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2015年3月 9日 (月)

科学・医療としては似非でも別方面から見れば本物?

いわゆるイスラム国に関わる最近の報道などを見ていると欧米では宗教戦争的な状況に陥りつつある感もあって、現代の日本ではあまりこうした宗教に関わる問題が発生しないことに胸をなで下ろしている方も多いかと思いますが、日本人が信仰心、宗教的関心が低いかと言えば必ずしもそうとは限らず、単に特定の宗派だけに帰依して他宗派を排除する一神教的考え方に囚われていないだけだと言う考え方もあるようです。
そう考えると日本人にとって最も普遍的な宗教的感覚とは原始的な多神教の面影を残す神道なんだろうなとも思うのですが、そもそも宗教とは何か?と言うことに関しても様々な定義があって、一部の新興宗教などは信者獲得にあたって「うちは宗教ではないですから」などと言うからややこしいもので、伝統的宗教が目立たなくなったかわりに何かしら宗教的側面を持つものが身近に存在しているのが現代社会の特徴であるのかも知れませんね。
一方で日本では宗教や信仰と言う言葉は言ってみれば非科学的なものに対する婉曲的否定的な表現としても用いられる場合があり、医療の世界においても有名な丸山ワクチンを始めとして果たしてこれは科学なのか?と疑問視されるものには事欠きませんが、近年様々な文脈で取り上げられる機会が多いのが慶大病院講師としてご活躍中のあの方に関する話題でしょうか。

「子宮頸がんは放置していい」に産婦人科医から非難殺到! 宋美玄氏に聞く、ニセ医療に騙されない方法(2015年3月2日ウーマントピックス)

ちまたに蔓延するニセ医療、ニセ健康法、ニセ美容法……これらに「待った!」をかける書籍が、昨年からにわかに増えています。『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』(宋美玄著、講談社)、『「ニセ医学」に騙されないために―危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(NATROM著、メタモル出版)などがそれにあたり、情報過多の波に翻弄され、おぼれかかっている私たちのために、つかまるべき丸太を投げ入れてくれています。

    医師・近藤誠氏の説は「がんは切らないで放っておけば自然に治る」

そんな中、今冬発売された『もう、だまされない! 近藤誠の「女性の医学」』(近藤誠著、集英社)が話題になっています。著者の近藤氏は慶應義塾大学医学部において、がんの放射線治療に長らく携わってきた医師。
本書では、

    ・子宮頸がん検診でがんを早期発見、早期治療することが不妊につながる
    ・それゆえ、検査も治療も受けないほうがよい
    ・放っておけば自然に治る(放置療法)
    ・乳がんのマンモグラフィ検査も受けないほうがよい
    ・なぜなら、切らなくてもいいがんまで手術で乳房ごと切り取られるから
    ・それはひとえに、医者が手術をしたいがゆえ。そうしないと医師は仕事がなくなってしまう …………etc.

こうして「医療の常識をくつがえす」説が次から次へとくり出されます。自分がこれまで知っていたのとは正反対の事実を突きつけられると足元をすくわれたような気になり、「いままで信じていたのは何だったの!?」と衝撃を受ける内容になっています。しかし、これに対し、産婦人科医の宋美玄氏は異論を唱えています。そこで、本書の何が問題なのか、宋氏にお話を伺いました。

    子宮頸がんを放置すれば命に関わってくる

――近藤氏は2012年の『医者に殺されない47の心得』(アスコム)がベストセラーになり、患者のことを何も考えていない医療からいかに自分の身を守るかということを声高に発信しつづけています。宋先生は本書をどう読まれましたか?

宋美玄さん(以下、宋):『医者に殺されない~』から近藤氏の説は変わらないので、私も含めた医者の反応は「またか」といったところです。今回は女性の病気に焦点をあてていますが、がんの放置をすすめるなど内容は既刊本とほとんど変わりません。ただ、今回は子宮頸がんに対する主張に明らかな誤りがあるため、看過できませんでした。

――先ほどあげた「子宮頸がんは放置していい」という独自見解のほかに、子宮頸がんの前段階である「異形成」が見つかり、なおかつ子宮体がんも見つかっているのに、そこから8年以上放置治療している女性の例も紹介されています。

宋:子宮頸がんは、20~30代の若い世代に急増しているがんですが、予防できるものであり、早期発見して早期治療できれば、最悪の事態はまぬがれ得る病気です。それを放置していいと勧めるのは、たいへん罪深いことです。子宮や卵巣の摘出にとどまらず、命に関わってきますから。
私の周囲の産婦人科医は口をそろえて「近藤氏は子宮頸がんで苦しみながら亡くなっていく患者さんを診たことがないんだろうか」と嘆いています。おそらく今後も診ることないでしょうし、その主張を信じて放置した女性がどのような最期を迎えても責任を取ることはないのでしょう。それなのにこうした発言をする思考回路は、私たちには理解できません。

