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2015年4月27日 (月)

中国で受精卵の遺伝子改変実験が行われていたことが判明

昨今生殖医療の技術的進歩が倫理的な側面にまで踏み込んできていることが各方面で論じられていて、純技術的に可能になる前の段階で果たしてどこまでが有りなのか?と言うことを決めておくべきではないかと言う考え方も根強いのですが、そんな社会情勢の中でお隣中国ではひといきに一線を越えつつあるらしいと言うニュースが出てきました。

<ヒト受精卵>遺伝子改変…中国チームが論文(2015年4月23日毎日新聞)

 ヒトの受精卵で遺伝性の病気に関係する遺伝子を改変したとする中国からの研究論文が発表された。ヒトの受精卵を使った遺伝子改変の報告例は世界で初めてとみられる。受精卵や精子、卵子の遺伝子を変化させることは、次世代への影響が分からず、倫理的な問題から国際的に慎重論が根強い。議論の呼び水となるのは必至だ。中国・中山大の研究チームがオンラインの学術誌「プロテイン・アンド・セル」に18日付で発表した。【八田浩輔、須田桃子】

 ◇後手の倫理論議

 論文によると、研究チームは患者から提供を受けた成育できない受精卵を使用。
 近年急速に普及している「ゲノム編集技術」を使い、遺伝性の血液の病気に関する遺伝子の操作を試みた。86個の受精卵で実施したところ、48時間後に生存したのは71個だった。このうち28個で狙った遺伝子の改変を確認した一方、目的外の遺伝子を改変してしまったケースもあり、臨床応用にはさらなる検証が必要と結論付けた。
 この技術を使った基礎研究は、培養したヒトの体細胞や動物の受精卵で進むが、ヒトの受精卵での報告例はない。チームは論文で「倫理的な問題を回避するために元から異常がある受精卵を使用した」旨を説明している。
 英科学誌ネイチャーのニュース記事は「論文はネイチャーや米サイエンス誌にも投稿したが、いずれも倫理的な反対で却下された」との研究チームの話を紹介した。

 ◇「科学的にも問題多い」

 国立成育医療研究センター研究所の阿久津英憲・生殖医療研究部長は「技術は革命的だが、目的外の遺伝情報にも改変が起きてしまう点で未完成。ヒトの受精卵に応用するような段階ではない。論文の結論部分も、やる前からわかっていたはずの内容だ。科学的にも倫理的にも、問題の多い論文と言える」と話す。

ヒト受精卵の遺伝子を「編集」、中国研究に世界の科学者が異議(2015年4月24日AFP)

【AFP=時事】ヒトの受精卵の遺伝子を編集したとする研究論文が、中国のチームにより発表された。この未開拓の科学分野における突破口となる論文だが、世界各国の科学者からは、物議を醸しているこうした研究の中止を求める声が、改めて上がっている。

ゲノム研究から新たな人種差別「ネオレイシズム」の懸念

 英科学誌ネイチャー(Nature)のニュース記事が22日に最初に報じたこの論文は、中国・広州(Guangzhou)にある中山大学(Sun Yat-sen University)で遺伝子機能の研究を行う黄軍就(Junjiu Huang)氏の研究チームが執筆し、ほぼ無名のオンライン科学誌「プロテイン・アンド・セル(Protein and Cell)」に投稿したもの。
 論文でチームは、不妊治療院から入手した受精卵のゲノムを改変する実験の詳細を記述している。使用された受精卵は、2つの精子を受精したことから染色体の数が通常の受精卵より1組多く、生児出産が不可能なものだった。
 ネイチャー誌の記事によると、研究チームが行ったのは、死に至る可能性もある血液疾患「βサラセミア」の原因となる遺伝子を「CRISPR/Cas9」と呼ばれる遺伝子編集技術を使用して修正する実験。
 欠損しているDNAを置き換える分子を86個の受精卵に注入し、効果が表れるまで48時間待ったところ、生存したのは71個だった。うち54個を検査した結果、28個で遺伝子の接合に成功し、そのうちのごく一部で代替遺伝子が含まれていたことが確認された。

 ネイチャー誌の記事で黄氏は「正常な受精卵でこれを行う場合、100%(の成功率)に近づける必要がある」「だからわれわれは中止した。未熟すぎる段階だと考えている」と述べている。
 より大きな懸念材料は、実験の過程で「驚くべき数の」意図していない遺伝子変異が生じたことにある。これは、マウスやヒトの細胞を使用して行われたこれまでの遺伝子編集研究で見られた割合をはるかに上回るという。
 こうした遺伝子変異は有害である可能性もあり、中国のチームが研究を行っているとの噂が今年流れ始めて以降、科学者らの間で懸念を生んでいた大きな理由の一つとなっていた。
 こうした研究に対しては、将来の世代に未知の影響をもたらす可能性や、望ましい特徴を持つように人間を改造することで新たな優生学の時代を切り開く恐れがあるとの批判の声が上がっている。

