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2015年5月26日 (火)

最近妙なところで注目されることが多くなった?弁護士業界の話題

何気なく読んでいると何と言うことはないありふれた事件のようにも思えるのですが、冷静になって読み返してみると何かしら非常に不自然な印象を与えると言う、こんな小さな裁判の記事が大きな話題になっていました。

保険金目的で自宅放火の男判決(2015年5月22日NHK)

3年前、保険金をだまし取る目的で自宅に火をつけて全焼させたとして放火などの罪に問われた久留米市の55歳の男に対し、福岡地方裁判所は、「地域住民に不安を感じさせた危険な犯行だ」として懲役6年の判決を言い渡しました。

久留米市の無職、荒木英次被告(55)は3年前の8月、家財道具にかけていた火災保険の保険金をだまし取る目的で、当時自宅として借りていた木造2階建ての住宅に火をつけ、全焼させたとして、放火と詐欺未遂の罪に問われていました。

これまでの裁判員裁判で、検察は「危険な行為で動機も身勝手だ」として懲役8年を求刑した一方、弁護側は、火をつけた事実は認めたうえで「被告ではなく、ほかの第三者の放火によって火災が起きた可能性がある」として無罪を主張していました。

22日の判決で福岡地方裁判所の松藤和博裁判長は、「火災発生の前には被告が1人で家におり、被告のつけた火が消えて、その後に第三者が放火するというのは常識的にあり得ない」と指摘しました。 そのうえで「全焼という結果は重く地域住民に不安を感じさせた危険な犯行だ」として懲役6年の判決を言い渡しました。

いやまあ、確かに自分で火を付けたことは認めているのはいいとして、この状況で「でも実際に火事になったのは誰か知らない人も火を付けたからかもしれないよね?ね?」では無理があるにもほどがある弁護だと大いに話題になっているのですが、さすがに地裁判事ですら「それはないだろうjk」と思わず突っ込みを入れたくなったと言う、これは何とも無理筋な弁護であったと言うべきでしょうか。
こういう記事が出るたびに「弁護士ってどんだけw」とひどく評判が悪くなっていくようにも感じられるのですが、雇用主たる被告がやっていない、違うと言い張っている以上その線で弁護するしかないと言うのは多くの弁護士が指摘している通りでしょうし、この辺りは無理筋の弁護をして○○系を食らうのが得なのか、何とか罪一等を減じてもらえるよう法廷戦術を変えた方が得なのか、弁護士が事前にどれだけ被告に理解させられるかでしょうね。
ただやはり弁護士として失態と言うべき他ないケースもたびたび報じられていて、先日は強姦事件の被告側弁護士が被害者に「示談にしたらその時のビデオを処分するけどどうよ?」と脅迫したとして大いに炎上したところですが、つい先日も札幌での傷害事件で加害者側が被害者を脅迫する手紙を預かり、言われるままに被害者に送りつけたとして弁護士が弁護士会から処分されると言う事例もあったそうです。
だからと言って直ちに「これだから弁護士とは…」式のレッテル貼りをするのも危険なのですが、素朴な市民の不安を増幅させるかのように、先日国がこんなことを言い出したと話題になっています。

司法試験合格 年1500人に 政府案、当初目標から半減(2015年5月21日日本経済新聞)

 政府は21日、司法試験の合格者数を「年間1500人以上」とする検討案を公表した。司法制度改革の一環で「年3千人程度」とする計画を2002年に閣議決定したが、弁護士らの仕事が想定のようには増えなかったことなどから13年に計画を撤回、適正な合格者数の検討を進めていた。

 合格者数の目標が事実上、従来の半分に下方修正される。全国の法科大学院の再編や淘汰にも影響しそうだ。

 検討案は政府の法曹養成制度改革推進室がまとめ、有識者会議(座長・納谷広美元明治大学長)の21日の会合で提示した。14年の合格者は1810人と8年ぶりに2千人を割った。法曹志望者は減少傾向にあり「何の措置も講じなければ合格者数は1500人を下回りかねない」と指摘し、1500人以上を確保すべきだとした。政府は7月15日までに結論を出す。

 司法試験合格者数は1960年代以降は年500人前後と「狭き門」だったが、90年代に徐々に増え99年には千人に達した。政府は「国民に身近な司法」を目指す司法改革の柱の一つに法曹人口の拡大を位置づけ、02年に「2010年ごろまでに合格者数を年3千人程度に増やす」とする計画を閣議決定した。

