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2015年6月 8日 (月)

棄民政策、世界各地で推進される?

先日オーストラリアから出たこんなニュースがちょっとした話題になっています。

豪 難民を受け入れ先のカンボジアに移送(2015年6月4日NHK)

オーストラリア政府は、難民認定を求めて不法に入国した人たちを代わりに受け入れてもらうカンボジア政府との協定に基づき、4日、初めて4人をカンボジアに移送しましたが、国際機関などからは「難民の問題を他国に転嫁すべきではない」として批判が再び高まりそうです。

オーストラリアには、アフガニスタンや中東などから難民認定を求めて船で不法に入国しようとする人たちが後を絶たず、政府は去年9月、こうした人たちを代わりに受け入れてもらう協定をカンボジア政府との間で結びました。
この協定に基づき、オーストラリア政府は4日、初めてイラン人3人とミャンマーの少数民族ロヒンギャの1人の合わせて4人を民間機でカンボジアに移送しました。

協定を巡ってはオーストラリア政府が難民認定を求める人たちを受け入れてもらう見返りに、カンボジア政府に日本円でおよそ40億円を支援するとしており、UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は、「難民の問題を他国に転嫁すべきではない」などと批判していました。
オーストラリアとしては不法入国を許さない立場をアピールするねらいがあるとみられますが、経済支援と引き換えに途上国を受け入れ先にする手法に、再び批判が高まりそうです。

このところ地中海での難民船が問題になっていたり、日本近海でも北朝鮮からの難民船?がひと頃話題になっていたりしましたけれども、東南アジアの難民船なるものも実は大変な状況にあるのだそうで、いわゆる難民と言うものだけではなく国際的な人身売買なども関わっていると言い、一体いつの時代の奴隷貿易船かと言う状況にあるようなんですね。
もちろん宗教や民族などの対立に起因して国外脱出を計る、いわゆる難民と言うものも10万人単位で海上を漂流しているのだと言いますが、これだけの数の難民を容易に引き受けることなど出来ないと周辺各国はどこも受け入れを拒否していると言い、船内で多数の死者が出ながら放置されている状況から「漂う棺桶」などと言うありがたくないあだ名までついているそうです。
日本でもひと頃北朝鮮から大量の難民が漁船で押し寄せてきた場合にどうするのか?と言った議論が盛んになり、特に難民に紛れ込んで工作員やら反社会的分子やらが侵入を計る可能性も高いことから、何とはなしに追い返すべきじゃないかと言う暗黙の合意が形成されてきた感がありますが、追い返された側がどこにも行く当てがなく長期間漂流している現状もまた問題ではありますよね。
そうした命に関わるリスクも承知の上で違法な入国ルートを辿ろうとしたと考えれば、当然のリスクを負ったのだから超法規的に救済されるべきだと単純に考えてもいられないのかも知れないですが、やはり目の前で人間がどんどん死んでいくのに黙って見ていると言うのは、野良猫に餌をやるべきかどうかと言った問題以上になかなか判断が難しいところがあるようには思います。

いささか話が脱線しましたけれども、今回のオーストラリア方式はそうした「見て見ぬフリをして他人が目の前で死んでいくのを放置する」やり方と比べるとずいぶんと人道的かつ良心的と言う考え方も可能ではあって、まずは行く当てがない難民をきちんと自国で引き受けた上で、ちゃんと行く先の世話までしてあげていると言えば非常によい話のようにも聞こえますよね。
ただ何とはなしにそうは思えないのがやはりお金を出して厄介者を押しつけているようにも見えると言う点だと思いますが、これまた「自分で最後まで面倒を見るつもりもないくせに野良猫に勝手に餌をやるな」と言う立場と、「野良猫を勝手に去勢したり保健所に引き渡したりするのはひどい」と言う立場との対立と相通じるものがあって、おそらくはどちらの側が絶対的に正しいと言うものではないようには思います。
そうは言ってもやはり釈然としない気持ちは残るのだろうし、特に力や権力を持っている側がそうではない側に一方的に不利益な取引を要求しているかのように見えるのではよろしくないと言うものですが、先日全国的に報道されたこちらのニュースも、受け取りようによっては同じような問題を抱えている話にも見えてくるでしょうか。

