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2015年4月17日 (金)

技術的革新で医療がもっとよくなると言う話題

まだまだ基礎研究の段階ですけれども、先日とんでもない研究成果が発表されたと話題になっています。

ヒト毛髪再生に成功、数年内の臨床試験目指す(2015年4月13日日経メディカル)

 「ヒト毛包由来の幹細胞からの毛髪再生に成功した。症例数を蓄積し、早ければ4年後の臨床試験実施を目指す」――。理化学研究所多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームリーダーの辻孝氏が、第29回日本医学会総会 2015 関西の学術講演(4月11~13日、京都開催)で発表した。

 現在、男性型脱毛症や休止期脱毛(女性型脱毛症)の国内患者数は3000万人とされる。円形脱毛症や瘢痕性脱毛症も含め、毛髪再生医療に期待する声は大きく、その市場規模は1兆円に達すると推測されている。

 辻氏らは、上皮性幹細胞と間葉性幹細胞を高密度で配置して細胞を培養し、再生器官原基を調製する「器官原基法」を開発。これまでに動物レベルでの歯や唾液腺などの器官誘導に成功している。

 この器官原基法により辻氏らは、ヒトの再生毛包原基をマウス皮膚内に移植し、純粋なヒト由来の毛髪再生に成功した。毛髪の太さや色は、通常の毛髪とほぼ変わらないという。

 毛髪再生医療では、高密度の毛包再生が重要となる。既に辻氏らは、マウスの再生毛包原基を高密度に移植し、3週間後に日本人の頭髪の毛幹密度60~120本/cm2と同等以上の124本/cm2の毛髪再生を達成している。今後、ヒト毛髪での高密度毛包再生に関するデータを蓄積し、4年後の臨床試験実施を目指すという。

 さらに辻氏らは、マウスiPS細胞から毛包や真皮を含む全層皮膚を再生できたと発表した。まもなく論文を発表し、詳細な成果を報告する予定。

 辻氏は毛包再生のメリットとして、必要な細胞数が少なく(1万3000個)、除去が簡単であり安全性が担保しやすい点などを挙げた。「毛髪再生医療は市場も大きく、医療産業の発展にも貢献できる。器官再生医療のモデルケースとして、費用など提供体制の構築に向けたノウハウを蓄積したい」と今後の展望を話した。

今や育毛、増毛産業は世界的に大変な市場規模が見込まれるのだそうで、もちろんその面でも多いに期待する向きがあるかと思うのですけれども、皮膚全層を再生出来たとなれば熱傷治療など様々な応用も期待出来そうですから、医療の面でも利便性の高そうな研究と言えます。
しかしこういう技術が当たり前に社会に出てくる時代がやってくるとすれば、いずれはブラックジャックのリメイクがやりにくくなってきそうにも思うのですが、本日は最近医療に関連する領域で目についた非常に大きなブレークスルーを感じさせる記事を幾つか紹介してみたいと思います。
まずは近年新薬が毎日のように登場してくるようになって、そのたびに薬価が跳ね上がると言うのもどうなのかと思うのですが、薬の製造コストを劇的に引き下げることが可能になるかも知れないと言うのがこちらの研究成果です。

<医薬品合成>複雑な化学反応 10分の1の時間に短縮(2015年4月16日毎日新聞)

 複雑な化学反応を自動的に連続で起こし、医薬品を原料から直接合成する新たな製造法を、東京大の研究チームが開発したと発表した。化学反応のたびに生成物を取り出して次の反応を繰り返す現在の合成法に比べ、高効率で廃棄物も少なく、医薬品の製造コストを大幅に下げられるという。成果は16日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

 現在の医薬品や農薬は、原料をフラスコや釜に一度に入れて反応させる方法を繰り返して合成する。この方法では、反応過程で生じる物質の抽出や、不純物の除去に時間と労力がかかり、多くの廃棄物も出る課題があった。

 東大の小林修教授(有機合成化学)らは、化学反応を進める4種類の触媒を入れた管に市販の原料を順番に通す装置を開発。8段階の反応を連続で進行させ、抗炎症薬の有効成分を合成することに成功した。連続合成は複雑な医薬品では難しいとされていたが、新たに開発したカルシウム触媒や不要な物質の生成を抑える仕組みで実現させた。

