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2015年4月 6日 (月)

児童虐待は明らかに悪いこと、なんですが

ひと頃産科医療崩壊が語られる中で野良妊婦などと言う物騒な言葉が話題になりましたけれども、あれも妊婦検診も受けず飛び込みで出産すると言うのは本人のリスクは自己責任にしても、子供に対する責任放棄ではないかと言う厳しい意見がある中で、先日はこんなびっくりニュースが出ていました。

救急車で運ばれ男児出産、母親が病院から姿消す(2015年3月27日読売新聞)

 埼玉県川越市の埼玉医大総合医療センターで2月、出産した男児を置き去りにしたまま母親の女性が行方不明になっていることが26日、県警などへの取材でわかった。

 川越署が保護責任者遺棄容疑で捜査している。

 関係者などによると女性は2月13日午後1時頃、同センターに救急車で運び込まれ、間もなく男児を出産した。担当者が同14日午後4時半頃、病室に行くと、女性は姿を消していた。センター内を探したが見つからなかったため、約1時間後、同署に通報した。同センターの防犯カメラには、女性が病院着のような服を着たまま出口に向かう姿が映っていた。

 女性は24歳で志木市に住んでいると話していたが、住所地に家はなかったという。生まれた男児は健康で、県内の乳児院にいるという。

ちなみに同センターでは昨年7月にも暴力団組員らが集団暴行で死なせた男性の遺体を置き去りにしていくと言う何とも不可解な事件があったそうで、何やら地域の妙な需要に対する駆け込み寺的な存在になっているのではないかと言う気もするのですが、救命救急を熱心に受けている見返りがこんな仕打ちではスタッフの方々もやり切れませんよね。
これまた大いに話題になった赤ちゃんポストなども子供を置いていくだけでなく子供の死体を遺棄していくと言うびっくりするようなケースもあるのだそうで、本来一人でも命を助けるために始めた制度の趣旨が理解されていないのではないかと思いますけれども、ともかくこれだけ少子化対策が国策としても推進される中で、一方では子供に対する養育放棄や虐待と言った痛ましい事件も連日のように報道されているわけです。
2010年に起きた大阪の事件では歳と1歳の子供を抱えるシングルマザーが子供を50日間にもわたって放置し餓死させた、しかもその間男と出歩いている様子を自ら世間に向けて発信していたと言う何とも言い難い事件であり、その後子供達の孤独かつ悲惨な最後の日々が映画にまでなったと言いますから世間に与えたインパクトも相当なものですが、この種の事件が起こるたびに「行政は何をやっていた」と世間からお叱りの声が出ますよね。
もちろん児相なども現場の職員の方々は少ない人員や限られた予算の中から精一杯やっているのだろうとは思いますけれども、この児童虐待に対する公的介入と言うことを考える上でもなかなかに興味深く、かつ何とも奇妙とも言える事件が裁判沙汰になっていたと言うニュースが出ていましたので紹介してみましょう。

児相の男児アレルギー死 両親敗訴が確定(2015年3月28日神奈川新聞)

 横浜市の児童相談所が3歳の男児にアレルギー物質を含む食事を与えて死亡させたとして、両親が市などに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は27日までに両親側の上告を退ける決定をし、原告敗訴が確定した。決定は25日付。

 二審東京高裁判決によると、男児は2006年、東京都内の病院に病気で入院し、病院側が「両親が栄養を与えない虐待の疑いがある」と児相に通報。一時保護した児相は男児に卵を含んだちくわを誤って食べさせ、食事から約7時間後に亡くなった

 一審横浜地裁は、アレルギー反応によるアナフィラキシーショックが死因だとし、市の過失を認め約5千万円の支払いを命令。しかし二審東京高裁は「食事から数時間は発症がなかった」と、死亡との因果関係を否定し請求を棄却した。

●市の対応認められた
 鯉渕信也こども青少年局長は「市の対応が適正なものだったと認められたと考えております。亡くなられたお子さまのご冥福を心よりお祈りします」とコメントした。

