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2015年3月 2日 (月)

売り手市場と喜んでばかりもいられない薬剤師の将来

全国的にドラッグストアの大手チェーン展開が進んできていて、ちょうど薬学部の6年制移行に伴う供給不足等もあって薬剤師の奪い合いも起こっていると側聞するところですうが、調剤薬局とドラッグストアを全国展開するこちらのグループでは昨今新規出店効果もあって好調な販売を記録していると言うことです。

アイン、新規出店などで過去最高益- 増収・増益を確保、第3四半期決算(2015年2月25日CBニュース)

アインファーマシーズ(アイン)が24日発表した2015年4月期第3四半期(14年5月―15年1月累計)連結決算によると、営業利益は前年同期比0.1%増の75億円となり、これまでの第3四半期の過去最高を更新した。調剤薬局事業で積極的に新規出店を進めたことなどが収益を押し上げた。【松村秀士】

売上高は同8.2%増の1364億円となり、増収・増益を確保した。主力の調剤薬局部門では、来局患者数が順調に伸びたことに加え、処方せん1枚当たりの売り上げが上昇したことにより、既存店の売上高が増加。調剤薬局については、15年4月期第3四半期の9か月間で、55件のM&A(合併・買収)を含めて計82店を出店、11店を閉店し、これにより総店舗数は687店となった。

同社は1月、静岡県を中心に調剤薬局52店を展開するメディオ薬局を完全子会社化するため、株式譲渡契約を締結。今後、東海地区での薬局網の充実や営業の強化を図る予定だ。アインの広報担当者は、「経営の後継者や薬剤師が不足している薬局が多い」とし、今後もM&Aを積極的に進める考えを示した。

一方、ドラッグストア部門では、自主企画商品を中心に単価を上げたことなどにより販売数量が伸び悩み、売り上げが前年同期より1割近く落ち込んだ。

15年4月期通期の業績見通しについては、従来予想の売上高1900億円(前年同期比12%増)、営業利益102億6000万円(同1.5%増)を据え置いた。

記事にもあるように各地で薬剤師不足に悩む薬局を統合し拡大していっているのだそうで、同社のサイトを拝見する限りでもずいぶんと大きな薬局グループだなと思うのですが、薬局ドラッグストアのグループ化が進むことによって例えば中央に薬剤師を常駐させ24時間の遠隔対応が可能になると言ったメリットもあるだろうし、当然薬剤師集めに関しても有利に働くんじゃないかと言う気はしますよね。
国としては近年医師の診察と処方箋発行無しで購入出来るOTC薬の拡大と言うことに関して積極的になってきていて、これも今までは危ないから医師の判断に基づいた処方が必要ですと言ってきたものを自由に購入出来るようにすると言うことには未だに批判もあることだし、また服薬に際するリスクマネージメントにおいて重要な役割を負うことになる薬剤師の仕事ぶりが十分満足出来るものかどうかも問われているわけです。
この辺りはどこまでリスクと言うものを許容するかと言うことで考え方も別れるところですが、日本においては医療は医師が大きな権限を持つと同時に最終的な責任を負うと言う主治医制と言うものが長年主流であった、ところが医療の専門分化が進み患者との関わり方も変わってきた結果そこまでの責任は負えないと、自分の関わる分野だけをみる担当医と言うものにシフトしてきた経緯があります。
要するに医師は知識や技術、情報と言ったものを提供することは出来るが、それを判断し責任を負いながら選択していくのは患者自身であると言う考え方であるとも言えますが、ともすれば専門家の責任放棄とも受け取られかねないと批判もある一方で、もともと個人個人の選択における自己責任の考え方が根強いアメリカではさらに一歩も二歩も先を進んでいると言う記事が出ていました。

大学構内に登場した処方薬自動販売機の衝撃(2015年2月25日DIオンライン)より抜粋

 私は英語の勉強を兼ねて、朝の通勤電車に乗っている10分強の時間を、米国の新聞のオンライン版の記事を読むことに充てています。新聞のサイトにたどり着くと、記事の見出しにざっと目を通し、興味がある記事から優先的に読んでいきます。昨年11月のある日に、"USA Today"のオンライン版の見出しを斜め読みしていると、 "Prescription drug vending machine installed on campus" というタイトルを見つけました。直訳すると 「(大学の)キャンパスに設置された処方薬自動販売機」となります。

