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2015年6月10日 (水)

みんなで辞めたり、辞めさせられたり

先日からちょっとした話題になっているのがこちらのニュースですが、御覧になったでしょうか。

看護師6人一斉辞職 鳥取の養護学校 生徒10人通学できず(2015年6月8日産経新聞)

 鳥取県立鳥取養護学校(鳥取市)の看護師6人全員が、校内で行う医学的ケアに対し保護者から批判を受けたことを理由に5月末に一斉辞職し、一部児童・生徒が通学できなくなっていることが8日、県への取材で分かった。

 県によると、6人はいずれも非常勤。10人程度の子供が通学できておらず、県は近隣の病院に看護師派遣を依頼し、今週中にケアを再開する予定だ。8人程度が必要だとして確保を進める。同校では、全児童・生徒約70人のうち約30人に、たんの吸引や経管栄養法などのケアが必要。保護者からは、吸引時間の遅れや点滴の位置などに関し批判の声が寄せられていたという。

 通学できない子供には在宅学習や、福祉施設に預かってもらい対応。求めがあれば、教員を自宅に派遣している。

<鳥取養護学校>看護師全員が一斉に辞職(2015年6月8日毎日新聞)

 鳥取県立鳥取養護学校(鳥取市)で、医療的ケアを担う看護師が不在になり、ケアの必要な児童生徒9人が通学できなくなっていることが分かった。以前から要員不足の事情があり、ケアの一部が遅れたことを保護者から批判された看護師6人全員が、一斉に辞職を申し出た。県教委は看護師の配置や相談体制の不備を認め、後任の人材確保を急いでいる。

 県教委が8日の県議会で報告した。同校には小学部から高等部までの児童生徒76人が在籍、うち33人がたんの吸引などのケアを必要とする。看護師6人は非常勤で、5月22日の授業終了後に全員が辞職の意向を伝えた。看護師の1人は、ケアが数分遅れたことについて、ある保護者から威圧的な言動を繰り返し受けたと訴え、他の5人も不安を募らせていたという。

 医療的ケアの必要な児童・生徒は現在、保護者同伴で登校するか、校外のデイサービス施設で教員の訪問授業を受けている。施設を利用せず家庭訪問を希望しない児童生徒4、5人が授業を受けられない状態という。

 野坂尚史校長は「本来は8人の看護師が必要。一刻も早く人材をを見つけたい」と話した。県教委は「医療的ケアを必要とする児童生徒が増え、看護師の体制が苦しかったとも聞いている。組織としての受け止めなどが不十分だった」と釈明。県看護協会などに派遣を要請中で、近く学校でのケアを再開する方針という。【小野まなみ、真下信幸】

別ソースによれば当の看護師が挙げた退職理由として保護者の言動もさることながら、学校側がきちんと対応しないことにも不満を募らせていたようですが、そもそもの背景事情として医療的対応を要する患児が増えているにも関わらずスタッフの増員が行われず本来8人の看護師が6人(かつ、全員非常勤)しかいなかったようで、それがケアの遅れを招き家族のクレームへとつながっていたようです。
詳細な事情についてはこちらのソースが参考になるかと思いますが、聞く限りではクレーマー紛いの保護者からの要求などもさることながら、この問題に関する県議会での議論においては同県ではこの種のケアの先進県であると言う自負もあったようですが、実際には非常勤の看護師と常勤の教員との間では相当に温度差もあったようですから、やはり現場の状況把握がうまく行われていなかったとは言えそうですよね。
県側では当面県立中央病院から看護師派遣を受けてケアを再開させたいと言う意向のようですが、問題の保護者との関係も何ら具体的に改善されているわけでもなく、また教育委員会等から何かしら改善策が打ち出されてもいないと言う中で、現場にひたすら貧乏くじを引かせるだけのやり方がいつまで続くものなのかと感じてもしまいます。
今回の場合は当事者にとってはいわゆるブラック企業に近い認識であったのでしょうし、こうした場合当事者にとっては逃散が最善の対応策であると言う既存の定説を再認識させられることになる可能性もありそうですが、一般的にはブラック企業と言えば従業員の使い捨てと言う面でも問題視されることが多いわけで、別な施設ではこんな強制解雇の例も出ているようです。

「全員を一方的解雇」賠償提訴(2015年6月8日NHK)

新潟市の訪問型看護施設で、開業から2か月余りで従業員全員が一方的に解雇されたのは不当だとして、看護師2人が合わせて550万円余りの損害賠償などを求める訴えを新潟地方裁判所に起こしました。

