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2015年4月28日 (火)

金もなければ人もいない時代の医療介護の工夫

先日は与党が社会保障費の大幅な削減にとうとう取りかかりそうだと言うニュースが出ていて、何しろ受益者である国民に対する直接的なサービス低下にもつながることですから政治的常識としてこの種の話題はタブー視されてきた反面で、これだけ社会保障費増加が言われる中でどうしても給付の抑制にも手を付けざるを得ないと言う理屈は誰でも判るところではありますよね。
特に増え続ける高齢者の医療、介護コストと言うものが非常に注目されているところで、健康保険の保険料率が高齢者向け負担の増加からついに9%を突破したと言うニュースも出ていましたが、国保に比べればまだしもお金があると見なされてきたため負担増加が続いてきた一方で、これ以上負担を増やされるのではたまらないと考える企業も増えてくるところではないでしょうか。
こうした状況となると利用者とすれば少しでも自己負担分を軽減したいところでしょうし、低所得者向けに各種の支援制度も用意されてはいるのですが、先日ちょっと信じられないようなこんなニュースが出ていたと話題になっています。

高額医療・介護保険の支援制度を知らなかった市(2015年4月25日読売新聞)

 茨城県つくば市は24日、医療保険と介護保険の1年間の合算自己負担額が一定額を上回った場合、その分を現金で支給する「高額医療・高額介護合算制度」を、国が制度を設けた2008年から今年3月まで認識しておらず、対象者に全く支給していなかったと発表した。

 未支給対象は08~13年度の6年度分(14、15年度分は算定前)で約110世帯。未支給額は約410万円に上り、1世帯当たり数百円から最高で約36万円。同市は、対象者と金額を確定させた上で全額を支給する。3月2日、市民から問い合わせがあり発覚した。事務を担当する同市国民健康保険課によると、通常、新制度ができた時点で県などから連絡があるが、認識できなかった経緯は不明

一部方面では「意図的に知らなかったことにしていたのではないか」と言う声も出ているようなのですが、国保であれば保険者である自治体が払い戻しをすることになるのでしょうから金銭的負担を嫌った、と言う考え方も可能は可能なのかも知れませんが、行政の仕組みを考えますとさすがにそれは穿ちすぎなような気もしますでしょうか。
とは言え今後都道府県が主体的に地域の医療・介護について計画的に提供することが求められるようになれば、国の制度任せではなく主体的に自治体が判断し行動することが求められることは確実であり、実際に国も目標を定めて医療・介護費支出の抑制を都道府県に求める方針を打ち出してきたことから、将来的に医療費を使い過ぎた自治体にはペナルティが課せられると言う可能性も否定出来ません。
となれば地方自治体レベルにおいてもリソースの再配分による医療の無駄や非効率を改善するのみならず、場合によっては実質的な給付の抑制に踏み込むと言うこともあるのかも知れませんが、そんな時代にあって少しばかり違った方向でこの問題と向き合おうとしている自治体も出てきているようです。

ひとり親家庭の定住支援=人口減少対策で-島根県浜田市(2015年4月2日時事ドットコム)

 島根県浜田市は4月から、県外からの定住を望むひとり親家庭に、引っ越し費用や養育費などを支給する支援制度をスタートさせた。親が市内の介護サービス事業所で働くことが条件。人口減少と高齢化が進む中、定住対策と介護人材の確保を同時に進める作戦だ。

 市によると、ひとり親家庭に限定した定住支援策は全国的にも珍しいという。助成は、市が希望者を募り、ひとり親であることを証明する書類などを確認した上、介護事業所との面談で双方が合意した場合に決定する。
 支援対象は、高校生以下の子どもがいる母子、父子家庭。転居費30万円に加え、1年に限り月3万円の養育費を支給するほか、毎月2万円を上限に家賃の半額を補助。マイカーがない場合、中古車も無償で提供する。
 さらに、介護事業所と1年間の雇用契約を結び、契約通り働いて定住を決めた場合、一時金100万円を支給する方向で調整している。給料の助成として、事業者に月約15万円支給する。

