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2015年3月30日 (月)

危険を承知で行う行為での責任のあり方

先日こんな判決が出ていたと言うことで、著名人も巻き込んで議論になっていることをご存知でしょうか?

ファウルで失明、4200万円賠償は適当か 日ハム訴訟判決巡って賛否両論(2015年3月27日J-CASTニュース)

   プロ野球観戦中にファウルで失明した女性の訴えを認め、日本ハムなどに4190万円の賠償支払いを命じた札幌地裁の判決が、ネット上で賛否が分かれる議論になっている。
    「子供だったら、確実に命を落としていたような事故」「二度とこういう事故が起こらないようにしてほしい
   2015年3月26日の判決後、原告の札幌市在住の30代女性は、会見でこう求めた。

日ハム「防球ネットを張ると臨場感が失われてしまう」

   報道によると、事故は、10年8月21日の日本ハム対西武戦で起きた。女性は、札幌ドームの一塁側内野席で前から10列目に座って、夫や子供3人と一緒に観戦していた。家族の様子をうかがうために試合から目を離した直後、ライナー性のファウルボールがスタンドに飛び込んできて右目を直撃した。
   この事故で、女性は、右眼球が破裂し、右顔面の骨も折る重傷を負った。
   裁判では、女性側は、球団が臨場感を出そうと、内野席のフェンスの上にあった防球ネットを06年に取り外し、ファウルによる事故が年約100件も発生していたと指摘した。そして、「防球ネットなどを備えるべきだった」などと主張し、4650万円の損害賠償を求めた。
   これに対し、球団側は、観戦チケットの裏には、ファウルなどによる事故に責任を負わないと記されており、安全対策でも「大型ビジョンや場内アナウンスで注意喚起していた」などとした。そのうえで、女性が気を付けていれば直撃を回避できたと述べて、請求の棄却を求めていた。
   26日の判決では、札幌地裁は、「観客に常に試合から目を離さないよう求めるのは現実的ではない」と述べ、打球が女性の座席に達するまで約2秒しかなかったとも指摘した。注意喚起をしていたとはいえ、ドームの設備は安全性を欠いていたと述べ、原告の訴えをほぼ認めた。
   日本ハムは判決後、防球ネットなどを張ると臨場感が失われてしまうと懸念を示し、控訴を視野に検討する考えを明らかにした。

「テーマパーク化し、自己責任問うのは酷」との声も

   ファウルボールによる失明を球団側の責任とした札幌地裁の判決について、野球に詳しい識者らからは、様々な反応が出ている
   共同通信の報道によると、自民党の萩生田光一総裁特別補佐(51)は、日本ハムについて「気の毒」と同情を示し、「免責条項とかを作れないのか」との考えを示した。3月26日にあったスポーツ議員連盟の勉強会での発言だ。米大リーグでは、防球ネットはバックネット裏だけしかない球場が主流だとされており、萩生田氏は、「ファウルボールに当たると、その観客がブーイングされて出ていけ、といわれる。そのくらい『ボールを見ていろ』という文化が根付いている」と述べた。
   一方、米ニューヨーク拠点のスポーツマーケティング会社代表の鈴木友也氏は、ヤフー・ニュースに投稿した個人記事で、米大リーグでは、ファウルなどによる事故は、観客も危険を承知で来ているとして免責とされる場合が多かったものの、最近は変わってきていると指摘した。客が観戦に集中できないピクニックエリアなどにいるときは、球団側が敗訴するケースも出てきているというのだ。日本でも、スタジアムで酒類を提供したりイベントで女性客を取り込んだりするなどテーマパーク化しており、鈴木氏は、客の不注意を一概に責められない環境にもなってきたとしている。
   ネット上でも、札幌地裁の判決については、賛否両論になっている。
   支持する声としては、「ライナー性のファールを素人がよけるなんて無理」「酒売っといて注意してれば大丈夫とか通る訳ねえだろw」「全面ネットにすりゃいいじゃん」といった書き込みがあった。
   否定的な声も根強くあり、「内野席のファールだしな ちゃんと見てりゃ避けれる」「自己責任だろこんなん」「危険性の全くないところで観戦したいなら、テレビを観るべき」などの意見が出ている。

