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2015年4月21日 (火)

人間の再生と言うことに関するアプローチの仕方

大手検索サイトのグーグルと言えばかつて未だ登録型検索サイトが主流であった時代に独自の検索エンジンによる高い検索効率が認められて一気にメジャーになったもので、何しろ「ググる」と言う表現が成立するくらいに今や最大手の検索サイトとしてすっかり定着しましたが、そのアグレッシブな経営姿勢から時々各方面と摩擦を起こしてきたことも知られています。
とは言えやはり多くのネット利用者にとってその検索機能は頼りにしなければならないものであるし、当然ながらグーグルとしてもより一層アルゴリズムに磨きをかけ検索効率を引き上げようとしているのでしょうが、その副産物と言うべきなのかこのところ同社発の人工知能に絡んだニュースも数多くなっていて、そのネーミングセンスはいささかどうよ?と言う観点からも世間の注目を集めていますよね。
最近では人間のプロ棋士とコンピュータープログラムが対戦する将棋の電脳戦が大きな注目を集めているように、技術的進歩に伴っていよいよ人間の能力を超える人工知能の登場も時間の問題と言われている時代ですが、先日グーグルからこんな気になる技術が出ていると話題になっています。

故人を“再生”できる 「性格」ダウンロード技術、グーグルが特許…ロボットの「性格」簡単カスタマイズ(2015年4月11日産経新聞)

 人格データをクラウドからダウンロードしてロボットに吹き込むことによって、亡くなった親族や有名人の「性格」を持つロボットが身近な存在になる-。米IT大手グーグルが、ロボットに特定の性格などを植え付けられるシステムの米国特許を取得したことが4日、分かった。グーグルはさまざまな活用法を想定し、「実社会に多大な恩恵をもたらす画期的システム」と自賛しているが、一部のメディアは、人間の能力を超える人工知能(AI)を備えたロボット(コンピューター)の出現が人類に災禍を及ぼすとする「2045年問題」への第一歩だと警鐘を鳴らしている。
 米メディアによると、特許は2012年4月に出願され、3月31日に登録された。性格の作成方法は明らかになっていないが、人間の意識の正体やメカニズムはまだ医学的にも解明されていないことから、動画や音声などのデータを解析して、パターン分類的に特徴を抽出する方法などが取られているとみられる。

亡くなった人「再生」

 人のさまざまな特徴に基づく性格情報がデータベースに蓄積され、ネットワークを通じて情報を処理するクラウド技術を活用し、ロボットに性格データをダウンロードするというのが特許技術の基本的な仕組みだ。例えば、特定の個人に性格を含めて話し方や表情などを似せることが可能で、亡くなった親族らに似せたロボットを身近に置くことによって心痛を和らげたりする活用法も考えられる。
 また、クラウドベースなので、ユーザーが旅行の際、自宅のロボットを持ち運ぶことなく、移動先で別のロボットに同じ性格をダウンロードすることもできる。ロボットの「ポータブル化」が可能なのも大きな特徴だ。
 さらに、故人も含めて実際の人間の性格をロボットに植え付けるのではなく、自分好みの性格を自分好みの外見をしたロボットに載せることもできる。このため、ホテルや飲食店などが、酒を一緒に飲んだりする接客用のロボットを顧客の好みに合うようにセットするといった使い道も想定されている。
 グーグルではすでに、子会社ボストンダイナミクスが「アトラス」と呼ばれる人型ロボットを開発しており、性格をダウンロードするための“器”の開発も進んでいる。