この条件がいいのか悪いのか見る者の目線でかなり違ってきそうには思うのですが、やはり当座の生活費や生活の場所の手配も含めて全て自治体からの支援でやってもらえる、加えて仕事の世話もしてもらえ家賃や養育費まで補助が出るとなると、子供を抱えて仕事にもあぶれた人々にとっては「とりあえず浜田までたどり着けば何とかなる」と言う風に見えるのかも知れません。
浜田市と言えば立派な水族館こそあるものの山陰地方の中でもかなり辺鄙なところで、ご多分に漏れず過疎と高齢化が問題化しているのだそうですが、全国的にも深刻な問題となっている介護スタッフ確保と言う点に関しても何しろ若い世代がもとよりいないわけですから、老老介護を強いられているのだろう状況は想像に難くありませんよね。
この点で単なる若年者呼び込み政策と言うことであれば全国各地の僻地自治体が(失礼ながら)さしたる実効性があるとも思えない似たり寄ったりの呼び込み作戦を展開している中で、ここまで明確にターゲットを絞っていると言うのはやはり低賃金時代にあってひとり親と言うのは非常に大きなハンデがあると言う現実を見据えたものであり、世が世なら「他人の弱みに付け込んでいる」と批判されかねないものだとも言えるかも知れませんね。
世間でよくある若年者呼び込み政策に対してこのシステムが有利だと思える点は、まさに子持ち困窮世帯にターゲットを絞っていると言う点ですが、悪く言えば支援がなければ生活困難な世帯に支援をネタに定住を強いるもんであるとも言えるにせよ、自治体としてみれば現役の労働者に加えて未成年者をも呼び込むことで将来的な人口増とそれに伴う税収増が確保出来ると言う大きなメリットがあります。

一方で今回の支援策で非常に注目されるのが一見すると全く無関係に思えるひとり親対策と老人の介護を結びつけたものであると言う点ですが、言ってみればか なり露骨な人材集めではあるものの困窮世帯に対する支援の色も色濃いことが言い訳にもなるのだろうし、うまくいくならば自治体と制度利用者、そして介護事 業者や地域住民など関係各方面にとって多重的なメリットが見込めるものとも言えそうです。
要するに出した補助金よりも将来的に大きな税収増が見込めるのであれば十分ペイすると言う計算なのでしょうが、やはり介護職への就労が前提となっている以上困窮世帯の中でももともと介護に関心なりがある人々に対する訴求力が高いのだとすれば、ただでさえ人材不足なこの業界で他自治体から人材を引き抜いてくるものだと白眼視されかねない話でもありますよね。
国外との取引で利益を出せる貿易などと違って、社会保障の場合国民が支払った分を国民が受け取っていると言う点ではゼロサムゲームであって、特定地域でより多くの利益を得れば別の地域では損になると言う計算が成り立つかと思いますが、単なる金銭的なものだけでなく労働力と言う点でも同様にゼロサムゲームが成り立つのだとすれば、これからの時代まずは人材確保をどうするかが鍵になってくるのかも知れません。
労働力確保、人口維持と言う点に関して言えば別に介護業界に限った話ではなく、近ごろではどこの業界でも仕事はあるのに人手が足りないと困っていると言いますから、仮に浜田市の方法論がうまく行くとなれば次は別の自治体がもう少し一般的に訴求力のある職種で同様の支援策をと言った具合に、人口減少時代において人材囲い込み競争にまで発展する可能性もあるのでしょうか。

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コメント

どうせ誰も来やしないって

投稿: | 2015年4月28日 (火) 07時19分

浜田市は辺鄙と思われがちですが、高速道路のおかげで広島市内へのアクセスが島根県の中で最も良い地域でもあります。
東京23区在住の方からみれば広島も田舎でしょうけれども・・・

投稿: クマ | 2015年4月28日 (火) 07時33分

ふるさと納税のおまけがすごいことになってますもんね。
あんな具合にサービス競争になったらおもしろいですけど。
でも普通の失業対策にも注力したらいいのに。

投稿: ぽん太 | 2015年4月28日 (火) 08時28分

考えようですが、生活保護を受けている世帯じゃおいしさが全然無い。
一人親家庭の場合、片親が亡くなったというより、離婚orシングルマザーとかのケースが
大半だろうから、あまりUターンは見込めないし、浜田市が全然無関係の出身者が来るような
魅力を持っている都市とは思えないし。(温泉・日本海の幸はあるな)
なので、手を挙げる人が出てくるか・・・無理だろ。

投稿: hisa | 2015年4月28日 (火) 09時01分

生保受給者に仕事と住居の斡旋をすると言う形であれば労働力確保にもなるのでありかと思いますが、逆に現在の役所が何故そこまで面倒を見ないのかと批判されそうな気もします。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月28日 (火) 12時25分

これは名案と片側から思えるような方策はもう片側から見るとメリットなかったりする
最近近所の百均が店じまいして常連がみんな不便がってたけど
消費者から見て無くなって困る安い店とは逆から見れば儲からない店

投稿: | 2015年4月30日 (木) 11時23分

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