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2015年4月13日 (月)

田舎の公立病院、いよいよ完全淘汰の時代へ

地方公立病院と言えば新臨床研修制度導入と前後する医師不足の顕在化によって、いわば最も深刻な直接的影響を被ったとも言われていますけれども、その大きな理由として医師が主体的に勤務先を探し就職することが当たり前になってきた結果、医局人事だけに頼ってきた病院には医師が行かなくなったと言う事情があります。
もちろん医局からの医師派遣を受けながら独自のルートでも医師を集めている病院も少なからずあるわけで、要するに医局の人事権によっていわば強権的に医師を送り込まなければ誰も赴任したがらないような病院が割を食っていると言うことなんですが、被雇用者目線で見るとそれは当然の結果では?と言う気もしますよね。
もちろん自治体病院には為政者にとって住民サービス拡充の目に見える成果としての意味もあり、また地元住民の雇用の場としてもある以上存続させたい気持ちは理解できますが、最近財政的な面からも地方公立病院への逆風がさらに強まりそうだと言うニュースが相次いでいます。

公立病院はさらに淘汰? 財政支援絞り込みへ(2015年4月1日日経メディカル)

 総務省は3月31日、各自治体が公立病院改革プランを策定するための基礎となる新たな公立病院改革ガイドラインを発出した。新しいガイドラインは、公立病院改革プランの従来の柱である「経営効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」の3点に加えて、「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を柱として挙げ、地域医療構想と整合性を取りながら改革を進めることを求めた。

 病院を運営する各自治体は2015~16年度中に新ガイドラインに沿って公立病院改革プランを策定する。プランの対象期間は2020年度まで。

 ガイドライン改正の目玉となったのは、地方交付税による公立病院への財政支援の仕組みだ。従来、各病院への交付税措置の額は「許可病床数」に応じて計算していたが(1床につき約70万円)、この算定基礎を「稼働病床数」に変更する。

 一方、激変緩和措置として2016年度からは、許可病床の削減数に応じて、5年間交付税を加算する。休眠病床を多く有している病院は、今回の見直しで得られる交付税が激減するため、休眠病床を返上する動きが広がりそうだ。

 地域医療構想とは、都道府県が今年度から策定を開始する2025年の医療需要に見合った機能別病床数の目標のこと。今年度中をめどに策定した上で、2018年度からスタートする医療計画に盛り込み、構想の実現に向けて病床削減や病床機能再編を進める

追い詰められる公立病院、新ガイドラインが拍車(2015年3月24日日経メディカル)

 三重県の桑名市民病院と医療法人和心会平田循環器病院・医療法人山本総合病院の統合、山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院の統合、岩手県立釜石病院と釜石市立市民病院の統合、静岡県の掛川市立病院と袋井市立袋井市民病院の統合、兵庫県の加古川市民病院と株式会社神戸製鋼所・神鋼加古川病院の統合……。

 いずれもここ8年以内に行われた病院統合だ。公立病院同士のみならず、民間病院も公立病院の統合相手になっている点が目を引く。今後、全国でこのような病院統合が、今まで以上に活発化するだろう。3月末にも総務省から公表される、新しい「公立病院改革ガイドライン」が、その起爆剤の役割を果たすからだ。全国に850近くある公立病院の数は、10年以内に3分の2近くにまで減るかもしれない。

“飴と鞭”の政策で病院統合進める
 総務省が「公立病院改革ガイドライン」を初めて公表(総務省自治財政局長通知として発出)したのは2007年12月。ゆえに7年ぶりの見直しということになる。前回のガイドラインは2007年5月に開かれた経済財政諮問会議で菅総務大臣(当時)が、公立病院改革に取り組むことを表明したことがきっかけだ。背景には、医師不足や経営悪化に悩む公立病院の急増があった。2007年6月には夕張市の財政破綻を受けて地方財政健全化法が成立、同じく6月に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」には、各自治体に総務省がガイドラインを示し、改革プラン策定を促す旨が明記され、12月のガイドライン公表に至った。

 このガイドラインでは、公立病院に対し、経営効率化と持続可能な病院経営を目指すことを求め、病院を開設する地方公共団体に対して改革プランの策定を要請した。プラン策定に当たっては、「経営効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態」の3つの視点に立った改革を一体的に進めるように求めた。

 最も重視されたのは「再編・ネットワーク化」、つまり病院統合だ。近接する市町村がそれぞれ病院を持っている場合は、その統合や機能分化を強く強く求めた。当然のことながら、再編に対しては相応の財政措置も取られた。文字通りの「飴と鞭」の政策だ。特に、経営主体の統合や、病床削減をするケースについては、手厚い交付税措置が行われることになったため、苦境に陥っていた公立病院は「改革」の名の下、冒頭のような統合への道を選択していった。

 総務省が2014年3月末日時点の公立病院改革の実施状況を調査した結果によれば、2013年度までに策定された再編・ネットワーク化に係る計画に基づいて、病院の統合再編に取り組んでいる事例は65ケース、162病院に上った。