「2045年問題」警鐘

 だが、こうしたグーグルの試みには、批判的な見方もある。英紙インディペンデントは、「グーグルによる人格ロボットの特許取得は、『技術的特異点(シンギュラリティー)』に至る第一歩だ」と説いている。技術的特異点とは、人間を超えるロボットが出現する時点を指し、米発明家、実業家のレイ・カーツワイル氏(67)は2045年までに訪れると主張している。そして、技術的特異点が来れば、ロボットは自身を構成するプログラムをより高度なものに勝手に書き換え、やがて地球を支配。人間は肉体を失い、意識のみがロボットの中で息づく状態に陥ることなどが想定されると警鐘を鳴らしている。
 こうしたカーツワイル氏の「2045年問題」の指摘には、米マイクロソフト創業者で元会長のビル・ゲイツ氏(59)や、米スペースXとテスラ・モーターズの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏(43)らも、賛同している。だが、グーグルのエリック・シュミット会長(59)は「『2045年問題』の指摘は誤りだ。優れた人工知能のロボットは、人類にユートピアをもたらす。ディストピア(暗黒社会)ではない」と真っ向から反論している。

今のところどうやって人間の人格を抽出するのかがはっきりしないものの、過去のグーグルの活動内容から類推するに恐らくは人の行動として外に出てくるものを行動パターンとして記録し、そのパターンを忠実に再現することで人格をコピーすると言うものなのだと思うのですが、そうだとすると個人の記憶のバックアップのようなものとは全く違って、よく似た別人格を構築すると言うことになるのかと思います。
この外見的な行動パターンと言うものを完全にコピーし得た場合、それは元の人格と同じものだと言えるのかどうか?と言う問題はかねてSFの世界などにおいても一つの大きなテーマとなってきたもので、もちろんコピーされる当事者にとっては記憶の連続性も何もないわけですからいわゆる不老不死化などとは全く別の話になりますが、周囲にとってみれば原理的には区別がつかない同一人格のように見えるでしょうね。
記事にあるように例えば亡くなった身内を偲ぶと言った目的で個人の人格をロボットなりに移植すると言った場合、極端に言えば家族がこれは故人の生き写しだと錯覚出来ればそれで用が足りるわけですが、そうやってコピーされた人格が環境から学習し新たな独自の価値観を発達させていった場合、最終的には元の人格とはかけ離れたものとなっていくのは必然です。
人間の場合人生の期間は有限であるし、本質的な意味で人格が変化するほどの学習を出来る期間はさらに短いわけですが、ロボットの場合パーツの保守さえ行っていけば何百年でも活動を続けられますから、天才科学者のコピー人格に無期限で研究を続けさせたらどんな成果が生まれるのか、偉大な芸術家のコピー人格がどんな作品を生み出すのかなど、様々な応用も考えられるかも知れません。
ただやはり凡百の人間としては昔からフィクションの世界であるように、万一死んだりした場合には別の体の中で蘇ってやり直せる「人生リセット」の方に興味が行くだろうし、この種の研究のスポンサーになるお金持ちの方々にとっても不老不死的意味合いから最も興味ある話だとも感じるのですが、先日どこまで信用すべきか微妙な気もするこんなニュースが出ていたようです。

人間の頭部移植 2年以内にも実施? イタリアの医師が計画(2015年4月6日CNN)

(CNN) 首から下がまひした患者の頭部を切り離し、脳死と判定された他人の体に移植する――。イタリアの医師が、そんなSFのような移植手術の構想を描いている。米国で6月に開かれる学会で講演して協力者を募る考えだ。

イタリアのセルジオ・カナベーロ医師が検討しているのは、頭部を別の人体に付け替える「HEAVEN(Head Anastomosis Venture)」と呼ばれる手術。ただしまだ乗り越えるべき課題は多数ある
既に予算の一部は確保済みで、残りは一般から出資を募るクラウドファンディングや書籍の販売でまかなう予定だという。

1例目となる候補の患者は30歳のロシア人男性で、ウェルドニッヒ・ホフマン病という難病をわずらっており、自分から手術を希望しているという。ただしカナベーロ医師はインターネットを介してこの男性と話しただけでまだ会ったことはなく、カルテなども見ていない
カナベーロ医師は、ほかにも手術を希望する患者からのメールや手紙が大量に届いていると話す。新しい体が欲しいと望むトランスセクシュアルの人も多数を占めるが、1例目の手術は筋萎縮症の患者を対象にすると同医師は強調した。

