べる方法があるが、初期は検出されにくいなどの課題があった。
 グループは2013年、マイテックが開発した特殊な金属チップに血液を付着させ、がんが免疫に攻撃されたときに血液中に溶け出る「ヌクレオソーム」という物質を集め、レーザーを当てて検出した量でがんを診断する手法を開発した。
 その後、もっと簡便な手法を模索。がん患者と良性腫瘍の患者計20人の血液をこの金属チップに付着させ、紫外線などを当てて蛍光顕微鏡で観察すると、ヌクレオソームが多量にあるがん患者の血液は発光したが、良性腫瘍の患者では発光しないことを突き止めた。20人全員でがんの有無を間違いなく判別できた。ヌクレオソームは初期のがんでも検出できるという。

 今回は膵(すい)臓がんと胃がん、大腸がんの3種類で発光を確認。ヌクレオソームは血液以外の体液にも含まれることから、マイテック技術担当の長谷川裕起さん(28)は「たんや尿から、肺がんやぼうこうがんの有無を判断する研究も進めたい。人工多能性幹細胞(iPS細胞)ががん化していないかどうかの検査にも活用できるようにしたい」と話す。
 昭和大学江東豊洲病院消化器センターの伊藤寛晃講師は「この診断法は、健康診断の採血の余りを少し活用するだけでできる。離島の人でも画像さえ送れば判定でき、都会と地方の医療格差解消にもつながる」と話す。
 研究成果の一部は、英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。


東ソー、光磁気ディスク製造技術を応用 組織を採らない「リキッドバイオプシー」 血液中を循環するがん細胞を検出・採取する技術が登場 (2015年6月21日日経メディカル)

 血液中を循環するごく微量のがん細胞(CTC:circulating tumor cells)を1つずつ検出でき、採取して遺伝子も解析できる――。侵襲度の高い生体検査なしに血液でがんを診断するリキッドバイオプシー(liquid biopsy)の手段となる、そうした技術を東ソーが開発した。実際にCTCを検出できることを確認済みで、研究および臨床応用に向けた事業化を検討していく。開発した検査チップや装置を「第2回 個別化医療 技術展(PMEX 2015)」(2015年5月13~15日、東京ビッグサイト)に参考出展した。
 CTCは原発巣から血管内に浸潤したがん細胞で、がんの転移などを引き起こすとされる。血液検査でCTCをとらえ遺伝子レベルで解析できれば、原発巣の組織を(内視鏡などで)採取する生体検査なしに、適切な治療薬を選択したり治療効果を判定したりできる。患者に大きな負荷を与えず早期に治療方針を決定したり、がん細胞が獲得した薬剤耐性に応じて治療薬を変更したりするのに役立つ。

 血液中のCTC含有量は極めて少ない。1mLの血液に含まれる細胞は数十億個のオーダーだが、CTCは「数個程度」(東ソー)。そのため、CTCを精度よく検出したり、選択的に採取したりすることが難しいという課題があった。
 東ソーの技術では、検査チップ上に多数形成した微細な穴に血液中の細胞を1つずつ固定することで、CTCをとらえる。チップの2つの電極間に交流電圧を加えると、「誘電泳動力」によって微細な穴に電界が集中し、CTCなどの細胞が引き寄せられる仕組みだ。
 CTCを固定した後、がん細胞に特有のたんぱく質に結合する抗体でCTCを標識し、蛍光顕微鏡で検出する。CTCの固定位置を特定できる検査手法であることから、とらえたCTCをピペットで採取することが可能だ。
(略)

