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2015年3月13日 (金)

生保関連の支出が抑制される中で

生保受給者などをカモにするいわゆる貧困ビジネスと言うものの実態について、先日こういう記事が出ていたのを御覧になったでしょうか。

これが「貧困ビジネス」の実態…劣悪環境と抜け出せぬ仕組み(2015年3月8日産経新聞)

 埼玉県内では昨年10月、生活困窮者のための「無料・低額宿泊所」の売上金を隠し、所得税約6300万円を脱税したとして、低額宿泊施設「ユニティー出発(たびだち)」を運営する和合秀典被告=所得税法違反罪で起訴=が逮捕された。記者は、いわゆる「貧困ビジネス」トラブルの被害者を支援する団体が主催した「貧困ビジネスツアー」に参加。宿泊所を訪れ、元居住者の話を聞くことで、改めて貧困ビジネスの仕組みの「巧妙さ」に驚かされた。(さいたま総局 菅野真沙美)
(略)
■「何のために生きているのか」

 さいたま市見沼区内の宿泊所に入居していた60代の男性は、「何のために生きているのかという気持ちになった」と入居当時を振り返った。男性は支給される生活保護費約12万円のうち、約11万円を施設に支払っていた。施設ではそのカネのうち、保護費支給日に1万円、その後は2日に1回1千円が支給されるという。「仕事を探すためのカネだと説明されるが、実際は部屋でじっとしているぐらいしかできない」
 同市岩槻区の施設で生活していた40代後半の男性は、仕事に失敗しホームレス生活をしているときに宿泊所職員に声をかけられた。施設の環境は「プレハブを改造した3畳程度のスペースに生活していた。夏が暑く、冬は寒い」。風呂は週に3回、決められた時間のみ許されていたという。

■二言目には「出て行け」

 男性らは一度施設に入ってしまうと抜け出すのが困難な状況についても語った。40代男性は「もう一度定職につこうとしても、ホームレスだった時期があると書類だけで不採用にされてしまうことが多い。施設は何もサポートをしてくれない」。面接に行くカネを工面できないこともある。60代男性も「二言目には職員から『出ていけ』と言われる」と話す。「『住所がないと公的支援を受けられなくなるが、それでもいいのか』と脅される。そう言われてしまうと、頭の中は『今晩どこに行けばいいんだろう』という思いでいっぱいになってしまう」

■被害解決に向けて

 反貧困ネットワーク埼玉は「行政の側も悪質な無料・低額宿泊所を便利に使ってしまっていて、居住者の劣悪な環境に目をつぶっている点があることは否めない」と指摘する。貧困が拡大する中で、福祉事務所のケースワーカーが不足し、自立支援が十分にできないなどの悪影響が生じている。一般のアパートへの入居となれば、ケースワーカーは家庭訪問を行って状況の確認を行い、トラブルに対処する必要があるが、宿泊所にいれば施設が代行してくれることも貧困ビジネスを助長させる要因となっている。
 同団体は貧困ビジネス被害者に対する相談や、アパートへの入居斡旋(あっせん)などを行っている。しかし、宿泊所側が団体の発信している情報を遮断し、入居者に知らせないことも多いため、福祉事務所へ協力を求めるが、拒絶されることもあるという。「一部自治体は宿泊所と悪い意味でのもたれ合いの関係になってしまっている。負担増を覚悟で対応に当たらなければ貧困ビジネスによる被害は拡大し続ける」と行政に対しても改善を求めた。

貧困であること自体は別に悪いことでも何でもないことですが、こうした貧困ビジネス等によって食い物にされてしまう方々の中には相当数の無知であるが故に騙されてしまう人々がいると言う点では詐欺に引っかかる普通の人々と何ら変わるところがないし、むしろ各種教育・啓蒙活動の存在にすら接する手段が限られていると言う点でより劣悪な状況であるとは言えるでしょう。
これと関連して注目いただきたい点として行政もこうした貧困ビジネスを規制するどころか、むしろ黙認している気配があると言う点ですが、少なくともこうした行為が問題があることなのだと情報を周知徹底しその解決法を提示するところまでは行政側も努力すべきなのだろうと言う気もする一方で、現実的に生保関連予算の削減が叫ばれる中でそこまで人手が回らないと言うこともありそうな話ですよね。
現実的に見ても当事者には不本意なのかも知れませんが、毎月12万円の行政支出で無職者に取りあえず衣食住を提供していると言うことであれば各種社会サービスの相場と比較して高すぎると言えるのかどうかで、悪く言われてはいても実際にはほとんど実費相当でやっている施設もそれなりにあるのかも知れません。
一方で先日は大阪で生保受給者に現金の代わりにプリカで支給しようと言う話が出ていることを紹介しましたが、貧困ビジネス対策と言うなら少なくとも一部生保受給者に資産管理は現実的に不可能なのだろうし、自治体がその部分のサポートをすると言うならやってみれば良いとも思うのですが、実際にこのアイデアに賛同しプリカ支給を希望した世帯はたったの5世帯に留まったといいます。
この点で当事者の主体的判断や協力を前提にするのみならず、やはり一定程度行政等による強制力を発揮すべき部分もあるのかと言う話なんですが、この強制力と言うことにも関連して先日こんな話が出ていたことを紹介してみましょう。

生活保護に後発薬促進…使用率75%以上に(2015年3月5日読売新聞)

 厚生労働省は、生活保護受給者が薬局で薬の処方を受ける際、価格の安い後発医薬品(ジェネリック)を使用する割合を現行の61%から75%以上に引き上げるよう各自治体に求めることを決めた。

