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2015年7月13日 (月)

トヨタ幹部の麻薬密輸事件は不起訴になりましたが

世界的大企業の外国人役員が麻薬密輸で逮捕されたと言う前代未聞の事件が報じられ、その解決にケネディ大使まで動いたと言う話も出ていたようですけれども、結局大山鳴動して鼠一匹と言う微妙な結果に終わったと報じられています。

トヨタ元役員起訴猶予 慎重捜査「起訴するほどでない」(2015年7月7日産経新聞)

 ジュリー・ハンプ容疑者を起訴猶予とする方針を固めた東京地検。7日の最終協議の直前まで、ハンプ容疑者に対する調べを尽くし、慎重な捜査を進めていた。起訴猶予は、裁判で有罪の証明が可能な場合でも、容疑者が社会的制裁を既に受けていたり、悪質性が低かったりした場合などに選択される。証拠が足りずに不起訴とする「嫌疑不十分」とは異なる

 ハンプ容疑者は事件を受け、自ら弁護士を通じてトヨタ役員の辞任届を提出。実際に膝に痛みを抱えており、輸入した錠剤は鎮痛剤として利用していたという。これらの点で社会的制裁は受け、悪質性は低かったと判断したとみられる。

 関係者によると、常用薬を持って海外に渡航する際、指定薬物かどうか調べたり税関に届けたりすることが一般的に浸透している手続きかどうかという点も考慮された。これらの手続きが漏れていたとしても、強い隠蔽の意図があったとは言い切れないと見る向きも大きかったという。

 一方で錠剤入りの荷物は「ネックレス」と申告され、錠剤は箱の底などに隠されたように入っていた。しかしネックレスはハンプ容疑者の父親が趣味で集めたもので、これまでにもハンプ容疑者に渡したことがあったという。

 こういった状況から、地検内では「起訴するほどではない」との声も上がっていた。警察当局は最後まで「起訴するには十分」としていたが、地検は起訴猶予の結論を固めた。


「悪質性低いとはいえない」「厳しい規制への認識乏しさ考慮」…トヨタ元役員の起訴猶予、今後の捜査に影響も(2015年7月8日産経新聞)

 トヨタ自動車のジュリー・ハンプ元常務役員に対する捜査では、違法性の認識が大きな焦点となっていた。東京地検は、ハンプ元常務役員がオキシコドンは規制薬物との認識はあったと認定。しかし「酌むべき点がある」として起訴を見送ったと説明している。

 薬物事犯の違法性の認定をめぐっては、覚醒剤の密輸事件に対する平成2年の最高裁判例が参照されることが多い。被告は輸入物を覚醒剤と知らなかったものの、「体に有害で違法な薬物類」との認識はあったとして故意が認定された。逆に、物質の名前を知っていても作用を知らなければ故意の認定は難しいともされている。

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は、「『違法薬物と知らなかった』という抗弁がまかり通らないよう、故意の認定が柔軟になる中、今回の処分はほかの薬物事犯に大きな影響を与えるのではないか」と懸念。「鎮痛目的なら別の市販薬でもいい。隠したような送り方も尋常ではなく、違法性や悪質性が低いとはいえないのではないか」と疑問を投げかける。

 一方、千葉大副学長の石井徹哉教授(刑法)は、「日本でオキシコドンに対する規制がここまで厳しいという認識がなく、その点を考慮されたのではないか」とみる。オキシコドンは米国では日本より広く処方されている。「企業側も社員を来日させる際には、法令の違いを説明するなどのサポートが必要だろう」と話している。

まあ今回の件に限らず社会的制裁を受けたから起訴猶予と言われると、金持ちほど逮捕時の影響が大きく制裁は受けたと優遇されることになるのでは?と言う声もあるようですが、実際のところ単純に本国で常用していた痛み止めを送ってもらったところ、たまたま日本では違法薬物に指定されていたと言った単純な話であるのかどうかです。
別ソースによれば麻薬の錠剤は父親名義で処方を受けたものであり、それを小包の中に小分けにし、ペンダントケースを二重底にしてしまい込んでいたと言うのですから普通に考えて隠す意志があったのでは?と受け取れそうな状況ですが、一方でアメリカではごく一般的に鎮痛剤として処方されていると言うだけに、身近にある当たり前の存在としてしまい込んでいたと言う言い訳?も可能は可能でしょうね。
麻薬としてはリラックス効果や多幸感が得られるものの比較的効き目が弱く、短時間で効果が消えてしまうことから有害性はさほどでないそうですが、前述のように一般的に処方されることからいわゆる麻薬常習者ではない一般人や子供までが中毒に陥ってしまうと言うリスクがあると言うことで、これはこれでリタリン問題などと同様の病根の深さを感じるところです。

