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2015年4月 7日 (火)

今までにないタイプと話題の介護施設での暴行事件

いわゆる無許可の老人施設の話は今や珍しいものではなく、時折その内部での不適切な対応ぶりが報じられるたびに必要悪と考えるべきかどうか議論にもなりますけれども、先日少しばかり毛色の違う事件が起きたとちょっとした話題になっています。

93歳の鼻ふさぎ動画、老人施設3職員逮捕(2015年04月01日読売新聞)

 名古屋市名東区大針の有料老人ホーム「ケアホームひまわり」に入所する女性に暴行を加えたとして、愛知県警守山署は30日深夜、同施設職員の男3人を暴行の疑いで逮捕した。

 施設には要介護度1~5の50~90歳代の男女計27人が入所していたが、名古屋市に有料老人ホームの届け出をしておらず、市は31日、立ち入り検査を実施し、再発防止と原因の究明を求めた。

 逮捕されたのは横井一樹(36)(名東区香南)、鈴木啓太(26)(同区社が丘)、物部拓史(29)(名古屋市南区元塩町)の3容疑者。発表によると3容疑者は2月21日午後7時55分頃、4人の相部屋に入っていた認知症の女性(93)に対し、口に指を入れたり、指で鼻をふさいだりする暴行を加えた疑い。

 同署が、横井容疑者にしつこく声をかけられたという女子高校生(17)から相談を受け、3月27日に横井容疑者から事情を聞いた際、スマートフォンに暴行の様子を撮影した動画が保存されていたことから発覚。横井容疑者は暴行を認め、他の2人の関与についても供述したという。鈴木容疑者も容疑を認め、物部容疑者は「自分はいなかったと思う」と否認しているという。

 横井容疑者は昨年2月、鈴木容疑者は2012年9月、物部容疑者は同年8月にパートとして採用され、現在は正社員として勤務していた。運営会社の仲宗根恵子社長(61)は31日、「指導が行き届かず申し訳ない」と陳謝し、同日付で3人を解雇したことを明らかにした。仲宗根社長によると、逮捕前に鈴木、物部両容疑者から事情を聞いたところ、「日常的な暴行はしていない」と話したというが、鈴木容疑者のスマホには、入所者の70歳代男性の衣類を一部脱がして映した画像も保存されていたという。

 名古屋市介護保険課によると、この施設に対しては、数年前から再三、老人ホームの届け出をするよう指導していた。仲宗根社長は「施設を整備するお金がなかった。早急に届け出をしたい」と話した。

記事を読む限りでも何が何やらと混乱するような内容なのですが、ここでは事件が発覚したのが家族などからの訴えや内部告発、各種の噂と言った通常よく見られるものではなく、全く別件からの発覚であったことに留意いただきたいと思います。
老人は病院から施設へ、そしてさらには家庭へと言う国策を反映して順調に高齢者の移動が行われていればいいのですが、当然ながら施設の受入数にも制限がある以上必ずしも需要に対して十分に答えられていないと言えますし、その反映でいささか質的にどうかと思われる施設も利用せざるを得ないのも確かでしょう。
一方でそれだけ介護スタッフが多く必要とされるとなれば当然こちらも質よりも量重視でいかざるを得ない局面も出てくるはずなんですが、今回の事件に関してはこのスタッフの質の面で今までとは少しばかり違う様子であったと言う話題が出ています。

名古屋介護施設暴行事件 なぜあの職員らが雇用されていたか(2015年4月4日NEWSポストセブン)

(略)
 暴行とは具体的に何をやらかしたのか。日本テレビの報道によると、施設を運営する女性社長61歳が、このように説明している。
〈「鼻の中に指を入れて上にかきあげた動画と、あと口の中に手を入れて上下に動かす動画でした」〉
 その動画の中には、被害に会った入居者の「いやいや」「やめて」という声も入っていたそうだ。警察の取り調べで容疑を認めた36歳は、「嫌がる様子を見て面白がっていた」などと供述しているらしい。26歳も容疑を認めており、29歳が一人だけ否認。女性社長は朝日新聞の取材にこう答えている。
〈「3人は遅刻が多く、指導したこともあった。悪ふざけをしたのだと思う。被害者や家族には申し訳ない。31日付で解雇する」と話した〉

