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2015年4月16日 (木)

リスク要因としての遺伝子の問題

本日の本題に入る前に、少子化対策が急がれる一方で結婚年齢の上昇もあって、高齢出産が増加してきていることは医学的にも大きなリスクとして認識されていますが、こうした傾向は日本に留まらないようだと感じさせられるのが先日出ていた英国発のニュースです。

いまや〝アラフィフ出産〟も常識! 英国で「妊婦の高齢化」が止まらない(2015年3月15日現代ビジネス)

2013年、英国で50歳以上の母親から生まれた子供は700人を超えた。00年時点では約250人だったので、3倍近くに増えたことになる(アメリカ疾病予防管理センター調べ)。

自然妊娠した者がいないわけではないが、多くは体外受精だ。10年前に「高齢出産」と言えば、35歳以降の出産を指したものだが、最近は40歳を過ぎてから出産に臨む女性を指す傾向にある。自分のキャリアを考え、1回目の結婚では子供を産まなかったが、2回目の結婚で出産について真剣に考えるようになる女性が増えているからだ。

英国が欧州の他の国に比べ、女性の出産年齢が高い背景には、法体系の違いがある。フランスの体外受精の第一人者、ルネ・フリードマンはこう説明する。

「欧州では、出産にかかる費用が国民健康保険でカバーされるのは43歳まで、体外受精を行うことができるのは49歳までと定めている国がほとんどです。対象年齢に上限を設定するのは、出産時のリスクを回避するためです。40歳を過ぎると流産や合併症などの可能性が目に見えて高まるため、年齢制限を設けることで母体や胎児、新生児を守ろうとしているのです」

 英国ではこうした年齢制限が法制化されていないため、妊娠年齢の高齢化に歯止めが効かないのだ。フリードマンは言う。

「医療が進歩するからといって、出産年齢をどこまでも引き延ばしていいなどと考えるべきではありません

特にここで注目いただきたいのが英国では周辺他国と比べとりわけ超高齢者の出産増加が目立っている、その理由として医療保険制度があるらしいと言う点で、やはり高齢出産に関してはそれに要する費用負担が大きな制限因子になっていると言うことは言えるかと思います。
少子化対策として子供を産むことが推奨されるのは当然ですが、一方でこうした高齢での妊娠、出産には高額の費用を要する上に障害児出生のリスクも高いとなれば社会としてそれを支援することが差し引き得なのか損なのかと言う計算も必要だろうと言う考え方もあり、日本でも公費助成には年齢制限を設ける方針となっていますよね。
もちろんお金を出せば幾らでも自費で治療を継続することは出来るし、実際に日本でも著名人がタイムリミットを超えて出産しているケースがたびたび話題になっていますが、一体どこまで治療を続けるべきなのか?と言うくぎりをつけるための大きな契機として、やはり一定年齢での助成打ち切りは小さくない意味があるのかも知れません。

さて、そうした高齢出産の増加と関連して近年注目を集めているのが新型出生前検査と言われる新たな胎児遺伝子検査技術で、今までであれば羊水検査など母子に大きなリスクを伴う手技を必要としていたものが、採血一つで簡単に遺伝子異常が調べられるとなれば誰しも使ってみたいと言う気にもなるだろうと予想出来ます。
先日は新型出生前検査で陽性判定が出た場合83%の妊婦が妊娠中絶を行ったと言う報告が出ていて、やはりこの種の検査は胎児産み分けにつながっているのではないかと言われそうなんですけれども、そもそも中絶をしないと言うスタンスであれば検査自体受けていなかっただろうと考えると、かなりバイアスがかかってはいそうですよね。
胎児に限らない話としても遺伝子検査が病院に行かなくても簡単に出来るサービスが開始されると言い、誰しも健診結果に一喜一憂するのと同じように遺伝子的なリスクと言うものに無関心ではいられなくなる時代が間近に迫っているのかも知れませんが、先日こんな調査結果が出ていたことを紹介してみましょう。

自分の遺伝子を調べてみた医師は何%?(2015年4月10日日経メディカル)

 大手IT企業のDeNAやヤフーの参入が話題となって、利用者が増えた個人向け(direct to consumer:DTC)遺伝子検査サービス。利用者自らが採取した唾液や口腔粘膜を送付することで癌や生活習慣病のリスクや体質の傾向が遺伝子型から算出されるものが多い(関連記事:遺伝子検査は「予防のため」か「占い」か)。数万円の検査費用が掛かるものの、朝日新聞が2014年8月に行った世論調査では、52%の人がDTC遺伝子検査サービスを「受けたい」と回答したという。

 現状のDTC遺伝子検査サービスは、気軽に検査を行える反面、疾患の診断に結びつくような内容ではない。このことを利用者が正確に理解できているのかといった課題が指摘されている。今回はDTC遺伝子検査サービスについて、医師がどういう印象を抱いているのかを尋ねてみた。

関心あっても数万円は高い

 調査期間中に回答した医師2958人のうち、実際にDTC遺伝子検査サービスを受けたことが「ある」のは131人だった(図1)。受けてみた感想として多かったのは、「この結果を受けて、どうすれば良いかという具体的なアドバイスがほしい」(40歳代男性、一般内科)というもの。医学的知識がある医師であっても結果に戸惑いを感じるようだ。「遺伝子リスクが分かった後の対応ができる機関であれば、推奨すべき検査だと思った。逆に、対応できないのであれば、不安をもたらすだけの検査になってしまう」(30歳代女性、一般内科)、「現在の検査は、結果の説明なども含めてまだ一般にお勧めできるレベルには達していないように思われる」(50歳代女性、産科・婦人科)という厳しい評価も寄せられた。