 達成されれば、130億円規模の保護費削減につながる見込みで、近く各自治体に通知する。

 生活保護受給者は約217万人(昨年12月時点)で、8割超の約177万人の医療費は原則、全額が公費で賄われている。受給者の医療費は2012年度で約1・7兆円と保護費の約半分を占め、処方薬代が約2000億円(14年度試算)に上る。

 受給者の医療費が公費負担にもかかわらず、後発薬の使用率が低いことへの批判があり、各自治体は薬局や医療機関に切り替えを促してきた。その結果、使用率は14年には平均61%に上がり、被保険者を含む全体の使用率(55%)を上回ったが、自治体ごとに46~79%とばらつきがある。都道府県の平均で75%を上回っているのは長野、沖縄両県だけで、和歌山県(46%)などの低調な自治体に改善を促すことにした。

医療費削減に有効とされる後発医薬品(ジェネリック)の使用促進は国策であり、国を挙げてその使用率向上が叫ばれる一方で、医療費自己負担のない生活保護受給者においては一般患者よりも後発品使用率が低いと言う現象が問題視され、後発品義務化なども議論された結果使用率が上昇傾向にあるのは結構なことなのだろうし、さらにその方針を推し進めるべきではあるのでしょうが、さてどうやって?と言う話ですよね。
もちろん調剤薬局の窓口で「同じ成分同じ薬?面倒くさいから一番高い奴出してくれよ。どうせタダなんだし」とばかり先発品を希望する方々も一定数いるのだろうし、その意味で後発品(原則)義務化が言われるのも当然なんですが、そもそも国が言うように本当に同じ成分同じ薬であるなら薬局に支払う報酬は安価な後発品相当額だけにして、高い薬を出すほど持ち出しになる等々の方法も考えられるわけです。
医薬分業の時代なのですからどうやって患者を安い薬に誘導するのかは各薬剤師の裁量次第と言うことでも構わないと思うのですが、面倒くさいのは生保受給者に限らず特定銘柄の薬の処方しか許さないと主張される処方側の医師も一定数いて、そうした先生方が処方箋に後発品変更可のチェックを入れない限り誰もどうしようもないと言うケースですよね。
実際に後発品限定と言っても後発品自体も様々な薬があるわけで、薬局にしても各種同効薬を取りそろえさせられるよりは先発品に統一してもらった方が楽だと言うのも本音かも知れませんが、これまた本当に同じ成分同じ薬であるならそもそも公定価格が違うこと自体がおかしな話であって、全ての薬を同一価格で統一してしまえばほとんどの問題は解決するのかも知れません。

もちろん表向きはどうあれ実際には同じ成分であっても100%同じ効き目だと保証されるものではないし、むしろ経験的にそうではないと認識されている後発品も多いのですが、判りやすいケースとしては製剤毎に有効成分以外に何が含まれているかが異なる以上、アレルギー体質の患者さんなどには安全が確認された特定銘柄のものしか使いたくないと言う場合です。
この辺りはいわゆる医師の裁量権独立と言う古典的問題と絡めて医療系団体を中心に一律の強制化が反対される所以でもありますが、実際にどうしてもこのブランドのこの薬しか使えないと言うやむを得ない事情があるケースがどれくらいあるのかと言うことを考えた場合に、おそらくほとんどの場合は純医学的には単純に他の薬にしたらいいんじゃない?と言う状況にあるかと思うのですがどうでしょうね。
そこまで熱心に患者のことを考えていらっしゃる先生方であれば、例えば原則として処方可能な薬剤は後発品に限る、ただし特定銘柄を敢えて指定したい場合には担当医が医学的理由を併記しなさいと言ったルールも受け入れてくれるものなのかどうかですが、正直そこまで面倒くさいことをさせられるのなら薬の銘柄なんてこだわらない、どうでもいいよと言う先生の方が多数派ではないでしょうか。
門前薬局なども多種多様な後発品を揃えさせられるのは大変だからと、近隣の病院側と相談した上で特定銘柄に処方を限定してもらうと言った小技はごく普通に行われているわけですから、要するに医療費がどうとか言う大所高所の話よりも目先の手間ひまが省けるような方向で現場が最も誘導されやすいと言うことであれば、それに対応してお金をかけずに政策的に誘導する方法論もありそうには思いますね。

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コメント

診療報酬額ぎりぎりの器材薬剤費用を取られる医師も似たようなものかなってちょっと思っちゃいました。>貧困ビジネス

投稿: ぽん太 | 2015年3月13日 (金) 10時18分

>支給される生活保護費約12万円

いいなぁ。先日年金の通知が来ましたが、現在の(厚生年金も含めた)支給予定額が
同じくらいだった。あと定年まで片手もないのに。
生活保護ってどんだけいいんだろうか。健康保険料も払わなくていいし、医療費も無料だし。
絶対不公平すぎる。

投稿: | 2015年3月13日 (金) 10時53分

>実際にこのアイデアに賛同しプリカ支給を希望した世帯はたったの5世帯に留まった

そら、自由にお金使えないから、希望しないわな。
パチンコとかギャンブルが出来なくなる。

まあ、それだけ生活保護を受けている人のなかで、そこから脱出しようと考えている人は
非常に少ないということです。

投稿: | 2015年3月13日 (金) 10時59分

プリカについては個人情報保護的な観点からも余計な情報を握られることに抵抗がある人は多そうなので、何らかのインセンティブはないと普及は厳しそうですね。

投稿: 管理人nobu | 2015年3月13日 (金) 13時10分

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