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2015年3月 3日 (火)

新型うつ病なお増加中、だそうですが

以前にも紹介しましたように一方にブラック企業問題あり、他方に新型うつ問題ありと労使双方の観点から問題提起されているのが近年の労働現場ですが、特にこの新型うつを巡っては様々な社会保障を悪用?しようとする方々が好んで診断を受けたがる便利な病名になっていると言う指摘もあって、聞くところによれば病院でそれと診断を受けるためのノウハウまでもが絶讚拡散中なのだそうです。
そもそも新型うつと言う病名自体も議論の余地無しとしないところだそうで、正しく診断出来る医師が3人に1人だとか、中には新型うつなどと言う病気は存在しないと主張している先生もいらっしゃるようなんですが、とかく「なまけ病」などとも言われがちなこの病気を巡って、先日こんな記事が出ていました。

新型うつ急増の背景に“にわか精神科医”が診断書の乱発か(2015年2月9日DMMニュース)

「いま、顧問先企業の管理職の頭を悩ましているのが、うつ病の診断書を持ってきて休職を願い出る社員の増加です。確かに勤務中は落ち込んだ様子ではあるものの、オフの時間になると途端に元気になる。それを見ていると、病気のようには思えないといいます。しかし、コンプライアンス(法令順守)が厳しく問われる時代になり、診断書を突きつけられると休職を認めざるを得ないのが現状なのです。いっそのこと、会社が指定する精神科医でセカンド・オピニオンを受けるように指示できたらいいのですが……」
 こう語るのは労務関係に精通したベテランの女性弁護士だ。
 少し古いデータになるが、厚生労働省の「患者調査」によると気分障害を含めたうつ病の患者数は1996年に43万3000人だったものが、2008年には2.4倍の104万1000人へ急増している。自分の職場のなかにもうつ病を訴える人が、1人や2人くらいはいるのではないか。女性弁護士が紹介した社員の例は典型的な「新型うつ」と思われる。この病気の特徴の一つが、責任感が乏しく、何かあると他人のせいにしてしまうこと。だから、休職することも当然と考えてしまう。都内で精神科のクリニックを開いている専門医は、呆れた口調で次のように話す。
「最近は、診療もしていないのに、先に『気分が落ち込んで仕方がなく、会社を休職したいので診断書を書いてほしい』と言ってくる患者さんが増えてきました。専門医ですから重篤な患者さんかどうかは、話を聞いているとわかります。ただ会社を休みたいだけなのではと疑わしいときは、『あなたの会社の人事担当者と連絡を取って、仕事の状況を把握してから判断しましょう』というと、ほとんどの人が再診を受けにこなくなりますね」

診断書を書くだけで医者は儲かるしくみ

 実は、この診断書は保険の適用外で、1通書くと3000円~5000円が医師の懐にまるまる入ってくる。つべこべ言わずに、お客さまである患者のニーズに合わせていれば、売り上げアップにつながるのだ。ある精神科クリニックでは患者の要望に応じて、すぐに診断書を書いてくれることで人気を集めているという。こんなところの診断書を持ってこられても、会社側としたら素直に受け取ることはできないだろう。
 また精神科の専門医の間で問題になっているのが、「にわか精神科医」が増えていること。先の専門医は「いまの日本の医療制度では、昨日まで小児科や内科を標榜していた医師が今日からは精神科に標榜し直すことができるのです」という。厚労省の「地域保健医療基礎統計」によると、1996年に3198施設だった精神科のクリニックが2008年には1.7倍の5629施設へ急増している。
「精神科の治療はレントゲンなどの設備が不要で、元手をかけずに始められます。しかも、問診による診断がメインなのでCT画像や血液検査のような科学的なデータがなく、後で誤診が疑われても訴えられるリスクが少ない。“適当”といったら語弊があるが、単純に薬を処方して『はい、おしまい』といった、にわか精神科医がちらほらと見受けられるようになりました。こんなクリニックにかかったら、本来治るものも治りません」
 別な専門医はため息まじりに話す。別名「心の風邪」ともいわれ、身近な病気となったうつ病。しかし、その診療現場の状況に分け入っていくと、いろいろな問題点が浮かび上がってくる。

