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2015年6月18日 (木)

今や総合診療医が人気なんだそうです

意外というべきなのか当然と言うべきなのか、先日こんな調査結果が出ていました。

「総合診療医」人気高く、医学生アンケート(2015年5月6日医療維新)

 日本医師会総合政策研究機構はこのほど、全国の医学部生を対象に実施した「医学生のキャリア意識に関する調査」の結果を発表した(資料は、日医総研のホームページに掲載)。将来、専門にしたい診療科を尋ねた設問では、19番目の基本領域の専門医資格に位置付けられることで注目を集める総合診療科が内科、小児科に続いて、3番目に選ばれた。また、6割強の医学生が自分の世界が狭いと感じており、日医総研は「世界観を広げる教育も必要」と指摘した。
 調査は「医学部での学習と将来のキャリア」「視野の広さ、世界観」「診療科の選択」「将来のキャリアについて」という4つのテーマについて、全国1309人の医学部生(1年生から6年生まで)に書面で実施した。調査期間は2014年6月10日から7月5日。回答者の属性は国公立が7割、私立が3割。性別は男性6割、女性4割だった。

総合診療医希望が14.6%

 将来、専門にしたい診療科・分野について、基本19領域から2つまで選択してもらったところ、最多が内科(33.8%)、次いで小児科(19.3%)、総合診療科(14.6%)、外科(14.4%)、救急科(10.0%)となった。一方、希望者が少ないのは、臨床検査科(0.0%)、病理診断科(0.2%)、リハビリテーション科(0.8%)、泌尿器科(1.3%)、放射線科(1.8%)だった。

初期研修では市中病院が人気

 初期研修病院を選ぶ際に重視することについて選択肢から3つまで選んでもらう形で尋ねたところ、「教育体制や研修プログラムの内容」(43.3%)、「多くの症例を経験できること」(42.9%)に続いて、「市中病院であること」(37.4%)が3番目に入った。
 卒後の勤務地について尋ねると、「そのつもり」、「まあ考えている」を合わせて、6割近くが母校のある都道府県、近隣地域では働くことについて肯定的な意見を示した。
 一方、所属大学の医局で働くことについては、「そのつもり」、「まあ考えている」を合わせて、4割以下にとどまった。
(略)

国が総合診療医と言うものの育成をいわば国策として進めているのは、様々な領域で専門分化が進んだ今の医療が必ずしも医師数の少ない地方ではうまく機能しなくなっていると言う現実があって、要するにどのような疾患であっても一通りの診療が出来る人材であれば各診療科ごとに専門医を揃えるよりもよほど医師数の節約にもなると言う事情があるのだと思います。
一方で新たな専門医資格として認定されることになった総合診療医と言うものも今ひとつイメージがつかみ切れていないところがあって、どんな病気でも一通り診れる医師ですと言われればそれは多くの学生がそうなりたいと言うかも知れませんが、実際には大きな病院でいわゆる総合診療を担当するのか、家庭医といった立場で地域診療に従事するものなのか等々、やるべき仕事内容は千差万別ですよね。
最大公約数的に考えるなら幅広い疾患に対して広範な診断能力を持ち、高度な専門的医療には手を出さないまでも初期診療や安定期のフォローアップなどは一通り出来る人材と言うことになるのでしょうが、今や専門分化が進んでどの診療科のスキルも最低限これくらいはと言う要求水準が上がった結果、おいそれと何でも屋が手を出すことが許されなくなってきている部分もあるでしょう。
この辺りはかつての内科外科なら胃カメラやエコーは出来て当たり前と言う時代から、今はカメラを握ったこともない内科医もいると言いますから教育内容の設定も難しいところなんでしょうが、もう一つ気になるデータとして先日アメリカから発表されたこんな調査結果があるようです。

家庭医の収入、他診療科との格差大【米国家庭医学会】(2015年5月29日臨床ニュース)

 米国家庭医学会(AAFP)は5月13日、家庭医の平均年収は増加しているものの、他の専門医と比較すると依然として低いという調査結果を報告した。

 同調査は2014年12月30日から2015年3月11日に実施され、約2万人の医師から回答を得た。回答者は家庭医と内科医が最も多く、それぞれ回答者の12%を占めた。家庭医を含むプライマリケア医の平均年収は19万5000ドルで、前年比で10%増加。増加率は調査対象の診療科の中で5番目に高かったが、他の専門医の平均年収は28万4000ドルと、その格差は大きかった

 今回の調査を受けて、AAFP会長は、「家庭医は医療システムにおいて依然として過小評価されている」と問題視しながらも、「MACRA法の可決により、量ではなく価値をベースとした報酬体系へ移行され、家庭医の収入や評価の向上が期待できる」と期待感を示した。また、医師の年収には診療科にかかわらず男女差があり、男性医師の方が女性医師よりも平均年収が5万5500ドル高かったことにも触れ、「同じ業務内容には同じ報酬が支払われるよう、格差是正に取り組んでいきたい」と述べている。

 今回の調査では給与の他にも、1回の診療および事務処理に費やす時間や、職業の満足度についても調査された。それによれば、「また医者になりたい」という回答の割合は各診療科の中で家庭医が最も高かったが、「同じ診療科を選ぶ」とした割合は最も低かった。これについて同学会次期会長Wanda Filer氏は、「家庭医の複雑な実務環境が原因」と分析し、「プライマリケアは医療の基盤。それを担う医師が事務処理の負担に忙殺されることなく、開業当初の情熱を保って診療に当たることが出来るようサポートしていきたい」と述べている。