    近藤氏の発言に怒っている医師は数えきれないほどいます

――近藤氏はいろいろな文献を提示しながら、「放置」を主張していますが……。

宋:海外の論文のなかから、自分に都合のいい論文や、すでにそれを否定する新たなデータが出ている論文をピックアップして引用している、と指摘されています。私たちにとっては根拠がないに等しくても、「えらい先生がいっているから」と洗脳される人は一定数いますよね。いったんそうなると、ほかの医師が懇切丁寧に説明しても聞く耳を持ってもらえません
病気になった人が洗脳されているのも困りますが、本人は治療したがっているのに、配偶者や家族が放置を希望するため治療を受けられない、という事態も起きています。近藤氏の発言に怒っている医師は数えきれないほどいます。
(略)
宋:どんな職業でも不心得な人が一部いるものですが、医師の世界も同業者として首をひねってしまう倫理観の持ち主や技術不足の医師がいるにはいます。でも、それをもって医者全体を「モンスター集団」とするのは飛躍にもほどがあり、見識が低いとしか思えません。癒着も同じく、医療界にかぎらず「まったくない」と断言できるところはほとんどないでしょう。ただ、自分がお金で動く人は、他人のこともお金だけで動いているように見える、ということだと思います。
(略)
身体に関しては、医師の洗脳があったとしても、最終的には自己責任になってしまうので、自分のためにそれを実践してほしいですね。女性たちよ、近藤本をはじめとする医療否定本の餌食になるな! と力をこめていいたいです。

近藤氏に関しては各方面に熱心な信者…もとい、賛同者がいると言うことは以前にもお伝えした通りですが、それほど近藤理論が人口に膾炙することになってしまったのも提唱初期に「まさかこんなものを本気にする人間はいないだろう」と医療界が高をくくって放置したからだと言う反省の声もあって、逆説的に病巣を放置せず正しく初期対応することが重要であると言うことを再認識出来たと言えるのかも知れません。
近藤氏については実際に初期の乳癌を放置した結果当然ながら進行し亡くなってしまったと言ったケースもあり、「当たり前の治療をしていれば助かっただろうに」と言う声も根強いのですが、本人や家族が情報を知った上で納得し決断したことであれば仕方がないのでは?と言う意見もあって、その背景には例えば乳癌に関して以前の日本では乳房全摘術が主体で患者の心理的ハードルが高かったことも関係あるかも知れません。
その点で興味深いと思ったのは一昔前には日本でもやっと乳房温存手術が広まり患者家族が喜んでいると言っていたものが、さらに時は流れ乳癌切除後のインプラントによる乳房再建が保険適用になったこともあり、今や再び全摘術が温存術を上回るようになったと言う話で、かつて全摘術批判で名を知られることになった近藤先生としても日々移り変わっていく医療の変化に色々と感じられることも多かろうと思いますね。
いささか近藤先生の話が長くなりましたが、先日は以前にも取り上げたことのある「ズンズン運動」の施術者が逮捕されたと言うニュースが世を賑わしていましたけれども、これなども興味のない人間からすると「こんなあからさまに怪しいものに何故?」と疑問符がつくところでしょうが、実際にその場にいれば思わず「入信」してしまいかねない巧妙な商売が成されていたと言います。

「ズンズン運動」で乳児死亡、容疑のNPO元理事長を逮捕(2015年3月4日TBS)

 赤ちゃんの命を奪った危険なマッサージは、15年間も放置されていました。これでお金をとっていたというのですから、親の思いにつけこんだとしか思えません。

 業務上過失致死の疑いで逮捕されたのは新潟県上越市のNPO法人「キッズスタディオン」の元理事長・姫川尚美容疑者(57)です。警察によりますと、姫川容疑者は去年6月、大阪市内で行ったセミナーで、危険性を認識しながら神戸市の生後4か月の男の子をうつぶせの状態で、首の動脈や胸や腹を繰り返してもむなどして窒息状態に陥らせ、死亡させた疑いが持たれています。
 「できるだけ赤ちゃんの体をまっすぐに育てることを意識すると、赤ちゃんがすくすくと育っていく」(姫川尚美容疑者・NPO法人のDVD映像)
 乳幼児の母親たちを前に、自ら考案したという施術方法を実演する姫川容疑者。その施術が、「ズンズン運動」です。赤ちゃんの体を揺さぶることで、アトピー性皮膚炎やダウン症に効果があるとうたい、1時間1万円で施術していたということです。
 「ズンズンという揺らぎと共にこのだっこをすると、宇宙につつまれた私たちの体の成長を感じて生きていける」(姫川尚美容疑者・NPO法人のDVD映像)
 他にも、赤ちゃんの首を90度以上ひねったり、背中を海老ぞり状態にする施術を行っていました。姫川容疑者をめぐっては、過去にも施術を受けた別の幼児が死亡する事故が起きています。