東京圏の高齢者、地方移住を 創成会議が41地域提言(2015年6月4日日本経済新聞)

 民間有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)は4日、東京など1都3県で高齢化が進行し、介護施設が2025年に13万人分不足するとの推計結果をまとめた。施設や人材面で医療や介護の受け入れ機能が整っている全国41地域を移住先の候補地として示した

 創成会議は「東京圏高齢化危機回避戦略」と題する提言をまとめた。全国896の市区町村が人口減少によって出産年齢人口の女性が激減する「消滅可能性都市」であるとした昨年のリポートに次ぐ第2弾。

 東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県では、今後10年間で75歳以上の後期高齢者が175万人増える。この結果、医療や介護に対応できなくなり、高齢者が病院や施設を奪い合う構図になると予測した。解決策として移住のほか、外国人介護士の受け入れ、大規模団地の再生、空き家の活用などを提案した。

 移住候補地は函館、青森、富山、福井、岡山、松山、北九州など一定以上の生活機能を満たした都市部が中心。過疎地域は生活の利便性を考え、移住先候補から除いたという。観光地としても有名な別府や宮古島なども入っている。
(略)

<東京圏高齢者>移住促進を 25年、介護人材90万人不足(2015年6月4日毎日新聞)

 ◇創成会議が提言

 産業界や研究者らでつくる有識者団体「日本創成会議・首都圏問題検討分科会」(座長・増田寛也元総務相)は4日、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県(東京圏)の2025年の介護需要が現在(15年)に比べ45%増え、172万人に上るとの試算を公表した。全国平均(32%増)を大きく上回り、他地域に比べ突出している。入院需要も21.8%増加する。
 一方で、東京圏は医療・介護の受け入れ能力が全国平均よりも低く、「患者のたらい回し」や「介護施設の奪い合い」が起きる可能性が高いと警鐘を鳴らし、地方移住を促す施策の推進などを提言している。

 25年には団塊の世代が75歳以上となる。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、同年の東京圏の75歳以上人口は現在より約175万人増え、全国の増加数の3分の1を占める。
 創成会議の試算によると、在宅と入所の介護需要は25年には埼玉が現在の51.5%増、千葉は49.8%増、神奈川で47.7%増、東京は37.9%増。埼玉、千葉、神奈川の増加幅が際立つ。入院需要も全国平均の14.1%増に対し、埼玉24.6%増▽神奈川22.5%増▽千葉21.9%増▽東京19.8%増となる。この結果、東京圏では医療や介護の人材が25年に約80万~90万人不足するという。

 試算を踏まえ、創成会議は、今後の医療や介護の需要・供給見通しを東京圏全体で共有する必要があると指摘。さらに、40年には医療や介護を支える体制が崩壊しかねないとして、高齢者の移住を促すため、移住費用の支援や「お試し移住」の導入などを提案している。
 ただし、国が進める在宅医療・介護分については「データ整備が進んでいない」として考慮していない。
 日本創成会議は昨年5月に「消滅可能性都市」の一覧を公表している。【阿部亮介】

この都市部の高齢者を地方に移住させようと言う話、さかのぼればちょうど2年前に厚労省も言っていたことではなかったかと記憶するのですが、厚労省のみならず総務省筋も巻き込んで話が進んでいるとなれば、これは国としてはかなり本格的に検討していると言う解釈でよいのでしょうか。
都市部と地方との需給バランスなど細かいことは置いておいて、やはりこの話で気になるのは東京など大都市と言えば働く若い世代が全国から集まってくる地域でもあると言うことで、仮にこの計画が成立すると小児や高齢者など社会的支援を必要とし自治体から見て持ち出しばかりが多い世代が地方に残り、バリバリ働いてどんどん税金を納めてくれる現役世代ばかりが大都市圏に集まると言う話になりはしないかと言うことです。
特に必ず親とセットで生活しているはずの小児世代とは違って、高齢者はその後の人生で各種社会保障サービスや医療・介護リソースを消費するばかりの立場とも言えますから、よほどにきちんとした受け入れ側への見返りが用意されない限り、大都市圏側にばかりメリットがある老人押しつけ政策にしかならないのではないか?と言う懸念はあるでしょう。

