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2015年7月15日 (水)

アメリカ同性婚合憲判決から広がる世界的余波

自由の国アメリカと言えどある種のモラル面に関してはひどく保守的なところもあることは知られている通りですが、つい先日連邦最高裁で同性婚を憲法上の権利だとして認める判決が出たことが大きなニュースとなり、オバマ大統領が「これはアメリカにとっての勝利だ」と発言するなど各方面に波紋が広がっています。
そんなアメリカにおいては同性婚に留まらず様々なカップルがその権利を求めて日々闘争を繰り広げていますが、先日そうした微妙な社会的緊張を反映するこんな事件があったそうです。

米国 犬と結婚したい男性が会社をクビに(2015年7月10日新華ニュース)

米サイト「ハフィントン・ポスト」の2日付報道によると、アメリカ・フロリダ州に住む32歳のRyan Uhlerさんがフェイスブック(Facebook)に「飼っている犬と結婚したい」との書き込みを掲載したことで会社から解雇された。

同性婚が認められた翌日に、Ryan Uhlerさんがフェイスブックに「犬を愛するなら、犬と結婚することは同性婚と同じ、今は犬との恋に心を注ぐ、私の犬Roccoを愛しており、犬も私を愛している」との書き込みをした。

6月30日に、デジタルマーケティング専門家としてのRyan Uhlerさんは会社からクビになったとの通知を受けた。「同僚たちがフェイスブックを使えない」と思ったRyan Uhlerさんは「同性婚への差別もなければ、最高裁の裁決に不満もないけど、なぜ会社をクビになったのか」と驚いている。

要するに同性婚合憲判決を揶揄するコメントだと判断されたのでしょうが、恐らくこれは裁判にでもなればかなりこじれそうな話だと言う気がしますし、実際にこの書き込みだけを理由として解雇されたのかどうか記事からははっきりせずですが、書き込みだけを見るとイヌ好きのコメントとしてそうおかしなものではないようにも感じるのですが如何でしょうか?
いずれにしてもこの合憲判決の反響は非常に大きなものがあるようで、はるか太平洋を隔てた台湾でも同性婚合法化を求めるデモがあったと言いますし、世界各地で性的マイノリティーが法的権利を求めて近年活発に活動している、そして行政もある程度それに対応した動きを見せていることは、先日も紹介した同姓カップルへの「婚姻関係相当」の証明書発行と言った事例からもうかがわれるところですよね。
同性婚は法的に婚姻と認められず各種権利の行使上不当な不利益にさらされていると言われれば、まあ確かに社会制度が婚姻・家族関係を基盤にしている以上その通りなのだろうし、性的少数者のために男性用、女性用に変わる新たなトイレマークを考按しようと言われれば、普通に男女のマーク併記でいいんじゃないか?と言うところなんですが、近ごろでは色々な権利を主張する人々が続出して収拾がつかなくなってきている気配もあります。

同性婚認めたから「一夫多妻も認めろ」と結婚届提出(2015年7月3日テレ朝ニュース)

 アメリカで出された同性婚を認める最高裁判決をきっかけに、一夫多妻の生活を送っている家族が裁判所に結婚届を提出しました。

 モンタナ州に住むネイサン・コリアーさん(46)は、宗教上の理由で、2人の妻と5人の子どもと生活をしています。2000年に1人目の妻のビクトリアさん(40)と法的に結婚しました。そして、2人目の妻のクリスティーンさんとは宗教上の結婚式を挙げましたが、アメリカでは一夫多妻は認められていないため、婚姻関係はありません

 先週、アメリカの最高裁で同性婚を合憲とする判決が出た際、ロバーツ最高裁長官が「同性婚を認めると、一夫多妻も同じ議論になる」と反対意見を述べたことから、コリアーさんは一夫多妻も結婚の平等にあたると考え、2人目の妻との婚姻届を提出しました。郡の裁判所はいったん受理するのを断ったうえで、来週までに正式な判断をして返答するとしています。コリア-さんらは、拒否された場合は訴訟を起こす構えを見せていることから議論を呼びそうです。

同性婚の次は近親婚?ドイツ政府の倫理委員会が兄妹婚の合法化に賛成(2015年7月10日IRORIO)

ドイツ政府の倫理委員会は、今月8日、血の繋がった兄妹または姉弟の結婚を合法化することに、賛成の意を表明した。

子供をもうけた兄妹が懲役3年の刑

ドイツでは数年前、4人の子供をもうけて実質的な結婚生活を送っていた兄妹、パトリック・スチュービング(兄)とスーザン・カレゥスキー(妹)の2人が懲役3年の刑に処せられるという事件があり、この事件が社会的な議論を呼んでいる。
兄妹であっても家庭を持つ権利はある」と主張するスチュービングはその後、2012年にヨーロッパ人権裁判所に上告したが、主張は受け入れられず敗訴となった。

障害児が生まれる可能性はあるが、刑罰には値しない

今回の倫理委員会の声明では、近親婚によって障害児が生まれる可能性が高くなることは認めながらも、「それは刑罰に値するものではない」としている。
ドイツの現行法では親子や兄弟姉妹が性的関係を持つことは禁じられており、これを破れば最高で2年の懲役刑が課せられると決められている。

