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2015年3月11日 (水)

東日本大震災の教訓

本日はまさしく東日本大震災の起きた日で、数多の犠牲者のご冥福を改めて祈りたいと思いますけれども、その一方で必ずしも見過ごしに出来ないこんな問題が改めて発覚していると言う気になるニュースから紹介してみましょう。

要避難名簿、3割超が提供せず 個人情報保護を理由に(2015年3月10日中日新聞)

 東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県で、災害対策基本法に基づき、災害時の避難に助けが必要な障害者や高齢者らを事前登録する名簿を作った自治体の3割超が、民生委員や自治会など外部の支援者に情報提供していないことが10日、分かった。

 個人情報保護が主な理由だが、緊急時の支援の実効性に疑問符が付きそうだ。災対法は外部提供の義務付けまではしていないが、内閣府は「平時から提供した方がいいことは明らか」としている。

 大震災で自治体が持つ要支援者情報が活用されず、犠牲者が増えた反省から、国は名簿作成を義務付け、事前提供を促している。

この個人情報の保護と言う問題に関しては、以前から地域内で問題のある家庭に周囲が立ち入ろうとしても情報提供がなされないだとか平時からその運用の限界が知られてきたところですが、平時においてすらそうであれば役所の機能も崩壊する非常時にあってまともに機能するはずもないとは予想出来るところで、結局は広い意味での利便性との折り合いをどう付けていくかと言う問題ですよね。
ただ周囲や第三者の目線から見てどれほど必要性が高かろうが、現状では当の本人や家族が「これは個人情報の流出ではないか」と騒ぎ立てればそれが通ってしまう以上運用に慎重にならざるを得ないのは当然で、国も「平時から提供した方がいいのは明らか」などと言わずに明文化されたルールを整備していただかないことには、自治体や地域住民が大きな不利益を被ることになりそうですよね。
いずれにしてもこうした教訓が今も次々と組み上げられていくのはよいことだし、今後それに対してどのような対案を打ち出していけるかが生き残った我々の使命であるとも言えるところなんですが、ともすれば崩壊しかねない災害時の地域住民の把握と言う問題に関して、こういうアプローチをしている自治体もあると言います。

選挙システムで避難者情報 千葉・船橋市が実証実験、情報入力…一元管理(2015年3月10日産経新聞)

 東日本大震災の教訓を受けて船橋市は9日、有事の際の避難者情報を、選挙用の「期日前投票システム」を活用して集約する実証実験を24日に行うと発表した。避難所で情報を入力して一元管理するもので、家族が別々に避難した場合でも情報を入手できるほか、負傷して病院に運ばれても、家族らが搬送先を知ることができる。全国でも初の試みという。

 災害対策本部が避難者の実情に応じて支援物資を効率的に搬送できる利点もある。市選管事務局は「避難所は分散しており、情報が混乱しやすい。期日前投票システムを活用すれば、避難者情報を一元化して集約できる。個人情報提供のやり方や無線によるネットワーク確立などの課題を解決すれば、全国の自治体でも活用できるのでは」と説明している。

 市選管事務局は選挙用のパソコン150台を所有しており、災害時には市職員がこれらを市内132カ所の避難所に持ち込む。選挙では選挙人名簿のデータを元に期日前投票所で投票状況を確認するが、代わりに住民基本台帳のデータを活用。避難者の情報を入力して一元管理する計画だ。

 訓練は同市高根台の市立船橋特別支援学校に避難所を設け実施する。障害者や高齢者ら災害時要援護者の避難・移送訓練も行う。4年前の東日本大震災の際、同市では57カ所の避難所に約5480人が避難した。多くは帰宅困難者だった。