家庭医の収入は低い一方で労働の満足度は高そうだと言う印象も受けるのですが、それでもやはり次回はもっと金になる仕事を選びたいと考えるのもまあ人情なのでしょうか。
ご存知のようにアメリカと言うところは専門医が非常に馬鹿高い料金を取るところで、儲ける医師は巨額の収入を手にする一方で診療科毎の収入格差が非常に大きいと言いますけれども、日本でそこまでの差が開いていなかったのは全国一律公定価格による統一料金であり、専門医制度なるものが何らの報酬上のメリットもない単なる名誉称号?に過ぎなかったからと言う理由もあるでしょう。
その専門医制度が今後いわば公的な制度として改組される、そして総合診療医も専門医の一つとして公的に認定されるとなれば当然何かしらのインセンティブとなるべき報酬上の見返りがあるのか?と言うことなんですが、一方で日本においてはこれまで家庭医と言えば基幹病院での激務からドロップアウトした方々による、いわば収入はそこそこでも人間らしいくらしが出来る仕事と言うポジションでもあったわけですね。
地域医療を頑張っている先生方が総合診療医として認定されなければ意味がない以上、基幹病院で症例数幾らが必要といった他の専門医とは違う認定のやり方が行われるのだろうと思いますが、その資格認定の難易度やインセンティブの付け方によっては「なんだ、楽をしようと逃げ出した連中が優遇されるとはおかしいじゃないか」と言う声も出てくるかも知れません。

この辺りは制度を決める側でも議論されてきたようで、実地臨床に従事してきた町医者への道を確保する必要性を考慮しつつも「安易に取得出来る専門医資格とはしない」と言う一方で、「誇りを持って診療に従事できる専門医資格にする」だとか「夢と希望を与える制度となることを目指す」などと何とも解釈の余地の大きい言い回しが出ているようですけれども、そもそも家庭医の能力が高い、低いとは何を以て評価するのかです。
基幹病院の勤務医の先生方にとって頼りになる開業医の先生の一例として勘が鋭いと言うのでしょうか、大した検査機器もなく大多数はありふれた病気ばかりの患者の中からこれはと言う患者を確実に拾い上げて専門医に送ってくれる先生の存在があると思いますけれども、こういうものは数字や検査結果と言った客観的な指標で議論できるものではないだけに評価も難しそうですよね。
さらに言えばそうした能力の高い先生方の方があれこれと回り道をせず最短コースで患者の振り分けが出来る分、診療報酬などの面ではむしろ低収入になりがちであると言う可能性すらありますが、この辺りは間違ったとは言わないまでも無駄な検査や治療ばかりをやたら延々とやっている迷医?の方が手にする報酬が高くなってしまうと言う、出来高制の持つ欠点であるとも言えます。
そう考えると国策として何でも屋がいれば便利だと言うスタート地点もあるのでしょうから、イギリスの家庭医的に人頭割の報酬として安上がりに診療を終えられればそれだけ利益が多くなると言うやり方の方が正しいのかも知れませんが、そんなことを言い出せば某医師会あたりからは確実に強烈な反発の声が出てきそうですよね。

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コメント

アメリカは外科系や放射線科以外はそこまで給料は良く無いみたいですね。
なので内科や家庭医のプログラムだと外国人でもマッチしやすいみたい

投稿: | 2015年6月18日 (木) 07時22分

この前見学に来た学生が総診希望でしたね。
イメージ的にスーパードクターなんでしょうか。
実際はそんなかっこいいもんじゃないと思うんですが。

投稿: ぽん太 | 2015年6月18日 (木) 07時55分

総合診療医って、ホント、TVに出てくるスーパードクターのイメージで思っているだろうな。
素人目には、それぞれの科について高度な専門的治療以外すべて対応できる能力、診断力が必要
だろうから、要求される内容が半端じゃないような気がするが。
今の医学部学生ってテストの偏差値だけは高かったでしょうから、自分は何でもできるって
思っているのかもしれないけど、テスト偏差値が高いのと実際賢いのとは、あまりリンク
していないのと同じで、大丈夫かいなって心配してしまいそう。

投稿: | 2015年6月18日 (木) 09時03分

医学生の進路希望なんて、小学生の将来の夢と大して変わらんのでわ?

投稿: JSJ | 2015年6月18日 (木) 10時33分

救急専門医が一部その傾向があるようですが、なんでも患者を受け入れて診断だけつけて治療は各診療科に丸投げするものだから院内から総スカン、と言うことになりかねない危険もありそうに思います。
逆に総合診療だからと各診療科の重複・境界症例を全部引き受けさせられる可能性もあって、勤務医としての総合診療医の立ち位置と言うものにはかなりと配慮と工夫が必要になりそうな気がしますね。

投稿: 管理人nobu | 2015年6月18日 (木) 11時46分

>医学生の進路希望なんて、小学生の将来の夢と大して変わらんのでわ?

ボク寄生虫学者になりたかったな…(遠い眼)

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年6月19日 (金) 11時14分

要するに老人専門医だろ

投稿: | 2015年6月19日 (金) 11時21分

婦人科に進めば若いおねえちゃん専門に相手できると思い込んでたあの頃の不思議

投稿: | 2015年6月19日 (金) 12時42分

何故皆は声に出さないのだろうか?
「手塚治虫が、ブラック・ジャックが悪いんだ!」と。

投稿: | 2015年6月20日 (土) 15時21分

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