 私の脳裏には直感的に、「処方薬自動販売機≒薬剤師不要」の式までもが浮かび上がり、薬剤師的に、これは大変だということで、早速記事の内容に進んでいきました。記事によると、元々、アリゾナ州立大学の構内に学生向けの薬局があり、その薬局が2014年の9月に閉局してしまうことになりました。閉局に先立っては、大学の医療担当者が、学生の処方箋を他の薬局で調剤して貰えるように調整したそうですが、学生の「移動せずに処方薬を受け取りたい」というニーズを満たすために、結局、24時間薬を受け取れる処方薬用の自動販売機の設置が決まったということです。そこに在庫される処方薬の具体的な内容は明らかになっていませんが、大学生に処方される一般的な処方の上位50種類が含まれることになっているそうです。 受診から処方薬の受け取りまでの流れは以下のようになります。

 まず、キャンパス内の診療所で診察を受けた学生は、その医師から24時間だけ有効なセキュリティコード付きのバウチャー(引換券)を処方箋代わりに受け取ります。バウチャーを受け取った学生は、24時間以内に処方薬自動販売機に向かい、そのバウチャーを用いて処方薬を機械に調剤してもらうのです。

 "USA Today"の記事の中には、「この自動販売機のメーカーは、最近までは病院の救急外来や救急の診療所のみに処方薬自動販売機を設置してきた」との記載があります。今回紹介されている自動販売機は、全米の薬局に取って替わるような存在ではなく、キャンパス内の薬局閉局にあたって生じる、学生にとっての不都合を解消するための、あくまでも「補完的」な措置なのです。
(略)

自身も経験豊富な薬剤師である筆者の清水氏はこの記事を読んだ際に受けた衝撃を「何かに突き動かされるように記事を原文のままプリントアウトし、その朝出勤してきたパートの薬剤師に要約しながら説明して」しまったと言いますけれども、まあ先述のような議論が未だ続いている日本の医療現場の感覚からすると「すでにここまで進んでいたか」と衝撃を感じるのも不思議ではないかなと言う話ですよね。
同氏はその後製造元の資料に当たるなどしてこの自販機についてかなり詳細に調べているのですが、処方薬だけではなくOTC薬も処方できること、慢性疾患向けの長期処方薬などは対象外で短期間・一時的な使用に留まる薬剤に限定されていること、各種医療保険にも対応していること、そして基本的に薬剤師はその運用に関与していないことなどが明らかになっています。
特に薬剤師なしで運用されていると言う点は資格職の将来像を考える上でも気になるところですが、形態的にも設置場所としてもちょうど銀行のATMにそっくりなものであるそうで、これまたATMよろしく備え付けの受話器を取り上げれば24時間薬剤師と話が出来ますと言う仕組みなんだそうですが、逆に言えば患者自身がそれと望んで行動しない限り一切薬剤師が関与しないと言うことで、薬局と言うより院内処方の変形版と言ってもいいのかも知れません。

清水氏としては当然のことながら薬剤師の役割が単に機械による袋詰め作業によって代替できるものであってはならないはずだと言う問題意識を持っているのだと思いますが、医薬分業が実現しOTC薬も拡大され、薬剤師が単なる薬の袋詰め屋ではなくきちんと医療専門家としての業務を果たせるか問われるようになった今の日本では「薬剤師の判断で調剤を拒んでよいものかどうか?」と言った議論も出ています。
一方で未だに「処方医に疑義照会をしたら調剤薬局を首になった」などと言う話も聞かれるあたり、従来型の医師に従属するスタッフとしての薬剤師と独立した業務を遂行する専門職としての薬剤師の二つの立場がもう一つクリアーになっていない部分もありますけれども、議論を進め薬剤師のあり方についてコンセンサスを得る気長な作業を続けているうちに薬剤師の仕事自体が消えてしまっていた、では何の事やらですよね。
もちろん現状では最先端のアメリカにおいてすらあくまでも限定的な局面でごく限られた役割を果たすだけに留まっていますけれども、何しろ利用者目線で見れば24時間いつでもあっと言う間(最短数十秒)に調剤してくれる便利な機械が身近にあると言う利便性は非常に大きなものがあるのは当然ですから、今後その利用範囲は消費者目線での要求に応じて次第に拡がってくるんじゃないかと言う気がします。
そして別にこんなことは薬剤師に限った話ではなく、例えば電子カルテ導入で医事担当者の大事な仕事であった診療報酬計算を機械が勝手にやってくれるようになっただとか、技術的な進歩に伴って各職種の業務範囲や必要数が変わってくるのは当然なんですが、特に人事が硬直しがちな公立病院では時代の変化に応じて適切な配置転換を進めていかないと職種間の業務量格差拡大が新たな軋轢を産むと言う危惧もありますよね。