もちろん投票システムの目的外使用と言うことではあるのですが、現実的に即応性がある既存のシステムとしてこうしたものが利用できると着目した点は優れているし、毎回の選挙のたびに機械と回線を用意して各所に設置しているのですから扱う側も慣れているだろうしで、これは全国どこででもすぐに応用が利きそうなアイデアだと思いますね。
そもそも震災時には住民データを未だ紙で処理していた自治体も多く、元データが物理的に流出してしまうと修復が事実上不可能であると言う思いがけない脆弱性が今さらながらに指摘されたわけで、大規模災害において一刻も早く情報を取り出さなければならない時に倉庫から古い伝票の束を持ち出してきて一枚一枚確認しているのでは間に合うはずもありませんから、まずは最低限電子化と言うことが
将来的にはこうした間に合わせ的な運用から、例のマイナンバー制に基づいた住民情報の一元管理と言うことが各方面で進んでいくことになるのでしょうが、これも震災を契機に元データが失われるような事態に遭遇しても困ることのないようクラウド化しようだとか言う話も出てくるはずで、そうなると当然ながら「もし個人情報が流出したらどうなるのか」と厳格な管理を求める声も今以上に強まっていくことでしょう。
利便性と個人情報保護は表裏一体でどこまで許容されるべきか判断の難しいところがありますが、例えば役所からこれこれの場合に情報を開示してもいいですか?と個別に問われたとして、それがもっともだと思える状況であれば拒否する方もそう多くはないでしょうから、各自治体は労を惜しまず早めに市民の意志確認をしておいた方がいざと言う時に困ることが減るかも知れませんね。

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コメント

個人情報保護法:人種や信条は特別配慮 改正案を閣議決定

毎日新聞 2015年03月10日 22時03分(最終更新 03月11日 01時48分)
 ◇「匿名加工情報」、本人の同意なしに第三者提供が可能に

 政府が10日に閣議決定した個人情報保護法改正案は、個人が特定できないように情報を加工したデータについて、本人の同意がなくても第三者に提供することを可能にした。一方で人種や信条などを「要配慮個人情報」と位置づけ、特別な保護の対象とした。

 個人情報保護法改正案を巡っては、購買履歴など個人の行動に関する「パーソナルデータ」を蓄積する事業者が、本人の同意なしにデータを第三者に提供できる仕組みについて、検討が進められた。改正案では、個人を識別できる情報を削除したデータを「匿名加工情報」とし、本人の同意なしに第三者への提供ができるとした。

 匿名加工情報を第三者に提供する事業者には、そのことを公表するよう義務付けた。提供を受けた側が、個人の特定を目的に、他の情報と照合することを禁止した。

 人種、信条や前科・前歴など差別や偏見につながるおそれのある情報を「要配慮個人情報」として新たに定義し、取り扱いの制限を他の情報より厳格にした。

 個人情報を扱う事業者を監督する「個人情報保護委員会」は、消費者団体や民間企業の関係者、学識経験者ら9人で構成。事業者への立ち入り検査や指導、命令などの権限を持つ。同委員会は、個人情報を匿名加工する基準の策定も担う。

 個人情報の保護を強化するために創設する「データベース提供罪」は、不正な利益を得る目的で情報を提供したり、盗用したりする行為を処罰の対象とする。罰則は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」とした。

 データベース提供罪は、2014年7月に発覚したベネッセの情報漏えい事件が契機となった「名簿屋」対策の一環。個人情報を受け取った者は、提供した者の名前や情報を取得した経緯を記録し、一定期間、保存することを義務付けた。

 これまでは5000人を超える個人情報を保有する事業者のみが同法の規制対象だったが、5000人以下でも規制対象となる。【本多健】

投稿: | 2015年3月11日 (水) 07時38分

悪用する人間はどこからでも情報とってきますよねえ。
もうメリット優先で判断するしかないかも知れないですが。

投稿: ぽん太 | 2015年3月11日 (水) 08時13分

例えば子供会の新入生の入会案内。
うちのところの校区は古いところだから、地の人間が半分以上。
なので、本来は個人情報保護法で教えることはできないのだがの前置きとともに、
子供会の会長はこっそりと自町の新入学児童の名簿はもらえます。
新興住宅地なんかどうなるんだろうか?

こんな古いところでも、学校で名簿は作らないので、他町の子供の友達の家がどこなのか
電話番号すらわからないので、連絡取れません。

この20年ほどは、ごく一部の人を守るために大勢が不利益を被るような動き(法律とかも
含め)が多すぎ。

近くの駅でも、車いす用のスロープを造るために、ホーム間の渡り通路を撤去したため、
反対方向の人は開かずの踏切とかで、いらいらしながら待たないといけなくなった。
車いすの利用者なんてこの30年見たこと無いんだけど。

建前で言われると誰も反対できないから、どんどん住みにくくなってきますね。

投稿: | 2015年3月11日 (水) 10時06分

緊急連絡網が機能せず困っていると言う話は聞くのですが、それに対して法的に改善できるところはした方がよさそうな気がします。
クレームが入ってどうこうと言うケースが多すぎるだけに、現場の運用で何とかするのは事実上不可能でしょう。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月11日 (水) 12時28分

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