« 今日のぐり:「大連香奥田店」 | トップページ | 少子化の時代における生殖医療の位置づけの難しさ »

2015年6月29日 (月)

医療費はふたたび抑制政策にさらされそうです

財政再建と言うことはその必要性が久しく言われながら一向に手が着く気配がありませんが、消費税増税に伴い久方ぶりの税収増が見込まれる一方で支出面での抑制に関して、先日からこんなやり取りが繰り広げられています。

自民、骨太素案を了承 社会保障費抑制は「目安」(2015年6月25日日本経済新聞)

 自民党は25日の政調全体会議で、2020年度に向けた財政健全化計画を含む政府の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案を了承した。党総務会での了承を経て、政府は30日に閣議決定する方向だ。

 党内の厚生労働族に配慮し、社会保障費の抑制に関する素案の文言を修正した。13~15年度の社会保障費の伸びを実質で1.5兆円程度に抑えてきた実績をめぐり、当初は「その基調を18年度まで継続していく」としていた表現に「目安」との文字を書き加えた。社会保障費の具体的な抑制策の実施についても「予断を持たずに検討する」と記し、柔軟に対応する余地を残した。


日医「実質的に社会保障費にキャップ」- 骨太方針2015素案に見解(2015年6月25日CBニュース)

日本医師会(日医)の横倉義武会長は24日の記者会見で、政府が経済財政諮問会議に提示した「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針2015)」の素案についての日医の見解を示した。素案の中で、社会保障費の伸びが過去3年で1.5兆円程度だった基調を18年度まで継続していくなどと明記されたことについて、「実質的に社会保障費にキャップをはめている。かつて小泉政権下で社会保障費が毎年2200億円機械的に削減され、医療崩壊に導く深刻な影響をもたらした反省が見られない」と述べた。【君塚靖】

横倉会長は、素案に盛り込まれている財政健全化への取り組みは「次世代へのわれわれの責任である」と一定の理解を示す一方、「医療は社会的共通資本であり、社会保障は税よりも貧富の差を縮める所得再分配機能が大きくなっている。医療政策は財政主導で行うのではなく、社会保障が社会の安定に寄与していることを念頭に置いて実行すべき」との考え方を改めて示した。

いわゆる医療崩壊と言う現象が社会保障費抑制とほとんど同時期に発生したことによって両者は当然に関係があるかのように語られていますけれども、医師の側から見ると医療訴訟の急増や医療バッシングなど医療に対する期待値が際限なく上がり続けていった一方で医療のリソースは増強されず激務化に対して見返りは乏しかっただとか、ネットの発達で医師が世間の常識にようやく目覚めたと言った複合的な要因がありそうには思います。
とは言え、医療供給体制を何も変えないまま単に診療報酬を切り下げるだけでは少なくとも病院経営は破綻するのが目に見えているわけで、医療費削減を追及するのであれば現場における医療の現状を変えると言うことが同時進行で行われなければならないはずですし、政府的にその中核的な原動力となる政策が地域医療計画による病院病床の再編と言うことなんだろうと思います。
高価な医療を行う急性期のベッドを物理的に制限すれば患者の取捨選択が自然と発生せざるを得ず、例えば寝たきり超高齢者が三次救急に運び込まれて毎月何百万もかかる濃厚医療が施されると言ったことも少しは減ると期待しているのかも知れませんが、ただ医療提供側の行動は政策誘導で変えられるにしても、それが患者側の行動までも変えるかどうかは未知数としか言えませんよね。
最悪の場合「今までは出来たことが何故出来ないんだ!」と現場のスタッフが患者に攻撃されることにもなりかねないだろうし、人件費が大きな比率を占める医療現場で収入が抑制されればマンパワーへの投資がおろそかになるだろうとは想像出来るところで、直接的な医療専門職はともかく例えば医師らの業務をサポートしてくれる医療秘書や事務補助員などいなくても何とかなるよね?と言った話にもなってくるのかも知れません。

かつて国が普段のかかりつけは診療所に、何かあったら病院にと言う病診機能分担を目指した際に、儲からなければ病院が患者を手放すだろう、儲けにつながるなら熱心に診るだろうと病院の診察費を引き下げ、診療所を引き上げたところ、思惑に反して患者が安くなった病院に殺到したと言う話は今も語りぐさですが、こうして見ると医療においてもやはり患者は価格にはそれなりに敏感に反応していると言えそうですよね。
医療の消費者である患者の受診行動を変えたいのであれば患者側に対して直接的働きかけをするのが筋だろうと思うのですが、救急医療崩壊対策やコンビニ受診抑制のためにその実現に根強い期待感のある救急車有料化も一向に実現しそうな気配がなく、高所得者には医療・介護コストをもっと負担してもらおうと言う多数派の世論が好みそうな話すら実施が見送られたと言います。
最近では外来での報酬も出来高制ではなく、患者ひとりあたり幾らと定額の包括制にしたらいいんじゃないかと言う話もあって、そんなことをすれば検査などで余計な出費のかかる重症者を誰も診なくなると反対しきりだと言いますが、萎縮診療と言えば聞こえは悪いが無駄を省いたと言えばどうなのかですし、患者側からすれば一定金額で何度でも診てくれると言うのであれば歓迎すべきニュースであるはずです。
この辺り実際のところは予想される各種デメリットと医療費削減なり患者負担軽減なりのメリットをきちんと比較しないと何とも言えないのですが、経営者目線の日医にとってはともかく給与労働者である勤務医の多くにとっては過労死しないほどほどの水準に仕事量が落ち着くのは悪い話ではないはずで、現場医師の立場に考慮した政策であれば案外多くの医師からの支持も得られる可能性はあるかもですね。

|

« 今日のぐり:「大連香奥田店」 | トップページ | 少子化の時代における生殖医療の位置づけの難しさ »

心と体」カテゴリの記事

コメント

いいじゃない 繰り返したって 人間だもの

投稿: みつを | 2015年6月29日 (月) 07時51分

上げた給料は下げられないから経営かたむく病院も出るでしょうね。
厚労省のもくろみ通りに淘汰が進んでくんでしょ。

投稿: ぽん太 | 2015年6月29日 (月) 08時38分

医療費の公費部分抑制の手段は、診療報酬引き下げではなく、患者自己負担増もあるのですが、衆愚政治で後者は誰も言いません。診療報酬引き下げだけだけでは、需要が喚起されて、また勤務医逃散の再現ですねえ。我々は、それに対応して自分の生活を守るだけです。私個人は、逃散の機会を得たので、感謝しています。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年6月29日 (月) 09時46分

そもそもの原因が高齢化なので衆愚政治とかではないと思いますが、、、

投稿: | 2015年6月29日 (月) 11時22分

高齢者の医療介護コストが年金や貯蓄を上回ってもちだしになれば、自然と国民意識も変わっていくような気がします。

投稿: 管理人nobu | 2015年6月29日 (月) 11時36分

MERSが日本上陸した場合、面倒な問題はやりたくない医師同士の友情チームワークが発揮。
救急医療3日→内科※一週間→呼吸科一週間 ここで治療出来ないと腎臓科で透析。
高齢者は寝たきりになるので、リハビリ病院に転院というグルグルとMERS流行するが、
見た目は肺炎なので死因が肺炎が増えて、厚労省の官僚が肺炎恐いとお茶飲みながら思う平和の日本と予想。

投稿: | 2015年6月29日 (月) 16時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/61808101

この記事へのトラックバック一覧です: 医療費はふたたび抑制政策にさらされそうです:

« 今日のぐり:「大連香奥田店」 | トップページ | 少子化の時代における生殖医療の位置づけの難しさ »