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2015年5月11日 (月)

胃がん検診のバリウム検査で死亡事故が発生

本日の本題に入る前に、ひと頃エレベーターの事故が話題になったことがあって、あれの場合製品としての欠陥やメンテナンスの問題が大きいようですが、一方で時折報じられるエスカレーター事故に関しては利用者側の間違った利用法もしばしば事故原因になっている印象があり、当然ながら小さな子供などを乗せる際には必ず大人が監督しておかなければならないと再認識させられるのが先日起こったこちらの事故です。

エスカレーターに挟まれ大けが(2015年5月6日NHK)

茨城県結城市の家具や日用品の量販店で、5日、1歳の女の子が左手の指をエスカレーターに挟まれ、全治およそ2か月の大けがをしました。

5日午後7時ごろ、結城市結城の「ニトリ結城店」の1階にあるエスカレーターで市内に住む1歳の女の子が指を挟まれました。
近くにいた父親がすぐに助け出しましたが、女の子は左手の中指と薬指に、全治およそ2か月の大けがを負いました。

警察によりますと、女の子は1階のエスカレーターの降り口付近に立っていて、親が目を離している間にエスカレーターのステップと床の隙間に指を挟まれたということです。

女の子は両親と姉の4人で店に来ていたということで、警察で当時の状況などを詳しく調べています。

統計によればエスカレーターの台数はエレベーターの1割に過ぎないにも関わらず、事故の件数では実に15倍にもなっていると言うことで、箱の中に入ってボタンを押すだけのものと動くものに飛び乗ったり飛び降りたりしなければならないものとでは危険性が違うのは判りますが、実際に事故の多くを高齢者と幼児とで二分していると言い、高齢者の2/3はエスカレーターに乗るに当たってためらいを感じているそうです。
構造や原理をきちんと理解した上で正しく利用すること、そしてそれが可能な身体能力を持っていることが必要と言えばかなりハードルが高そうにも思えますが、逆に大多数の健常者にとってはエスカレーターももう少し速く動かないものかと言う気もしているわけですから、不特定多数が利用するものを誰に合わせて運用するべきなのかと言う判断はなかなか難しいのでしょうね。
メーカーさんも今も様々な安全対策を工夫していると言いますが、そもそも急ぐ人のためにエスカレーターの片側は空けておきましょうと言った「マナー」も安全上は問題が大きいと言う指摘もあるように、かれこれ一世紀からの歴史を持つ機械とは言え未だ技術的にも運用上も不完全な部分が多々あると言うことを利用者も知っておくべきだろうし、特に子供の思いがけない行動には注意し過ぎると言うことはないのでしょう。
いささか余計な前置きが長くなりましたけれども、これも非常に歴史と伝統あるものでありながら、未だにこんな事故が起こるのだなと改めて感じさせられたのが先日発生した胃透視検査中の死亡事故なのですが、まずはこちらの記事から事件のあらましを紹介してみることにしましょう。

レントゲン撮影中に事故 女性死亡 沼田市(2015年5月8日日テレニュース24)

 群馬県沼田市で8日、会社の健康診断を受けていた女性が、胃のレントゲンの撮影中、診察台と壁の間に頭を挟まれる事故があった。女性はその後、死亡した。

 警察によると、沼田市恩田町の木材加工会社で8日、従業員の健康診断の最中に「女性が診察台からずり落ちて頭を挟まれた」と通報があった。警察と消防が駆けつけたところ、アルバイトでブラジル国籍のマスコ・ロザリナ・ケイコさん(58)が、レントゲン撮影車の中でうつぶせの状態で、診察台と壁の間に頭を挟まれていたという。マスコさんは病院に搬送されたが、死亡した。

 事故当時、マスコさんはバリウムを飲んだ後、体を傾ける診察台にのって胃のレントゲンを撮っていたという。警察は死因の特定を急ぐとともに、事故の状況を詳しく調べる方針。

健康診断の女性死亡=レントゲン撮影、台から落下-群馬(2015年5月8日時事ドットコム)

 8日午前11時25分ごろ、群馬県沼田市恩田町の建材会社「オリエント」で、胃のレントゲン撮影車で健康診断を受けていた女性が、診察台と車の内壁の間に頭部を挟まれた。女性は同社アルバイトでブラジル国籍のマスコ・ロザリナ・ケイコさん(58)=同所=で、約3時間後に病院で死亡が確認された。

 県警沼田署によると、健康診断は一般財団法人「全日本労働福祉協会」が実施していた。マスコさんは胃のレントゲン検査で車内の診察台に乗り、頭部を下にして傾いた状態になった際、診察台から落ちて台と内壁の間に頭を挟まれたという。