もう1つの大きな壁はパートナー探しだ。これほどの手術はカナベーロ医師単独ではできず、設備の整った大規模な医療施設の協力は不可欠。6月に米国で開かれる神経整形外科学会の年次総会で計画を説明して協力者を探すとともに、初の頭部移植手術の実施について2017年までに承認を得たい考え
もし米国で協力が得られなければ、中国を目指す意向だ。
実現のめどが立てば看護師と医師150人のチームを組織する予定で、参加したいという申し出も既に多数寄せられているという。手術にかかる時間は36時間を見込む。

手術成功の可能性については、1970年に米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学校で行われたサルの頭部移植手術を引き合いに出している。サルは手術から8日後に拒絶反応のため死んだ。頭部と体の脊髄を接合できなかったため体を動かすことはできず、自力呼吸もできなかった。71年にサル6匹の頭部を移植した別の実験でも、24時間生き延びたサルはいなかったという。
それでもカナベーロ医師は、医療や科学の進歩によってこうした問題は克服できると主張する。
2013年にはインターネットの医学誌に論文を発表し、脊髄を切断して別の体につなぎ替える技術などについて解説した。

これに対して米脳外科学会次期会長のハント・バチェール医師は、脊柱や血管は接合できても脊髄をつなぐことはできず、患者は動くことも呼吸することもできないと指摘、「この実現は望まないし、自分には絶対にさせない。死ぬよりも悪いことになる」と言い切った。
ニューヨーク大学のアーサー・カプラン医師も、カナベーロ医師の発表には科学的な根拠がないと述べ、馬鹿げた宣伝にすぎないと一蹴している。

乗り越えるべき課題は多数あると言いますか、そもそも動物実験レベルにおいてもまともに成功していない状況で実際にこんな手術を実施すれば医学の暴走だマッドサイエンティストだと批判を受けて当然だろうし、下手をすれば民事どころか刑事訴訟にまで発展しかねないと思いますけれども、実際上の最大の問題点としては誰がこの手術に参加する気になるかと言うスタッフ招集が課題に挙げられそうですね。
別記事ではずらずらと手術に関する問題点が列記されていて、1100万ドルに及ぶと見込まれている手術代を誰がどうやって捻出するのかなど課題山積どころではない状況なのですが、カナベーロ医師自身は脊髄を切り離し再接合する技術的革新を達成したと主張しているそうですから、過去に発表した論文に関しても専門家の方々の検証を期待したいところでしょうか。
「いざとなれば中国で」と言う言葉に何やらその本気度が現れているように思うのですが、記事を見ていて考えたことに以前から一部方面で議論されている点として、麻痺して動かなくなった手足を維持した方がよいのか、それとも切断した方がよいのかと言う議論がありますが、例えばリハビリや移動の容易さを考えると麻痺した体は壮大なデッドウェイトと言う考え方も出来るわけです。
また動かない体は褥創など様々な医学的トラブルにも見舞われやすいですから、単純に損得勘定で考えればいっそ切り離した方がよいのでは?と言う議論も成り立つわけですが、仮に体の一部を切断したとしてもそれを形態的のみならず機能的にも十分補えるようになるのだとすれば、現在医療従事者や患者本人が感じている心理的抵抗感もずいぶんと変わってくるものなのかも知れません。