野球の歴史や文化に関して全く存じ上げないので、むしろボールに当たって怪我をした観客の側が非難されるような考え方があったとは知らなかったのですけれども、このあたりは自己責任と言う考え方の根強いアメリカ発祥のスポーツであり、野球愛好家が多く対応出来る客主体であり、経営的にも人気スポーツのため売り手市場的側面も強かったと言った理由もあるのかも知れません。
テレビで見ていますと日本でも試合中にたびたび「ファールボールにご注意ください」と言うアナウンスがなされているようで、少なくとも球団球場側としても危険性があることは承知していると考えられるからには何かしら対策を講じるべきでは?と素人目に思ってしまうのですが、文化的にネット等に対する拒否感もあると言うことですから、この辺りは観客側に周知し納得頂いた上で入場してもらうと言うしかないのかも知れません。
ただ記事にもあるように現状でそうしたリスクを皆が皆承知の上で入場しているかと言えば必ずしもそうではないのだろうし、まして注意をしていてもボールに対処出来る人ばかりではないでしょうから、少なくとも入場料から一定額を保険に回す等の事故対応くらいは取っておいた方がよさそうに思うのですが、この辺りも競技それぞれの歴史的経緯やファン心理もあることなのでしょうね。
一般的にはプロフェッショナルは素人たる一般人に対して相応の配慮を払うべきだと言う考え方の方が普通だと思いますし、裁判等ではその辺りが賠償責任として認定されるケースも少なくないと思いますが、「専門家なんだから素人に責任を負って当然」と言うのもどこまでが妥当なのか?と疑問を抱くケースとして、先日こんな判決が出たことが話題になっています。

積丹岳遭難死、二審も道警の過失認定 札幌高裁、賠償額1800万円に増額(2015年3月26日北海道新聞)

 後志管内積丹町の積丹岳(1255メートル)で2009年2月に遭難死した札幌市豊平区の会社員藤原隆一さん=当時(38)=の両親が、道警の救助に過失があったとして道に約8600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁(岡本岳裁判長)は26日、道に約1200万円の支払いを命じた一審札幌地裁判決を変更し、約1800万円の支払いを命じた。道は判決を不服として上告する方針

 判決によると、藤原さんは09年1月31日、スノーボードをしようと入山して遭難した。道警の山岳遭難救助隊は2月1日、藤原さんを発見したが、両脇を抱えて歩いている際に雪庇(せっぴ)を踏み抜き滑落。その後、救助用のそりに収容し、隊員交代などのためそりを一時的にハイマツにひもで結び付けたが、そりが滑落して藤原さんを見失った。藤原さんは翌日に発見されたが、搬送先の病院で凍死と確認された。

 判決理由で岡本裁判長は「救助隊は遭難者を発見した時点で救助義務を負う」とした上で、「そりをハイマツに結び付けた方法が合理的ではなく、隊員がそりから離れた間に滑落させた過失があった」と述べた。


山岳救助事故:札幌高裁 北海道警の責任大きく判断(2015年03月26日毎日新聞)

 北海道の積丹岳(1255メートル)で遭難した札幌市の男性が救助活動中に死亡した事故をめぐり、男性の両親が道に約8600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審で、札幌高裁は26日、道側の過失割合を引き上げ、1審・札幌地裁判決を約600万円上回る約1800万円の支払いを道側に命じた。道側は上告する方針。

 岡本岳裁判長は判決で、道警山岳遭難救助隊が男性を乗せた搬送用そりを一時的に固定した方法や、そばを離れた判断に過失があったと認定した。悪天候が予想されたにもかかわらず不十分な装備で入山した男性の過失も認めたが、過失相殺の割合を2012年11月の札幌地裁判決から引き下げた

 道警は「救助隊員は可能な限り救助活動をしたと確信している。今後の山岳救助活動への影響も懸念される」とのコメントを出した。

 1、2審判決によると、札幌市の藤原隆一さん(当時38歳)は09年1月31日、スノーボードをするため入山して遭難。救助隊が翌2月1日に発見し、担いで下山中に雪庇(せっぴ)を踏み抜いて滑落した。さらに救助中にそりの固定が外れて再び滑落。藤原さんは2日に発見されたが凍死が確認された。【三股智子】

当時の記事から抜き書きする限りでは、現場の状況と救助の経緯はこのような次第であったようですが、当初「スノーボード中に遭難した一般人を道警救助隊がミスで滑落させ死なせた」的な報道が為されていたせいもあってか、少なくとも第一報時点では道警批判の声が少なからずあったように記憶しています。

