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2015年6月 4日 (木)

年金問題が世代間対立を招いているそうです

先日は年金情報の大々的な流出事件が発生したと大いに話題になっていましたが、何しろ流出した125万件のうち55万件では内規を無視してパスワードすら設定されておらず、誰にでも自由に閲覧できる状態であったと言いますから、やはりセキュリティー対策の基本認識がなっていなかったと言えるかも知れませんね。
折から導入の準備が進むマイナンバー制度に向けて個人情報を扱う諸施設は一段と気を引き締めてもらいたいものですけれども、その年金に絡んだニュースとして先日こんな異色の?裁判が始まったと報じられています。

「年寄りは死ねというのか」年金減額は憲法違反ーー全国の「年金受給者」が提訴(2015年5月29日弁護士ドットコム)

老齢年金・厚生年金を受給している東京都内の526人が5月29日、国を相手取って「年金支給を減らした決定を取り消せ」と求める訴訟を、東京地裁に起こした。原告たちと弁護団は、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「年金削減は憲法違反だ」と訴えた。裁判の原告は全日本年金者組合のメンバーが中心で、この日は全国13都府県の年金受給者約1500人が、同様の訴えを各地で一斉に起こしたという。
訴状などによると、原告側は、2012年11月に改正された年金を減額する年金関連法が、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する憲法25条などに違反していると主張。それに基づいて2013年12月4日付けで決定された「老齢基礎・厚生年金の減額」が違法だとして、減額の決定を取り消すよう国に求めている。今後、全国45都道府県で順次訴訟を起こすという。
年金支給額は、物価や賃金の上昇・下落にともなって、増えたり減ったりするルールになっている。ただ、過去には物価が下落したにも関わらず、「特例措置」として支給額を減らさなかった時期があったため、年金の支給額は「仮に特例措置がなかった場合」と比べて多くなっていた。そこで政府は2012年の法改正で、2013年~2015年の3年間で2.5%、計画的に支給額を減額することにした。

●年金制度は「不安だらけ」と原告たち

原告代理人の加藤健次弁護士は記者会見で、次のように訴えた。
「医療・介護制度の変化や、消費税増税などによって、高齢者の暮らしは厳しくなっています。そんな中、さらに年金支給額を引き下げて、最低限の文化的な生活が保障されていると言えるのでしょうか。これでは現役世代、若い世代からみても、老後の展望が持てません。社会保障制度全体をどうするのかを、この裁判を通じて議論していきたいと思っています」
原告団長で、全日本年金者組合・東京都本部執行委員長の金子民夫さん(77)のもとには「もう節約なんてギリギリだ。本当にもやしばかり食べなければいけないのでしょうか」「収入は年金だけだ、支出は増える一方だ。なぜ年金を下げる。年寄りは死ねというのか」といった声が届いているという。金子さんは「年金引き下げの流れにストップをかけたい」と強調していた。
ひとこと言いたいと会見に臨んだ原告の斎藤美恵子さん(68)は「年金生活者としては、物価が上がっちゃ困るんです。現役世代は良いかもしれないが、なんでも十把一絡げに制度を決める政府には怒りを感じます」「年金手取りは月額6万円ちょっと。幸いなことにお家賃を払わなくていい状況に住んでいますが、それでも6万は大変な額だと思います」と話していた。
同じく原告の小林静子さん(73)は「年金は下がる一方、物価は上がる一方。消費税が8%になったときも、これまで余っていた2万円が食費で消えていっちゃった。高齢者は、食費の他に切り詰めるところはありませんよね? お付き合いも、大事な方とのお付き合いは、切り詰めるわけにはいきません。年金制度は不安だらけです。若い人たちに『年寄りは年金で食べていけるからいい』なんて、安直なことを言われたとき、すっごく腹がたちましたね。若い人だってこれから先、自分たちの年金生活をよく考えてもらいたいと思います」と訴えていた。
原告代理人の黒岩哲彦弁護士は「憲法25条2項には、『国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない』と書いてあります。あいつぐ年金支給額の引き下げは、憲法に違反します。裁判では、このことを真っ正面から問うていきたい」と意気込みを語った。

