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2015年4月15日 (水)

本日は資格の話題です

本日の本題に入る前に、このところこんなニュースが出てきていることを紹介しておきましょう。

厚労省 専門医の資格取り消しなど検討(2015年4月14日NHK)

川崎市にある聖マリアンナ医科大学病院で、少なくとも9人の医師が重い精神障害がある患者の強制的な入院が必要かどうかなどを判定する専門の医師の指定を不正に取得していた疑いがあることが分かった問題で、厚生労働省は15日、専門家による審議会を開いて指定医の取り消しなどを検討することにしています。

医療関係者によりますと、川崎市の聖マリアンナ医科大学病院では、少なくとも9人の医師が重い精神障害がある患者に対して強制的な入院や行動の制限が必要かどうかなどを判定する「精神保健指定医」という専門の資格の指定を不正に取得していた疑いがあるということです。
医師らは「精神保健指定医」の資格を申請した際、自分が診察していない患者のレポートを提出したりほかの医師が診察した患者の症例をコピーしたりした疑いがあるということです。

この問題を受け、厚生労働省は15日、専門家による医道審議会を開いて「精神保健指定医」の資格の取り消しなどを検討することにしています。
この問題について、塩崎厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で「個別の案件なのでコメントは差し控えたい。何らかの形で厚労省としての方針がまとまってから説明したい」と述べました。

専門医、認定医の類に関しては以前から時々不正取得の問題が報じられてきたところですが、今回は組織的、日常的に行われた可能性も高そうな話で、末端医療機関ならともかく大学病院レベルでこの種のせこい(失礼)不正を大々的に行っていたと言うのは、やはり少しばかり格好悪いんじゃないかと言う気はしますでしょうか。
ただ書類の捏造と言えば聞こえは悪いですが、症例の使い回しや症例数の水増しに関してはかなり多くの方々がまんざら手を染めないでもいなさそうな気配もあって、何しろ学会に加入して専門医を取るたびに症例何十例のサマリーを提出せよと言われるのですから、カルテを掘り起こしてまとめる手間暇を考えても似たような疾患を扱う学会であれば当然再利用できそうな部分はコピペで対応したくなるのも道理ですよね。
この辺りは理念として専門医水準の知識や技量を持つ医師を専門医と認定すべきであるのに、現実的には単に余計な労力とお金の支払いを厭わなければ誰でもなれてしまうと言う認定制度側にも問題がないとしないところで、形ばかりの資格認定に対してはやはり申請する側もそれなりの対応で流してしまいたくなるのが人間心理と言うものではないかと言う気もします。
医師免許そのものも9割が合格する試験に意味があるのか?と言う批判は以前からあって、医学部6年間の教育がその質を一応保証しているのだと言う建前が今日まで続いていることを考えますと、専門医等においても単に試験や審査の内容だけを云々するよりも、その前提条件としての臨床経験のキャリアをどう担保していくかが重要になるのかとも思いますが、まあそれはそれで難しいことですよね。

前置きがいささか長くなりましたけれども、先日はちょっと毛色の異なったタイプの高齢者施設内での虐待問題を紹介したところですが、介護職スタッフの大増員が社会的にも求められる中で今以上に多くの人材を求めようとするならば、今以上に質も適性も高い人材が集まるよりはその逆になっていく可能性の方が高そうにも感じるのですが、医学部定員増による学生の質的低下の問題なども同様の話とも言えますよね。
少数精鋭主義を貫いたところで業務負担の過大さからケアレスミスが増える、あるいは燃え尽きてドロップアウトしていく人が出るだろうと考えると、やはり介護がマンパワー集約型産業の典型である以上まずは数こそ正義と言う考えが正しいのだろうし、あまり増えすぎると給料が減るのでは…などと余計な心配をしている医師と違って介護スタッフの場合、今以上に待遇が悪化する可能性は(現状が最底辺過ぎて)まずないわけです。
先ごろは過去3年間の間に全国1510施設で高齢者虐待が疑われるケースがあったと言う報告が出たそうですが、先日のケースのような例外を除けば基本的には多忙による心理的な余裕の無さがその大きな原因となっているのだろうし、やはり利用者側目線で見ても大事なお体の世話をしてくれる人にはケアのためにゆっくり時間を使って欲しいと言う気持ちはあるところでしょう。
そこで質的にも一定程度を担保しながら、どうやったら順調に介護スタッフが増やせるかと言う議論が求められていて、これも介護報酬がそろそろ頭打ちになってきた現状では無闇に高い給料で釣ると言うわけにもいかないところなんですが、先日厚労省側からちょっと驚くようなアイデアが出てきたらしいと報じられていました。