 小林教授は「従来法と比べ触媒の反応効率は100倍以上で、合成に必要な時間は約10分の1に短縮できる」と話す。【千葉紀和】

記事を読んで耐熱性のDNAポリメラーゼが登場して遺伝子合成が一気に一般化した歴史を思い出したのですが、しかし実際に医薬品として使える品質の合成産物が簡単に早く出来ると言うことであればコスト削減効果は計り知れないだろうし、さらに一連の設備も省略出来るとなれば例えば宇宙空間でも利用しやすくなるのでしょうか。
医薬品に関しては製造コストよりも開発費の方が高くかかっていると言う部分もあって、単純に製造コストが引き下げられたからと言ってその分値段も大幅プライスダウンとはいかないと思いますが、昨今何かと話題になることの多い医療費削減と言う側面からも期待されるところですよね。
先日は欧州製薬団体連合会などが今後12年間で薬剤費の増加率は医療費の増加率を下回るかも知れない云々と牽制球的な見解を出していましたが、社会保障費抑制の流れにおいて医療費本体部分以上に今後注目されそうなのが薬剤費である以上、製薬各社は早急にコスト削減策を追及していかなければならないのだとは思います。
もう一つ、まあそうなんだろうなと理屈の上では非常に判りやすい話ではあるのですけれども、実際にやってみると思いの外高い効果が得られたと言うこちらの話題を紹介してみましょう。

クラウドで外科医のオンコール出勤が7割減に(2015年4月15日日経メディカル)

 オンコール時、自宅で急患の画像が読影できたら、どんなにいいか――。そんな外科医の望みをかなえる遠隔画像診断システムが開発された。セキュリティーが担保された状態で、患者の重症度を院外で判断できる。時間外の出勤が減り、外科医の負担軽減に効果大だ。

 とある日曜日、自宅で家族と過ごしていた外科医の郡隆之氏の携帯電話が鳴った。勤務先の利根中央病院(群馬県沼田市)の日直医からのオンコールだ。急性腹症で来院した救急患者のコンサルトを依頼された郡氏は、タブレット端末を取り出し、院内で撮影したばかりの当該患者のCT画像を自宅の書斎で確認(写真1)。虫垂炎など外科的処置・手術を要する疾患ではないと判断し、日直医に急性胃腸炎の対応を依頼した。

 「院外で画像が読影できるシステムを導入した結果、夜間や休祝日のオンコール待機時の時間外出勤を7割減らすことができた」と郡氏は話す。

通信速度が速くなくてもストレスなく読影できる
 同院に限らず、救急部がなく夜間・休祝日の救急医療を当番制の当直医が担っている医療機関は多い。外科的対応が必要な場合には、オンコール待機の外科医が呼び出されるのが一般的だ。外傷や急性腹症などの外科的救急疾患の重症度判定は画像診断が決め手となることが多く、電話だけでは判断が難しい。結果として、大半のケースで時間外出勤を要するが、「実際に診察してみると外科的処置が不要なケースや外来だけで対応可能なケースが半分以上あり、外科医の負担は大きい」と郡氏は明かす。「外科疾患に限って言えば、画像があれば9割以上は診断が付くことから、院外で読影できる仕組みを構築したいと考えた」(郡氏)。

 遠隔画像診断は放射線科では盛んに行われているが、外科系診療科での活用は珍しい。利根中央病院で稼働しているシステムは、「ViewSend anywhere」。経済産業省「課題解決型医療機器等開発事業」に採択され、外科部長である郡氏と、遠隔読影支援システムの開発・製造販売を手掛けるViewSend ICTが共同開発した。
(略)
 近年では、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用し、医師同士で医療用画像をやり取りする例も散見されるが、セキュリティー面での不安はぬぐえない。「ViewSend anywhere」は、Webブラウザに標準搭載されているデータ暗号化送受信プロトコール(secure socket layer;SSL)を利用し、VPN(virtual private network)と呼ばれる仮想的な組織内ネットワークを構築する仕組みでセキュリティーを担保している。システムの導入価格は2500万円と高いものの、「サーバー上の画像を閲覧するシステムであり、閲覧した画像が端末に残らない点でも、安全に利用できる」(郡氏)メリットは大きい。システムは同一医療圏内の医療機関で共同利用することも可能だという。

診断的中率は100%
 郡氏が、システム導入後の外科医のオンコール時の時間外出勤の割合を検討したところ(調査期間4カ月)、当直医からコンサルトのあった9例中4例が緊急処置・手術が必要な症例で、うち3例については時間外出勤を要した(33%)。システム導入前の時間外出勤が100%だったことと比べると、7割減ったわけだ。遠隔画像診断的中率は100%で、汎用端末上の画像の精度が院内の画質と同等であることが裏付けられた。

 「外科医だけでなく脳神経外科医に利用対象を広げて行った検討でも、同様の効果が示された」と郡氏。ほかにも、夜間に放射線科医に緊急読影を依頼したり、当直中の若手医師の指導に利用するなど、同システムは運用次第でさまざまな活用方法が考えられるという。「遠隔診断システムの普及により、医師の労働環境が改善することを期待したい」と郡氏は話している。