 逮捕前のJNNの取材に対し、姫川容疑者は、およそ15年前から6000人以上に施術したと説明。逮捕容疑となった男の子の死亡については、施術が原因ではないと話していました。
 「『ズンズン運動』といって、体を揺する運動を中心にしていましたから、『窒息の疑いがある』と言われましたので、(その可能性は)ないと断言したい」(姫川尚美容疑者)
 では、首をひねっているように見える写真について尋ねると・・・
 「大きく首をひねったり、曲げたりしているつもりはない。赤ちゃんが自分の向きたい方向に首を向けることはある。私の手がくっついていくという動作はある。皆さんに気持ちがいいという回答をもらって続けてきた。体験オンリーです。私が医学的な知識があるわけでもなし、顔を見て、この子がどうだと病状を把握できる能力があるわけでもない。私のできる範囲の中で、最大限やっただけ」(姫川尚美容疑者)
(略)

「ズンズン運動」で乳児窒息死 NPO女性理事長の稼ぎっぷり(2015年3月7日日刊ゲンダイ)

 なぜ客を集められたのか、不思議だ。「ズンズン運動」と称した首をひねる怪しげなマッサージで生後4カ月の男児を窒息死させ、業務上過失致死で大阪府警に逮捕された新潟県上越市のNPO法人元理事長、姫川尚美容疑者(57)。
 姫川容疑者の施術は医学的根拠がないのに1時間1万円と高額。ズンズン運動で意識を失うなど、体調がおかしくなった乳児は他にも複数いたにもかかわらず“客”が絶えなかったというから、驚く。
「約12年間で6000人以上の乳児を施術していたといいます。『免疫力を高め、アトピーに効果がある』などとうたって集客し、『大学教授から免疫学の裏付けを得ている』などとウソの説明で信用させていた。カルト集団の教祖のように口八丁手八丁、施術に訪れた客をスタッフで囲むなどして、抜け出せない雰囲気をつくっていたそうです」(捜査事情通)

■ブログでは「月収25万円」

 姫川容疑者のブログなどによると、姫川容疑者は広島県出身で、2男3女を育ててから、2003年にNPO法人を設立。新潟以外にも東京や大阪にサロンを開くなど手広くやっていた。書籍やDVDを販売したり全国で講演も行っていたという。
 姫川容疑者本人はブログで、「指導料などはNPO法人の資金で、事務所やスタッフの費用にあてられてきた。私が受け取るのは月に25万円」と清貧をアピールしていたが、にわかには信じがたい。
「NPO法人の一昨年の事業報告書によると、経常収益は約2800万円です。単純計算で、この12年間で3億3000万円以上稼いだことになる。書籍の印税を合わせれば、もっとでしょう。実際に施術するのは姫川容疑者だけ。少人数のスタッフは“お飾り”みたいなものだったそうですから、ひとりでガッポリでしょう」(前出の捜査事情通)
(略)

問題の首ひねり行為に関してはネット上で幾らでも画像が検索出来ますので見ていただければと思いますけれども、医学的知識のない人間が素人目にも怪しげな行為をしてこれだけ売り上げがあるのですから世の中今も埋もれた顧客需要は大きいと見るべきなのか、ともかくも本や講演など様々な方面での露出も多かったと言いますからずいぶんと商売上手な方ではあったのでしょうか。
いわゆる似非科学に関しては日本においても先年レメディーなる砂糖玉を舐めさせるホメオパシーが死者を出す騒ぎを起こしていましたが、あれなども国外で相応に広がっているからこそ検証の機会も多く全く効果がないことが明らかになったとも言え、片田舎でひっそりと行われているローカルな民間療法に関して専門家がエビデンスを元に有効性を検証すると言うことはちょっと考えにくいことですよね。
科学的裏付けがないから効果もないのだろうと考える方はそれでいいですが、そこで「科学によってもこの効果は否定出来ない」と言う方向に解釈してしまうと言った者勝ちの世界になってしまいますから、この種の似非医療行為に関しては厳しく取り締まるべきだと言う一方で、あまり厳しく規制を行い過ぎると愛用者の多いあんまやマッサージであるとか伝統的民間療法なども全て禁止になりかねないと言う弊害もあるわけです。

