« アメリカ同性婚合憲判決から広がる世界的余波 | トップページ | 病院が増えては困ると言う地方の事情 »

2015年7月16日 (木)

機能性表示食品と言う判りにくい制度

この春から機能性表示食品なる新たな制度が立ち上げられたことはすでに報じられた通りなんですが、今まであったトクホだの栄養機能食品だのとどう違うのか?と言うことが非常に判りにくく、「体調の維持・管理に役立つことは表示していいのに、疾患の治療効果・予防効果を暗示する表現は認められないとはどういう意味だ?」などと疑問に感じる方も多いと思います。
この機能性表示食品の特徴として、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を備えて届け出れば、安全性や機能性について国の審査等がなくともいいと言うのですから、何を科学的根拠と考えるかによれば例のレメディーなる砂糖玉などもまさしくこういう届け出が可能になる理屈ですよね。
実際にどういう感じの表示になるのかと言う疑問に対して「温州ミカン=βクリプトキサンチンを含み、骨の健康を保つ食品です。更年期以降の女性の方に適しています」等々の記載例が示されているのですが、この今ひとつよく判りかねる機能性表示食品に関連して、長年栄養学方面に関わってきたジャーナリストの佐藤達夫氏が、先日こんな記事を書いていました。

「機能性表示食品」事業者が、科学的根拠に基づく食情報を提供するFOOCOMを訴える(2015年7月13日yahooニュース)

■FOOCOMが消費者庁に真っ正面から「申し入れ」

機能性表示食品については、このコラムで何度か書いた。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/satotatsuo/20150503-00045361/
http://bylines.news.yahoo.co.jp/satotatsuo/20150703-00047213/

読んでもらえればおわかりになると思うが、私は機能性表示食品をも含む「いわゆる健康食品」に対しては批判的立場をとっている。私よりもさらに過激に、というよりも論理的に機能性表示食品を批判しているのが「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体:FOOCOM」だ。
6月に公表がスタートした機能性表示食品の届け出についても、消費者庁に対し真っ正面から「申し入れ」を行っている。詳細は下記のホームページをご覧いただきたい。具体的に13の商品(の届け出)に対して疑義を申し立て、その理由もしっかりと述べてある。同時に、消費者庁に対してガイドラインの改訂を提案し、早急に事業者に対する指導を求めてある。

http://www.foocom.net/column/editor/12869/

私は「きわめてまともな」申し入れであると感じたのだが、具体的な商品名や成分名を取り上げて指摘された事業者からは、さまざまな反応があったようだ。中には、「鋭い指摘をありがとうございました。改善の参考にします」という感謝の言葉を伝えた事業者もあったとか。しかし、快く思わなかった事業者もあったようで、早々に「事実無根であり、営業上の不利益を被っているため、直ちに申し入れを撤回し、ホームページ等からの削除と謝罪を求める」という文書を証明配達付きで送りつけてきた事業者があったようだ。

http://www.foocom.net/special/12929/

■これも「経済的手法で首を絞めるやり方」なのか?

「機能性表示食品」に関する諮問に対し、消費者委員会のは平成26年12月9日に安倍首相に答申をしている。その答申には9つの付帯事項が付いていることは、すでに紹介した。その主旨--たとえば、届出後に、その食品の機能性に十分な科学的根拠が無いことが判明した場合には、早急に適切かつ厳格な行政処分や罰則を科すような態勢をとる。等々--から鑑みて、今回FOOCOMが行なった行動(消費者庁への申し入れ)は、しごく当然であり、消費者庁はこれを真摯に受け取り、早急に対応すべきである。
ましてや、事業者が「まるで脅しのような」謝罪と削除を求める文書を送りつけた行為については、消費者庁からその事業者に直接の指導があってもしかるべきと、考える。
その中身については(もしかしたら裁判沙汰になるかもしれないので)ここではこれ以上は踏み込まないことにする。私が危惧するのは、この事業者がとった「手法」である。正式な内容証明郵便で「謝罪」と「削除」を求めているので、当事者(FOOCOM)としては、放置するわけにはいかず、弁護士等に相談をして、対応することになる(実際、そうしたようだ)。
もちろん大きな出費を伴う。FOOCOMは、私の知る限り、きわめて弱小な組織だ。基本的にホームページの閲覧はタダ、会員の会費のみで運営をする消費者団体である。「いわゆる健康食品」の売り上げで大きな利益を得ている事業者にとっては、弁護士費用などは「織り込み済み」だろうし、そもそもそれほど大きな負担にはならないだろう。しかし、会員の会費のみで運営している小さな組織にとっては、弁護士費用はかなりの「負担」になるはずだ。
論理的にはあるいは科学的には対抗できなくとも、経済的負担を負わせて「物を言わせなくする」という手法を看過するわけにはいかない。他の会社もこれに倣ったら、消費者のために正しいことを言う組織は姿を消すかもしれない。
折しも、時の権力者が「新聞の発言を封じるには、広告主から圧力をかければいい」と発言し大きな問題となっている。今回の事業者が、そのような貧しくかつ下品な発想の持ち主ではなく、FOOCOMの指摘を自社の商品を見直すきっかけにして、真に「消費者の健康に貢献する商品」の制作に役立ててもらいたいと願う。