 検査を受けたことが「ない」医師も、全く興味がないわけではないようだ。受けていない理由として、「関心はあるが、実際に受けるまでには至っていない」と回答した人は762人(26.6%)に上った(図2)。

「究極の個人情報」の秘匿性や利用者の混乱を危惧

 その他の懸念や改善すべき点としては、「生命保険や医療費、結婚などに多くの問題を生じる可能性があるため、法律などによるバックアップ体制の準備が必要」(40歳代男性、一般外科)、「個人情報についてのリスク管理は事実上不可能であり、悪意ある漏えいを防ぐ手立てはない」(50歳代男性、一般内科)など。「究極の個人情報」(50歳代男性、代謝・内分泌内科)を安全に保護することが可能なのかという指摘が多数挙がった。

 また、「やめてほしい。その結果を知ったところでどうしようもないのに、受診してどうにかしてくださいとか言われそう」(30歳代男性、耳鼻咽喉科)、「結果そのものや、結果をみて悩んだことなどに対して、簡単に相談できる環境が必要」(50歳代男性、一般外科)、「遺伝子検査はその後のフォローもできる体制で行うのが条件だと思う。検査だけしてサヨウナラというのは無責任」(30歳代男性、総合診療科)と利用者をフォローする体制の貧弱さへの懸念も見られた。

 2年前に両乳房を切除し、今年に入って卵巣と卵管を摘出したことを公表して話題になった米国の女優アンジェリーナ・ジョリーは、BRCA遺伝子変異が分かったことでこれらの予防的切除を決めた。こうした話が大きく話題になれば自分も遺伝子を調べてみたいと考える人は少なくないだろう。しかし、DTC遺伝子検査サービスの多くはBRCA遺伝子のような疾患に直接結びつく遺伝子を対象とはしておらず、結果に書かれているのは「自分が属する遺伝子型集団の発症リスク」であって「自分」個人の発症リスクではない

企業側にはサービスの宣伝に終始することなく、これらの情報を正しく伝えて理解を得る努力が求められる。
(略)

個人的には機会があればちょっと受けてみたいかなと言う気もしているのですが、その結果何かしら疾患のリスクがあると知れれば対策も講じられるのだろうし、この種のものは健康増進のとっかかりとして活用する意志がある個人にとっては全く無意味なものではなさそうには思います。
同時に一般の健診などでも言えることなんですが、結果が出てくるだけではなくその結果に対してどうしたらいいのかと言うアドバイスの部分がなければ意味がないと言うのはよく理解出来る話で、かと言って話題のアンジェリーナさんのように「癌の確率○%だから手術」とはなかなか決断も出来ないのが人間と言うものですよね。
ただここで注目いただきたいのは今回こうした回答を寄せているのが医学的知識もあり、必要であれば不足する知識を調べる手段も能力もあるはずの医師と言う特殊な対象であると言う点なんですが、ある程度知っている人間であってもこれだけ情報不足を感じるのであれば一般人ならさぞや…と想像されるでしょう。
そうした理由からも記事後段のコメントを見ていますと今のところ単に学術的興味あるいは好奇心を満足する以上の実際的価値はなく、むしろ究極の個人情報をも明らかに出来てしまうことのリスクの方が懸念されると言う意見が多いようですが、実際問題として社会の中でこれらがどう位置づけられていくのかが問題です。

かねて企業健診などにおいても「職場に○○の病気を知られたくない。何とか秘密に出来ないか」と言った相談は決して珍しくないし、保険等の加入のための健診ともなればちょいと血圧がオーバーするだけでも無理だと言われかねませんから、言ってみれば数字一つで人生が変わりかねないと言うことはあるわけです。
ましてやそれが努力によって改善できる類のものであるならまだしも、生まれついて持って生まれたもの以外にはどうにもなりようがないと言う遺伝情報であれば本人の責任ではないはずですが、容易に想像されるリスクとして保険会社が保険料設定上の資料としてこうした情報を用いると言った可能性がありそうですよね。
もちろん全例必須と言うことにでもなれば社会的批判が免れませんから、当初は検査を受け○○のリスクがないと証明出来れば保険料がお安くなりますがどうされます?的なアプローチが取られそうなんですが、信用情報が各金融機関で共有されているようにこの種の個人情報も共有されないのかどうかです。
別にそんなもの知られたところで痛くもかゆくもないと達観できる人はいいでしょうが、例のマイナンバー制度に対する長年の反発を見ても大多数の人々は個人情報を知られることに何となくの不安を感じがちな様子ですから、検査技術以上にどうやって秘密を守るかと言う方法論も進歩してもらいたいところでしょうか。

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コメント

ここまで検査がお手軽になったらもう仕方ないよね
せめて検査の結果説明くらいちゃんとやってほしいな

投稿: | 2015年4月16日 (木) 07時53分

ところで予防的治療って保険とおりませんよね?
検査ばっかりしてもその後が大変そうな気が。

投稿: ぽん太 | 2015年4月16日 (木) 09時01分

こぞって高齢出産とか、なぜか日テレの「びっくり日本新記録」を連想したよw

投稿: | 2015年4月16日 (木) 09時50分

ちなみにあの番組で優勝者に祝福のキッスをしてくれていたキャロライン洋子さんは今なにしているのかと何気にググってみたところ、思いも掛けないその後の経歴でちょっとびっくりしました。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月16日 (木) 10時38分

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