14対9で兄妹婚を支持

倫理委員会の今回の声明には、委員の投票結果が反映されている。兄妹婚を禁ずる現行法に反対した委員は14人、賛成は9人、棄権が2人と伝えられている。
声明文の中には次のような1文がある。
「欧米で報告されている兄弟姉妹間の近親相姦の例は少ない。しかし、その当事者たちは、刑罰があることで非常に苦しい状況に追いやられている。彼らの基本的人権は保障されておらず、彼らは兄弟姉妹間の男女の愛情を否定せざるを得なくなっている

別に個人と個人の間の関係については当事者間がそれで納得して幸せになれるのなら好きにさせたらいいんじゃないかと言う人も多いでしょうが、しかし上記の記事で取り上げたような問題は社会的タブーとも絡んで、かなりデリケートな問題を含んでいるようには思います。
非常にややこしいのは例えば一夫多妻制と言う制度に関して言えば、ご存知のようにイスラム社会ではごく当たり前に行われていることでもあり、日本などにおいても歴史的に見れば別に珍しいものでもなかったわけで、アメリカ在住のムスリムが「俺達の社会ではこれが当たり前だ」と言うのを禁止すると言うのであれば、他の宗教的文化的慣習も同様に特定の価値観に反するものは全て禁止しなければおかしいと言う話ですよね。
兄妹婚など肉親婚に関しても、日本神話を始めおよそ世界中の神話や聖典でこれを取り上げていないものの方が珍しいのでは?と言うくらいですし、血縁関係が社会的階層の正当性を保証する社会においては血を濃く保つために親族間での結婚を繰り返すことは当たり前と言っていいことで、その結果ハプスブルク家のように近親婚が過ぎて断絶したのでは?と言われるようなケースもあるわけです。

この種の「○○婚を認めろ」的主張に対しては、「それが認められることで○○の関係が増えるのではないか?」と言う懸念が常に表明されていて、同性婚が増えてくると今でさえ低い出生率がさらに低下して社会的停滞を招くのでは?と言う声もあるくらいですが、さすがにマイノリティーがいきなりマジョリティーに転じるほどには急には増えないだろうにしろ、そうした関係に対する心理的ハードルは確実に下がりそうですよね。
近年ランドセルの色分けがケシカランと言った性差教育の縮小、廃止に伴って男女間の性差が縮小してきていると言う嘆きもありますが、例えば法的に結婚も許容されているのだから家族間でも男女の関係を持っていいんだと言う感覚が広まれば家庭内環境がどうなるのか?と言う懸念は当然にあるところだろうし、他方ではだからと言って刑罰まで与えるのは行き過ぎだと言う考えもこれまた当然あることでしょう。
いずれにしても賛成、反対両派とも何かしらの出来事が自体を大きく動かす蟻の一穴になることへの不安や期待感があって、今回のアメリカでの司法判断がその蟻の一穴になるのだとすればこれは歴史的判断であったとも言われるべきなのでしょうけれども、それがアメリカの勝利と言えるような結果に結びつくのかどうかはそれこそ歴史を後々振り返って見なければ何とも言えないんだろうと思いますね。

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コメント

ちなみにフロリダ州では獣姦は合法。
http://srad.jp/story/10/05/12/0118227/

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年7月15日 (水) 11時15分

まぁ同性婚はおkなのに近親婚 一夫多妻 一妻多夫 異種婚 乱婚はダメという理屈は無いと思いますね。

投稿: | 2015年7月15日 (水) 11時24分

どこまで個人の価値観を認めるのかは社会の中での数と言うこととも関係しそうですので、今後どれだけ支持者が増えるかが問われそうです。

投稿: 管理人nobu | 2015年7月15日 (水) 11時48分

婚姻って呼ぶからややこしいのでは?
男女の婚姻とは別制度で、家族と同等の法的地位を作ればいいんじゃないか?
それとも性的に結ばれちゃってる性的少数者が、どうしても婚姻って呼ばないと納得しないのかな?

投稿: | 2015年7月15日 (水) 15時52分

12歳娘結婚させ禁錮8年=63歳父に豪裁判所

時事通信 7月17日(金)18時40分配信

【シドニー時事】オーストラリアの最大都市シドニーの地裁は17日、
まだ12歳の娘を結婚させ、性行為まで促したとして、イスラム教徒の
父親(63)に禁錮8年を言い渡した。

少なくとも6年間は仮釈放を認めない。12歳の結婚はもちろん、14歳
以下への性行為あっせんも罪に問われた。

豪メディアによると、レバノン国籍の留学生(26)は2013年、少女と
結婚したいと父親に伝えた。父親はその後、結婚に同意し、イスラム教
指導者の下、自宅で挙式した。少女は妊娠したが、流産したという。
地裁判事は「父親の行いは信仰上の行為として正当化されない」と非難した。

留学生には、禁錮10年が既に言い渡された。早ければ6年後には
仮釈放が認められるが、その時点で国外追放される見通しだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150717-00000151-jij-asia

投稿: | 2015年7月18日 (土) 14時43分

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