藤原さんは仲間2人と1月31日に積丹岳に入り、頂上付近からスノーボードをしていたがはぐれたため、無線機で頂上付近にビバークすると連絡していた。救助隊は1日朝から捜索し、同日正午頃、救助隊は1日正午ごろ、山頂付近で雪穴に簡易テントを張ってビバークしていた藤原さんを発見。
当時、現場付近は吹雪で視界は5メートルほど。風速約20メートルで気温は零下20度。藤原さんの意識がもうろうとしていたため、5人の隊員が交代で抱きかかえて下山していたところ、藤原さんと3人の隊員が雪庇(せっぴ)を踏み抜き、約200メートル下に滑落した。現場は山頂と9合目の間の南側斜面、斜度40度の急斜面
3人の隊員は自力ではい上がったが、藤原さんは意識がもうろうとした状態で自力歩行が困難だったため、救助隊はソリに収容、約1時間かけて尾根の方向に50メートルほど引き上げた。しかし、隊員の疲労も激しくなり、隊員を交代するため一時的にソリを近くにあった直径約5センチのハイマツに縛って固定したところ、樹木が折れてソリが滑り落ち、藤原さんは再び行方不明となった。
当時は降雪で視界が悪く、救助隊は捜索を中断。2日朝から捜索を再開し、午前7時40分、標高約1000メートル付近の斜面でソリに乗った状態の藤原さんを発見、札幌市内の病院に搬送したが、死亡が確認された。

零下20度で強風が吹き荒れるような場所でスノーボードをやるものなのかどうか何とも判断しかねるのですが、当時は朝から吹雪模様であったそうで、そんな中で早朝に登山を始めて昼過ぎに山頂に到着したと言いますから登るのにも難渋したのでしょうが、ここから同行者二人は先にスキーで下山し、被害者である藤原さんだけはスノーボードで下山中に事故にあったと言うことです。
そもそも何故こんな時に山に入ったのかと言う根本的な疑問は置くとしても、視野も得られない吹雪が続く極限状態で救助する側も身の危険を感じるような状況ですから、通常であれば二次被害も恐れて捜索中止になっていてもおかしくなかったと思うのですが、無理をして何とか救助しようと奮闘努力した結果案の定とも言える事故が起きた、その結果死亡に対して責任ありと認定されてしまったと言えそうですね。
当時一審の裁判経過に関してはこちらの口頭弁論なども参照頂ければと思いますが、事件の詳細が知られるにつれ登山関係者以外の一般市民からも「これでは山岳救助に支障が出るのでは」と危惧する声も出る中で賠償判決が出たことまではともかくとして、今回注目すべきなのは二審においてさらに道警の過失を重く認定し賠償金額を高く引き上げると言う判断が下されたことでしょう。
自らリスクを承知であることを前提として成立していると言う点では、冬山登山などは先の野球場における事故よりもさらに自己責任の概念が広く定着していると思いますし、これが例えば捜索隊によって発見された時には亡くなっていたと言うのであれば訴訟などには至っていなかっただろうと想像すると、良きサマリア人法的観点からも釈然としない判決と言う気がします。

医療訴訟頻発によって防衛医療が定着した経緯を考えると、自らの命をかけてでも一刻でも早くと言う救助隊の決意に何らかの影響を与え得る判決であるのかも知れませんが、こうした公務員相手の場合個人の責任は問われることがないと言う点が今回少し救われるところでしょう。
ちなみに山岳救助では一般に高い費用がかかると言われていて、登山を志す方々は是非山岳保険に入っておくべきだと強調される所以なのですが、興味深いことに警察など公的機関による救助活動は業務予算の範囲内で行われると言うことになっている建前であり、救助費用の請求は為されないのだそうです。
この点に関しても以前から様々な意見のあるところですが、近年遭難しても携帯電話等で気楽に連絡がつけられると言う安心感からか安易に救助を要請すると言うケースも増えていて、大々的な救助隊を編成し捜索をしている最中に本人は自力下山してきたと言う話もしばしば見られることから、自分で望んで山に入った人間なのに全額無料でと言うのはどうなのかと言う意見も根強いようです。
もちろん自力下山出来るような危険性の低い場合であれば笑い話で済むのかも知れませんが、救助する側も一歩間違えば命の危険がある中で精一杯の活動をしているのに何の見返りもないどころか、一歩間違えば裁判沙汰となれば率直に士気も萎えるのでは?と懸念されるところで、民事とは言えこうした裁判自体が今後も「極めて異例なもの」であり続けて欲しいと願うのは自分だけでしょうか。

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コメント

スノボ事故親の上から目線すごいな

投稿: | 2015年3月30日 (月) 07時57分

いいかげん分別もつく歳だろうに無茶したもんだなと言う感想ですが。>スノボ
でも野球場にネット張ってないのにそんな深い理由があるとは知らなかったな。
球場観戦してるファンはみんな平気でパシパシキャッチできる人ばっかなんですかね?

