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2015年5月25日 (月)

この場合一番悪かったのは誰なのか?と言う素朴な疑問が

偽医者騒動と言うものが未だに発生するようで、先日はこんな記事が出ていました。

医師免許なく約300人診療か(2015年5月21日NHK)

仙台市の眼科診療所で医師の免許を持たない男性がおよそ300人の患者に対して診療行為を行っていた疑いがあることが分かり、この診療所を経営していた福岡市の医療法人は警察に通報するとともに患者に対して診療費を返還するとしています。

福岡市にある医療法人「しんあい会」によりますとおととし12月から去年4月にかけて仙台市青葉区の眼科診療所「ひまわりアイクリニック仙台」で休暇中の医師の代わりに医師紹介業者を通してのべ9日間にわたって男性医師の派遣を受けました

しかし、ことし1月下旬にこの医療法人が税金の関係書類をこの男性に送ったところ別の医師に書類が届いたため、不審に思って警察に通報したところこの男性は医師免許証を持っていないことが分かったということです。

このためこの医療法人は仙台市の保健所に届け出るとともにこの男性が仙台市の診療所で診療行為を行った患者、およそ300人に文書を送付して診療費の返還を申し出ています

この医療法人は全国で眼科診療所を経営していますがこの男性は仙台市以外でも4か所の眼科診療所で述べ62回にわたって診療行為をしていた疑いがあるということで患者の数は全国で合わせて2200人に上る恐れがあり、警察で捜査を進めています。

この医療法人は「医師免許証のコピーを持っていたので信じてしまった。2度と同じことが起きないよう医師免許証を原本で確認することを徹底している。多くの患者に迷惑をかけ大変申し訳ない」と話しています。

今どき医師免許の確認がコピーと言うのもどうなのか?とも思うのですが、しかし医師資格の確認が紙切れ一枚と言うのも今の時代おかしな話で、この辺りはもう少し時代に合わせた資格認証のシステムが必要になるんじゃないかと言う気がしますが、気になるのは本件のように業者経由での雇い入れでもこうした偽医師騒動が発生すると言うことですよね。
過去にも何件か同様の無資格診療を行っていたと言うことで、一番最初の段階でチェックがおろそかになったまま継続して契約されてきたと言うことなのでしょうが、興味深いのは本来医師と言う資格を偽って詐欺的行為を働いた偽医者が加害者であり、診療所や業者は被害者と言っていい立場であるにも関わらず、診療費を返還せざるを得なくなるなど小さくない被害が今後も続きそうだと言う点です。
この点に関しては厚労省が過去に繰り返し出して来た資格確認徹底の通達においても触れられていて、「無資格者に医業若しくは歯科医業を行なわせた病院若しくは診療所の開設者若しくは管理者についても、その態様によっては、刑事責任を問われ、さらに免許の取り消し等の行政処分の対象となることとなる(昭和47年厚生省医務局長通知)」とされています。
近年発生したこの種の偽医者騒動を見る限りでも医師免許の原本を確認しないなどあまりに杜撰な資格確認が行われていたことはうかがわれますから、雇う側にもそれくらいのことを言わなければ資格確認がいい加減に行われていると言う現状もあるのでしょうが、この誰が悪く誰が責任を取るべきなのかと言うことに関連して、最近起こったこんな興味深い判決を併せて紹介してみましょう。

15歳にたばこ販売 ローソン元店員に罰金、店は無罪(2015年 5月23日朝日新聞)

 コンビニにあるタッチパネル式の年齢確認システムで、「私は20歳以上です」と答えた15歳(当時)の少年にたばこを売った行為は、犯罪にあたるのか。この点が争われた裁判で、香川県の丸亀簡裁が40代の元店員の男性に、求刑通り罰金10万円の判決を言い渡していたことがわかった。少年が「ほおににきびがあるなど、あどけない顔」だったのが決め手となった。

 男性が問われたのは、未成年者喫煙禁止法違反の罪。監督を怠ったとされた店も同罪で起訴されたが、システムを導入していたなどとして、無罪(求刑罰金10万円)とされた。店員と検察の双方が控訴。高松高裁で審理が続いている。

 少年にたばこを売ったのは、大手コンビニ「ローソン」(本社・東京都品川区)のフランチャイズ店。昨年10月の判決によると、男性は2013年4月22日夜、少年(当時高校1年生)が未成年で、喫煙するかもしれないと認識しながら、たばこ「メビウス」2箱(820円)を売った