いわゆる標榜科の問題もまた色々と議論もあるところですが、よくある内科小児科医院的に精神科を標榜してみました的な方々がきちんとした診断を行わないまま診断書を書いているとすればこれはこれで問題で、昨今では免許の更新時にも運転不適格者のチェックを厳しくしようと言う動きもあるようで、今後ますます厳密な診断と言うことが医療の側には求められていくことにはなると思います。
文書料欲しさに診断書を乱発する先生がどのくらいいるのかははっきりしないにせよ、生活保護受給資格を巡って視力や聴力に障害があるかのように装って受給していると言うケースはしばしば指摘され、それらの中で「あそこならすぐ診断書を書いてくれる」と言う狙い目にされている先生もいらっしゃると言いますが、一方ではそうした行為によって行政処分なりが下ったと言った話はほとんど聞いたことがないように思います。
もちろん現金を受け取って虚偽の診断書を書くと言うなら問題でしょうが、妥当な文書料のみで他よりも診断書を多く書いていると言うだけではどこまで問題視されるべきなのかで、故意であるかどうかの認定の難しさもさることながら、診断能力の低さによってそれが行われていると認定されるならあまりに問題の範疇が広がり過ぎて収拾がつかなくなりかねませんよね。
身体診療科においては数字的・客観的な検査によってなるべく統一的基準で診断・治療を行う方向でガイドラインなども整備されてきている一方で、精神医療の場合どうしても本人の自己申告や医師の主観も混じると診断の客観性担保も難しいのだろうなと思うところですが、先日から相次いでこんなニュースが出ていたことも紹介してみましょう。

うつ病診断に新手法=血液のDNA反応分析-徳島大(2015年2月4日時事ドットコム)

 血液中のDNAを調べ、化学反応の状況から、うつ病かどうかを診断する方法を開発したと、徳島大の大森哲郎教授らの研究グループが4日発表した。うつ病の血液診断の実用化につながる成果という。論文は同日付の英科学誌エピジェネティクス(電子版)に掲載された。

 うつ病はストレスなど、さまざまな要因で発症するとされる。研究グループは、ストレスなどによって、メチル基と呼ばれる分子が遺伝子に結合する化学反応「メチル化」に変化が起きることに着目。うつ病患者20人と、うつ病ではない19人の二つのグループから血液を採取し、多くの遺伝子のメチル化の程度を測定した。
 この結果、18種類の遺伝子のメチル化反応の値を組み合わせれば、二つのグループを判別できることが分かった。別の二つのグループで同様の実験を行った場合も有効だったという。

 研究を主導した沼田周助講師は「精度の高いうつ病の指標に成り得る。実験の規模を拡大し、実用化につなげたい」と話している。


うつ病、血液分析から診断 鶴岡のHMTが開発(2015年2月21日河北新報)

 鶴岡市のバイオベンチャー、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)は20日、同社が特許登録した血液バイオマーカーを使い、大うつ病性障害(うつ病)かどうかを検査する委託契約を東横恵愛病院(川崎市)、保健科学研究所(横浜市)と締結した。
 発表によると、東横恵愛病院が患者から血液検体を採取し、保健科学研究所を通じてHMTに運ぶ。血液中のエタノールアミンリン酸(EAP)を測定し、結果は研究所経由で病院側に伝える

 HMTは血液のメタボローム解析で、うつ病患者はEAP濃度が低いことを発見。うつ病診断のバイオマーカーになるとして、共同研究者とともに特許登録している。
 HMTによると、国内のうつ病患者は約95万人。適切な処置をすれば治癒するが、診断は専門医による問診しか手段がなく、見逃されるリスクが高かった。健康診断や専門外の診療科でも発見できるよう、客観的な指標による診断方法の確立が求められていたという。