まあ余っていた2万円の年金はどうしていたんだとか、家賃負担もなく月6万円まるまる使える環境で、医療費などもタダ同然での6万円の手取りが多いのか少ないのか、今の現役世代からは色々と意見もありそうですけれども、ともかくも世の中お金の不満は幾つになっても尽きないと言うことでしょうね。
もともと制度として決まっているルールを特例で緩和してきたわけですから、ただでさえ年金財政が逼迫してきた折に特例の是正措置を決めるのは仕方がないことなのかなとも思うのですが、この健康で文化的な最低限度の生活と言うフレーズは昨今生活保護関連でもたびたび話題になっているように、果たしてどのレベルがそれに相当するものなのか?としばしば議論になりますよね。
お年寄りが食べるものも済むところもなく橋の下で日々残飯をあさりながら暮らしている、となれば誰にとっても寝覚めは悪いでしょうが、実際にはいやしくも年金受給資格のある方々でそういう生活をしている人もまずいないはずで、とりあえず飢えずに食べていけるのであればそれ以上の贅沢は自分の財布から金を出してやれば?と言う考え方ももっともだと思います。
特に日本の年金システムは自分達が積み上げたお金を受け取るのではなく、現在の高齢者を現役の若い世代が養うと言う制度になっているわけですから、当然ながらワープア化著しくギリギリの生活を強いられながら一生懸命社会保障のコストを負担している現役世代からは快く受け取られる話ではないのでしょう、こんな声が上がっていると言います。

「では若者に死ねと言うのか」 高齢者の「年金減額取り消し訴訟」に現役世代が猛反発(2015年6月1日J-CASTニュース)

   2.5%引き下げられた年金減額の措置を違憲だとして、全国の年金受給者が国の決定取り消しを求めた訴訟に波紋が広がっている
   原告によると、生活の苦しい受給者から「年寄りは死ねと言うのか」という声が届いているというが、今の高齢者よりも負担率がはるかに高い現役世代からは「若者に死ねっていうんだな」と反発は大きい

「なぜ年金を下げる。年寄りは死ねというのか」

   2015年5月29日、全国の年金受給者約1500人が国を相手取り、2013年10月から15年4月にかけて段階的に2.5%行われた減額措置は違憲だとして決定を取り消すよう訴訟を起こした。
   公的年金は物価の変動によって給付額が変わる仕組みだ。今回減額が行われたのは、00年~02年度に物価が下落したが、景気対策のために給付額が据え置かれて水準より2.5%高くなっていた分を調整するためだ。
   訴状などによると原告は、この減額措置を「合理性を欠くもの」とし、「健康で文化的な最低限の生活」を保障する憲法25条に違反すると主張している。
(略)
   しかし、こうした年金受給者の訴えに対し、年金制度を支える現役世代からの反発は大きい。背景には、現役世代は今の高齢者に比べて、負担した分の割に支給額が少なくなることへの不平感があるようだ。
   厚労相の諮問機関、社会保障審議会が12年に発表した資料によると、20~60歳に厚生年金に加入したモデルケースの場合、1940年生まれは保険料の負担額が900万円で、年金給付額は4300万円(65歳以降分のみ)。しかし1980年生まれは負担額が4500万円で、給付額は1億400万円。負担と給付の割合を見ると、40年生まれが約4.8倍の給付を受け取るのに対し、80年生まれは2.3倍ほどしか受け取れない