 このニュースを受けて、ネット上で最も多く飛び交っていたのは「人間のクズ」という罵倒だ。私もまったく同感だ。たしかに「悪ふざけ」だったのだろう。しかし、認知症の93歳女性に対して介護職員が集団で悪ふざけをするという「学級崩壊」状態は尋常じゃない。26歳の容疑者のスマホには、別の男性入居者の下腹部の画像も保存されていた、とも報じられている。こいつらの余罪はもっと出てきてもおかしくない。
 逮捕され連行中だったか、テレビでジャージ姿の26歳が顔を隠すでもなく歩いている姿を見た。印象は「遊び人風」。サラサラ系の長髪で、眉毛を鋭角に剃っていた。オレオレ詐欺の世界で生きるほどの根性はないが、危険ドラッグなら普通にやっていてもおかしくない半不良、という顔つきだった。
 他の容疑者2人の個人情報は知らない。だが、この26歳容疑者の姿を見た瞬間、「えっ、これまでとは違う」と感じた。介護施設での高齢者虐待は年々増加しているが、その発生要因は「教育・知識・介護技術等に関する問題」や「職員のストレスや感情コントロールの問題」あたりが多い。つまり、その仕事のなんたるかを知らぬまま働いていて、なにかのはずみでムカッと来るなりして手をあげてしまう、など、ダメ職員がキツイ仕事の中でおこしてしまう事故が一般的なのである。
 それはそれとして今なお介護業界の大きな問題だが、今回の事件は、質が違う。より底が抜けている。ダメ人間ではなく、まさにクズ人間らの所業だ。教育が足りないからそうなった、のではなく、介護にまるで適性がないからそんな非道なことができるのだ。

 高齢者介護は日本で最も人材不足に苦しんでいる業界である。募集してやってきた者にダメ人間の気配があったとしても、「働きながら学んでもらおう」と雇わざるを得ない事業者が少なくない。
 しかし、今回の事件で3人が行った「悪ふざけ」は、介護の仕事以前に働くこと、社会人であること、人間であることすべてをナメている。動画をユーチューブなどに流したという情報はないが、そのナメ具合は飲食店のバイトの大学生が厨房の洗浄機に入る写真をツイッターにあげて大炎上といったバカッターの愚行どころじゃない。もっと愚かだ。この原因は、教育不足でも仕事のストレスでもない。ありえない雇用の問題ではないか。
(略)
“無届け老人ホーム”の中には、先端的な介護を提供するハイレベルな施設などもある。が、その大半は、介護の質を保証するための規制から外れたプアな住環境や介護サービス体制で、そのぶん割安な利用料で入居できることをウリにするものだ。安かろう悪かろうで、行政指導も入らない。だから、どんな施設なのか、ネット上でも具体的な情報に乏しい施設が多い。
「ケアホームひまわり」もそんな典型だから情報がないのだが、いろいろ検索していたら、1ページだけ見つけた。大手求人情報サイトに最近まで掲載されていたと思われる「有限会社介護グループひまわり」の求人広告が、キャッシュで閲覧できたのだ。介護スタッフの正社員募集。条件は以下の通り。

・対象となる方:学歴不問、未経験者OK 
・勤務時間:6:00~15:30、10:30~20:00 夜勤なし・交替制
・給与:月給22万3000円以上 試用期間6ヶ月あり
・休日休暇:4週8休制
・待遇・福利厚生:昇給年1回、賞与年2回、資格手当、交通費規定支給、雇用・労災保険、有給休暇

 想像と違った。半ば闇でやっているような“無届け老人ホーム”だから、働く場所としても相当ブラックだろうと思ったのだが、この求人広告通りならば、そうでもなさそうだ。夜勤なし、4週8休で、月給22万3000円以上という介護職員の条件は、同じ愛知県内の同業種のものと比べて結構いい。企業情報の〈ひまわりの紹介〉という欄には、こんなことが書かれている。

〈社長1人、施設長1人、スタッフ13人。みんな気さくで明るいメンバーばかりです。20代~50代の男女が活躍中です!当社では、ご入居者様だけでなく、スタッフ用の食事も作っており、健康に配慮したバランスの良い食事を提供しています。独身スタッフや育児で忙しい主婦層にも好評です☆〉

 職員と入居者がVサインやガッツポーズをしている写真もある。この求人広告を見る限りではアットホームだ。働きやすそうなのだ。“無届け”で利益の生みやすい商売をしているから、わりと金があり、雇用面は人寄せ優先でゆるくやっている。ゆえに人間のクズも紛れ込む。そんな感じだろうか……。
(略)

いやまあ、テレビで見た映像一つからここまで想像を膨らませられると言うのも一つの才能ではないかと言う気はしますけれども、確かに今までしばしばこの種の事件で語られてきたような「過酷な職場環境から由来するストレスが」云々と言った話とは、やはり少しばかり違う背景があったのか?とも想像されるところでしょうか。
この種の事件が起こると大抵の場合職場の同僚等からは「真面目で熱心な人だったのに」等々何かしらのフォローが入るのが通例なんですが、今回雇用主からも「3人は遅刻が多く、指導したこともあった。悪ふざけをしたのだと思う」などとさんざんな言われようでばっさり首にされている辺り、相応のキャラではあるのでしょう。
事件発覚の経緯を見てもそもそも老人介護と言う仕事への適性がなかったのではないか?と言う声も根強いこの事件なんですが、しかし考えてみると国策としてこれだけ介護スタッフを増やそうとしている時代に、適性がある人だけがその仕事につくかと言えば決してそんなはずはないですよね。
この辺りは第一次産業なども同じことなのですが、労働がキツイだとか収入が少ないなど仕事として魅力がないことがその業界の人手不足を招いていると言う側面が多分にある一方で、商売として見ればあまり魅力がないからこそ苦労を承知でやりたいと言う熱心な人が集まってくると言う側面はあったのだと思います。