統廃合には今まで以上に手厚い措置
 まもなく公表される“新”ガイドラインも2013年11月の経済財政諮問会議がきっかけだ。総務省の2007年のガイドラインに基づく現在の改革プランが最終年度を迎えていること踏まえ、民間議員が新ガイドラインの策定を提言、新藤大臣(当時)が策定する方針を表明した。これを踏まえ、2014年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2014」では、「公立病院改革プラン(5か年計画)に基づく取組の成果を総務省・厚生労働省が 連携して評価した上で、地域医療構想の策定に合わせ、今年度中に、新たな公立病院改革ガイドラインを策定する」と明記された。

 では新しいガイドラインの内容はいったいどうなるか──。一部報道によれば、公立病院の統廃合を進めるため、新設や建て替えに対する財政支援の仕組みが大幅に見直される方向だ。現在は費用の30%が地方交付税で手当てされているが、統廃合などに伴う新築や建て替えには10ポイント上乗せされた40%が手当てされる見込みだ。逆に通常の改修や立て替えに対しては5ポイント減の25%の交付税措置となる見込み。

 また、公立病院に対する交付税の拠出額自体は現状レベルを維持する方向のため、相対的に従来の運営費に係る交付税措置額は減額される公算が大。従来病床当たりの単価(2014年度は1床当たり70万7000円)で交付税措置の額が決まっていたが、この病床数の算定基礎が許可病床数から稼働病床数へと見直すことも検討されている模様だ。もしそうなると、病床稼働率が低い公立病院は交付税の額も激減する。近隣の病院との統合か診療所化しか生き残る道はなくなるだろう。

都道府県の権限は強大に
 加えて、今回の改革の最大のポイントとなりそうなのが都道府県の権限、役割の強化だ。“新”ガイドラインは、厚生労働省から提出され2014年6月に成立した医療介護総合確保促進法に規定された「地域医療構想」とも連関させながら、再編を推進していくツールになる。地方交付税についても、「地域医療構想」の実現を見込んでの措置が優先されることになるだろう。

 「地域医療構想」、公立病院改革と並行して国民健康保険の保険者を市町村から都道府県に移行する国保改革も実施される。医療提供体制と医療保険の両面の責任を負うことになった都道府県は、これまでにない強大な権限を持って、不採算の公立病院に大なたを振るうに違いない。

 

一連の地域医療構想にも関係する話題で、これからは都道府県が住民の医療提供体制に関しての最終的な責任を負い、そのために必要な強力な権限を持っていくと言うことになるとすると、最も問題になってくるのが各市町村が独自に整備してきた「おらが町の病院」の取り扱いですよね。
高度経済成長と国民皆保険制度の両輪で医療が身近なものになってきた昭和の時代に「隣町には立派な町立病院があるのにうちにはないのはおかしいじゃないか」とばかりに全国各地に建設されてきた自治体立病院の多くが、今や施設の老朽化やスタッフの不足、そして慢性的な赤字で自治体財政のお荷物になっているのは事実です。
とは言え今ある医療提供体制を削減することは選挙で選ばれた議員の方々にはなかなか言い出しにくいことで、むしろ「小児科24時間診療を実現します」だとか「いつでも専門医に診てもらえる体制を整備します」と言った空手形が住民支持に結びつくとなれば、とりあえずの公約として地域医療の充実を掲げざるを得ないのでしょう。
その結果自治体は構造的に大赤字を垂れ流す分不相応なハコモノを抱え込むこととなり、一方で住民はろくな医者がやってこない地元町立病院をスルーして街の大きな病院に車で通院するでは何の事やらですが、この辺りは地域診療に従事する心ある先生方も住民意識の問題はたびたび指摘してきたところですよね。

いずれにしても国策として中小公立病院の統廃合が本格的に誘導されるシステムが成立してきた以上、多少なりとも色をつけてもらえるうちに早めに話を進めた方が得だと言う計算が成り立ちますが、少なくとも平成の大合併で一つの自治体になったような地域で似たような旧町立病院を幾つも抱え込む意味はないでしょう。
一方で僻地医療におけるこの種の公立病院の価値を過少評価すべきではないと言う意見もあって、先日は全国自治体病院協議会が次回診療報酬改定では中山間地の病院への配慮を盛り込むよう要望を出すと言う話がありましたが、専門医資格が改まればこうした僻地の小病院は医師にとってもますます魅力に乏しいものとなるのは確実です。
その意味でいつまで病院を維持出来るか?と言う指標として財政問題と医師不足問題の両輪があると言えますが、そもそも論として僻地に病院を置かなければならないのか、無床の診療所と介護施設の組み合わせではいけないのかと言った議論もあるはずで、「今まであったのだからこれからも」が通用する時代ではないとは言えそうですよね。
その点で厚労省が先日全国の拠点病院に対して、僻地の診療所に医師を派遣する日数の数字目標を設ける方針だと言うニュースが流れていましたが、病院としては統廃合していくが僻地医療機関の存在までは否定しないと言う意味合いからも納得出来る話であり、逆に言えば田舎病院潰しは完全な既定路線となっていると言うことでしょう。