投稿: ぽん太 | 2015年3月30日 (月) 08時23分

>スノボ事故親の上から目線すごいな

全国のスノボファンはこのクソ親を○すべきだと思う。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年3月30日 (月) 09時18分

野球の件は、賠償責任保険の保険料負担を誰が負担するべきか?という問題だけだと思います。野球場が保険に入って、ある程度賠償しろ、という流れになるのでしょう。
しかし、雪山救助の件は、本質的に異なりますよね。警察が入山料取っている訳ではありませんし、二次災害ギリギリまで努力した跡が見られます。これは、最高裁まで控訴して欲しいです。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年3月30日 (月) 10時52分

スノボ事件については正直釈然としない判決であると言う気持ちが否定出来ないのですが、本格的な登山家ではないからこそ起こった事件であり裁判であったと言うことなのかも知れません。
様々な意味からも二度と繰り返して欲しくないケースなのですが、十分に教訓としてくみ上げられているかと言う視点で見ても警察が未熟だった、努力不足だったで終わらせてはいけないと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月30日 (月) 12時38分

2010年、札幌ドームでプロ野球の試合観戦中にファウルボールが当たり、30代女性が右目を失明した。
この事故を受け、主催の北海道日本ハムファイターズと球場を所有する札幌市などに対し4200万円の支払いを命じた裁判が、海外でも話題となっている。

判決では裁判長が「内野席の防球ネットなどの安全設備を設ける必要がある」と指摘しているが、この裁判と判決に海外の野球ファンは驚いたようで、
SNSには「アメリカでは野球観戦で気をつけるのは本人の責任になる」「(失明した人にとって)悲しい出来事ではあるけど、これも野球の一部」といった意見が寄せられている。

ほかにも「場所とタイミングが悪かったとしか言いようがない」「どこにいても何かしらの危険があると思う」と、
原告の不運を指摘する声、「日本人もアメリカのように訴訟好きになりつつあるとしたら残念」など、やや否定的な声も寄せられている。

日本と同じく野球人気の高いアメリカのネットユーザーは、「文化の違い」を感じたようだ。

2015年3月30日 20時22分
http://news.livedoor.com/article/detail/9949992/

投稿: | 2015年3月31日 (火) 19時50分

自分の楽しみのために山に入っておきながら、助けに入った側に賠償を求める姿勢に強い憤りを憶えます。
登山を趣味としなくても、北海道の冬山しかも悪天候の状態の危険性は現地の人間であれば中学生でもわかります。
起訴を起こした両親は「二度と息子のような犠牲を出さないでほしい」との思いで起訴に踏み切ったようですが
それならば、悪天候の冬山の危険性をスノーボーダーに周知したほうがずっと筋が通っていたのではと思ってしまいます。
今後の山岳救助のあり方に強い不安を抱きます。

投稿: | 2016年12月 1日 (木) 20時17分

今どき説明と同意をきちんと文書で残しもしないで勝手に救助するなんてありえない

投稿: | 2016年12月 1日 (木) 21時54分

そもそも原因を作ったのは息子なのに、救助隊のアラを探して賠償金を8600万円も請求している遺族が浅ましいと思う。
この愚息にしてこの親あり、といったところか。
こんなメンタリティが蔓延したら嫌。

投稿: | 2016年12月 2日 (金) 22時16分

この時、救助に行った隊員5名全員手足に凍傷を負ってるんだよね。
要救助者は自力歩行も困難なほど低体温症に陥ってたから、救助を急がなくちゃいけない状況だったんだろうな。
雪庇を踏み抜くなんて登山のプロでも時々ある事故だと思うんだよな。
親の言い分を聞いてると無性に腹が立ってくる。
お前のところの愚息のせいで5人もの命が危険に晒されたんだぞ!って思うわ。
この息子にしてこの親ありなんだと思うが…。
もう好きで冬山に登った奴なんて助けなくて良いと思う。

投稿: | 2016年12月 4日 (日) 21時51分

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