母国では普通に手に入る合法薬物であり、日本に来日したばかりでこちらでは違法薬物だと知らなかったと言われればそれを否定するのは難しく、有罪に持ち込めそうにないから起訴を見送ったと言うところもあるようですが、一連の報道で鎮痛目的の適正な麻薬使用までもが何かしら犯罪的行為のように見られるようになってしまうのでは、と懸念する患者団体の声もあるようです。
日本の医療現場ではもともと麻薬性鎮痛剤の使用量が少なく、癌患者の苦痛が十分に緩和されていないと言われてきましたが、さらに言えばこうしたことをきっかけに「自分のもらっている薬は麻薬だったのか?!」と初めて知り驚いて使用を躊躇する患者が出たりだとか、場合によっては本人告知がされないまま対処されてきた患者が自分が大病であると知ってしまうと言った懸念もあり得るところですよね。
医療用麻薬にしてもそうですが保険診療の制約上、日本では癌に伴う症状の緩和にしか使えない薬と言うものがかなり多くあって、担当医としては難治性の非癌性疾患などで使いたい局面も少なからずあると思うのですが、今回のように諸外国で当たり前に使われている薬なら何故日本でも当たり前に使えないのかと言う疑問に対しては、ドラッグラグなどと逃げるわけにもいかず患者への説明が難しいところだと思いますね。

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コメント

何mgの錠剤を持ち込んだのかは不明だけど、オキシコンチンはMSコンチンよりも強力な麻薬じゃないの?アメリカってそんなのが普通に買えるのか?

投稿: | 2015年7月13日 (月) 08時13分

名もなき一般人だったなら普通に起訴されてた気が。
社会的制裁って言ったってどうせすぐ再就職するだろうし。
運が悪かっただけってなもんなんですかね?

投稿: ぽん太 | 2015年7月13日 (月) 08時20分

日本では病院で処方してもらえるフルニトラゼパム、アメリカでは麻薬扱いです。
こっそりアメリカに宅配便で送ったら、アメリカはこの程度で許してくれるのかが気になります。

投稿: クマ | 2015年7月13日 (月) 08時25分

国によって法律も違えば対処も違うのはもちろんですが、日本の対処法でさえ厳しすぎると言う批判もあるようで、今回の件で駐日大使まで動いたのもそうした世論を反映してのものかも知れません。

http://newsphere.jp/national/20150303-4/

投稿: 管理人nobu | 2015年7月13日 (月) 13時17分

知らずに麻薬の運び屋やらされて日本人が死刑に
というニュースも東南アジアでたまにありますね

薬物関係はほんと要警戒です

投稿: | 2015年7月13日 (月) 13時30分

Wikipedia にさらっと
>他害行為を誘発する傾向
として
ゾル○○ムの有害性が記載されてますが
啓発の意味で記させていただきます。

わたしは同薬を飲んだために警察のお世話になりました。

諸兄に当たっては十分ご存じとは思いますが、
念のためお知らせいたします。

投稿: 嫌われクン | 2015年7月13日 (月) 20時24分

今年7月1日から嗜好(しこう)品としてマリフアナを合法化した米オレゴン州の当局は12日までに、州内での移動に限り、
保持する量が規定内なら同州の主要都市ポートランドの空港で旅客機内への持ち込みを認める方針を決めた。

地元のCNN系列局KPTVが報じた。ただ、米国内の空港で荷物の中身などを調べる米運輸保安庁(TSA)の
検査所通過はすんなりといかない可能性がある。

米政府は依然、マリフアナを違法としており、米連邦機関であるTSAがマリフアナ所持を黙認する立場にはない。
TSAによると、同組織の本来の主要な職務は安全運航への脅威の摘発で、違法薬物を探索しているわけではない。
ただ、違法な薬物や物品を発見すれば、法執行機関に連絡する手続きを取っている。

仮にポートランド空港での乗客の荷物検査でマリフアナが見付かった場合、警察に通報されることになる。
これを受けた地元警察が、マリフアナ所持が認められる年齢で量も規定内にあり、州内の移動だったと判断したら
この乗客を自由にする手順となりそうだ。

同州でマリフアナ使用が認められる年齢は21歳以上と定められた。所持量は自宅で最大8オンス(約227グラム)で、
栽培も公然と目に付かない場所で最大4鉢まで認められた。また、自宅外では最大1オンスまでの量の保持が可能となったが、
公の場で使用することは違法となっている。

http://www.cnn.co.jp/usa/35067255.html

投稿: | 2015年7月14日 (火) 07時39分

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