現状においても個人的な関係の中でメール等で画像をやり取りして助言をあおぐと言うことはしばしば現場で行われていることでしょうが、あれも画像自体を持ち出せないようなシステムであったり情報流出のリスクが問題視されたりで難しいことも多く、安全で効率の高いシステムがあるならそれにこしたことはないですよね。
もちろん外科医の過労某氏と言う点に関しても非常に効果がありそうだと言うことなんですが、それ以上にわざわざ自宅から病院に出てくる時間が必要なくなれば当直の側としてもノーレスポンスで助言を得られるわけで、実際に処置が必要になるかどうかを抜きにしても極めて使いでのありそうなシステムですよね。
記事を読んでいてむしろ気になったのが近年画像診断を外注すると言うことが次第に普及してきていて、日本よりも単価も安く時差の関係で夜間時間外にも即座に読影出来る海外に依頼すると言うこともあるようですが、そうしたものが特に議論なく利用できるのであればこちらだけそこまで気を遣う必要があるのかと言う気もします。
ともかく同じ病院内だけでなく外部の医療機関とも共用できるとなれば、今後国策として勧められる医療機関の統廃合においても専門医不在となった地域において有用だろうと思うのですが、国はスクラップだけでなくこういうビルドの部分にもきちんとお金や支援を用意するべきだと思うのですけれどもね。

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コメント

外科医が読影?
放射線科は?
あと歯の再生も凄く需要ありそう

投稿: | 2015年4月17日 (金) 07時54分

           |
            |  彡⌒ミ
           \ (´・ω・`)また髪の話してる
             (|   |)::::
              (γ /:::::::
               し \:::
                  \

投稿: | 2015年4月17日 (金) 08時04分

ほんとに工業レベルでこれだけ効率が上がったら大発明ですね。
でも実用化に際してはまた何か問題でも出てくるのかなあ?

投稿: ぽん太 | 2015年4月17日 (金) 08時43分

もはや再生医療はなんでもありですけれども、単純な組織から器官や臓器へと話が進んでいくにつれて、どこまで許容範囲なのかと言うことで意見が分かれていきそうです。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月17日 (金) 11時54分

恒星間宇宙を飛び回っているような遠未来を舞台にしたSFなのに
なぜか禿げや肥満や近視が不治っての多いよなあ

投稿: | 2015年4月17日 (金) 13時05分

ちゃんと需要はある

投稿: | 2015年4月17日 (金) 15時46分

全国の薄毛に悩む男性の皆さま。そして、TKG(卵かけご飯)ファンの皆さま。
ご注意! なんと、TKGがハゲの原因の可能性が出てきた。

■卵かけご飯がハゲの原因だと!

生卵をホカホカのご飯にかけて、醤油を一滴。混ぜ混ぜして食べる、日本のソウルフード、卵かけご飯。
その人気は知っての通りで、今は卵かけご飯専用の醤油まで登場する定番メニューだ。
しかし、そんなTKGの思わぬ作用があったのだから、驚かずにはいられない。
実は生卵には白髪や抜け毛の原因になる物質が含まれているという。

■犯人は生の白身

原因は生卵の卵白。県立広島大学名誉教授・加藤秀雄氏によると、卵の黄身にはビオチンが含まれており、
これは髪の元となるタンパク質を合成するアミノ酸の代謝を促進、育毛に効果的と結論づけている。
ということは、問題なのは白身か。生卵の白身には、アビシンと呼ばれるタンパク質の一種が含まれており、
これはビオチンと結合する性質を持つ。つまり、一緒に食べるとせっかくの育毛に効果的なビオチンが
アビシンによって吸収されなくなる。ほかの食べ物から得られたビオチンも根こそぎ排泄するのだから、
恐るべし・・・白身。

■卵かけご飯はゆで卵にって、それはムリだろうよ

ただし、白身を加熱すればアビジンの変性が起こり、ビオチンと結合しなくなるそう。
なので、完熟のゆで卵など加熱調理すればOK。
いや、でもあくまでもTKGが好きなんであって、同じ卵だからってゆで卵が代用になるわけないだろ!
そんな「どうしても卵かけご飯が食べたいんだ!」という方は、黄身だけでどうぞ!
最近抜け毛が気になる方も、生卵を食べ過ぎてないか、食生活を振り返ってみるべし。

文/新井華子

http://mogumogunews.com/wp-content/uploads/2015/04/a0002_011702_m.jpg
http://mogumogunews.com/2015/04/topic_10974/

投稿: | 2015年4月18日 (土) 11時14分

光エネルギーで化学反応を起こさせる「光触媒」を使って、
世界最高レベルの約2%の変換効率で水から水素を生成することに
成功したと東京大と三菱化学などのチームが18日までに発表した。
今後は変換効率10%を目標にして、できた水素と二酸化炭素(CO2)を
使って有機物を作る「人工光合成」の実現を目指す。
http://www.47news.jp/CN/201504/CN2015041801001966.html

投稿: | 2015年4月18日 (土) 23時37分

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