高齢者を支える現役世代の負担はどんどん大きくなる

   これは日本の年金が、現役世代が収めた保険料をその時の受給者への支払いにあてる賦課方式を取っているからだ。
   少子高齢化が止まらない限り、高齢者を支える現役世代の負担はどんどん大きくなる。2000年ごろは現役世代4人で高齢者1人を支えていたが、08年ごろから3人で、22年には2人で支えなければならない計算だ。
   全日本年金者組合など原告側は「若い人も高齢者も安心できる年金制度を!」と書かれた横断幕を掲げたり、会見で「若い人たちだってこれから先、自分たちの年金生活をよく考えてもらいたいと思います」と述べたりするなど、あくまで世代を超えて協力することを訴えている
   しかし、訴訟に対し現役世代の反応は冷たい。ツイッターなどネットでは、
    「今まで散々若者から色々な富を搾取してきたジジババ共が『もっと金よこせ搾取しろ』だってよ」
    「払った金額よりも多額を受け取っておきながらこの厚顔無恥ぶり
という不満が目立った。また会見で出たフレーズ「年寄りは死ねというのか」をやゆして、
    「えっ?若者に死ねって言ってるの?
    「『では若者に死ねと言うのか』と返したくなる
という声もあった。

もちろん世代間対立など不毛としか言いようがない話なんですが、生活に困窮し日々休む暇もなく働いても将来に希望も何も望めない現役世代にとって見れば、一日中暇そうにしているくせにそのうえ現役世代の空っぽの財布まで当てにして贅沢な暮らしをしたい老人達がどのように見えているか、多少の想像力を果たせるまでもなく判りそうな気はするでしょうか。
好景気の時代に生きてきた御老人方には自分で貯蓄をする余裕もあったのだろうし、老後に備えて計画的にやってこなかったツケを他人に依存されても困ると言う意見ももっともだとも感じるのですが、一方で彼ら高齢者の若い時代は未だ世代間での家族内助け合いが当たり前と言う時代でもあったわけで、日々の生活コストは若い者の財布に任せておけば年金はまるまる「文化的な生活」に使えると言う見込みもあったのでしょう。
もちろん高齢者で生活のための収入を得る手段がない、そして事実資産もなければ年金も足りないと言うことになればこれは各種社会保障による支援の対象になりますけれども、逆に言えば全国何千万の高齢者の中でこれでは生きていけないと言うほど年金だけに頼り切った方々はそこまで多くはないと言うことなのだろうし、そうした方々を基準に年金支給額全体を左右させるのが妥当なのかどうかです。

今の高齢者世代と言いますと未だ勤労は美徳と言う考え方が一般的だった世代だと思われますが、当時よく言われていた言葉として「働かざる者食うべからず」と言う言葉があったのだそうで、そうした価値観の中で生きてきたはずの彼らが自らの現状をどう感じているのかです。
現実的に現役世代のこれ以上の負担増は不可能である以上、仮に給付増加を目指すとなればどこかからお金をかき集めてくるしかありませんが、その場合今さら輸出産業を奨励して世界を相手にお金を稼ぐと言う時代ではなくなっている以上、国内で眠っているお金を掘り起こしてくるということも必要になってきそうではありますね。
その点で今の高齢者は全世代を通じ最大の資産を抱え込んでいる上に、時間や暇も有り余っていて他人のために何かをしたり出来るだけの余裕があるのですから、わざわざ多忙な現役世代の助けを借りずとも高齢者同士で相互支援すると言うシステムを構築するやり方もあるだろうし、そのための協力の訴えであれば現役世代の理解も共感もずっと容易く得られていたかも知れません。

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コメント

賦課方式の制度である限り少子高齢化で持続が難しくなるのは明らか
年金を含む社会保障費の減額か現役世代への負担増かしか解決策は有り得ないけど
高齢者の数が多く投票率も高い為に後者になる事が多いですね
この傾向は増々強くなると思われます

投稿: | 2015年6月 4日 (木) 07時40分

年金だけじゃない老人の既得権益をどうひきはがしていくかが今最大の政治課題でしょ!