徳島大学の発表資料はこちらを、HMT社の方はこちらプレスリリースを参照いただければと思いますが、HMT社の方はすでに実用化の域にも達していると言うことで感度82%、特異度95%と聞けば臨床現場でもそれなりに有用そうな検査に思えますけれども、ただこの場合対象がかなり症状が重い大うつ病であると言う点も割引いて考えるべきなのでしょうか。
いずれにしても精神科領域においても次第に客観的指標による診断と言うことが進んでくるのであれば望ましいと言うものですが、一方でそもそも新型うつ病と言うものは従来のうつ病と言うものの枠に入りきらない症状に対して名付けられたものだと言いますから、客観的検査が充実するほどそもそも新型うつ病なるものが本当に存在するのかどうか?と言う議論が蒸し返されることになるのかも知れません。
その場合仕事にならないと言う症状面に注目してこれは病気であるとしていくのか、それとも単なるなまけ病で医療の対象ではないと見なすべきなのかは単に医学的のみならず、社会的な議論も必要になってきそうに思いますけれども、素人医者が安易に専門外の患者に手を出して社会を混乱させたなどと言われないためにも、まずはきちんと経験豊富な専門医に相談するルートを整備していくことが必要になりそうに思いますね。

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コメント

素朴な疑問として診断書代をそこまで当てにするものでしょうか?
手間賃だけで丸儲けにしても件数少なすぎる気がしますけど。
それとも毎月何十枚も書くとか一枚一万円とるとか?

投稿: ぽん太 | 2015年3月 3日 (火) 09時01分

一時期、気分転換も兼ねて、産業医もしていました。対応方法は、なんぼでもありますよ。例えば、就業規則に休職○ヶ月以上の場合、社の指定する医師の診察を受けるとするだけで、相当の抑止力になります。こんなんは、弁護士とか社会労務士の仕事なんで、おもしろくなくて産業医はもう止めましたが。給料も安いしね。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年3月 3日 (火) 09時51分

ぽん太さま
マスコミが勝手に診断書料目当てと書いているだけで、本質は、精神保健指定医もとらないばかりか、統合失調症などの経験も経ずに、なんちゃって心療内科・精神科開業する輩にあります。新型うつ病よりかは、誤診の問題の方がよっぽど深刻です。関わるのは無理と思って、辞めましたが。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年3月 3日 (火) 09時57分

医者は治せなきゃすたれてくもんだと思ってましたが
なんちゃってうつ病患者を量産するクリニックと、なんちゃってうつ病患者は、
治らなくてもお互いの利益が合致するから、共存するのかな?

投稿: | 2015年3月 3日 (火) 10時12分

公務員だと、公的な病院の診断書を要求されることも少なくありません。しかし、公的な病院にまともな精神科医がいる保証がないのも現状です。
・・・いわゆる新型うつ病と呼ばれているタイプの方(私はこういう診断はしませんが)はうつ病と同レベルの治療をしようとするとなぜか病院に来なくなります・・・

投稿: クマ | 2015年3月 3日 (火) 10時38分

この場合患者にとって利益となるのは治療効果や治るかどうかと言う医学的なものと言うよりも、職場における休業のしやすさや生保受給と言った社会的な意味合いの方が大きいと思われます。
その意味で純医学的な観点だけから議論していては理解と対応を誤る可能性がありますが、そうした社会的側面を知った上で敢えて診断書を書いている医師に対して社会の側でどう対処すべきかは難しい問題でしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月 3日 (火) 10時40分

管理人様
社会的側面といっても、会社の正社員(あるいは公務員)の話です。(なまぽの話は別途議論が必要ですが)労働関係法令に違反しない程度に就業規則を整備すれば済む話です。就業規則をなぜきっちりしないかというというと、未だに人治状態で、優秀な社員は長い間うつ病でも待っていたいけど、イラン社員は実は辞めて欲しい、なんてことを未だにやっているからです。ですから、厚生労働省から作れと言われている、会社ごとのメンタル対策指針の整備率が未だに低いのです。単に、そこをつけ込まれているに過ぎません。

投稿: 麻酔フリーター | 2015年3月 3日 (火) 14時12分

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