この点では受け入れ高齢者に関わる社会保障コストを都市部が負担すべきだとか、看取りを行った自治体には相続税なりから一定程度を還元するだとか様々なアイデアはありそうなんですが、そもそも国内での人口移動は国民の自由である以上、ある年齢層にだけ特別な制限なりルールを設けると言うのも妙な話だと言うことにもなりかねません。
より実際的な方法論としては経済の原則に従って、介護コストなども供給が不足している地域ではより高くなるように設定しておけば、自然とコストの安い地域に自主的な人口移動が起きる可能性がありますし、実際欧州などでは国境を越えて介護費用が高い国から安い国へ老人の移動が起こっているとも言います(これも当然ながら歓迎する声もある一方で、問題視する声もあるようですが)。
いずれにせよ高齢者受け入れは介護のみならず連携する医療リソースも欠かせないはずですが、地方では都心部並みの医療は望めないのもまた事実で、田舎に老人を輸出するならその地域なりの医療で構わないと言う同意を取り付けてからでないとトラブルの元になるかも知れませんね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

産廃や核のゴミ押し付けとどう違うの?

投稿: | 2015年6月 8日 (月) 07時41分

「自宅で死ぬことを国民が望んでいるから」というのが諸施策の大義名分になっているはずなんだけど、
地縁も血縁もないような土地に引っ越しても自宅は自宅?

投稿: JSJ | 2015年6月 8日 (月) 08時11分

実際高齢者がそう移住するとは思えませんが
はじき出された高齢者が文句言いながら嫌々地方へ行くんでしょうね。
千葉と埼玉で九州と人口は同じくらいなのに医学部数が全然違う
一県一医大で人口とか無視して各都道府県に均等に割り振ったからこんな結果に

投稿: | 2015年6月 8日 (月) 08時20分

高齢者になってから移住はつらい気がします。
もうちょっと下の世代から呼び込むべきじゃ?

投稿: ぽん太 | 2015年6月 8日 (月) 08時28分

平成27年にもなって、まさか姥捨て山が政策案として出てくることに驚きました。

また、その姥捨て山として名前が出た自治体長が喜びの声を発したとか、世も末ですね。

投稿: | 2015年6月 8日 (月) 09時53分

関東圏は自分たちだけの都合良くいいとこ取りはいい加減止めて、
しっかりとケツを拭くっていう当たり前のことをしないと、
ますます風当たりが強くなると思いますが。

>実際高齢者がそう移住するとは思えませんが

まあ、もとの大半が他の地方からの出稼ぎ人だろうから、
自宅でまともに介護もされない状況となるなら、可能性は高いんじゃない?

投稿: hisa | 2015年6月 8日 (月) 10時27分

>やはり目の前で人間がどんどん死んでいくのに黙って見ていると言うのは、野良猫に餌をやるべきかどうかと言った問題以上になかなか判断が難しいところがあるようには思います。

野良猫に餌をやるのは絶対悪ですし、不法入国者は高確率で犯罪者かスパイだから一切入国させるべきではありません。可哀そう?だったらてめえの敷地から一切出さずテメエが全額自腹で面倒見ろ人んちに糞垂らさすな!!!!

>これまた「自分で最後まで面倒を見るつもりもないくせに野良猫に勝手に餌をやるな」と言う立場と、「野良猫を勝手に去勢したり保健所に引き渡したりするのはひどい」と言う立場との対立と相通じるものがあって、おそらくはどちらの側が絶対的に正しいと言うものではないようには思います。

コレは前者が圧倒的に正しく後者は絶対悪です。猫を捨てるカス、外飼いする腐れ外道、野良猫に餌だけやって気分だけ透明になってる愛誤はウチの庭に垂れた猫の糞からピーナッツをさがして喰え!

