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2015年7月28日 (火)

生保受給者をお得意様とする医療ビジネス

増え続ける生活保護費抑制が模索される中で、一体どのような程度の給付が妥当な水準なのか?と言う議論は常に紛糾するところなのですが、先日こんな記事が出ていて一部方面で話題になっていました。

「組合出資金や共産党費にも使った」…生活保護は何のため?(2015年7月22日産経新聞)

 生活保護費を不正受給した疑いで、病院や診療所を運営する医療生協かわち野生活協同組合(大阪府東大阪市)の支部長ら2人が逮捕された事件で、新たに別の男性支部幹部も不正受給に関与していた疑いがあることが20日、分かった。大阪府警が任意で事情を聴いている。支部長は、詐取した保護費について「組合(医療生協)の出資金や生活費、日本共産党の党費に使った」と供述しており、生活保護と政治活動の関係が問われている。

 逮捕されたのは、同組合小阪支部長の小林輝子容疑者(58)=同市=と、小林容疑者の元夫で、同支部元総代の末広長一容疑者(65)=同=。さらに小林容疑者とアルバイト先が一緒だった別の支部幹部の男も、不正受給に関与していた疑いが浮上した。
 小林容疑者は、清掃作業アルバイトの収入を市に過少申告し、平成22年5月~24年1月分の保護費計約65万円を不正に受け取ったとして今月1日、詐欺罪で起訴された。その後、24年2月~25年3月の計約48万円分の不正受給容疑でも再逮捕された。
 関係者によると、小林容疑者は平成22年2月に生活保護を申請した際、共産市議を伴っており、市の福祉事務所で「仕事が見つからなくて生活がしんどい」と訴えたという。不正受給は22年5月~今年4月分の5年間で、総額約330万円になる見込み。
 府警はこのうち約240万円分について、詐欺容疑での立件の可否を検討しているという。

 生活保護の申請の現場では、申請者本人だけでなく、政党や団体の関係者が支援者といった形でかかわるケースが少なくない
 しかし生活保護は、あくまでも資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する人に、最低限度の生活を保障する制度だ。
 仮に正当に支給されたものであったとしても、「生活保護費は生活費に充てるのが原則。特定政党の政治活動に使うのは問題だ」と、熊本県立大の石橋敏郎教授(社会保障法)は指摘する。
 東大阪市によると、生活保護費を不正受給していたとして、詐欺容疑で逮捕された小林輝子容疑者が、医療生協かわち野生協で支部長をしていることは、事件発覚まで把握していなかった。
 関係者によると、小林容疑者が医療扶助を受けた後に提出する「医療要否意見書」には「就労は難しい」と書かれていたが、作成したのは医療生協が運営する病院だったという。
 一方、生活保護申請時に、小林容疑者に同伴していたとされる共産市議は、産経新聞の取材に9人の代理人弁護士名で「取材活動は、公安警察による政治活動妨害に加担するもの」と文書で抗議。「一切の回答をお断りする」としたうえで、「医療生協かわち野や日本共産党が、詐取されたお金と知ってこれを受け取ることなどありえない」としている。

共産党系列に限らず一部の医療機関と生活保護受給者との緊密な関係はかねて広く知られてきたところで、もちろん本来的な意味での生活保護の目的に合致する例も少なからずあったのでしょうが、伝え聞く限りでも社会保証制度を最大限活用して患者と自分達の利益の最大化を図るかのような行為が伝統的に行われてきたとかこなかったとかで、これ自体はまあ言ってみれば今さら感のあるニュースではあります。
ただ生活保護費を党費に当てるのが許容されることなのかどうか?と言われるとこれはなかなか議論の別れそうなところで、特に最近はワープア化が進む低所得層と生活保護受給者との逆転現象からとかく保護費の無駄遣いが問題化しやすい時代でもあり、兵庫県小野市の生保受給者パチンコ密告条例なるものが大いに話題を呼んだ経緯もありました。
先日も保護費減額反対を訴えた原告らが「5日間食べないでガムで空腹を抑えることもある」とコメントしたところ、「普通の人間は金が無くて空腹の時にガムのような高価な嗜好品は買わない」「足りない足りないと言う前にまずは家計簿を公開しろ」と言う声多数と言う状況でしたが、しかし政治活動も現代社会に生きる以上当然に認められる権利であると言う考え方もあり難しいところですね。
一方で改めて考えてみると、生保受給の要否の判断にも大きな役割を担っている医療機関が不正の片棒を担ぐと言うのは非常に問題ある行為であって、元気であるのに就労に支障有りと言う嘘の診断書を書く等の伝統的なやり方に加えて、最近ではいわゆる貧困ビジネス紛いのこんなやり口も横行していると言います。

