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2015年3月 6日 (金)

介護の人材不足は世界的課題

介護者不足が深刻であると言われる介護業界において、その質的不足も問題なのではないか?と世間での議論を呼んでいるのが先日起こったこちらの事件です。

介護施設で入浴中にやけど負い死亡(2015年2月25日NHKニュース)

浜松市の介護施設で23日、職員に介助されながら入浴していた85歳の女性が体にやけどを負い、25日になって死亡しました。
湯につかった際女性が「熱い」と訴えたものの、入浴が続けられたということで、警察は詳しい状況を調べています。
23日午前10時ごろ、浜松市北区都田町の介護老人福祉施設「第二九重荘」で、市内に住む影山スミゑさん(85)が職員に介助されながら入浴したところ、体にやけどを負い、25日未明になって死亡しました。
警察によりますと、介助していたのは40代の男性職員で、影山さんをいすに座ったまま持ち上げる機器を使って、1人で入浴させていたということです。
このときのお湯の温度について職員は43度ぐらいだったと警察に説明し、影山さんが「熱い」と訴えたと話しているということです。施設側によりますと職員は訴えを聞いたあと水を加えたうえで、数分間にわたり、入浴させたということです。
警察は遺体を詳しく調べて死因の特定などを急ぐとともに職員から話を聞いて、当時の状況について調べることにしています。

しかし記事を見る限りでは43度程度でただちに命に関わるほど深刻なやけどを負うものか?(低温熱傷だとするとこの温度では発症まで数時間はかかると言います)だとか、仮に43度どころではない高温であったのだとすれば介助する職員側もやけどをしていたのでは?と言った疑問もあるところで、何かしら他の事態が発生していた可能性もあるのかも知れないと言う気もします。
とは言え各媒体によって「女性が熱いと訴えたにも関わらず入浴させた」と報じられてしまったことは確かであり、当然ながら「こんな施設に身内を預けたくない」と言う意見も数多く見られる一方で、何であれ文句を言う認知症患者も多い介護の現場でいちいち言うことを気にしてはいられないと言う事情もありますから、なかなかに今後の再発防止対策を巡る判断にも難しいものがありますよね。
また今回の事件を見て「同じ日本人でさえこうなのに、まして言葉も通じない外国人だったらどうなのか?」と改めて感じた方もいらっしゃるかも知れませんが、実際に外国人介護スタッフを入れている施設においても利用者との意志疎通を巡る問題であるとか、国の求める水準での介護記録をつけることの難しさだとか、様々なトラブルがあるとは言います。
先日は国が在留資格として「介護」を新たに認める方針だと言い出したように、国策として「安くて優秀」な外国人介護スタッフを求める動きは加速してきているのは事実ですが、こうした動きは別に日本だけではなく外国人労働者の多いドイツなどでも同じ傾向であるようで、先日はこんな記事が出ていました。

中国人看護師はドイツに、月給は中国の5倍-ドイツメディア(2015年2月15日新華ニュース)

【参考消息】ドイチェ・ヴェレ12日付報道によると、ドイツは万で数えるほどの介護者不足問題を解決する必要がある。そのため、東欧、イタリア、スペインからのヘルパーは大歓迎を受けた。現在、ドイツ介護機構は2015年末までに中国人ヘルパーを150人を迎え入れることを決め、その中の50人はすでにドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州で働き始めている。

上記の中国人ヘルパーはすべて大学本科卒業生で、1年の看護経験を持つ。ドイツ経営者団体連盟(BDA)のシュテフェン・リッタースポークスマンは、彼らは介護者のアシスタントから始まり、月給は1900ユーロ前後となり、その後は2300ユーロに昇給すると語った。一方、北京市の正規の看護師の月給は500ユーロ前後だ。

業界関係者は、中国人介護者に頼まねば、ドイツの介護者不足問題を解決できないと示した。調査によると、2030年までに、ドイツは介護者を17万5000人新規増加が必要だ。どうすれば、介護分野に人が集まるかを考えねばならない。たとえば、更に高い給与を提供することや、介護改革計画を検討課題に入れることなどが挙げられる。

まさしく日本と同じような構図なんですが、注目いただきたいのはこのところ世間を騒がせているギリシアを始め国内雇用が十分でない国々と陸続きで、以前から外国人労働者を日本よりもずっと積極的に活用してきたはずのドイツにおいてさえ、こと介護職と言うことに関して言えばこれだけの自在不足を感じていると言うことで、はるか地球の反対側から人間を呼び寄せる必要があると言うのは驚きですよね。
2300ユーロ(30.8万円)と言えば単純計算で年収27600ユーロ(370万円)と言うところで、ドイツの平均労働者年収が31000ユーロ(415万円)であると言いますからやはり日本同様低めの水準とは言えるのだろうし、それも就労希望者が少ない理由の一端なのかも知れません。
ドイツの介護も日本と似た全員加入の介護保険が前提となっているそうですが、給付水準の低さに対して施設利用コストの高さにより経済的理由から介護を利用できず公的補助を必要とする高齢者が40万人存在すると言い、一部では介護コストの安い近隣諸外国へ高齢者の「国外脱出」も起こっているそうですが、興味深いのはポーランドなど近隣諸国の側でもこうしたドイツ人を目当てに介護施設を整備していると言います。
日本でもこのところ国が音頭を取って高齢者を大都市部から地方に移住させようと言い出していて、これが地方にとって姥捨て山扱いで迷惑なのか税収等メリットもあるのかと議論を呼んでいますけれども、今の日本では高齢者が一番多くのお金を持っていることを考えると、この際相続税も地方自治体に納めるようにすれば税収面から歓迎されるようになるかも知れません(とは言え、介護スタッフ不足は如何ともしがたいですが)。
先日は財務相の諮問機関から高齢化に伴い膨張を続ける医療や介護のコスト削減が提言されたと言い、深刻の度を増す財政再建のためにも社会保障全般の見直しが急務であることは明らかなんですが、一方で応分の負担をすることには抵抗感があると言うのであれば給付水準の切り下げを図るしかないのは当然で、要するに人材不足の遠因は利用者たる国民の側にもあるだろうと言うことなんでしょうか。

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コメント

安全のためにもう年寄りを風呂になんて入れられないね

投稿: | 2015年3月 6日 (金) 07時51分

高齢者施設においても医療機関と同様、いずれ機能評価だとかランキングだとか言う話が出てくるかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月 6日 (金) 12時57分

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