 同署は詳しい死因や、事故の原因を調べている。

胃透視、いわゆる胃のバリウムと言う検査もなかなか微妙なものがあって、数年前には厚労省が胃がん検診の手段として内視鏡は推奨せずバリウムでやるべきだと言ったことが医療現場からさんざんに言われたのが記憶に新しいところですけれども、あれも別にバリウムが優れていると言うわけではなく公費で集団を対象に行うと言う性質上、やはり費用対効果と言うことを考慮しての結論であったわけです。
ともかく胃カメラであれば(苦しい、しんどいと言った問題はさておくとして)ベッドに寝ていれば勝手に検査が終わるものを、胃透視の場合あちらを向けだ、ぐるぐる回れだとやたらに面倒くさいことを要求されるのは経験者の方々もご存知の通りで、今回の事故の場合その一環で頭を下げた状態で撮影中にベッドからずり落ちて事故に至ったと言うことであるようです。
こうした場合当然ながら落ちないようにしっかり手すりを握ることを指示されるはずですが、これも体重や腕力との兼ね合いで物理的に保持が難しいと言うこともあるだろうし、外国人であると言うことであるいは指示が通らなかったと言う可能性もあるでしょうから、結果的に司法の側からも運用上の問題点があったと指摘される可能性は今後ありそうには感じますね。

ところで普通は頭を下げる姿勢になる時には転落防止の肩当てをつけるはずでは?と言う指摘もあるかと思いますが、回転するのに邪魔になるので普段は外しているか頭側にずらしている場合がほとんどだろうし、頭下げの体位になる都度正しい位置に付け外しをするのが面倒あるいは時間的に不可能だからと、施設によっては最後まで外しっぱなしにしている場合も少なからずあるように思いますが如何でしょうね?
こうして事故が起こったことを考えると、頭下げにする場合に自動的にストッパーが動くようにするなり装置の方も改良すべきなのかも知れませんが、あれも何十年と同じようなものを利用している枯れきった道具であって、今まで特にトラブルがなかったものを今さら高いお金をかけて改良、改修すると言うことに二の足を踏むのはメーカーも病院側も同じことではないかと思います。
ただ先日は献血時の採血で神経損傷を起こしたケースで日赤が解決金900万円を支払ったと言う事例が報じられていましたが、年間100件単位で発生するかなりありふれた事故であっても裁判になるまでこじれると言うことを考えると、胃透視にしても透視台のふちで指を挟んだり転倒転落したりと言ったマイナートラブルは時折起こるわけですから、何も起こらない前提で話を進めるのは今の時代ですと問題がありそうですよね。
こうした稀な事故のケースほど全国の医療機関で事故情報を共有し再発防止の対策を考慮するきっかけにすべきだし、そこまでやって始めて亡くなった方も浮かばれると言うものだと思うのですが、特に検査件数の多い施設などで「そんなことをやっていられる時間はとてもない」と言う妙な現実主義に囚われ対策をおろそかにしてしまうと、何かあったときに本当に大変なことになってしまうのかも知れません。

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コメント

かなり無茶な傾けかたしてる技師いるからなあ
これで検診車も医者の同席必須ってことになるのかな?

投稿: | 2015年5月11日 (月) 07時35分

言葉がわからなくて手すりをつかめなかった?
普通の広い透視室だったら落ちただけですんだのかどうか?
マスコさんのご冥福をおいのりします。

投稿: ぽん太 | 2015年5月11日 (月) 08時11分

安全管理以外に検査精度の点から考えても、一部施設では検査件数の見直しが必要になるかも知れないとは感じています。

投稿: 管理人nobu | 2015年5月11日 (月) 10時45分

最近の胃透視の肩当ては頭低位になると自動で下がります。ベッドの頭側には落下防止の天板があります。
今回の事故がなぜ起きたか理解に苦しみます。
亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

バリウムを使う検診は費用的なこともありますが、内視鏡検査は装置の洗浄とかも時間がかかり 、検査時間も長く、集団検診には不向きです。
それから、スキルス性胃がんは初期の段階では内視鏡で見つけることは困難です。胃透視なら発見できます。
出来れば、両方の検査をするのがベストです。

投稿: ぽ | 2015年5月16日 (土) 11時27分

胃がん検診って健康診断なんです。
いろんな方が受診するんです。
中には「あなたは体力的に受診すると危ない」と指摘しても
「受診拒否するのか? 訴えてやる!」「俺の体は俺が一番知っているんだぞ!」と
言うこと聞かない人種が居ます。
何せ「見た目健康」ですから。
機械や技術の前に「健康診断ってどういう意味があるのか」を知って
受診すべきだと思います。

投稿: すねーく | 2015年6月15日 (月) 17時56分

亡くなられたマスコさんと20年ほど前に件の会社で一緒に働いていた者です。
当時は持病もあって定期的に診察を受けたり、日頃から健康には気を使っている方でした。
今回も、会社で検診できるからついでにやっとこっと♪くらいの気持ちだったのかなぁ。
働き者で優しかった彼女が、まさかこんな終わりを迎えるとは思ってもみませんでした。
絶対に、二度とあってはいけない事故です。
ご冥福をお祈りします。

投稿: ひな | 2015年7月11日 (土) 13時43分

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