生活保護窓口に派遣のクリニック 精神疾患患者“囲い込み”(2015年7月24日産経新聞)

 ■自立支援医療費目的か

 生活保護を受給する精神疾患患者の相談員として、窓口となる都内自治体の福祉事務所に特定の医療グループの職員が派遣され、多くの患者が同医療グループの精神科クリニックで公費が使われる「自立支援医療」を受けていたことが23日、分かった。元患者は相談員の助言でクリニックに通うことになり、通院をやめようとすると、「生活保護費を打ち切る」と虚偽の説明を受けたとしている。
 医療費を獲得するため、福祉事務所が患者の“囲い込み”の場になっていた可能性があり、産経新聞は取材を申し込んだが、医療グループは23日までに回答を寄せていない。
 一方、この医療グループは複数の患者を風呂のない狭いシェアハウスに居住させるなど劣悪な環境下に置いているとして弁護士らが近く、改善を指導するよう厚生労働省に申し入れる。

 相談員などの名称で自治体に職員を派遣しているのは、都内で4つの精神科クリニックを開設する医療グループ。各自治体に聞き取り調査をした結果、東京都大田区、江戸川区、港区の計3区の福祉事務所で相談員の派遣を受けていた。
 このうち江戸川区は平成19年度からクリニック側と随意契約を結び、今年度は区内3カ所の福祉事務所に1人ずつ計3人の派遣を受ける。相談員は窓口で患者の相談や、患者の家庭訪問などを担当。区内の生活保護受給者でこのクリニックに通う患者は44人に上る。
 また、大田区では19年度から4人、港区では24年度から1人、それぞれ派遣を受けていた。いずれの区も「一医療機関のみを優先的に紹介することはない」とするが「専門分野があり、結果として随意契約を結ぶクリニックを薦めるケースはある」(大田区担当者)とする。一方、元患者の1人は通院をやめた際、相談員から「生活保護費を打ち切る」と虚偽の説明を受けたと証言している。

 患者は医療費が軽減される「自立支援医療制度」を利用し、自己負担なしで通院治療やデイケアを受診。医療グループ側には1日10時間のデイケアで、1万円が自立支援医療費(精神通院医療)から支払われる
 厚労省によると、同医療費は20年度は約1482億円だったが、25年度は2092億円と約1・4倍に増加。同省精神・障害保健課は「福祉事務所での対応は自治体の裁量に任されているが、通院などは患者の意思に基づいている必要がある」としている。産経新聞はクリニックに対し患者の獲得手法や住環境などについて質問状を送ったが、23日までに回答はなかった。

精神科患者:「囲い込み」か 生活保護費も管理 東京の医療グループ(2015年07月25日毎日新聞)

 東京都内で四つの精神科クリニックを経営する医療グループが、生活保護を受けている精神疾患患者に極めて狭い部屋を紹介して金銭を管理したうえで、診察を受けさせている例があるとして、弁護士らでつくる「医療扶助・人権ネットワーク」(山川幸生代表)が24日、厚生労働省に監査や指導を求める意見書を提出した。

 記者会見した弁護士らによると、医療グループは江戸川、大田、港の3区と随意契約を結び、福祉事務所で患者の相談対応や家庭訪問などの業務に当たっている。相談に来た患者に職員が自らのクリニックを紹介することがあり、少なくとも4人が勧誘され通院した。

 グループは患者に宿泊先も紹介。雑居ビルの一室を仕切った10平方メートル以下の部屋を「シェアハウス」として紹介し、東京都の住宅扶助上限(単身世帯)と同じ月5万3700円を家賃として徴収していた例もあったという。

 生活保護費は福祉事務所からクリニックに現金書留で送られ、患者には一部の食事代しか渡さずに管理しており、金銭管理をクリニックに任せる同意書の日付が、実態と合わない例もあるという。

 医療グループは取材に応じていない。3区は「専門的ノウハウを持ち毎日出勤できる人がいる団体が他にないため随意契約した」としている。【古関俊樹】

実際に患者の囲い込みがあったのかどうかは現段階では何とも言えないのですが、患者が受け取るべき保護費を預かってその一部だけを渡し、閉鎖的環境に隔離して周囲と遮断すると言うのはまさしく貧困ビジネスの手法そのものであって、何しろ専門家が関わっていることなのですから素人の生保受給者からすれば何を言われても本当のことだと受け止めるしかないですよね。
もちろんこうした行為も十分モラルに反していることなのですが、大阪における生保専門クリニックなど各地にそうした実例があることでもある一方で、こうしたあからさまな生保相手の商売をしているクリニックなどに対して自治体が厳しく指導や規制をするどころか、むしろ黙認しているとも受け取られかねない状況が続いていたと言うこともこれまた過去にも見られたことです。
精神科疾患持ちの患者などが大挙して押し寄せてくれば近隣一般病院としても対処に困る場合もあるでしょうが、それ専門にわざわざ引き受けてくれる施設が確実にあるとなれば多忙な行政側担当者としては実はありがたいことなのかも知れずですし、いわば持ちつ持たれつの必要悪的関係として続いてきた伝統と言えるのかも知れません。