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年6月 8日 (月) 10時51分

呆けている方も車を運転するのが基本である田舎に車が運転出来ない高齢者を連れてこられても困るのですが・・・
公共交通機関が整備されていて車が必要無い地域にそういう高齢者を集めるのが筋ではないかと思われます。

投稿: クマ | 2015年6月 8日 (月) 12時00分

施設内生活しかできない老人を田舎に送り込むと言う方が技術的には面倒が少ないかとも思うのですが、今回の提言ではもう少し元気な老人に地方ライフをエンジョイさせるつもりであるようです。
正直地方に夢を見すぎではないか?と言う気もするのですが、あとはどんなアメを提示できるかによって自治体間での話がまとまってくるのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2015年6月 8日 (月) 13時17分

そういえば、別な分野では既に棄民政策は実施済みですよね。

http://ci.nii.ac.jp/naid/110004708710

投稿: | 2015年6月 8日 (月) 13時56分

国籍なきロヒンギャ族 実は群馬・館林に定住進む
2015年6月6日10時05分

彼らには国籍がない。
ミャンマーから日本に逃れてきたイスラム教徒のロヒンギャ族の人たち。
群馬県館林市を中心に200人以上が暮らす。1990年代から偽造旅券などを使い来日し、
難民認定されたり、在留資格を与えられたりして徐々に定住が進んでいる。

仏教徒が多いミャンマー。政府は彼らを移民とみなし、国籍を認めていない。
移動や結婚も制限している。迫害のない生活を求めて来日したが、「無国籍者」を認定する
法的な仕組みがなく、日本語学習など公的支援を受けることができていない。

5月には東南アジアで密航船から大勢のロヒンギャ族が救出され、国際的に問題が広がっている。
日本にも無国籍者の権利保護をうたう国際条約への加入や、法的な位置づけが求められている。
(写真・文 鬼室黎)

朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASH5V7G8FH5VUQIP06B.html

投稿: | 2015年6月 8日 (月) 20時58分

地域ごとに保険医療総額の枠をはめて、水準超えたら地域内保険医療機関の全部にペナルティ、というのも、棄民政策の一種ですかね? 画策してるようですが。 

投稿: 感情的な医者 | 2015年6月 9日 (火) 08時29分

高齢者移住提言に反発 地方「負担押しつけ」 都知事「乱暴」
2015年6月10日 東京新聞

 東京圏の高齢者の地方移住を促すよう求めた民間団体「日本創成会議」の提言に対し、全国の知事から「乱暴だ」「負担の押し付けになる」と批判する声が相次いでいる。政府は東京一極集中の是正に向けた地方創生の一環として高齢者移住を推進する方針だ。地方側の思わぬ反発に石破茂地方創生担当相は九日、「強制移住させようとしているのではない」と火消しに躍起となった。

 提言は東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の四都県)で七十五歳以上の高齢者が今後急増するとして、医療・介護の施設や人材に余裕がある二十六道府県四十一地域への移住促進を政府に要請した。

 だが、移住先として名指しされた地域には戸惑いが広がる。石井隆一富山県知事は「県内で特別養護老人ホームの入所を待機している人がおり、余力があるわけではない」と提言に疑問を呈した。達増拓也岩手県知事は「高齢者の介護や医療の負担だけが押し付けられ、かえって地方衰退を加速することになっては本末転倒だ」と指摘した。

 東京圏の首長も歓迎ムードとは程遠い状況だ。舛添要一東京都知事は「『施設が足りないから移住を』というのは乱暴だ」と批判、黒岩祐治神奈川県知事も「無理に高齢者を地方に移住させるのは違和感がある」と否定的な見解を示した。

 一方、石破氏は九日、日本記者クラブで会見し「第二の人生を地方で暮らしたいと思っている人に選択肢を提示したい」と強調した。

<日本創成会議> 増田寛也元総務相が座長を務め、産業界の代表者や大学教授らで構成する。2011年に発足した。昨年5月、40年時点で20~39歳の若年女性が10年と比べ半分以下になる自治体が全体の約5割に当たる896市区町村に上るとの試算を公表し「将来的に消滅の可能性がある」と指摘。人口減少問題への世論の関心を高めた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015061002000123.html

投稿: | 2015年6月11日 (木) 21時38分

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