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コメント

もうバブル崩壊も近いでしょ。まあ贅沢言わなければ需要はあるから働き口はあるはずだよ。

投稿: | 2015年3月 2日 (月) 07時42分

便利そうだから日本でも風邪薬のたぐいだけでも扱ってくれないかなあ?>薬自販機
て言うかOTC薬の通販があるんだから自販機+通話でダメってこともないんですかね?
店舗に薬剤師いなくてテレビ電話で薬剤師と話して購入ってチェーン店みたことありますけど。

投稿: ぽん太 | 2015年3月 2日 (月) 08時29分

インターネット販売に関しても薬剤師の関与が必須化された経緯がありますから、自販機においても処方段階で薬剤師が説明をするか自販機そのものに対話機能の付加が求められそうな気がします。
もっとも現実的には各方面の反対も根強いことが予想されるので、日本では病院内など極めて限定的な運用ででもない限り当面導入が進みそうにはないと思いますが。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月 2日 (月) 12時33分

>まあ贅沢言わなければ需要はあるから働き口はあるはずだよ。
 時流に乗って無責任を垂れ流している悪意の人は2chで山の様にお目にかかりますが、このところここにもしつこく書き込んでくるようで。

 目端が利いてほかに選択肢がある偏差値50~55の子たちの大部分は6年制薬学部を見限ってます。前回と昨日終わった薬剤師国試の感触では、厚労省は偏差値50以下の子は切り捨てるつもりにみえる。局長クラスが国試は需給の調整バルブ、と明言しましたし。
 偏差値55以上の子をきっちり選別して鍛えて院内なり集約した薬局で働いてもらう、調剤師は機械に置き換えてゆくのかな、と感じています。 
 問題はバブル期の夢で(情弱で)、借金して私学薬学に逝った子が結構いること。機械に置き換えられてゆく過程を低賃金で働き続けることになるのですが、借金を返し切った先にどんなスキルが身についているのかどんなキャリアパスがあるのか。 早く気付けよ。
 

投稿: 感情的医者 | 2015年3月 2日 (月) 21時05分

>バブル期の夢で(情弱で)

90年中~終盤の薬学部人気は、経済バブルが弾けて就職が厳しくなった事を察知した受験生達が、「手に職を付ければ就職に有利なはず、医師免や司法試験よりはチョロいだろうし」という動機で薬剤師免許に目を付けたのが大きな理由の一つだったと記憶しています。
まあ少なくとも、当時はまだ現在の様に学部が乱立していた訳ではありませんでしたし、当時の高校生(←ほんの子供)に、その頃既にあった臨床検査技師の飽和と同じ未来を予測してキャリア設計(=受験先の選択)を強いるのは酷かなという気はします。

あ、でも「バブル」が分業化による薬剤師就職バブルを指し、学部乱立後に入学した子達を(周囲の大人達も含めて)情弱と呼ぶのなら、震え上がるほど同意です。

投稿: kawakawa | 2015年3月 3日 (火) 17時03分

>「バブル」が分業化による薬剤師就職バブルを指し、学部乱立後に入学した子達を(周囲の大人達も含めて)情弱と呼ぶ
 
 御意

投稿: 感情的医者 | 2015年3月 3日 (火) 18時11分

薬学部出たからって、薬局や病院の薬剤師で働かなければならないわけじゃあるまいし
製薬会社でサラリーマンする人間も多いだろ
文系学部や国際なんちゃら学部、えせ環境なんたらと比較したら堅実なんじゃないの
学費の借金は多いのかも知らんけどね

投稿: | 2015年3月 4日 (水) 09時01分

腐っても国家資格職ですので、就職先があるかないかと言う点に関しては一般学生よりも恵まれていると思うのですが、今後投じた学費や努力等々に見合う見返りが期待出来るかは歯学部同様微妙になってきましたね。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月 4日 (水) 12時50分

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