訴えを起こしたのは、新潟市中央区網川原の訪問型看護施設、「ケアーズ訪問看護ステーションおうみ」に勤めていた看護師の男女2人です。
訴えによりますと、この施設はことし2月に開業しましたが、開業から2か月余りたったことし4月、経営の悪化を理由に、5人の従業員全員を解雇することを一方的に通知してきたということです。
5人のうち看護師の男女2人は、解雇は無効だとして施設を運営する会社や役員に、合わせて550万円余りの損害賠償などを求める訴えを8日、新潟地方裁判所に起こしました。
記者会見した原告の代理人の齋藤裕弁護士は、「この業種では近年、異業種からの安易な参入が相次いでいるので、参入の要件を厳しくするなど制度を改めるべきだ」と話しています。
一方、施設の運営会社「ひかり」は、「従業員には営業面での活躍も期待していたが成果が現れず、事業が立ち行かなくなった。経営が難しいため、この業種で事業を再開することは考えていない」と話しています。

しかし従業員に営業面での活躍とは、まさか身内を何人呼び込め等々のノルマでも設定されていたとでも言うのでしょうかね?
2月に開業したばかりで今春に経営不振とはどんな零細経営なのか?と疑問に感じるところなのですが、ちょいと調べて見た限りではこのケアーズ訪問看護ステーションなる組織、この5月時点で全国300拠点近い施設を抱える大きなネットワークであるようですから、素人がいきなり参入して予想通り失敗したと言う話でもなさそうなんですが、さて何が起こったのかです。
どうも話を聞く限りでは中央が経営ノウハウなどを提供し、地元の運営会社がそれに従って運営すると言う方式でやっているグループであるようで、グループ社長さんは「異業種参入の方でも成功できる訪問看護のノウハウを提供しているのは我が社だけ」と自信満々に断言しているようですが、おそらく実際には経営がどうであれグループ側は儲かるような仕組みにはなっているのでしょう。
大手飲食店チェーンなどがやたらと新規開店したりあっさり店をたたんだりするのと同様に、経営的にメリットが少ないと判断すればあっさり切り捨てると言う判断も損害の最小化と言う点では仕方ないのでしょうが、業界が狭くマンパワーの要素が大きい医療・介護の世界でこう言うスタッフの使い方をしているのでは、同県内だけでも未だ複数のグループ施設が営業中であるのに今後困らないのか?と言う気もします。

この辺りは記事にもあるように安易に参入するばかりではなくきちんと勝算の見込める商売を始めないと結局利用者にも迷惑をかけることになりますが、先日日経ビジネスが全国1798病院の経営力ランキングなるものを報じていて、全国7割の病院が赤字経営であると言う現状を見るにつけ、基本的に医療介護の領域は需要こそ多いものの、異業種から儲けを期待して参入するには少し厳しい市場なのかとも感じるところでしょうか。
その理由としてはやはり基本的には全国一律の公定価格であり、個性を出してその分余計な対価を得ると言うやり方がなかなか難しいと言う自由度の乏しさであるとか、なんだかんだ言っても需給バランスがほぼ均衡した状態で長年続いていて新規参入は難しい業界の閉鎖性だとか要因は様々なのでしょうが、それもあって人材面でも基本的に業界内外での出入りが少ない方ですよね。
国の資格職であるスタッフ達が多くは近隣地域内の施設を転々としながら仕事をしている狭い業界で、少しでも生産性を高めるためにはスタッフの士気を高く保ち、より優秀な人材が集まるよう口コミでの評判を高めると言う事が有効であるように感じるのですが、その辺りのノウハウは「嫌なら辞めろ。代わりは幾らでもいる」他の業界とは少しばかり勝手が違うと言うことなのでしょうか。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

あまり詳しくないんですが訪問看護は看護士以外でも開業可能なんですか❓
医師と違うんですね。

投稿: | 2015年6月10日 (水) 07時15分

http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/08/tottori-special-school_n_7539996.html

鳥取市の県立鳥取養護学校の看護師6人全員が一斉辞職したことで、児童生徒の一部が通学できなくなった。6月8日の県議会で報告されたと、朝日新聞デジタルなどが報じた。

同校には小学部から高等部までの児童生徒76人が在籍、このうち33人がたんの吸引などのケアを必要とする。33人のうち保護者が付き添える児童生徒だけが登校しているが、8日時点で12人が登校できなくなっている。

■保護者から「うちの子、殺す気」などと苦情

6人の看護師は、30代から50代の女性で非常勤。毎日新聞によると、5月22日の授業終了後に全員が辞職の意向を伝えた。看護師に対して、特定の保護者から威圧的な言動を繰り返しあったことが理由だという。