まあしかし手間ひまもお金もかけてきちんと国に認められたと言う気持ちがあるメーカー側からすれば、国がちゃんと認めているのに何故見ず知らずの無関係な連中が横から文句をつけてくるんだ?と糞害する気持ちにはなるのかも知れません。
消費者の立場とすれば事実こうしたことがあるのだとすれば、そもそも機能がないのに何かしら有益なものであるかのように表示していいと言うのはどうなんだですが、特にここでは資本力のある大企業がこうした抗議を行っているのではないか?と言う疑問が提示されている点にも留意すべきですよね。
基本的に書類の書式さえ整っていれば効果効能等の審査はしないと言うシステムですから、実際にどれくらいの確率で審査に通るものなのか?と言うことが一つの信頼性の目安になると思うのですが、当初届け出られた100件余りのうちで認められたのが8件、6月始めの時点で20数件登録されたものはほぼ例外なく大手企業からのものであると言い、落第になった理由の大部分は書類不備であったのだそうです。
大企業であれば資本力にものを言わせて好きにデータを出してこられるのだろうけれども、中小企業にはとてもそこまでは手が回らないとなれば、長年伝統的方法で生産されてきた地方の小さなメーカーによる食品はまず申請も出来ないと思われ、いわゆる手作りの丁寧に仕上げられた品よりも工場生産の大量生産商品ほど様々な効能をうたって広報できると言うことにはなりそうですよね。

見る限りにおいてはあまり高級な機能を謳えると言う制度でもなさそうで、前述の例で言えば恐らくどこの誰が作ったミカンであろうが効果効能には大差がないんだろうと考えると、本来業界団体なりが収集・公表するデータに基づいてメーカー各社が申請を行えるようにすれば一番公平なのだろうし、食品そのものの需要を伸ばすと言う意味ではその方が長期的にはメリットが大きいんじゃないかと言う気もします。
一方でメーカー側としては手間ひまかけて書類を調えて申請するのですから、同業他社よりも自分達の製品の方が優れていると言う方向で差別化したいと言う気持ちもあるんだと思うのですが、その場合その食品全般に共通する効果効能ではなく、自社製品であるから有効なのだと言う点をしっかりアピールしないと、下手をすると宣伝をうっても他社にタダ乗りされてしまう危険性もあるかも知れませんね。
必要な添付資料を見ますと32にも登るのだそうで、なかなかこれらを揃えるのはハードルが高いと言えるのかも知れませんが、制度の目的としては健康への機能性にお墨付きを与えると言うよりは、根拠のないまま「健康にいい」等の怪しげな効能を謳うものを排除すると言うものであるそうで、近くこれら似非健康食品に対する取り締まり強化も検討されているとも言います。
今のところ制度そのものに対する認知度が低いこともあってか、ネット上などでは問題点に対して注目される方が多そうな印象なんですが、この新制度がいわゆる似非健康食品の類に対して促進的に働くのか排除的に働くのかと言う点に関しても注目しておくと、「機能性表示食品の商品自体はどうでもいいが、制度はそれなりに役に立った」と言う評価も今後出てくるのかも知れません。

|

« アメリカ同性婚合憲判決から広がる世界的余波 | トップページ | 病院が増えては困ると言う地方の事情 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

「機能性表示食品」
そうか、似非健康食品の排除を目的とした制度だったんだ。
また、お役人が狂ったのかと思っていた。

投稿: | 2015年7月16日 (木) 09時26分

役人さんもいろいろと考えてはいるんでしょ。
でも食べ物って栄養補給が最大の機能ですよね。
カロリーだけのファストフードだって認められかねないかなと。

投稿: ぽん太 | 2015年7月16日 (木) 09時39分

当「ぐり研」的には機能性も重要なのでしょうが、やはり食品は味と言うことが一番の評価基準になるのではないかと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2015年7月16日 (木) 13時20分

↑30年以上前、私が高校生の頃、体育祭の際ある保護者から当時発売されたばかりのカ○リーメイトが大量に差し入れされました。
「…」
「…」
「…どうする?」
「○○(差し入れしてくれた方の息子)には悪いけど…ねえ?」

当時のトラウマで以降当方はカロリー○イトを口にしていないのですが、仄聞するところによると味は随分改善されているようでw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年7月17日 (金) 11時01分

国産スポーツドリンクの走りとされる某社製品なども当時こんなものが飲めるか!と思ったものでしたが、最近ではむしろ仕事中の水分糖分補給にはやはりこれでなくては、と言う気もしてきています。

投稿: 管理人nobu | 2015年7月17日 (金) 11時10分

>国産スポーツドリンクの走りとされる某社 が 
>カ○リーメイト のメーカーですよね。
 ○○○汗は糖分が多すぎます。1.5倍希釈でようやく等張ですが、糖分補給に適当とは、管理人様がそのような過酷な労働環境にいらっしゃるとは思えないので、インプリントされたと思われるのですが。
 豆殻とか大豆の楽しみとか、とっつきにくそうな試みを気長に続けてみる努力には頭が下がります。囲い込んでしまえば、一定の市場を確保。
 主力抗精神病薬の特許切れ後継薬の開発もうまくいったようで、商売はとても上手なメーカーといえましょう、http://www.yakuji.co.jp/entry44820.html
 これには囲い込まれる気はさらさらないけど。

投稿: | 2015年7月17日 (金) 17時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/61892775

この記事へのトラックバック一覧です: 機能性表示食品と言う判りにくい制度:

« アメリカ同性婚合憲判決から広がる世界的余波 | トップページ | 病院が増えては困ると言う地方の事情 »