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コメント

つぶれるのは自業自得
それに尽きる

投稿: | 2015年4月13日 (月) 07時50分

医療も時代時代で変わっていく必要はありますし。
自分で変われないなら外圧も必要なのかなって気もします。

投稿: ぽん太 | 2015年4月13日 (月) 08時40分

いよいよ祈祷師の時代がっ!www

ま、何とかはタヒななきゃ治んないのですから、
淘汰の時代がやってきたと言うのではなく
一斉に治療の時期がやってきたとみるべきでしょう。
うん、前向きな意見だ。

投稿: | 2015年4月13日 (月) 10時07分

そこで例のNP僻地派遣をなどと言い出せば本格的切り捨て御免なんですが、今のところは医師を送るつもりはあるようで、要はアクセスの悪化は甘受してくださいということでしょうか。
現実的には長期入院の高齢者をどこが引き取るのかと言うことが問題になりそうですが、急性期を過ぎれば地元の施設入所と往診でしのぐようになるのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月13日 (月) 12時40分

人口減地域で卒業生の定着率の悪い地方の国立大学医学部や付属病院どうしの統廃合もあるのでしょうかね。
人口を考慮した医療需要と国公立医学部での医師養成数のアンバランスが大都市圏/近郊と地方との間で顕著ですから。

投稿: physician | 2015年4月13日 (月) 13時07分

physicianさま この記事ですね
http://mainichi.jp/select/news/20150412k0000e040158000c.html

投稿: 感情的な医者 | 2015年4月13日 (月) 17時43分

↑の記事おもしろいですね
医師が流出するのはけっきょく余ってるからってことなのかな

投稿: | 2015年4月13日 (月) 19時15分

まぁ当然と云えば当然
田舎は自治体自体の維持すら怪しい所が出てくるので病院や
国公立大でも統廃合が必要ですしそうなるでしょう
医療機関も大病院とゲートキーパー的中小病院とで棲み分けが進むでしょうね。

投稿: | 2015年4月14日 (火) 08時37分

 医師過剰とか国立大の統廃合とかずれてない? 

毎日の記事
>地方からの流入が多いと思われていた東京は、養成数の16%にあたる医師が他県へ流出していた
>医師不足は大都市近郊での対策が重要なカギを握る。医師は地方から大都市の東京ばかりに集まるわけではないと、認識を改める必要がある

ブログ主様による厚労省の意図
>僻地医療機関の存在までは否定しない

 大病院とゲートキーパー的中小病院の棲み分けが進んたら、医者の需要が減る、医者が余る、なんて保証はないんだ。僻地で在宅医療する労働生産性の悪さを想像するだに、人口に見合った人手が必要。ああ、呪術医あてがって放置wという説もありましたな。 
 医者の平均所得を下げにかかってるのは良くわかるが、医師過剰はもうすこし先に来るかもしれないこと。
 
 広島県が流入県とは驚いた。
 島根や鳥取が供給、とは考えにくい、鳥取島根からは首都圏近畿圏へ流出しているのだろう。数字上の広島への流入は岡山が供給元だろう。吸い取られてるわけじゃなくて尾道福山はもともと岡山圏だから。ローカルネタで申し訳ないが、数字だけでは見えてない状況もいっぱいあるってことで、ちゃんと見ないと、地方医学部統廃合なんて頓珍漢なことを言い出す羽目になる。

投稿: 感情的な医者 | 2015年4月14日 (火) 10時18分

そうそう、内科学会で医学生が発表したものですね。
総人口と医学部定員の議論は、人口減➡医療需要減➡医師養成数減➡医学部定員減という主張がありました。
医学部1校あたりの定員が減るのか、医学部の数が減るのか、わかりませんが。
毎日の記事では大都市圏の医学部定員を増やすべき、という風にもとれます。
それだって、ある時期がピークで、それ以降は医療需要が減りますが、まだ先でしょう。

病院の統廃合は最近は、厚労省の政策がそうなっているいうな。

投稿: physician | 2015年4月14日 (火) 13時12分

記事では
「大都市近郊で医師の養成率を上げない限り、地方の医師不足問題は解決できない」

ですから、減らす話ではないですね。

結局
「すむ魅力に富んでいる地域で職を募集していれば、すむ魅力に乏しい地域の人材が流出する」
医師に限らず、過疎になる地域は過疎になるべくして過疎になっているだけの話ですね。

解決法は二つ
1)すむ魅力を上げる(積極策)
2)すむ魅力に富んでいる地域の求職者数をへらす(消極策)

で記事は2番を指摘しているんですが、2だと千葉などで医学部定員を増やすことになりますが、一般人口や医師で起こった流出が今度は学生レベルで起こるだけではないかと思いますね、質の低い学生を過疎地域医学部で引き受けるのでない限り。

投稿: おちゃ | 2015年4月15日 (水) 13時16分

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