こうした根拠のはっきりしない民間療法などは規模の大小こそあれどこの町にでもあるもので、その大部分はたいした効果もなさそうだけれどもまあそう大きな害もないのだろうと見なされているし、お金を出してやってみたいと言う人がいるなら好きにすればいいんじゃないかと言う程度の認識でいわば黙認されているのが現状で、たまに重大な健康被害が起こるとこうしてニュースになるだけで実際には連綿と続いてきたものではあるわけです。
死者も出ている以上有害性は明らかだと言われれば確かに100%安全とは言えないのも事実でしょうが、医療の世界において治療の副作用であるとか治療中の不詳の原因によって患者さんが亡くなったり重大な障害を負うと言うのは決して珍しい話ではありませんし、それが日常的に紛争化しているからこそ医療事故調などと言うものの必要性が唱えられているわけで、結果責任論の追及は医療側にとっては諸刃の剣とも言えますよね。
そうは言っても何らの科学的根拠もなしに好き放題やっているのは困る、業界団体なりを作って自主規制しろと言うのが国にとっては判りやすい管理法でしょうが、ホメオパシーの例にも見られるように業界団体自体がいわば信者の巣窟であればそんな団体公認であることにどれほどの安心感があるのかで、せいぜい業界統一価格でぼったくりを排除出来ますだとか税収的な透明性が多少増すだとか言った副次的な効果しかないのかも知れません。
そう考えるとホメオパシーを放置せずに敢えて保険診療に組み込んでしまったイギリスのやり方も(外聞はともかく)実はかなり賢いやり方だったのでは?と言う気もしてくるし、その結果か近年ホメオパシーへの公的医療支出が激減し退潮傾向が明らかであるとも聞くのですが、未だ解消しない柔整問題などを見ている限り日本でこの種の方法論を採ることはかなりのリスクも伴いそうではありますよね。

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コメント

近藤先生の場合放射線科なのも反感買いやすい理由ですかね。
お前どうせドロドロの末期癌患者の相手したことないだろって言う。
以前はともかく今は変に権威になってしまって弊害の方が大きい気がしますが。

投稿: ぽん太 | 2015年3月 9日 (月) 08時43分

>あまり厳しく規制を行い過ぎると愛用者の多いあんまやマッサージであるとか伝統的民間療法なども全て禁止になりかねない

禁止されるって事は効果がないって事なわけで別に構わないのでは?
*まあ私もマッサージは好きなんですがw

前も書いたような気がするんですが、個人的には医療系の詐欺は強盗殺人と同様死刑も考慮に入れるべきかと思います。結果は一緒なんだしw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年3月 9日 (月) 10時49分

疑似医療でこんだけ儲かるなら普通の医者も上手くやれば相当儲かるんじゃないかな?
保健治療は規制が厳しいから駄目だろうけど
怪しい自由診療にシフトするとか例えば癌免疫治療だとかビタミン点滴だとか

投稿: | 2015年3月 9日 (月) 10時58分

>疑似医療でこんだけ儲かるなら普通の医者も上手くやれば相当儲かるんじゃないかな?

一般的な医者にとっては、それが儲かるかどうかよりもそれが効くかどうかの方が肝心なのです。

投稿: クマ | 2015年3月 9日 (月) 11時28分

↑保険診療で食えている間は敢えて危ない橋を渡るアホンダラはごく少数派に留まるかと存じますが、これ以上締め付けると…ねえw?

疑似医療でタイホされる奴って大概医師法違反か薬事法違反なわけで、医師免許さえあればそのへんはほぼクリア出来るんですよねぇw?先に絶賛食い詰め中の量産型弁護士とタッグを組めばwwうはwwwオレ様丸儲けwwww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年3月 9日 (月) 11時40分

おっしゃる通りで、医療のモラルが何とか保たれているのも医師が金勘定に鈍感で算術に疎いからと言うことはあるように思いますね。
銀行員なども楽して高給取りのような言われ方をする(実際には忙しいそうですが)ことがありますが、他人の財産に責任を持つ仕事をしている人間が日々の生活にも事欠くようではお金を預ける側も不安でしょう。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月 9日 (月) 12時38分

KOは、信濃蝶派閥の積極的に先進治療をする人達と免疫力信仰のコマザワ派閥がいます。

投稿: | 2015年3月 9日 (月) 16時57分

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