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2015年4月 1日 (水)

ドイツ航空機事故と個人情報保護

先日以来大きな話題となっているドイツ機墜落事故ですが、当初テロの可能性もあるかと危惧されていたものがどうやら副操縦士による意図的な行動であったらしいと判明するにつれ、その動機を追及する中で様々な医学的背景も明らかになってきています。

副操縦士、網膜剥離患い悩んでいた?…独紙報道(2015年03月29日読売新聞)

 【ベルリン=工藤武人、パリ=本間圭一】28日付のドイツ大衆紙ビルトは、フランス南東部でジャーマンウィングス機を故意に墜落させた疑いのある副操縦士、アンドレアス・ルビッツ容疑者(27)が、視力に深刻な問題を抱えていたと報じた。

 同紙によると、ルビッツ容疑者は網膜剥離を患っており、今年6月にジャーマンウィングスの親会社ルフトハンザによる身体検査で、旅客機操縦に不適格と判断されるのではないかと悩んでいた可能性があるという。

 これまでの捜査では、ルビッツ容疑者が精神的な疾患で治療を受けていたことが判明しており、独捜査当局はルビッツ容疑者の自宅などへの捜索で、うつ症状の治療薬多数を押収したが、視力の問題との関連は明らかになっていないという。捜査当局は医療機関など関係者に事情を聞きながら墜落の背景を慎重に調べている。

副操縦士、過去に自殺傾向 検察、免許に「要治療」(2015年3月30日北海道新聞)

 【ベルリン共同】フランス南部のドイツ旅客機墜落で、ドイツ西部デュッセルドルフの検察は30日、機体を故意に墜落させた疑いが強まっているアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)が、過去に自殺傾向があったため、精神治療を受けていたと発表した。

 また、米ダウ・ジョーンズ通信は同日までに、ドイツ航空当局者の話として、副操縦士の免許と適性証明書に、慢性的疾患を抱え、定期的な治療を必要とすることを示す記述があると報じた。

 旅客機を運航していた格安航空会社ジャーマンウイングスと親会社ルフトハンザ航空がこうしたことを認識していたかどうかが焦点となりそうだ。

副操縦士、病状隠し搭乗か 「見抜けなかった会社の責任重い」 独機墜落(2015年3月28日zakzakニュース)

 フランス南東部のドイツ機墜落で、またしても衝撃的な情報が飛び込んできた。機体を故意に墜落させた疑いが持たれているアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)の自宅から「乗務不可」とする診断書がみつかったのだ。精神的な病気のため医師の診断を受けていたとみられ、勤務先の格安航空ジャーマンウイングスに病状を隠していた可能性がある。事前に会社は異変を感じ取れなかったのか。航空業界のリスク管理の現状は-。

 ドイツ検察当局は27日、西部デュッセルドルフの自宅など副操縦士の関係先から、医師の診断書が見つかったと明かした。24日の墜落当日の勤務を不可とする内容で、破られた状態だった。
 ドイツ各紙の報道では、副操縦士は6年前に精神疾患を患い、合計1年半の間、治療を受け、現在も同国の精神科に通院。最近、交際女性との関係で悩んでいたという。

 病気を隠して操縦桿を握るとは信じがたき行動。航空業界の現場では、パイロットの精神状態をどう見極めているのか。
 日本航空の元機長で航空評論家の山田不二昭氏は、「フライト前には必ず、運航管理者の立ち会いのもと、健康状態、精神状態、アルコールなどのチェックを行う。良好であれば、機長がフライトプランにサインをして搭乗する。欧米でも似たようなことをやっているはずだ」と話す。
 山田氏も現役時代、機長として副操縦士らの様子に気を配っていたという。「副操縦士は職場の仲間なので、『大丈夫ですか?』と声をかけていた。新人の場合には、それまでの飛行履歴などを報告してもらい、その話し方、報告の仕方をみて判断していた」

 こうした日々のチェックの他に、パイロットには年に1、2回の厳しい身体検査が課せられている。航空法で定められているもので、通常の身体検査よりも項目が多く、心電図、脳のMRI検査、精神科の診断もある。この航空身体検査にパスしなければ、飛行機を操縦できない。
 「過去に精神疾患を発症したとしても、ドクターが回復したと総合的に判断し、航空身体検査をパスすれば、飛行機の操縦は可能だろう」(航空関係者)というが、会社側のチェックは十分だったのか
 『間違いだらけのLCC選び』(平凡社)の著者で航空アナリストの杉浦一機氏は、「各国の航空会社も日本と同じような検査を行っている。乗客乗員を道連れにする大事件を起こしたのが精神的な問題とすれば、重症であり、兆候が表れるはずだ。LCCのジャーマンウイングスでも、親会社のルフトハンザと同等のチェックを行っていたのか。見抜けなかった会社の責任は重い」と指摘する。
 副操縦士の“心の闇”の解明が待たれる。