ちなみに2012年の横浜地裁判決では児相の責任を認め5000万円の賠償判決が出ていたのですが、当時の横浜市側の出した判決の報告書によれば国立成育医療センターから6月16日に児相に相談があり7月3日より保護のため医療機関に収容していたそうで、7月14日からは退院し一般の保護施設に入所していたようです。
当日は朝食時に男児がおかわりを求めた際にうっかり竹輪1/10本を食べさせてしまった、すぐに気づいて看護師等も含めた職員で注意深く観察を行っていたが昼過ぎまでは大きな変化はなかったようで、昼食後の昼寝から起こそうとしたところぐったりしているのに気づき救急搬送したものの救命出来なかったと言うことで、経過から二審東京高裁では死因はアナフィラキシーではないとして両親の請求を棄却する逆転判決を出しています。
保護当時はくる病を発症するなど栄養状態として相当にひどい有様であったのも事実であるようですが、一方で当時取材に応じた両親の主張によれば強い食物アレルギーで卵や小麦などに触れただけで皮膚が荒れてしまい「タンパク質が流出、成長に影響していた」とも言い、そもそも虐待(栄養ネグレクト)ではなくやむを得ない事情による食事制限であったと言うことです。
この主張通りであれば苦労しながら育ててきた子供を奪われ無神経にアレルギー物質を与えられ殺されたとはひどい話だと言うことなんですが、そもそも事実アレルギー物質の摂取によるアナフィラキシーだったのかどうかも含めて事実関係が今一つクリアではないところだし、完全に善意から来る親の行動であったにせよ事実子供が必要な栄養を与えられず、栄養失調に至っていたとは言えるのでしょう。

そうした本件特有の細かい事情は抜きにして注目されるのが、子供を保護したからにはその健康に関して責任を負わなければならないと言うことで、「育児放棄したような親が他人の育児に問題があったと非難するのもおかしいじゃないか」と言う意見ももちろんあるのでしょうが、やはり社会的にはこうした場合引き受けた以上は責任を負うと見なされるケースが大多数ではないかと思います。
ただ少し考えただけでも子供の育児を放棄するような親が詳細な医療情報を提供するものなのかどうか、むしろ知ったことではないと言う場合の方が多いのかとも想像されますし、ひどいケースになれば半殺しに近い状態にまで暴行を加えるだとか、敢えて致命的ともなりかねない情報を隠しておいて保護させ、その後何かあれば責任問題だ、謝罪と賠償をしろと主張すると言うことも可能性がないとは言えないでしょうね。
このあたりは素朴な庶民感情と言うべきものに反する部分もあって法律家の間でもどう扱うべきか議論があるところのようなんですが、引き受けた児相等の側の責任に関して言うと緊急避難的な意味においてはいわゆる良きサマリア人法の考え方を適用すべきなのだろうし、子供の権利保護を第一に考えると場合によっては何かしら特別のルールを整備すると言うことも必要になってくるのかも知れません。

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コメント

何時間もたってから出て死ぬようなアナフィラキシーってあるの?

投稿: | 2015年4月 6日 (月) 07時56分

亡くなったお子さんまだ3歳だったんですね。
死亡事故がなくても苦難の多い人生だったんだろうなあ…
最後にお代わりするほどお腹いっぱい食べられたのかなあ。
重症のアレルギーの子ってほんと大変ですね。
ただただご冥福を祈ります。

投稿: ぽん太 | 2015年4月 6日 (月) 08時41分

本件の場合きわめて微妙ながら食後しばらくして軽度の発汗、微熱が疑われていたようで、いわゆる二峰性での遅発性症状を来したケースであったのかも知れません。
以前にも紹介したように学校現場でもたびたび食物性のアナフィラキシーが発生しており、今後大人数を相手に飲食を提供する場所ではアドレナリン自己注薬を常備しておくべきなのかどうかです。

投稿: 管理人nobu | 2015年4月 6日 (月) 10時43分

結局何が原因で死んだの?
児相の管理下で死んで、原因はわからんで終わりなのかな

投稿: | 2015年4月 6日 (月) 11時08分

アナフィラキシーガイドライン
http://www.jsaweb.jp/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/uid032318_616E67313131372833292E706466
 -P6- 「副作用発現時間」

これによると、471分以上たって発症した事例も以外と多い

投稿: オヤズ | 2015年4月 6日 (月) 20時04分

「小学校の担任殺しそうです」…校内で急死した息子の父親、ネットで担任脅迫容疑 兵庫
2015.4.6 22:48

 兵庫県明石市内の小学校で昨年1月に急死した長男=当時(7)=の担任だった女性元教諭(60)に危害を加えるような内容をインターネット掲示板に書き込んだとして、兵庫県警明石署などは6日、脅迫容疑で、明石市大久保町の無職の男(43)を逮捕した。容疑を認めているという。

 同署によると、書き込み以外に男と元教諭との間にトラブルは確認されておらず、同署は男の一方的な逆恨みとみて調べている。

 逮捕容疑は平成26年11月~27年3月、ネット掲示板にスマートフォンから「今のままやと小学校の担任殺しそうです」「死にたくなるほどの苦しみを与えたい」などと6回書き込み、元教諭を脅迫したとしている。

 同署によると、掲示板に担任の名前などは書かれていなかったが、小学校名や長男の命日などが記載されていたことなどから男を特定した。長男は26年1月、小学校敷地内で倒れているのが見つかり、搬送先で死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は不整脈だったという。

投稿: | 2015年4月 7日 (火) 06時26分

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