介護の世界も人手不足解消のためにスタッフの待遇改善が必要なのは当然なんですが、その結果仕事として割が良いとなれば当然適性に乏しい人々も流入してくるようになるのは当然ですから、今後は介護業界もかつてのような真面目で熱心なことが大前提であるかのようなシステムでは大きなトラブルになるかも知れませんね。
その点は医療の世界も決して他人事ではなく、かつては医師としての使命感に燃えるごく少数の人々が志願して参入してくる職場だったものが、不況に強く食いっぱぐれがない安定職として理系高偏差値層が大挙して押し寄せる事態になってきた結果、明らかにかつてとは若手医師の雰囲気も変わってきていると感じる先生方も多いと思います。
もちろん必ずしもそれが悪いことだけではなく、ごく普通の進学先の選択肢の一つとして医学部に入学し、ごく普通に就職活動をして給与労働者としての医師生活をスタートさせることが当たり前になってくることで、医師の常識は世間の非常識などと言われることはこれから次第に減ってくるのかも知れません。
ただそうした変化に現場の人間はある程度体感的に理解し受け入れていくことになるとしても、恐らく一番意識改革が遅れそうなのが利用者である患者やその家族ではないかと思うのですが、身内が入院して久しぶりに病院にいってみたら昔と何もかも違っていて驚くと言う経験が、今後はあちらこちらで出てくるようになるのでしょうか。

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コメント

だれも来ないよりは来てくれただけマシなんだろうね介護って

投稿: | 2015年4月 7日 (火) 08時03分

見た目で差別してたら今どき人なんて集まらないからね
この記者の認識が終身雇用の時代じみててワロスだわ

投稿: toromoro | 2015年4月 7日 (火) 09時27分

ネット上でチラ見した限りでは単純な容姿や見た目だけに注目するなら大したことがないと言いますか、あれを見た目を理由に不可にしてしまうと本当に人が来なくなりかねないんじゃないかと言う気はしますでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月 7日 (火) 11時06分

>商売として見ればあまり魅力がないからこそ苦労を承知でやりたいと言う熱心な人が集まってくると言う側面

 管理人様、これは無理。

(商売以外に)なにか魅力があるからこそ人が残る。「何もないこと」に魅力を感じるなんて倒錯した人は共産党員より希少w。

>かつては医師としての使命感に燃えるごく少数の人々が志願して参入してくる職場

 かつては医畜であることを耐えるに足る魅力があった、それを医療パターナリズムバッシング、医療訴訟でつぶした。「人助けをして、いい気分=使命感」という魅力を消し去った。まぁ、使命感とかプライドという要素をぶち壊してしまったのは、将来に向けては失敗だと思いますよ。匿名とステハンで金棒曳いてる人たちは確信犯でしょうが。

 狙い通り医療も介護も教育も市場商品になった。
 技術水準が進んだだけじゃなく、医者が医畜をしなくなったことも加わって、まわし切れなくなり、医者の需要が増えた。需給の問題でしかないなら、不況に強く食いっぱぐれがない安定職wでいられるのも、最長、団塊の世代が逝ってしまうまであと20年でしょう。 経済破綻がその前に来るかもしれない。

「稼ぎで充足を買う」のではなく、日々の生業の中に充足感を見いだせることが、とんでもない贅沢になっているのかもしれません。

お題に戻ると、
 今や「稼いで充足を買うこと」にすら現実感を持たない人が出てきているように感じます。自分にとって現実の充足感など努力しても届かないのなら、初めから無い物としてふるまうということでしょうか。  

投稿: 感情的な医者 | 2015年4月 7日 (火) 14時02分

ゆとり世代は飽きると諦めるのが早い。
介護向きじゃないと思った。

投稿: | 2015年4月 7日 (火) 17時30分

http://www.nhk.or.jp/r-asa/business.html
NHKビジネス展望から 4月10日(金)森永卓郎の「『流動化』を考える」

http://www.nhk.or.jp/r-asa/doga2/2bus_5.html

自分の時間が現実感を帯びない理由についての一つの解釈。

投稿: Anonymous Alcoholicus | 2015年4月11日 (土) 12時31分

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