この話、国民一般から見ても保護費をパチンコやギャンブルに無駄遣いされたり、何の考えもなく放漫に使い切ってしまって月末になると保護費が足りない、もっと保護費を増やせと大騒ぎされるより、きちんと住むところから生活費の管理まできちんとしてくれているとなれば面倒がないとも言え、財政負担上もメリットがあると言う可能性すらあるわけです。
その代償として生活保護受給者の権利が侵害されているじゃないかと言う意見もあるはずですが、そもそも生保受給者の多くが金銭も含め日常生活管理がきちんと出来ない状況にあることは支援者の方々の方が主張してきたことであり、そうであるからこそいわゆる生活の無駄を省くことが難しいと言う声に対して、それなら周囲が厳しく管理してやった方が本人のためにもなるのではないかと言う意見も根強くありますよね。
あからさまに自分達の利益第一で考えているだろう多くの貧困ビジネス当事者は別に擁護する必要も感じませんが、やっていることとしては実はある程度妥当そうな方法論に近いものがあるとすると、これが人権侵害だ、決して許容されない暴挙だと大騒ぎするほど、生保受給者は本人の自助努力だけに委ねて放置するしかなくなってしまうと言う困った話になってしまいかねないリスクはありそうに思います。

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コメント

ナマポ診療もちゃんとチェックしろや
おれたちの税金使ってんだろうが

投稿: | 2015年7月28日 (火) 08時18分

>ナマポ診療もちゃんとチェックしろや

私も以前生活保護医療をチェックする立場におり、たまにおかしな内容のをはじいていたのですが、はじいても何も起こらないっぽいんですよね。
おそらくチェックする医者ではなく、自治体の担当者がサボっているんだろうと思いますが・・・

投稿: クマ | 2015年7月28日 (火) 11時06分

医療に関してはある程度医学的妥当性と言うリミッターが作用しますので、自治体側としてはチェックにコストをかけるよりもフリーパスの方がかえって安上がりなのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年7月28日 (火) 11時51分

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150729000006

生活保護打ち切り、無理な条件違法 京都市の敗訴確定へ
2015年07月29日 04時01分

 生活保護を受給していた京都市の和装関連職人の男性が、市の実現不可能な
増収指示で保護を打ち切られたのは不当だとして、市に損害賠償を求めた訴訟で、
市が上告を断念する方針を固めたことが28日、分かった。大阪高裁は17日、
差し戻し控訴審判決で、打ち切りを違法と認めて、市に約684万円の損害賠償を命じており、
この判決が確定する。

 判決などによると、男性は生活保護を1996年から受給しており、仕事に必要として
車の保有を認められていた。市は生活保護を継続する条件として、男性に対して、
口頭で車を処分するか、文書で収入を月額11万円まで増収するよう指導、指示した。
しかし、男性が従わなかったとして、市は2006年9月、生活保護の支給を打ち切った。

 判決では、市の指示は、収入を月額11万円まで増収すべきとする内容のみと指摘。
男性が月額11万円の収入に達した月はほとんどなく、病気の妻の世話などで
仕事の時間を増やすことは難しい状況などを挙げ、市の指示は「客観的に実現不可能、
または著しく困難」として、打ち切りを違法と認めた。市が口頭で指導した自動車の処分は、
指示の内容に含まれないとした。

 市地域福祉課の古川仁保護担当課長は上告を断念する理由について
「上告しても受理される要件に該当しないと判断した」としている。

 訴訟をめぐっては、最高裁が昨年10月、「車の処分を求めた口頭指導などを
守らなかったので保護を廃止した」とする市の主張を認めた二審大阪高裁判決を
破棄し、審理を差し戻していた。

■根拠ない打ち切りに歯止め

 吉永純花園大教授(公的扶助論)の話 生活保護の打ち切りは、受給者にとって
生活できなくなる恐れがある重い判断。就労収入の増額を求める指示は全国でも
よくあるが、判決は本人の能力や実績、家族の状況などを踏まえた実現可能な
ものでなければならないと明快に判断した。行政による根拠のない指示違反を
理由とする乱暴な打ち切りなどに歯止めをかける貴重な判決だ。

投稿: | 2015年7月30日 (木) 06時35分

池袋、新大塚、飯田橋、御徒町にあるEグループですかね。

投稿: | 2015年9月 4日 (金) 19時57分

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