公判で男性は「未成年だとわからなかった」などと起訴内容を否認した。しかし東根正憲裁判官は、少年が「一見して未成年者であるとわかる顔立ち」と指摘し、証言などから、男性は少年が年齢確認ボタンを押すころに顔を見たと認め、「レジ対応が忙しいなどとして、身分証を確認せずに販売した」結論づけた。

一方、店についてはシステムの導入に加え、店員に未成年者への酒やたばこの販売禁止を周知する「確認表」に毎月、署名させていたと指摘。「事業主として、必要な注意を尽くしている」と判断した。

高松高検は朝日新聞の取材に「店はたばこが未成年者にどれほど悪影響を与えるかを、きちんと教えていたのか。形式を整えれば責任が及ばないというのでは、あしき前例になる」と主張。一方、 ローソンは「係争中なので、お答えできない」としている。

一見して誰が悪いのかと言えば成人だと嘘をついた少年が悪いんじゃないかと言う気がするのですが、興味深いのは未成年者喫煙防止法は未成年者の喫煙を禁じている一方で当の本人に対する罰則としては行政処分としての現物没収のみであり、刑事罰が科されるのはあくまでも周囲の大人や販売した店舗など煙草を提供した側に限定されていると言う点です。
そしてまた、日常業務をしていただけの店員が罰金に問われる一方、本人がウソをつき放題と言う形ばかりの認証システムしか用意していなかった店舗側は罪に問われないと言うのも釈然としないところなのですが、この辺りは同法第三条で未成年者の喫煙を制止しなかった監督者への罰則が規定されていることが理由になっているのでしょうか。
ご存知のようにあの年齢確認システムなるもの、かねて不評で「そんなもの見てわからんのか!」などとやたらと紛争化するケースも多いと言うだけに、多忙な現場でスタッフが個別に判断すると言うのは現実的に無理だろうし、店舗あるいはコンビニチェーン側が自分達は無罪になったのだから現場店員に罰金を払わせて終わりでいいと考えているのだとすれば、これは大変に問題のあることだとは思いますね。

しかし今回の裁判を通じて店側(と言うより、コンビニチェーン側ですが)がいかに自分達を守るために周到な用意をしているか、そしてその一方で現場のオペレーションにいかに負担を要求しているかと言うことも見え隠れしているように思うのですが、コンビニの時給を考えればこんな事件で罰金10万円では全く店員としても割が合わないにも程がありますよね。
ただコンビニ経営と言う観点からはこの種の確認作業と言うものは非常に重要なのだそうで、実際に法律違反をしたからと販売許可を取り消され店そのものも潰れてしまったと言うケースも少なからずあると言いますし、店側は当然経営的観点からしっかりした確認作業をさせたい一方、常に客からのプレッシャーにさらされている店員としては身の危険にさらされるような過酷な局面も多々あるようです。
あの一見意味不明な年齢確認システムにしてもその辺りの微妙な妥協点から編み出された生活の知恵?と言うことなのでしょうが、この場合顧客の詐欺的行為によって降って湧いたような損害を被ることになった店員側なり店舗側が少年に対し民事請求なりできるのかどうか、せめて金銭的損害くらいは回収しないことには割が合わないのは確かでしょうね。

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コメント

アベシが悪いでFA

投稿: | 2015年5月25日 (月) 08時14分

法律がそうなってんなら仕方ないとしかですけど。
でもさすがに店員さんの裁判費用は店がもつんでしょ?

投稿: ぽん太 | 2015年5月25日 (月) 09時34分

医療事故で刑事裁判になった時に、病院が弁護士費用裁判費用負担すると思いますか?
この件でも雇用主が負担するとは思えませんが、負担する良い雇用主なら、すみません。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年5月25日 (月) 09時50分

もう、店内にタバコ自販機設置させて自分で買わせりゃいいじゃない

で、未成年に罰金払わせて売った成人はおとがめなしとすべきなんですかね、ふうん

投稿: | 2015年5月25日 (月) 10時51分

ニキビと言うには恥ずかしい、吹き出物が気になる中高年でも「あどけない顔」認定されるんですかね?

やだ、おらこっぱずかすぃ。

投稿: | 2015年5月25日 (月) 11時16分

欧米で日本人が酒等を購入しようとするとたびたび拒否されると言う話を聞くことからして、見た目の主観的評価だけでは限界があるので、全員強制的に資格証確認なりにした方が長期的なトラブルは減りそうにも思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年5月25日 (月) 12時38分

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