投稿: | 2015年6月 4日 (木) 08時09分

老齢年金で食っていけない人は生活保護を受けられるでしょ
年金が足りなくても、どのみち健康的で文化的な最低限度の生活は保障されてるよ

投稿: | 2015年6月 4日 (木) 09時59分

 団塊の世代は孫が作れなかった。
 孫の世代ができる子を育てられなかった、という時点で、現役時代に頼る年金は切り下げられることを覚悟しなきゃいけなかったんです。何をいまさら、です。
 2015年6月 4日 (木) 09時59分付名無し のお説通り、食っていけない人は生活保護で、振れる袖がなくなれば水準が下がるだけのことです。
 文句を言っていく先は税の取り方くらいでしょう。(株)屋の言う好景気はしょせんゼロサムゲームですから。
 

投稿: | 2015年6月 4日 (木) 10時27分

こういう時代ですから万人に対して同様に手厚くと言う社会保障はまず無理で、その分どうしても足りない部分にピンポイントでの支援が求められると思います。
ただそうした使い方をするには今の生保制度がいささか向いていないのも事実なので、年金だけをどうこうするのではなく社会保障全体で総合的に制度を改めていくべき時期だと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2015年6月 4日 (木) 10時46分

孫の世代ができる子を育てられなかった?

子世代の問題じゃないのでは
団塊の世代が、その親世代と同じだけの数の子供を育てなかった時点で、切り下げ確定
自分らが4人兄弟なのに、自分の子は2人兄弟なら、その時点で半分に切り下げ確定
切り下げないから負担倍増になっているだけ

投稿: | 2015年6月 4日 (木) 16時06分

若い人には尊像もつかないかもしれないけど、1980年代頃までは将来の人口”増”こそが問題視されていたのよ。
近未来小説とかエンターテイメントのレベルでもそうだし、
国政レベルでも「どうやって人口増加を抑制するか」てやってたの。

投稿: JSJ | 2015年6月 4日 (木) 16時39分

でも世界的にみたらいまだって人口増加が問題なんでしょ?
ばんばん外国人移民受け入れたら人口減少も年金問題もなんとかなるんじゃない?

投稿: | 2015年6月 4日 (木) 16時49分

人口爆発で地球では人類を養うだけの食料を生産できなくなる
という危惧は既に語られなくなってますよ
その手の危機原因は温暖化

投稿: | 2015年6月 5日 (金) 11時51分

>ばんばん外国人移民受け入れたら人口減少も年金問題もなんとかなるんじゃない?
>人口爆発で地球では人類を養うだけの食料を生産できなくなる は過去の問題w(節穴)

 配分の問題。日本人が飢え死にしないことがわかっていても子づくりしない理由を、我が身に照らして考えてみなさいよ。
 体験にしか(しても)学べない飽食のおゆとり様には高校無料化など豚に真珠。初等教育だけでエンゲル係数50%の生活を体験していただくのが当然の帰結。移民様以上の稼ぎがあるとよいですが。

投稿: | 2015年6月 7日 (日) 10時52分

 食糧不足で食えなくなる問題は、温暖化だろうが人口増だろうが本質同じなんだが? 違いが分かる自分はえらいってか? 

兄弟二人なら 均衡するよ。均衡狙いだ。
某国の一人っ子政策よりまとも。
 
減少傾向を方向づけた?
トレンドでしか株価予測wできない(分析ができない)バカがいるな。
二人にしておく、一人はほしい、つくる意思なし、の差がわからないんだろうな。  

投稿: | 2015年6月 7日 (日) 11時12分

 年金支給額の引き下げを憲法違反とする集団訴訟が全国で始まった。これは年金法で定められている年金のデフレスライドの実施や、年金財政を安定化させるための給付抑制が、最低生活を保障する憲法に反するという主張である。今後、急速に高齢者が増える日本で、もっぱらその利益を追求する集団が、高い投票率を武器として大きな政治力をもつ「シルバー民主主義」の脅威が、現実のものとなりつつあることを示している。
http://diamond.jp/articles/-/72858?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

投稿: | 2015年6月 9日 (火) 12時42分

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