最近にわかに注目を集めているのがこのリキッドバイオプシーと言うやり方で、使い方によっては非常に有用そうなだけにその普及を待ち望んでいる先生方も多いと思うのですが、組織診断と違って検査自体に特殊な機材やテクニックを要すると言うものでもないだけに、この種の技術は離島や僻地などにおける応用が期待されると言うのも納得ですよね。
早期診断が非常に困難で予後も悪い膵臓癌などが健診のついでに発見出来るようになればこれは大変な進歩で、癌腫によっては非常に役立つ技術なんだろうと思いますが、こうして検体検査によってあると診断された早期の微小な癌を実際にどうやって探すのか?と言う問題も残るところで、精密検査を担当する各施設の先生方は今以上に仕事が増えると言うことになりそうですよね。
もちろん逆に今までなら画像診断で見つかった癌の細胞を取って調べるために何度も厄介な検査を必要としていたものが、これからは血を採るだけですぐに有効な治療法まで調べられて治療に取りかかれると言うことですから逆に仕事が減る部分もあるのかも知れませんが、この種の検査はとかく簡便であるだけに果たしてどこまで一般化して用いられるべきなのかと言う疑問が常につきまといます。

以前から職場健康診断で肝炎が見つかったが、職場に知られると解雇されるかも知れないから何とかしてくれないかと言った話を聞いたことのある健診担当医の先生もいらっしゃるかも知れませんが、特に遺伝子検査なども健診のついでに血の一滴で行えるようになると各種疾患のなりやすさも判ってしまう道理で、企業とすれば例えば採用試験にこうした項目を追加することで簡単に将来的な有病者のリスクを知ることが出来るはずです。
アメリカなどでは検査も進んでいる一方で加入するのがリスク毎に保険料も層別化された民間保険ですからこの方面には敏感で、遺伝子検査キットを販売している会社が出荷停止命令を受けたと言う話も出ていましたけれども、海外ではすでに検査結果によって差別することを禁じる法律も出来ていると言うのですが、法律が出来ると言うくらいですから実際そうした問題があると言うことなのでしょう。
日本でもようやく国が遺伝子検査の取り扱いを検討し始めているのだそうですが、例えばメタボになりやすい遺伝子を調べることがメタボ対策にもつながるじゃないか、メタボ健診で一斉に調べた方がいいんじゃないかと言われればこれも御説ごもっともであるし、高い費用とマンパワーを使って癌検診をするよりこっちの方がずっといいじゃないかと言う意見も出そうなだけに、どこまで規制を強化すべきか難しいところでしょうね。

|

« 少子化対策のために若者はもっと暴走すべき? | トップページ | 対価をきちんと支払わないのが何故か許容されがちな現場 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

疾患特異性が高くてつかいやすい検査ならいいんですけどね。
個人的にマーカーでおすすめしてんのはPSAくらいかなあ?

投稿: ぽん太 | 2015年7月 2日 (木) 08時02分

神経疾患の原因検索の一環として悪性腫瘍のスクリーニングをしないといけないことがあるのですが、昔はCTだupperGIだ注腸だシンチだ、と大仕事でしたが最近のケースレポートではPET-CTが散見されるようになり、隔世の感があります。

投稿: JSJ | 2015年7月 2日 (木) 09時00分

あなたのがん 見つけます ~超早期治療への挑戦~
http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/index_yotei_3677.html

投稿: | 2015年7月 2日 (木) 11時15分

>最近のケースレポートではPET-CTが散見されるようになり、

参考までに、この場合は自費で受けていただくと言うことになるのでしょうか?

投稿: 管理人nobu | 2015年7月 2日 (木) 12時19分

>参考までに、この場合は自費で受けていただくと言うことになるのでしょうか?
いやあ、どうなんでしょう?
私自身は一線から退いて早10年、便利な世の中になったものだと感慨にふけるばかりでして。
もしかしたら、大学(DPC)病院とかで入院期間も含めたトータルコストで、PET以外で全身検索するよりも有利という判断が働くのかもしれません。

投稿: JSJ | 2015年7月 2日 (木) 13時21分

ああなるほど、PETも自前でやっている施設ならそう言うのはありなんですね。

投稿: 管理人nobu | 2015年7月 2日 (木) 19時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/61823353

この記事へのトラックバック一覧です: 健康になるための技術はどんどん進歩しているのですが:

« 少子化対策のために若者はもっと暴走すべき? | トップページ | 対価をきちんと支払わないのが何故か許容されがちな現場 »