最近では患者の意志に基づくわずかな神経活動の変化を読み取って随意にコントロール出来る義手義足の開発も進んでいるのだそうで、患者の頭部を生かし続けることが出来るのであればむしろそうしたハードウェアとの接続を考慮した方が早道なのかも知れませんし、そうした人工的な肉体のより高精度なコントロールにグーグルお得意の行動予測技術なども活用出来そうには感じます。
その意味では下手に拒絶反応等様々な問題点が続出しそうな移植手術よりは、機械的なものに置き換えると言う方向性の方が当面より実現性が高いのかも知れませんが、近い将来iPS細胞なりから体の各パーツが培養され移植にも利用されるようになってくると、いずれ体そっくりそのものを新しいものに入れ替えて何が問題?と言う話にもなってくるかも知れませんね。
いずれにしても画期的な技術的進歩が実際に臨床応用されるには単にそれが可能であるか否かと言うだけではなく、社会の側に新しい概念を受け入れるだけの許容性も必要なんだと思いますが、そうした心理的抵抗感の軽減に最も有効なのは百のデータよりも一の実例と言うのもまた確かではあるので、まずはやってみなければ始まらないと言う考え方もまんざら理解できないことではありません。
今の時代は反倫理的治療の強行だと見なされれば様々なペナルティが科される時代で、世の中にはそうした反作用を恐れてせっかく有用な新技術を開発しても地下に潜って表に出てきていないものがたくさんあるのだと言う都市伝説もあるようですが、当事者同士が納得し同意した上で行われることに関して社会が勝手に規制するのはおかしいと言う考え方もあるのだろうし、なかなか扱いも難しい問題ではありそうですよね。

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コメント

リアルロボコップ
ところで脳が人間存在の根本だってことでもうコンセンサス得てんのかな?

投稿: | 2015年4月21日 (火) 07時49分

先日テレビで放映された「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」を連想したw

さらっと漫画になっていたけど、あれを実現するのは相当大変だろうなー、って思いながら見てたwww

投稿: | 2015年4月21日 (火) 10時08分

本当に頭部移植が出来るんだったらもっと大騒ぎになりそうな気が。
もとからあまり注目されてない論文だったってことなんですかね。

投稿: ぽん太 | 2015年4月21日 (火) 10時13分

パーツの保守を行ってもロボットの寿命は人間より短い
ソニーのロボット犬AIBOでニュースになっていたでしょ
家電製品の範疇だから50年も経たないうちに修理不能

投稿: | 2015年4月21日 (火) 12時51分

てか、脊髄を接続することができるなら脊髄損傷の外科治療が先だろう、と。

投稿: JSJ | 2015年4月21日 (火) 12時53分

頭部移植と火星移民
似たような匂いがする
どっちも参加するのは事実上の自殺

投稿: | 2015年4月21日 (火) 12時57分

この手術が仮に実施され予想されたような結果になった場合に、本人同意の元で行われる処置に関してどこまで医学的妥当性を逸脱していいものなのかと言うことが議論になりそうに思います。
極論すれば素人をそれらしい理屈で丸め込んで副作用続出な代替医療の類も、本人が同意していれば何ら問題ないと言うことになりかねませんから、検察等もスルーするわけにはいかないように思うのですが。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月21日 (火) 13時37分

ハルビン医科大学の任小平氏が率いるチームは2013年7月より、1000匹弱のマウスの
頭部移植手術を行ってきた。任氏は今夏、この外科手術を猿に応用し、僅かな時間でも
独立生存・呼吸が可能な、頭部を移植した霊長類を創り出そうとしている。ウォール・
ストリート・ジャーナルの記事を引用し、光明網が伝えた。

ハルビン生まれの任氏は米国で15年間学習・勤務し、3年前にシンシナティ医科大学の
職を辞して中国東北部の実家に帰った。任氏が帰国したのは、米国では自らが望む
研究に従事できなかったからだ。その他の研究者も、米国での頭部移植の実験計画は、
恐るべき障害に直面すると認めた。これは資金のみならず、倫理的な問題が含まれる。
しかしハルビン医科大学で顕微外科センター長となった任氏は、大学から巨額の研究費
を支給されている。

任氏は、「軽率に頭部移植の研究を行っているわけではない。この移植技術があれば、
脊椎損傷、がん、筋萎縮症など、脳は健康だが身体の疾患に苦しめられる患者を助け
られるようになるかもしれない」と語った。(編集YF)

ソース:人民網日本語版 2015年6月11日
http://j.people.com.cn/n/2015/0611/c95952-8905440.html

投稿: | 2015年6月12日 (金) 22時11分

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