航空機のパイロットは非常に厳重な労働管理を行っていることでも知られていて、飲酒の制限など日常的な生活管理が行われているそうですが、この辺りは大勢の顧客の命を預かる仕事であり、またひとたび飛び立てば10時間以上も下界と隔絶された閉鎖環境に置かれる以上、きちんとやってもらわなければ乗る方も不安ですよね。
その意味で厳重な健康管理なども業務の一環であると言う考え方は当然理解出来るし、今回の事故についても仮に病気が事故原因に結びついているのだとすれば管理の手法上いまだ改善の余地があると言うことになりますけれども、ここで注目したいのは個人の疾患履歴のような通常極めて厳重な管理を要するはずの重要情報が、こうして全世界的に配信されてしまうと言う状況です。
かつて某総理大臣が某病院に入院した際、その治療経過など個人情報がネット上に流出し大問題になったということがありましたが、今回のように各種個人情報の暴露合戦のようになるのもどうなのかで、特に精神疾患治療歴などは通常進歩的なマスコミなどが真っ先に「何たる人権侵害!」と大騒ぎしそうですし、そもそも医療の守秘義務と言う点で問題がありそうに感じます。
ただ一方ではそうした守秘義務によって航空会社の管理が及ばなかったことが事故につながったと言う指摘もあるのですからややこしいのですが、こちらの記事を紹介してみましょう。

独墜落機の副操縦士、病隠して勤務-守秘義務で企業知り得ず (2015年3月30日ブルームバーグ)

 (ブルームバーグ):独ジャーマンウイングス9525便の操縦室に独り残ったアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)は、致命的となりかねない秘密を隠していた。

同機がフランスのアルプス山中に墜落した当日、ルビッツ副操縦士は「勤務に適さない」とする医師の診断を無視し、乗客・乗員150人全員死亡という同社と親会社のルフトハンザ航空にとって最悪の航空事故につながった一連の出来事を引き起こした疑いが持たれている。

厳しい医療プライバシーの法律によって、航空機を急降下させたルビッツ副操縦士の心に潜んだ危険の可能性に企業は気付いていなかったようだ。医療情報を保護し、患者が安心して医師に相談できるようにするために作成された守秘義務のルールでは、当局や企業に危険をもたらしかねない診断結果を開示する責任は患者にある。

今回の悲劇の結果、そうした守秘義務のルールがどのように変わり得るか、また医療記録が特定の場合に企業と共有されるべきかどうかをめぐり議論が高まりつつある。それと同時にルビッツ副操縦士が一定期間にわたり飛行訓練を中断していたことについても疑問が浮上している。パイロット資格取得が遅れる原因となった中断の理由はルフトハンザに開示されていない。

ヘイズタックス・テクノロジー(ロサンゼルス)のブライアン・ウェア最高技術責任者(CTO)は、「企業が医療記録といった個人情報をより簡単に入手できるようにすることに関する政治的議論はもろ刃の剣だ」と語る。「昇進を決める場合などに医療記録が調べられることを従業員が知ったり、そう考えたりすれば、専門家の助けを求めにくくなる」ためだと説明している。

もちろん一般的に雇用主が被雇用者の情報を自由に得られるようになると言うのであればこれは過剰と言うものですし、現状の職場健診ですら場合によっては非常に情報の取り扱いに気を遣うべき側面があって、例えばメタボ健診のペナルティーを恐れて検査データが悪い人はそもそも最初から雇用しない、などと言う話もルール上はあってはならないこととは言え実際には各地であるようですよね。
近年てんかんなど意識障害を来す疾患を持つ患者の事故がたびたび問題視されていて、免許更新時のチェックも厳しくなるという話がありましたが、ああした話も社会的利益と個人情報の保護をどうバランスさせるかという事が議論になってきたと言えます。
基本的に厳しく個人管理も教育もなされている航空業界での一件きりのいわば特殊な事件をもって、現状以上にさらに厳しい管理を要求されると中の人たちにとっては非常に堅苦しいことになりそうですが、社会的責任のある地位だからこそ管理も厳しくあるべきだという感覚は、特に利用者である一般市民の側に強いものがあるかも知れませんね。
いずれにしても客商売である以上顧客が何をどう判断して利用するかと言う点で評価が定まっていくはずですが、一部報道で言われているように格安だからと人材にお金をケチると言うことのないよう、かけるべきコストであればしっかりとかけて利用者に転嫁する判断の方がドイツらしい気はしますでしょうか。

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コメント

犯罪者なんだから人権は制限されるのは仕方ない

投稿: | 2015年4月 1日 (水) 08時01分

パイロットのように多くの人の命を預かりような特殊な職業の場合は、管理する会社への
守秘義務もクソもないような気がしますが。
少なくとも一般の人の3倍も給料貰っていて、かつブラックな労働環境からはほど遠いのだから。

そういや、航空大学行きたかったなぁ。昔は裸眼視力でひっかかるので断念したが。

投稿: | 2015年4月 1日 (水) 08時51分

でもまあ他人に責任負わない仕事もないですからねえ。
自分的には情報抜かれるよりどう管理されるかが気になりますけど。

投稿: ぽん太 | 2015年4月 1日 (水) 09時54分

>ブラックな労働環境からはほど遠いのだから。

寝るのもパイロットの仕事のうちですよ(言ってみたかっただけ)。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年4月 1日 (水) 10時53分

コスト追求で労働者のモラルが低下というのは食品業界でも問題になってますよね
昭和時代なら食品会社の従業員が意図的に混入なんて誰も想像しなかった

投稿: | 2015年4月 1日 (水) 11時42分

労働に対して報われていないと感じる労働者ほどモラルが低下するものなのか、それとも特権意識におごり高ぶった労働者ほどモラルが低下するものなのか、マスコミ的に後者はよく批判されますが実際どうでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月 1日 (水) 12時19分

>特権意識におごり高ぶった労働者

マスゴミとかマスゴミとか、あとマスゴミとか…

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年4月 1日 (水) 14時58分

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