 07年以降、合格者は2千人を超える一方、企業や市民の弁護士などへの依頼が伸び悩み、新人弁護士が弁護士事務所に入れないなどの問題も発生。政府は13年、年3千人合格の計画を「現実性を欠く」などとして撤回した。

 政府は13年、適正な法曹人口や法科大学院の改革案を検討するため「法曹養成制度改革推進会議」(議長・菅義偉官房長官)を発足。事務局として法務省や文部科学省、最高裁、日本弁護士連合会でつくる推進室が置かれ、法曹ニーズの調査などを進めていた。

そもそもこの弁護士大増員計画と言うもの、国が音頭を取って弁護士をどんどん増やしましょうと盛大にやってきたことであるはずなんですが、その結果全国各地で弁護士余りともワープア化とも言われる状況になり、全員強制加入の弁護士会の会費も払えずせっかく弁護士資格を取っても仕事が出来ないと言う若手も少なからずいらっしゃるとも側聞します。
その理由として一つには弁護士と言うものの潜在需要を読み誤っていたことが挙げられますが、諸外国と比べてずっと弁護士が少ないとは言っても元々日本では司法書士などが外国で言うところの弁護士業務的なものをかなり分担してきたと言う歴史的経緯もあっただけに、単純に人口比で諸外国並みにと突っ走ってしまえばこうなるのは目に見えていたと言う声もあるようですね。
特に気になるのが各地であれだけ新設された法科大学院は需要が低迷し学生を集めることもままならず、国も国試合格率が低迷している大学院はどんどん潰しますなどと言い出していることですが、高い学費を払って若い時期にこうした大学院に通ってきた人達にとっては人生設計を狂わされたどころでは済まない話だろうと想像するところです。
一方国民にとって気になるのが、かつてあれほど難関資格の名をほしいままにしてきた司法試験の合格者がこんなに急増したのはどうなのか、試験が簡単になったり合格基準が引き下げられたりで出来の悪い人間まで弁護士資格を与えていたのではないかと言う懸念ですが、この辺りは客観的に比較するのが難しい以上弁護士のレベルが下がったかどうかは何とも言いかねるものがあるでしょう。

ただ弁護士と言う仕事の性質上、どんなに優れた資質があっても一定のキャリアを積んでいかなければ十分に能力を発揮出来ないだろうとは想像出来るところで、供給過剰によって仕事が得られない若い人たちにとっては自分を磨くと言う行程でかつての先輩達よりもよほど悪い条件に置かれているとは言えそうですよね。
さらに言えば食っていくためにやむなく怪しい仕事にも手を出してしまうだとか言ったモラルハザードの懸念も言われているところなんですが、気になるのが弁護士の懲戒処分件数が右肩上がりで昨年は過去最高を更新したと言った話で、特に預かり金着服などが多発していると言うのはやはり年収激減の影響が出ているのか?と気になるところです。
この辺りは必ずしも司法試験合格者が激増した結果レベルが下がったからと言ったことばかりが原因でもないようなのですが、興味深いのは弁護士が懲戒処分になる比率にはあまり変化がない一方で、懲戒処分請求に対して実際に処分が下された比率は激減していると言うデータで、理由として懲戒処分請求件数が激増したからだと言うのですが、何となく顧客との間にも行き違いの増加がありそうには感じる話でしょうか。
弁護士活動などは法律との絡みで顧客の思い通りに必ずしも話が進まないと言うことはままあるはずで、その意味ではいわゆるインフォームドコンセントをきちんとすることが非常に重要なんじゃないかと思うのですが、このところの意識改革が奏功してか医療の世界では年々顧客満足度が向上していることに対して、国民の権利意識に関して医療以上に敏感な弁護士業界がこの方面でどんな取り組みをされているのかにも興味がありますね。

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コメント

何の仕事にしたって最低限の社会常識はいると思われ

投稿: | 2015年5月26日 (火) 08時49分

>いわゆるインフォームドコンセントをきちんとすることが非常に重要なんじゃないかと思うのですが、このところの意識改革が奏功してか医療の世界では年々顧客満足度が向上していること

 聖職医畜であることをやめてサービス業であることに甘んじる?ことにしたからでしょ。ICはまともにやろうとすればコストがかかるんですが、このコストをしっかりと請求しつつ医療費削減しようとすればどこを削ることになるのか、興味深いところです。(弁護士増やせといった方々の中には、医療費を飯の種にしたかった面々もいるようでw)

 医者の(本来の)勝負では患者は同じ側にいて味方、敵は病気というか天然自然。ICってのは「勘違いしてもらわないための余分なコスト」ですよ。人間同士の争いを減らすための余分なコスト。 そんなものを飯の種(というか主食)にはしたくないですな。 