看護師の1人は、ケアが数分遅れたことについて、ある保護者から威圧的な言動を繰り返し受けたと訴え、
他の5人も不安を募らせていたという。

(鳥取養護学校:看護師全員が一斉に辞職 - 毎日新聞 2014/06/08 21:38)
6月8日の県議会では、辞任した看護師から電話で聞いた話として、福浜隆宏県議が以下のように報告した。

「私は看護師の方に聞いた限りでは、保護者の方にも問題があるように受け取らざるを得ない発言があった。
かなり生命にも関わるような非常に厳しい言い方で、毎日のように、特定の看護師さんに対して、
繰り返し同じようなこと。点滴の位置が非常に低いとか、一挙手一投足、
保護者の方がリードしながら看護師に『何でこんなことするの』とか『うちの子、殺す気』くらいの、
そんな勢いで迫っていたと。周りの先生はそれを見るしかない。止めてることもしてくれなかったということでした」
学校に対して理不尽な要求やクレームを繰り返すモンスターペアレントと呼ばれる保護者だった可能性もありそうだ。
ただし、看護師の人員不足で、児童生徒のケアが充分にできていなかったことも背景にあり、
野坂尚史校長は「本来は8人の看護師が必要。一刻も早く人材を見つけたい」と釈明した。
県看護協会などに看護師の派遣を要請しており、近日中に学校でのケアを再開する方針だという。

投稿: | 2015年6月10日 (水) 07時18分

http://riku-job.com/jobs/detail_3187-02081221.html
↑この待遇で看護師来るもんなの?

投稿: | 2015年6月10日 (水) 07時51分

スタートから2ヶ月で撤退ってよくわからないですね。
最初から患者さん目一杯抱え込まないと破綻する経営ってこと?
コンサルにいいように丸め込まれただけなんじゃないのかなあ。

投稿: ぽん太 | 2015年6月10日 (水) 08時44分

>↑この待遇で看護師来るもんなの?

医師なら来るかもね(鼻ほじー。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年6月10日 (水) 09時54分

上でご紹介いただいた募集要項を参照したのですが、時給1,180円~2,000円で交通費支給なしと言うのは本当に非常勤の待遇ですし、これで勤務環境が悪いのならわざわざここでなくても…と言う気はします。
ちなみに施設側に関しては相応に調査もしているようですが、問題の保護者に対しては調査も何もやっていないんじゃないかと言う指摘もあるようで、そうなりますとスタッフが変わっても何も変わらないかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年6月10日 (水) 13時33分

6月に新入学してたった2ヶ月で6人全員追い出したらしいぞ
http://www.j-cast.com/tv/2015/06/12237613.html
 8日(2015年6月)の県議会で、看護師から話を聞いた議員がこの問題を取りあげ、広く知られることになった。
辞めた理由はある保護者の暴言だとしたため、保護者への批判が高まって、ネットでは「モンスター・ペアレンツ」ともいわれた。
 しかし、当の保護者は「とくダネ!」の取材に「怒ったことは事実だが」と実情を話した。6歳の息子は低血糖を起こす難病で、
決められた時間に鼻の管から水分・栄養を補給しないといけないのだが、時間が守られない。15分の遅れでも命に関わるから激しいやりとりもあったという。
「それを暴言といわれてもね」

投稿: | 2015年6月13日 (土) 09時03分

本当の事故が起こる前に看護師達に退職を決断させたのならGJですな。

投稿: JSJ | 2015年6月13日 (土) 10時57分

こういうので素人がマスコミに向かってしゃべるのは、だいたい悪手なのですけれどもね。

投稿: クマ | 2015年6月13日 (土) 21時52分

マスコミの方々が思いっきり話ねじまげてそう

投稿: | 2015年6月14日 (日) 07時25分

人手不足でケアできないと、校長が親に正直に言えば良いだけ。
その後、この親の子、家で看ることになったの?
養護学校に戻ったの?

投稿: physician | 2015年6月14日 (日) 16時20分

http://mainichi.jp/select/news/20150610k0000e040223000c.html

鳥取県立鳥取養護学校(鳥取市)で看護師6人が一斉に辞職を申し出、
医療的ケアを必要とする一部の児童生徒が授業を受けられなくなっている問題で、
11日から看護師3人が新たに派遣されることが決まった。登校できなくなっていた
児童生徒9人も通学できるようになるという。【小野まなみ】

何も変わってないどころかさらに悪条件になった悪寒w

投稿: | 2015年6月14日 (日) 16時56分

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