■安全性や倫理上の懸念

 AFPに宛てた電子メールによると、ゲノム編集など開発途上の治療法に重点を置く生命科学分野の200以上の企業や研究機関などを代表する国際組織「再生医療連盟(Alliance for Regenerative Medicine、ARM)」は、今回の論文発表を受け、こうした研究の中止を改めて呼びかけた
 ARMは声明で、「ヒトの生殖細胞のDNAの修正には、安全性や倫理上の重要な意味合いがあると考えられることから、こうした研究は非常に時期尚早だ」と指摘。「世界全体でこの種の研究の自発的な停止を求める」と述べている。
 ネイチャー誌の記事によると、中国では他に少なくとも4研究チームが同様の研究を行っているとみられている。
 研究論文が間もなく掲載されるとの噂が今月流れ出した際には、一部の科学者らが研究中止を求めた一方、ある種の病気や疾患の治療に役立つ可能性があるかを見極めるため、基本的な研究は継続すべきとの意見も出されている。【翻訳編集】 AFPBB News

必ずしも直ちに臨床応用出来るものではないと言いますか、方法論として操作は可能ではあるが現段階ではあまりに問題点の方が多すぎてとても実用化出来そうにないと言うネガティブデータとも言える結果なのですが、この種の技術的ハードルはいずれ克服されていくものでもあるし、何よりこうした実験が行われたと言う実例になったと言う点でその社会的影響と言う面からも注目すべきであるかと言う気がします。
これだけインパクトのある話でありながら著明雑誌に軒並み掲載を断られ、無名の雑誌に掲載されたと言うこともまあ仕方ないかなと思う話ではあるのですが、以前から噂レベルで情報が流れ各方面から中止を求める声が上がっていた中で敢えて行ったと言う点でもなかなか議論の別れそうな話ではあると思いますけれども、誰かがやった以上以後に続く者にとってのハードルは低くなったと見るべきですよね。
何しろ「先行者」で有名な中国のことですから、今さら倫理的に云々と言ったところで「え?突っ込むとこそこ?」と言う感覚なのかも知れませんが、この種の研究に対する倫理的な面からの抑止力として既存の権威やグループから排除されると言うことが機能していたのだとすれば、今回はその抑止力としての限界が示された事件であったとも言えそうです。
日本でも以前に非配偶者間の体外受精を実施した先生が学会から除名されたものの、その後も治療行為は続けていると言う事件がありましたけれども、明らかに犯罪行為であると言うわけではなく何となくキモチワルイとでも言うしかない行為に関して、当事者間で同意して行うことに対して第三者がどこまで影響力を発揮出来るか、するべきなのかと言うことについて考えさせられる話です。

先年アメリカでも人工受精で提供を受ける配偶子の遺伝的素因を調べ、望みの遺伝形質を備えた配偶子を選べるサービスが特許として認められたと話題になったようで、こちらは言ってみれば精子や卵子の持つスペックをカタログ化すると言う非常に直截な方法である一方で、恣意的な選択は働くものの直接的に遺伝子を改変すると言うものではなかったわけです。
今回の技術の方向性としてはそのままでは生育できない受精卵に対して遺伝子の改変と言う操作が加わることで、親の立場にしてみれば誰か赤の他人ではなく自分達の遺伝子を受けついだ直系の子が持てる可能性があると言うことになりますが、そう考えると社会的需要は決して少ないものではないのだろうし、一律に禁止するのは反対だと言う声が出てきてもおかしくはなさそうに思えます。
この辺りは子供とはどのような存在であるべきなのかと言う文化的背景にも関わってくるところで、世界的に見ても血縁関係を重視する文化と実際的な親子関係を重視する文化とに別れているのだそうですが、逆に言えば特定の文化的価値観から他文化にとって非常に重要な問題を解決する技術的方法論を、一方的に禁止するのはどうなんだと言う考え方もありますよね。
究極的な議論としていわゆるクローン人間についてどう考えるべきなのかと言う話が以前から盛んに言われていますが、これも文化的背景としては生まれ変わりと言うことが非常に重要視されている文化圏も存在するわけですから、それが技術的に可能であるとなれば是非ともやらずにはいられないと考える人が出てくるのも時間の問題であるようにも思います。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

中国なのにここでやめたのはすごい自制心

投稿: | 2015年4月27日 (月) 08時03分

結果そのものは予想通りであまり意外性はない気が。
これからどうするつもりなんだろって感じです。

投稿: ぽん太 | 2015年4月27日 (月) 11時06分

>技術的に可能であるとなれば是非ともやらずにはいられないと考える人が出てくるのも時間の問題
 技術はどんなに進んだって、そこには問題はない。

 勝者総取り~王様ゲームが当然の競争原理が蔓延してきているのを 何とかしない限り、
 技術が200年前に戻ろうが10年早く実現しようが、大多数の人間が不幸になるのは変わりがない。 

投稿: Anonymous Alcoholicus | 2015年4月27日 (月) 14時30分

こと出産に関しては若年時から特にトラブルなくばんばん子供を産んでいく人と、高齢出産で様々な技術的サポートを駆使しながらようやく子供を持てる人と、どちらが勝ち組なのかと言う疑問も感じています。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月27日 (月) 19時29分

 勝ち組、負け組は技術の普及や社会情勢で簡単に反転するってことでしょ。
 子だくさんの家庭に手厚い政策を、バカの拡大再生産の奨励だと宣旨なされた無名氏もおりましたが、金と手間暇を集中して育ててもダメなものはダメ。むしろ少子化+競争原理で高等教育自体がずくずくになってる。

 勝ち組総取りの風潮があるから勝ち組、負け組で騒ぐ。 宗主国や韓国の後追いで しっかり「お気の毒様な国」になってしまいましたなぁ。

投稿: Anonymous Alcoholicus | 2015年4月28日 (火) 09時08分

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