投稿: 感情的な医者 | 2015年5月26日 (火) 08時58分

まあ旧来の一般的な医師の感覚としてはおっしゃる通り、治療以外の余計なところにエネルギーを使いたくないと言うことになるかと思いますが、医師の多様化が進めば今後IC専門医的なポジションも登場するかも知れません。
とは言え現実的には医師は未だ不足傾向であり、このあたりは標準化した書式を用いての医師以外のスタッフによってどの程度安価に代行できるかが当面の課題になるかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年5月26日 (火) 10時44分

企業顧問の3点セット、会計士、司法書士、社会保険労務士は、法や条例、コンプライアンスに則ってクライアントを指導すると言う行動を取りますが、困ったときの代理人弁護士は依頼者の利益を優先し、それに応じて法の解釈を進めると言った流れで仕事をするので、正道を期待すると大きく裏切られますね。

会計士から「それって出資者に対して背任行為でしょ。」と突っ込まれる様な案件も、弁護士は「最低限この辺りをこうやってみれば、とりあえず直接的な犯罪にはならないよ。道義的にはいろいろあるけど。」ってやってくれて、ほんとがっかりします。
ま、うちが依頼した弁護士は、うちの会社の状況を調べもせず、憶測推測一般例で経営者にアドバイスするので、事が全く進まないばかりか迷走している最中でした。

医者は、両方のタイプが居ますね。

投稿: | 2015年5月26日 (火) 11時52分

医者の場合あまり手段にはこだわらない先生が多そうなイメージ
あれこれ裏技使ってでも治したら正義みたいな

投稿: | 2015年5月26日 (火) 13時17分

法律家の仕事は、まず規範があって、それにそってあれこれ解釈していくという流れ。
医者の仕事は、まずあれこれ試行錯誤を繰り返して、その中から標準的な方法を見つけていくという流れ。標準的な方法を無視するのも墨守するのも、医者としては問題あり。

発想が真逆なので比較しても無意味。
法律と医療は相性が悪いと言われる所以でもあります。

投稿: JSJ | 2015年5月26日 (火) 15時16分

クラブママが夫に「枕営業」、妻への賠償責任は認めず

 客を確保するために性交渉したクラブのママの「枕営業」は、客の妻に対する不法行為となるのか――。
こうした点について、東京地裁が「売春と同様、商売として性交渉をしたに過ぎず、結婚生活の平和を害さない」と判断し、
妻の賠償請求を退ける判決を出していたことがわかった。

 判決は昨年4月に出された。裁判では、東京・銀座のクラブのママである女性が客の会社社長の男性と約7年間、繰り返し性交渉したとして、
男性の妻が「精神的苦痛を受けた」と女性に慰謝料400万円を求めた。

 判決で始関(しせき)正光裁判官は売春を例に挙げ、売春婦が対価を得て妻のある客と性交渉しても、客の求めに商売として応じたにすぎないと指摘。
「何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない」とした。

 そのうえで、枕営業は「優良顧客を確保するために要求に応じて性交渉をする営業活動」とし、「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実だ」と指摘。
「客が店に通って代金を支払う中から、間接的に枕営業の対価が支払われている」として、枕営業と売春は「対価の支払いが、直接か間接かの違いに過ぎない」とした。

 判決によると、男性と女性は2005~12年、月に1、2回のペースで主に土曜日に、昼食をとった後、ホテルに行って夕方に別れることを繰り返した。
この間、男性は同じ頻度で店に通っていたため、始関裁判官は「典型的な枕営業」と認定し、妻の請求を退けた。妻は控訴せず、判決が確定した。

~続き・詳細 は以下ソースをご覧ください~

朝日新聞DIGITAL 2015年5月28日05時15分
http://www.asahi.com/articles/ASH5W4T8BH5WUTIL013.html

投稿: | 2015年5月28日 (木) 07時17分

疑わしきは課税できず 「女神」連勝、窮地の当局
税金考(4)
 弁護士の宮崎裕子氏(63)は今日も法廷でほほ笑んだ。3月25日の東京高裁。傍聴席の最後列に座り、判決を静かに聞いた。

 「控訴を棄却する」。東京国税局から約3995億円の申告漏れを指摘された日本IBMの持ち株会社が約1200億円の課税処分取り消しを求めて争った控訴審で国に勝った。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASM415H03_X10C15A5MM8000/

投稿: | 2015年6月 5日 (金) 09時51分

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