厚労省:介護福祉士や保育士の資格を統合(2015年04月11日毎日新聞)

 ◇一本化検討入り 福祉人材の確保に向けて

 厚生労働省は少子高齢化と人口減で人手不足が懸念されている福祉人材の確保に向け、介護福祉士や保育士などの資格を一本化する検討に入った。戦後ベビーブームの「団塊の世代」が全員75歳以上になる2025年以降を見据えた動きで、介護施設と保育施設などを一つにまとめて運営できるようにすることも考えている。近く省内に検討チームを発足させ、利点や課題を整理する。【中島和哉】

 厚労省の推計によると、25年に必要とされる介護職員の数は約248万人で、このままでは約33万人不足し、保育士も17年度末には約7万人足りなくなる

 人口減が進む40年には、地方の過疎化が一層深刻化する見通しで、厚労省は介護施設や児童福祉施設などがバラバラに点在している現状では、人手不足で存続できない施設が続出する可能性があるとみている。

 ただ、保育士の場合、今後の少子化で大幅に人員を増やせば将来過剰となる。このため、厚労省は介護施設、保育施設、障害者施設を1カ所にまとめられるよう規制を緩和したうえで、介護福祉士や保育士など専門職種で分かれている資格を統合し、1人の職員が子育てから介護サービスまで提供できるようにする仕組みを検討することにした。

 参考にするのが、フィンランドが導入している医療と社会福祉サービスの共通基礎資格(ラヒホイタヤ)だ。ホームヘルパーや准看護婦、保育士、リハビリ助手など計10の中学校卒業レベルの資格を一本化した資格で、福祉や介護に従事する職員を確保する必要性から生まれた。1人で複数の分野を掛け持ちできる職員を福祉の現場に配置し、柔軟に対応できるようにしているという。

 この資格を持っていると、子育てから介護まで幅広い分野で働くことができ、求人も多いため、生涯仕事を続けることができるという。厚労省は同様の仕組みを日本で導入すれば、雇用対策にもつながるとみている。

 問題になるのは、乳幼児の世話と認知症患者も含めた高齢者のケアでは、求められる技術や知識が大きく異なる点だ。すべて1人でこなすには高い能力が求められ、資格の一本化には、人材をどう育成し確保するかという課題が横たわる。介護、福祉の現場からは、資格統合に対する反発もあり、同省は時間をかけて検討することにしている。

いやまあ、生涯仕事を続けられると言えば何か素晴らしいことのように思いますけれども、生涯低待遇で過酷な労働に縛り付けられるという言い方もできないわけではなさそうなのが現状ではありますけれどもね。
どちらも人のお世話をすると言う点では似たようなものだと言えば似たようなものなのだろうし、人は老いて子供に帰るとは古来言われているところですから子供もお年寄りも同じように世話したらいいんじゃないかと言う考え方もないとは言い切れないところですけれども、やはり少しばかり話の流れに無理があると言うのでしょうか、あくまでも社会的な要請に従ってためにする議論と言う気もするでしょうか。
ちなみに現状においても人の世話をしたいと言う志を持つ人々の中には、やはりお年寄りの世話をするよりは子供を相手にしたいと言う気持ちから保育の道に進む方々が一定数いらっしゃるようで、同じように仕事はきついし経済的にも決して恵まれた職場と言うわけではないのでしょうが、仕事に従事する側としてのやり甲斐と言う面では大きな差があるようです。
もちろん医師免許なども各診療科毎に専門分野が分かれていても免許の種類は一種類であり、少なくとも制度の上では内科医が手術をしても何ら問題ないわけで、あくまでも制度上の話であり実際には介護でも保育でも好きになさればよろしいと言う建前なのでしょうが、当然ながら資格試験においては双方の分野での知識なり研修なりが求められることになるはずですよね。

興味深いのはこの少子化の時代にあっても保育士不足と言うこともまた大きな社会的問題となっていて、その理由の一つとして核家族化に加え共働きが当たり前になると家庭内で誰も子供の面倒を見られなくなると言う事情があるかと思うのですが、看護師等と同様にせっかく資格を取っても保育士として働いていない方々も多く、その理由として待遇の悪さを挙げる人が最多であったと言います。
また特に注目されるのが離職原因として責任の重さや事故への不安を挙げる人もこれまた多かったと言うのですが、仮に何かあって紛争化した場合に心情的な部分を全く抜きにしても、基礎疾患もあって先の見えている寝たきり高齢者よりもこれからの人生が長く健康だった子供の方がより多くの社会的責任を問われることになる可能性はありそうですから、組織としてスタッフを守れる態勢作りは医療介護と同様保育においても必要でしょうね。
こうした保育士業界そのものの問題点ももちろん早急に改善が必要なことは変わりがないし、医療や介護と違って公定価格ではない保育の方が待遇改善のためのコスト負担も求めやすいかと思うのですが、そうなりますと共通化した資格を利用して介護から保育へとむしろ人材移動が加速するとなれば、介護スタッフの勤続年数が伸び高い給料を払うようになる前に自主退職してもらえると喜ぶような考え方もあるのでしょうか。

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コメント

現場を知らないお役人はこれだから

投稿: | 2015年4月15日 (水) 07時42分

現場での実務経験を資格取得の必要条件にしたりして。
1、2年くらい下働きさせたら人手不足解消って青写真はあるかも。

投稿: ぽん太 | 2015年4月15日 (水) 08時10分

NHKですら精神保健指定医のことを「専門医」と見出しで誤報するのがなんともかんとも。

介護福祉士と保育士の資格を統合した場合、最終的には
「子供とお年寄りだけじゃなくて、成人の障害者もみてもらえばいいんじゃね?」
と言うことになりそうな気がしますが・・・

投稿: クマ | 2015年4月15日 (水) 09時09分

役人って個人個人は優秀なはずなのに
組織になると何でこんな馬鹿ばかりなんですか?
財務省しかり厚労省しかり文科省しかり
現実を見てない様な無茶な事し過ぎでは?
選挙で役人も首に出来る制度が必要かと

投稿: | 2015年4月15日 (水) 09時50分

実際的なところはともかく、近年の規制緩和推進の流れに乗った話と言う見方は出来るかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月15日 (水) 12時43分

>選挙で役人も首に出来る制度が必要かと

衆愚政治まったなしw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年4月15日 (水) 15時15分

認知症や障害者を内科と精神科をグルグル転院で薬漬けにして、ポケモンみたいに利用するのは昔からやっていた。
893医師恐いです><;
早く安楽死制度導入してくれー!

投稿: | 2015年4月15日 (水) 16時04分

役人を首にする制度は不要だと思うけど、せめて5年以上の一般企業経験を義務付けるとか
世の中との意識のズレを確認できるような制度は導入すべきじゃないかと。
医者はぶっちゃければ病気だけ退治出来れば良いけれど、役人は世間一般との関わり合いが
大きいくせに純血主義だから社会を知らずに採用され、そのまま定年を迎える。
世の中知らなさすぎ。

あと、公設病院にしても3セク企業にしても、経営者としては参画不可とか
天下りでも。
企業会計がわからないくせに経営をやらせるとか、最初から破綻するのが確定でしょうに。

投稿: | 2015年4月15日 (水) 16時38分

指定医は、病状により基本的人権を制限できる資格ですよ。これの取得不正に寛容になったら、医療業界終わりですわ。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年4月15日 (水) 18時53分

衆愚政治なんてものより一部の人間に依存する仕組みのが危険でしょう
戦前もそうですが行政国家になってきてるのはマズい

投稿: | 2015年4月15日 (水) 21時43分

だってそのほうが効率的なんだもの

投稿: | 2015年4月15日 (水) 22時24分

准看護師と保育士も統一するらしい
もう何が何やら

投稿: | 2015年4月16日 (木) 21時37分

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